カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/30 11:51
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が毎日のように車で走りながら目にしている「北区の空き家」の話をします。
鈴蘭台、北鈴蘭台、山の街、ひよどり台、藤原台。
昭和40年代から50年代にかけて造成された団地を回ると、雨戸が閉まったままの家が、1本の通りに2軒、3軒と並んでいることが珍しくなくなりました。
「うちの実家も、実はそうなんです」という方が、この記事を読んでいる方の中にもきっといらっしゃると思います。
責めるつもりはまったくありません。
ただ、放っておいた家がこの先どうなっていくのか、現場で見てきたことを正直にお伝えしておきたいのです。
結論から申し上げます
空き家は、置いておいて得をすることはほとんどありません。
家は人が住まなくなった瞬間から、驚くほどの速さで傷みます。
そして、放置する理由のほとんどは「お金」ではなく「気持ち」と「手続き」の問題です。
50年やってきて分かったことがあります。
空き家で一番損をするのは、売った人でも貸した人でもなく、「決めなかった人」です。
1. 空き家が放置される、よくある理由
私が相談を受けてきた中で、放置の理由はだいたい次の5つに集約されます。
- 親の荷物や仏壇があって、手をつける気持ちになれない
- 兄弟で相続の話がまとまらず、名義も親のまま
- 「いつか子どもが住むかもしれない」と思っている
- 更地にすると固定資産税が上がると聞いた
- 坂の上で古いから、どうせ売れないと思い込んでいる
どれも、よく分かります。
特に1つ目は、私自身も母を見送ったときに同じ気持ちになりました。
母の着物のたんすを開けたまま、1時間ほど動けなかったことを今でも覚えています。
けれど、はっきり申し上げます。
この5つのうち、時間が解決してくれるものは1つもありません。
むしろ、時間がたつほど全部が重くなっていきます。
2. 現場で見ている空き家の実態
人が住まない家は、まず空気が止まります。
窓を閉め切った家は湿気がこもり、北区のように山に近い地域では、梅雨を2回越すと押し入れの壁にカビが広がっていることがよくあります。
次に来るのが雨漏りです。
小さな瓦のずれでも、住んでいれば天井のシミで気付けます。
誰もいなければ、気付いたときには床下まで水が回り、床板がふかふかになっています。
それから庭です。
北区の団地は敷地が50坪、60坪と広めの家が多いので、草木の伸び方も半端ではありません。
夏を1回越すだけで、ブロック塀の高さまで草が茂ります。
そして、いちばん多い相談が「ご近所からの連絡」です。
ハクビシンやイタチが屋根裏に住み着いた、木の枝が隣の家の車に当たる、郵便受けにチラシがあふれて防犯上こわい。
こうした連絡が、遠方に住む持ち主さんのところに突然届きます。
もう1つ、知っておいていただきたいことがあります。
令和5年の法改正で、管理が行き届いていない空き家は市から「管理不全空家」として指導を受けるようになりました。
指導に従わず勧告まで進むと、固定資産税の住宅用地の特例が外れ、土地の税金が最大で6倍近くになることがあります。
「建物を残しておけば税金は安い」という話は、もう必ずしも通用しないのです。
さらに、令和6年4月から相続登記が義務になりました。
相続を知ってから3年以内に名義を変えないと、10万円以下の過料の対象になります。
「名義は親のまま」という状態は、そろそろ許されなくなってきています。
3. 実例 6年間で失ったもの
鈴蘭台に実家をお持ちだったAさん(72歳)のお話をします。
Aさんは大阪の豊中にお住まいで、お母様が施設に入られたのをきっかけに実家が空き家になりました。
建物は築42年の木造2階建て、土地は55坪ほどです。
最初にご相談を受けたとき、私はこの家をおよそ1,150万円で売り出せるとお伝えしました。
Aさんは「母が元気なうちは売れません」とおっしゃって、そのままになりました。
お気持ちは当然のことです。
それから6年がたちました。
お母様が亡くなられ、Aさんから改めて連絡をいただいたとき、家は次のような状態になっていました。
- 2階の北側の部屋に雨漏り
- 1階の和室の床が沈んでいる
- 庭木が隣家の敷地に大きくはみ出している
- 屋根裏にハクビシンのふん
査定額は650万円でした。
この6年間にAさんが払ったお金を一緒に計算しました。
固定資産税が年に約7万円で6年分、およそ42万円。
草刈りと庭木の剪定を業者に頼んで年に3回、1回3万円で6年分、54万円。
月に1回風を通しに来る交通費と、火災保険料を合わせて、ざっと30万円。
