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「あきちゃんの不動産お役立ちコラム」の記事一覧(112件)

不動産暦50年のあきちゃんが神戸市北区の皆様に不動産に関するお役立ち情報をお届けします。

不動産屋としての信念
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/08/06 07:26

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、私が不動産屋として持っている「信念」の話をします。

信念

信念、と書くと立派に聞こえますね。

でも中身は、まったく立派ではありません。50年のあいだに何度も損をして、何度も頭を下げて、そのたびに「もうこれだけはやめよう」と決めてきた。その積み重ねが、いつのまにか信念という形になっただけです。

不動産屋の信念というと、たいていはきれいな言葉が並びます。「お客様第一」「誠実」「地域密着」。看板にはそう書いてあります。

けれど、看板に書いてあることと、実際に契約の場でやっていることが違う会社を、私は50年で数え切れないほど見てきました。

ですから今日は、きれいな言葉ではなく、私が実際に何を守り、そのせいで何を失ってきたかを書きます。


結論から申し上げます


私の信念は、たった一つです。

お客様が「10年後」に後悔しない判断を、一緒に作ること。

売ることでも、高く売ることでも、早く売ることでもありません。10年後に「あのときの判断でよかった」と思ってもらうこと。それだけです。

ただ、これだけでは行動になりません。ですから私は、自分に5つの約束を課しています。

  • 売らせない勇気を持つこと
  • 悪い話を先に言うこと
  • 他社の悪口は言わないこと
  • 相場を作らず、相場に従うこと
  • 同じ町から逃げないこと

この5つです。順番にお話しします。


1. 売らせない勇気を持つ


不動産屋は、売って初めてお金になる商売です。

媒介契約を結んで、買主を見つけて、契約して、決済して。そこでようやく仲介手数料が入ります。それまでは一円にもなりません。

だから構造として、不動産屋の口からは「売りましょう」しか出てこないようになっています。これは業者が悪人だからではなく、そういう仕組みだからです。

それでも私は、年に何件かは「今は売らないでください」と申し上げます。

藤原台北町にお住まいだったCさん(当時72歳)の話をします。

ご主人を亡くされて半年ほど経った頃、娘さんから電話がありました。「母が一人で住むには広すぎるし危ないので、家を売って施設に入れたい」と。

築32年の戸建で、査定すると「2,980万円」でした。仲介手数料は約100万円。うちのような小さい会社にとっては、大きい仕事です。

ですが、Cさんご本人と二人でお話ししたとき、こう言われました。「庭の梅の木、主人が植えたんです」と。

まだこの家におりたい。でも娘に迷惑をかけたくない。その両方が本心でした。

私は娘さんに「1年だけ待ってください」と申し上げました。

理由も言いました。今この状態で売ると、お母様は10年後もそのことを引きずります。私は50年で、その顔を何度も見てきました。

1年後、娘さんご一家が二世帯で同居されることを決められました。家は売らずに済みました。

私の手数料はゼロです。

それでいいんです。あの判断は、10年後も正解のままだからです。


2. 悪い話を先に言う


これは断言できます。

物件の悪い部分は、契約前に全部言う。これを守れない不動産屋には、家を任せてはいけません。

岡場駅から徒歩13分の中古戸建を見に来られた、Dさんご夫婦(42歳・39歳)の話です。

価格は「2,180万円」。庭が広く、南向きで日当たりもよく、お子さんが二人いるご家庭にはちょうどいい家でした。奥様は玄関に入った瞬間に気に入っておられました。

正直に言えば、私も「これは決まるな」と思いました。

けれど、擁壁が気になりました。高さは2.8mほど、古い練積みで、見た感じ40年以上前のものでした。

私は知り合いの土木業者に現地を見てもらいました。結果、いずれ補修が要る、費用はざっと「480万円」という話でした。

私は契約前にそれをそのままお伝えしました。

ご夫婦は1週間悩まれて、この物件はやめられました。私の手数料はゼロです。

半年後、別の物件でご縁があり、その決済のときにご主人がぽつりと言われました。「あのとき止めてくれたから、他は見ずにここに来ました」と。

はっきり申し上げます。

業界には「言わなければ分からない」と考える人間がいます。重要事項説明書に書かなければ、あるいは書いてあっても早口で読み流せば、たいていのお客様は気づきません。

私はそれを詐欺と紙一重だと思っています。


3. 他社の悪口は言わない


「あそこの会社はやめた方がいいですよ」

こう言う営業を、皆さんも一度は見たことがあるはずです。

あれは、親切ではありません。自分を選ばせるための技術です。

私は他社の名前を出して悪く言いません。その代わり、確認の仕方だけをお伝えします。

鈴蘭台に戸建をお持ちだったEさん(当時58歳)の話です。

うちの査定は「2,980万円」でした。他社は「3,480万円」。500万円の差です。

Eさんは他社を選ばれました。当たり前です。私が売主でもそうします。

私は「そちらでどうぞ」とお送りしました。その会社の悪口は一切言いませんでした。

ただ一つだけ、こう申し上げました。「3か月経って、内見が一件も入らなかったら、それは物件の問題ではなく価格の問題です」と。

結果を申し上げます。

その物件は1年半後に「2,850万円」で売れました。うちの査定より130万円安い金額です。

その1年半のあいだ、固定資産税と火災保険と最低限の管理費で、Eさんは40万円ほど余計に払っておられました。

Eさんは決済の後、うちに寄ってくださいました。「あんたの言うた通りやった」と。

業界の言葉で「高預かり」といいます。相場より高い査定を出して媒介契約を取り、預かってから少しずつ値を下げていくやり方です。

最初の3か月で下げ始め、6か月で相場に近づけ、1年経つ頃には最初の査定額など誰も覚えていません。

悪口を言う必要はないんです。3か月見ていれば、答えは出ます。


4. 相場を作らない、相場に従う


査定価格は、不動産屋が決めるものではありません。

買う人が決めるものです。

私は査定書に必ず二つを並べます。一つは、直近1年でその周辺が実際にいくらで売れたかという成約事例。もう一つは、今この瞬間に売りに出ている競合物件の一覧です。

そのうえで「私はこう思います」ではなく「市場はこうなっています」とお見せします。

この方法は、正直に言って一番嫌われます。

「あそこは安く見る」と言われます。実際、そう言われて他社に行かれた方は50年で何百人もおられます。

それでも変えません。私が価格を作った瞬間に、その数字はお客様への嘘になるからです。


5. 同じ町から逃げない


私は50年、神戸市北区から出ていません。

これは信念というより、覚悟に近いものです。

岡場の商店街を歩けば、家を売ったお客様に会います。買ったお客様にも会います。

30年前に家を買われたご夫婦のお子さんが、いま40歳を超えて、自分の家のことで相談に来られます。

逃げられない場所で商売をしていると、嘘がつけません。

全国展開の会社の営業さんは、3年で異動します。5年経てば、その人はもうこの町にいません。

私は死ぬまでここにいます。だから、契約の日に良い顔をするより、10年後に町で会ったときに目をそらさずに済むことの方が大事なんです。