合計で約126万円を払いながら、家の値打ちは500万円下がっていたのです。
Aさんは帳面を見ながら、「母の家を守っていたつもりが、傷めていただけやったんですね」とつぶやかれました。
その言葉が、今でも耳に残っています。
もう1組、Bさんご兄弟(長男68歳、次男65歳、長女61歳)のお話もしておきます。
ひよどり台のご実家を、3人で「そのうち話そう」と言いながら9年。
その間に次男さんが亡くなり、相続人は次男さんの奥様とお子さん2人を加えて5人に増えました。
名義を変えるだけで、書類集めと話し合いに1年半かかりました。
これは断言できます。
相続は、先に延ばすほど人数が増え、話がまとまらなくなります。
4. 業界の裏側 空き家を狙う人たち
ここからは、あまり表に出ない話をします。
まず「買取業者」です。
空き家をお持ちの方のところには、「すぐ現金で買い取ります」というチラシや電話がよく来ます。
こうした業者は、「解体費が200万円かかります」「残置物の処分に80万円かかります」と、費用を大きめに見積もって価格を下げてきます。
実際には、普通に売り出せば800万円で売れる家を、450万円で買い取るような話を私は何度も見てきました。
買い取った業者は、軽くリフォームして1,300万円で売り出します。
次に「管理サービス」です。
月5,000円から1万円ほどで空き家を見回ってくれる、というものですが、中身をよく確認してください。
外から写真を撮って、郵便受けのチラシを抜いて終わり、というところも少なくありません。
雨漏りは、中に入って天井を見上げなければ分かりません。
それから、「更地にしたほうが高く売れますよ」とすぐに解体を勧める不動産会社にも気をつけてください。
中には、解体業者から紹介料を受け取っているところもあります。
解体してしまえば、先ほどの住宅用地の特例は外れますし、北区の坂の上の土地は、建物付きのほうが買い手が見つかりやすい場合もあるのです。
解体は、売れる見込みがはっきりしてからでも遅くありません。
もう1つ、覚えておいていただきたいのが「相続空き家の3,000万円控除」です。
昭和56年5月31日以前に建てられた家を相続して売る場合、条件を満たせば売却益から最大3,000万円を差し引けます。
ただし、相続から3年目の年末までに売らなければ使えません。
相続人が3人以上いる場合は、1人あたり2,000万円までに縮みます。
この期限のことを教えてくれない業者は、案外多いものです。
5. 正直にお伝えしたいデメリット
ここまで「早く決めてください」とお話ししてきましたが、良いことばかりではありません。
まず、売れば家は他人のものになります。
思い出のある家が取り壊されて、新しい家が2軒建つ。
それを車で通りかかって見てしまい、胸が痛んだという方は何人もいらっしゃいます。
次に、北区の古い空き家は、売っても思ったほどのお金にならないことがあります。
坂の上で、擁壁が古く、車が入りにくい土地だと、建物を解体して200万円、300万円の手取りということもあります。
「こんなに安いなら売らなくてよかった」と感じる方もいらっしゃいます。
それから、貸すという選択肢もありますが、築40年を超える家を貸すには、水まわりと外壁で最低でも300万円、400万円のリフォーム費用がかかることが多いです。
家賃が月7万円なら、元を取るのに5年近くかかります。
その間に大きな修繕が出れば、手出しになります。
そして、急ぎすぎるのも危険です。
「とにかく早く手放したい」と焦ると、先ほどの買取業者の言い値で決めてしまいがちです。
早く決めることと、安く手放すことは、まったく別の話です。
まとめ
北区の空き家は、今この瞬間も、静かに傷み続けています。
放置される理由は、ほとんどが気持ちと手続きの問題です。
そして、その間に税金と手入れの費用が出ていき、家の値打ちは下がっていきます。
結論から申し上げます。
売る、貸す、残す、どれを選んでもかまいません。
大事なのは、「決めずに置いておく」ことだけはやめることです。
Aさんのように、6年待って500万円を失う方を、私はもうこれ以上見たくないのです。
最後に、これだけは申し上げたい
空き家の相談は、売るかどうか決まっていなくても大丈夫です。
「まだ母の荷物が片付いていないんです」「兄弟で話がまとまっていないんです」という段階でも、遠慮なくお声がけください。
まず今の家の状態と、いくらくらいになるのか、税金がどうなるのかを一緒に整理するところから始めましょう。
現地を見に行くだけでも、見えてくることはたくさんあります。
50年この北区で家を見てきた私が、損をしない道を一緒に考えます。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