50年やってきて分かったことがあります。

信用というのは、契約の場でつくものではありません。契約の10年後に決まります。


6. 一番忘れられないお客様の話


信念という言葉を使うなら、この方の話を書かないわけにはいきません。

20年以上前、有野台にお住まいだったFさん(当時66歳)です。

ご主人が営んでおられた小さな会社が行き詰まり、家を手放さざるを得なくなりました。住宅ローンの残債が「1,700万円」ありました。

当時、買取業者に話を回せば、うちには紹介料が入る仕組みがありました。今ほど厳しくない時代でしたから、業者から仲介会社に情報料が流れるのは珍しくありませんでした。

買取なら「1,450万円」。即金、1か月で完了します。うちは何もせずに手数料に近いお金が入ります。

ただ、それだと残債に250万円足りません。Fさんは家を失ったうえに、借金だけが残ります。

仲介で普通に売れば「1,900万円前後」は見込めました。ただし3か月から6か月かかります。Fさんには、その時間がありませんでした。

私は、銀行に一緒に行きました。

事情を説明して、返済を3か月待ってもらえないかと頭を下げました。これは不動産屋の仕事ではありません。手数料も一円も増えません。

結果、4か月後に「1,880万円」で売れました。

残債を返して、引っ越し代と、当面の生活費が手元に残りました。Fさんご夫婦は北区内の賃貸に移られました。

この話には続きがあります。

20年経って、当時中学生だったFさんの息子さんが、うちの事務所に来られました。ご自分の家を買うためです。

「親父から、家のことはあきちゃんとこへ行けと言われました」

これが、私の信念の全部です。

あのとき買取に流していたら、20年後にこの人は来ていません。


7. 業界の裏側を、もう少しだけ


信念の話をするなら、その反対側にあるものも書かなければ不公平です。

両手取引という言葉があります。

売主と買主の両方から手数料をもらう形です。3,000万円の物件なら、片方だけなら約100万円ですが、両方なら約200万円になります。

倍です。だから、他社のお客様に自分の物件を見せたくなくなります。

それが「囲い込み」です。

「今、商談が入っておりまして」と他社に断りを入れる。売主には「まだ反響が弱いですね」と報告する。売主は買い手がいないと思い込み、値下げに応じます。

値下げの提案が来るタイミングにも、法則があります。

媒介契約の更新時期の少し前です。3か月で切れる契約を更新してもらうために、「一度価格を見直して、次の3か月で勝負しましょう」という話になります。

買取査定にもカラクリがあります。

買取業者は転売して利益を出しますから、相場の7割前後が基本です。それ自体は悪いことではありません。仕事ですから当然です。

問題は、その差額をお客様に説明しないまま「早くて確実ですよ」とだけ言う売り方です。


8. この信念のデメリットを正直に書きます


いいことばかり書くと嘘になりますので、正直に申し上げます。

この信念のせいで、うちの会社は大きくなっていません。

社員は増えていません。売上のランキングに名前が載ったこともありません。50年やって、この規模です。

査定額で他社に負けて、お客様が離れていくことは、77歳になった今でも普通にあります。

それから、これは大事なことですが、うちが向いていないお客様もおられます。

とにかく早く現金にしたい方です。

離婚、事業の資金繰り、施設の入居費用。事情はいろいろです。そういうときは、正直に買取をお勧めすることもあります。

ただしそのときは、仲介ならいくらになるか、買取だといくらか、その差額がいくらかを必ず紙に書いてお見せします。そのうえで選んでいただきます。

もう一つ、私自身のデメリットもあります。

私は77歳です。あと何年この仕事ができるか、正直なところ分かりません。

長いお付き合いを前提にしている商売なのに、こちらの残り時間が短い。これは、うちに任せていただくうえでの本当のデメリットです。隠さずに申し上げておきます。


まとめ


私の信念を、もう一度だけ書きます。

お客様が10年後に後悔しない判断を、一緒に作ること。

そのために、売らせない勇気を持ち、悪い話を先に言い、他社の悪口は言わず、相場を作らず、この町から逃げない。

この5つを守ってきた結果、私は儲け損なった仕事が山ほどあります。Cさんの100万円も、Dさんご夫婦の手数料も、Fさんの紹介料も、全部手に入りませんでした。

それでも、20年後に息子さんが来てくださいました。

どちらが商売として正しいかは分かりません。ただ、どちらが50年続くかは、もう答えが出ています。


最後に、これだけは申し上げたい


不動産屋を選ぶとき、看板の言葉を読んでも意味がありません。

一つだけ、確かめる方法があります。

その担当者に「この物件の悪いところを教えてください」と聞いてみてください。

すらすらと3つ以上答えられる人は、信用していいと思います。「特にありません」「いい物件ですよ」としか言わない人は、あなたの10年後を見ていません。

売る売らないは、決めていなくて構いません。まだ何も決まっていない段階の相談が、一番役に立ちます。

「これ、売った方がいいんでしょうか」という一言から始めてくださって結構です。私は、売らない方がいいときは、はっきりそう申し上げます。


センチュリー21・ハートピア
田中章雄

若い頃の失敗を正直に話します
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/08/04 06:57

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、少し書きにくい話をします。私が若い頃にやらかした失敗の話です。

若い

うまくいった話なら、いくらでも書けます。あの土地を高く売った、あのお客さんに感謝された。そういう話は気持ちよく書けますし、読んでいる方も気分がいい。

でも、それだけ書いている不動産屋を、私は信用しません。

50年もこの仕事をやっていて、失敗がないわけがないんです。失敗を語らない業者は、失敗していないのではなくて、隠しているだけです。

ここで一歩立ち止まってください。

あなたが不動産屋を選ぶとき、「うちは実績があります」「安心してお任せください」としか言わない担当者と、「昔こういう失敗をしました。だから今はこうしています」と言う担当者、どちらを信じますか。

私は後者だと思っています。だから今日は、自分の恥をさらします。


結論から申し上げます


私が若い頃にやった失敗は、突き詰めると全部ひとつのことに集約されます。

お客さんの話を、最後まで聞かなかった。

これだけです。

知識が足りなかったから失敗したのではありません。段取りが悪かったから失敗したのでもありません。相手が本当に何を望んでいるのかを聞かずに、自分が「これが正解だ」と思ったほうへ話を進めてしまった。それが原因でした。

これは断言できます。不動産の失敗の大半は、知識不足ではなく、聞き足らずから起きます。


1. 27歳のとき、売り急がせてしまった話


私が27歳、この業界に入って5年目くらいの頃です。

当時、神戸市北区の団地の一角にある古い一戸建てを、Aさん(当時63歳)からお預かりしました。ご主人を亡くされて間もない、静かな奥様でした。

築28年、木造2階建て、駅からバス便。相場からすると1,180万円あたりが妥当な線でした。

私は張り切っていました。若かったですし、早く決めて自分の成績にしたかった。今思えば、それが全部でした。

Aさんは最初、こうおっしゃっていたんです。

「主人との思い出があるので、もう少し考えさせてください」

私はそれを「迷っているだけ」だと解釈しました。だから、こう申し上げてしまった。

「奥様、この地域は今、動きが鈍っています。半年経つともっと下がります。今のうちに決めたほうがいいですよ」

嘘ではありませんでした。実際その地域は緩やかに下がっていました。

でも、それは私の都合の言葉でした。

Aさんは3か月後、1,050万円で売却されました。私が持ってきた買主でした。私は自分の中で「相場より少し下だけど、早く現金化できたんだからよかった」と思っていました。

問題はその1年後です。

Aさんが店に来られました。

「あきちゃん、私、あの家を売らなければよかったと思っているんです」

息子さんご夫婦が神戸に戻ってくることになったそうです。あの家に住みたいと言われたそうです。

そのときAさんは、私を責めませんでした。「私が決めたことですから」とだけおっしゃった。

私はそれが一番こたえました。責められたほうが、まだ楽でした。

あのとき私がやるべきだったのは、「半年経つと下がります」と言うことではありませんでした。

「息子さんは将来こちらに戻られる可能性はありませんか」

たったこの一言を聞けばよかったんです。聞かなかった。聞くと売却が止まるかもしれないと、心のどこかで思っていたからです。

はっきり申し上げます。あれは私の失敗です。相場の判断は間違っていませんでしたが、人として間違っていました。


2. 33歳のとき、境界を確認せずに契約した話


もうひとつ、これは金銭的にはっきり損害が出た失敗です。

私が33歳の頃、神戸市北区の傾斜地にある土地の売買を仲介しました。売主はBさん(当時71歳)、買主は市外から移住してこられた40代のご夫婦でした。

土地は約58坪。売買価格は880万円

問題は、境界でした。

古い土地で、境界標が現地に見当たりませんでした。公図と現況もずれていました。

売主のBさんは「昔から隣とはこの塀が境界だと言い合ってきた。何も問題ない」とおっしゃる。隣地の方に電話で聞いても「そうだね」と言う。

私はそれで済ませてしまいました。測量をせず、境界の立会いも書面にせず、「現況有姿」で契約したんです。

コストを抱えたくなかった売主の気持ちを汲んだつもりでした。実際には、測量費が40万円ほどかかりますから、その話をBさんに切り出すのが面倒だっただけです。

引き渡しから2年後、隣地が相続になりました。

相続した息子さんは、当然ながら「昔からの言い合い」を知りません。測量したら、塀の位置が実際の境界から約80cm買主側にはみ出していることが分かりました。

そこから揉めに揉めました。

最終的に、買主のご夫婦が塀の作り直しと測量で約110万円を負担されました。売主のBさんは既に亡くなられていて、請求先もありませんでした。

私は自分の報酬から一部を出しました。それで解決したわけではありません。あのご夫婦は、移住してきた土地で最初にやったことが、隣とのもめ事だったんです。

50年やってきて分かったことがあります。

土地の境界は、当事者が生きているうちにしか確認できません。

「昔からこうだった」は、相続が起きた瞬間に消えます。人が代わると、口約束は存在しなかったのと同じになります。

今の私は、境界が不明な土地は、必ず確定測量をお願いします。売主に嫌な顔をされても、費用の話を切り出します。あのご夫婦のことを思い出すからです。


3. 41歳のとき、身内の売却で判断を誤った話


これは技術の話ではなく、心の話です。

41歳の頃、親戚筋の家の売却を任されました。

身内ですから、私は「絶対に高く売ってやろう」と思いました。相場が2,300万円あたりのところを、2,680万円で売り出しました。

これが完全に裏目に出ました。

不動産には「物件が枯れる」という言葉があります。売り出してから時間が経つと、業者間でも「あそこ、まだ残ってるな」「何か理由があるんじゃないか」と見られ始める。ポータルサイトを見ている一般のお客さんも、同じ物件が何か月も出ていると、それだけで敬遠されます。

半年で3回値下げしました。2,680万円、2,480万円、2,280万円。

最終的に売れたのは2,120万円でした。

最初から2,300万円で出していれば、おそらく3か月以内に2,250万円前後で決まっていました。私が欲を出したせいで、130万円ほど安くなったわけです。

身内には言い訳ができませんでした。

このとき学んだことがあります。高く売り出すことと、高く売れることは、まったく別物だということです。

高く売り出すのは誰でもできます。売主が喜ぶからです。だから、査定価格をわざと高く出して媒介契約を取る業者がいます。業界では「高預かり」と呼びます。

これは今もあります。3社に査定を頼んで、1社だけ極端に高い金額を出してきたら、疑ってください。その業者は売る自信があるのではなく、まず契約を取りたいだけかもしれません。


4. 業界の裏側を、ついでに申し上げます


自分の失敗を書いたので、業界の話もついでに正直に書きます。

私が若い頃、まだ「囲い込み」という言葉が今ほど問題視されていなかった時代があります。

囲い込みというのは、預かった物件を他社に紹介せず、自社で買主も見つけて、売主と買主の両方から手数料をもらうやり方です。両手取引と言います。片手なら手数料は売主からだけ、両手なら倍になります。

他社から「あの物件、内見できますか」と電話が来ても、「もう商談中です」と断る。実際には商談中でもなんでもない。

私はやりませんでしたが、周りには普通にありました。それを「営業努力」と呼ぶ空気もありました。

売主からすると、買主候補が減るわけですから、確実に不利です。売れるのが遅くなり、結果として値下げにつながります。

これは今でも完全にはなくなっていません。

見分け方をひとつだけ申し上げます。

自分の家がポータルサイトにきちんと出ているか、レインズという業者間のデータベースに登録されているか、登録証明書を見せてもらってください。専任媒介や専属専任媒介を結んだら、業者には登録義務があり、証明書を発行してもらえます。

それを渋る業者は、何か理由があります。


5. デメリットも正直に書きます


ここまで読んで、「あきちゃんは正直だな」と思っていただけたなら嬉しいのですが、私にも欠点があります。

  • 売り急がせないので、とにかく早く現金化したい方には向いていません
  • 派手な広告をしません。全国ネットのCMも豪華なチラシもありません
  • 都市部のタワーマンションを高値で回転させる取引は得意ではありません
  • 私は77歳です。長いお付き合いを前提にされる場合、私一人に依存するのはリスクです

若い頃の失敗が骨身に染みているので、私は「もう少し考えたほうがいい」と言うことがよくあります。勢いのある若い担当者のほうが合う方は、必ずいらっしゃいます。

年齢のことも、はっきり申し上げておくべきだと思っています。店にはちゃんと後進もおりますが、そこはご承知おきください。

こういうことを書くと「営業として損じゃないか」と言われます。でも、隠して契約を取って、あとで「聞いていない」と言われるほうが、私はよほど嫌です。


まとめ


若い頃の私の失敗を、3つ書きました。

売り急がせて、お客さんの人生を狭めてしまったこと。境界を確認せず、買主に110万円を負担させてしまったこと。欲を出して高く売り出し、身内に130万円損をさせたこと。

どれも、聞き足らずが原因でした。

50年やってきて分かったことがあります。不動産の仕事は、物件を扱う仕事ではなく、人の事情を扱う仕事です。

物件は数字で測れます。事情は聞かないと分かりません。

だから今の私は、査定の前に必ず1時間はお話を伺います。ご家族のこと、これからのこと、お金の不安。それを聞かないと、値段も出せませんし、売るべきかどうかの判断もできません。

これは断言できます。あなたの事情を聞かずに、いきなり査定額だけ出してくる業者には、任せないほうがいいです。


最後に、これだけは申し上げたい


私は失敗をしてきました。だから今、慎重にやっています。

もし今、家や土地のことで迷っておられるなら、まだ何も決まっていない段階で構いませんので、一度お話を聞かせてください。

「売るかどうかも決めていない」で結構です。むしろ、そういう段階のほうがお役に立てます。決まってしまってからでは、選べる道が減ってしまいますから。

私は売り込みません。50年の間に、それで何度も痛い目を見ましたので。

あなたが損をしない道を、一緒に探させてください。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

なぜ神戸市北区にこだわるのか
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/08/03 07:16

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、いつもの売り方の話とは少し違って、なぜ私が神戸市北区だけで50年やってきたのかという、私自身の話をさせてください。

なぜ北区

「あきちゃん、なんで北区だけなんや。三宮や芦屋のほうが、よっぽど儲かるやろ」

同業の集まりに行くと、必ずこれを言われます。50年、言われ続けてきました。

正直に申し上げます。そのとおりです。

北区の一戸建ての成約価格は、市内の南のほうと比べたら半分から3分の2くらいのことが多い。同じ手間をかけて、頂ける手数料は半分。商売としては、決して効率のいい場所ではありません。

それでも私は、50年ここから一歩も動きませんでした。今日はその理由を、きれいごと抜きでお話しします。


結論から申し上げます


私が神戸市北区にこだわるのは、地元が好きだから、という話だけではありません。

知らない土地の不動産を扱うと、お客さんに損をさせるからです。

これは断言できます。不動産という商品は、資料を読めば分かるものではありません。その場所に何十年も通って、雨の日も冬の朝も見てきた人間にしか、分からないことがあります。

そしてその「分からないこと」が、300万円、500万円という差になって、お客さんの手取りに跳ね返ってくるのです。


1. 値段は「地図」ではなく「記憶」で決まる


不動産の査定は、今はパソコンでもできます。周辺の成約事例を並べて、面積で割って、駅からの距離で補正する。それだけなら、私でなくてもできます。

けれど、北区の土地はそれでは値段が出ません。

たとえば、同じ町名で、同じ50坪で、同じ駅から徒歩12分の土地が2つあったとします。

地図の上ではほとんど同じです。ところが片方は2,000万円ですっと売れて、もう片方は1,400万円でも半年買い手がつかない。この地域では、こういうことが普通に起こります。

何が違うのか。

  • 坂の向き
  • 冬の朝、路面が凍るかどうか
  • 前の道が朝の通学路になっているかどうか
  • 裏の斜面が北向きで、午後2時に日陰になるかどうか
  • 昔そこに小さな水路があって、大雨のときどう水が出たか

こういうことは、登記簿にも図面にも一行も書いてありません。

私は50年、この地域を自転車と車で回ってきました。だから頭の中には、地図ではなく「記憶」の形で入っています。

50年やってきて分かったことがあります。土地の値段を決めているのは、数字ではなく、その土地が持っている癖です。


2. 買う人の顔が浮かぶかどうか


もうひとつ、大事なことを申し上げます。

不動産の値段は、売る人が決めるものではありません。買う人が決めるものです。

ですから査定のときに一番大事なのは、「この物件を、どこの誰が買うのか」が浮かぶかどうかです。

北区の物件なら、私は浮かびます。

道場や大沢のほうの広い土地なら、車を2台置きたい30代の共働きのご家族。有馬に近いエリアなら、いま西宮に住んでいて、実家の親の近くに戻りたいと言っている50代。北鈴蘭台や山の街の古い戸建てなら、予算を抑えて土地を広く取りたい職人さん。

顔が浮かぶから、「この物件は、その人にどう見えるか」で値段が組めます。

これが芦屋の物件だと、私には浮かびません。誰が買うのか知らない人間が値段を付けたら、それはただの当てずっぽうです。当てずっぽうの値段でお客さんの大事な資産を出すわけには、いかんのです。


3. 50年前の造成を、私は見ている


北区は、山を削って造られた住宅地がたくさんあります。

昭和40年代から50年代にかけて、あちこちで造成が進みました。私はその工事を、20代のころに現場で見ています。

どこが元の地山で、どこが盛り土か。どの擁壁がいつごろ積まれたものか。どの団地が上下水道をいつ入れ替えたか。

これは資料には残っていません。残っていても、後から取り寄せるには時間がかかります。

でも私は覚えています。だからお客さんに「ここは盛り土のほうなので、買主さんから地盤の質問が必ず来ます。先に調べておきましょう」と、契約前に言えます。

はっきり申し上げます。この「先に言える」かどうかが、あとで揉めるか揉めないかの分かれ目です。


4. 実例:有野台のAさん、査定差430万円の話


3年ほど前の話です。

Aさん(74歳)が、有野台の実家を相続されました。お母様が亡くなられて、築42年の木造2階建てが残った。Aさんご本人は西宮にお住まいで、北区のことはほとんどご存じない。

大手2社に査定を頼んだところ、1,780万円1,850万円

Aさんは「まあ、こんなもんか」と思われたそうです。そこにご紹介で、私が呼ばれました。

私は現地に立って、すぐに2つのことを申し上げました。

ひとつ。この一帯は昭和44年前後の造成で、前面道路が6m確保されている。北区の古い住宅地では、4mを切っていて再建築のときに敷地を下げないといけない場所がいくらでもあります。ここは、それがない。

ふたつ。南側の斜面は市の緑地です。つまり、あそこには一生、建物が建ちません。南向きの日当たりが、将来にわたって保証されている土地なのです。

これは資料を見ただけでは分かりません。地図上は「がけ地が隣接」としか見えない。むしろ減点材料に見えます。

私は「2,300万円で出しましょう」と申し上げました。Aさんは「そんな値段で売れるんですか」と驚かれた。

売り出して1か月半、小学生のお子さんが2人いるご夫婦が「南側に一生家が建たないんですか」と食いついて、2,280万円で成約しました。大手の査定より、430万円上です。

私が優秀だったのではありません。私が、その斜面が市の緑地だと知っていただけです。50年この町にいれば、誰でも知っています。

逆に言えば、この町にいない人間には、一生分かりません。


5. 私が明石の物件を断った話


同じ年に、こういうこともありました。

Bさんご夫婦が、北区のご自宅を私に任せてくださった。無事に売れて、引き渡しも済んだ。そのあとで、こう言われました。

「先生、実は明石にも親の家があるんです。あれも一緒にお願いできませんか」

ありがたい話です。手数料でいえば、100万円近くになる仕事でした。

私は、お断りしました。

「申し訳ありません。私は明石の相場も、買う人の顔も知りません。今の私がやったら、たぶん200万から300万、安く売ってしまいます。明石で長くやっている業者を紹介させてください」

Bさんは、ぽかんとしておられました。「断る不動産屋、初めて見ました」と。

けれど、これでいいと思っています。知らんもんは、知らん。知らんもんに手を出したら、お客さんが損をする。50年やってきて、私が守ってきたのは、その一点だけです。


6. 業界の裏側:「対応エリア 兵庫県全域」の正体


ここからは、業界の内側の話をします。

チラシやホームページに「対応エリア 兵庫県全域」「関西一円対応」と書いてある会社があります。あれ、どういう意味かご存じですか。

正直に申し上げます。多くの場合、「媒介契約さえ取れれば、場所はどこでもいい」という意味です。

なぜなら、媒介契約を取ること自体には、業者側にほとんどコストがかからないからです。査定書はシステムが出します。現地は1回、写真を撮りに行くだけ。あとはレインズと自社サイトに載せて、置いておく。

売れれば手数料が入る。売れなくても、業者は損をしません。損をするのは、時間を失う売主さんだけです。

もうひとつ、申し上げにくいことを言います。

遠方の物件は、業者にとって「案内が面倒な物件」です。片道1時間かけて内見の立ち会いに行くのは、正直しんどい。

そうすると何が起きるか。他社から「お客さんを案内したい」と連絡が来ても、「今、商談中でして」と断ってしまう。いわゆる「囲い込み」です。

囲い込みというと、両手取引で手数料を2倍取るための悪質な手口として語られます。それも事実です。けれど現場では、「遠くて面倒だから、動きたくない」という理由で、結果的に同じことが起きているケースも少なくありません。

売主さんから見れば、理由が悪意でも面倒でも、結果は同じです。売れません。

それから、大手の担当者は2年から3年で異動します。これは会社の仕組みなので、担当者個人が悪いわけではありません。しかし結果として、その地域の記憶が誰にも溜まりません。

私の店には、50年分のファイルが残っています。「あの土地、20年前にも一度売りに出て、そのとき境界で隣とひと悶着あった」ということまで分かります。それが交渉のときに、効きます。


7. デメリット:北区にこだわることの、正直な弱点


ここまで良いことばかり書いたので、正直に弱点も申し上げます。

まず、北区以外は本当に分かりません。

お客さんに「大阪の物件もお願いします」と言われても、お断りするしかない。商売としては、明らかに損をしています。息子には「もったいない」とよく言われます。

次に、狭い地域だからこそ、噂が回ります。

「あそこの家、売りに出とるらしい」という話は、驚くほど速く広がります。離婚や借金、事業の整理といった事情でご売却される方にとっては、これは正直つらいことです。

ですから私は、看板も出さず、チラシもまかず、こちらの手持ちの買主候補にだけ声をかける、という売り方も用意しています。ただ、その分だけ買主の母数は減るので、値段は少し下がることがあります。ここは正直にお伝えしています。

三つ目。地元だからこそのしがらみがあります。

売主さんも買主さんも、両方うちのお客さん、ということが実際にあります。そういうとき、私はどちらかに肩入れできません。だから私は、売主と買主の両方から手数料をいただく取引を、できるだけ避けてきました。同業からは「もったいない」と笑われます。それでも、両方に「あんたはどっちの味方や」と思われたら、この町では50年もちません。

四つ目。これが一番申し上げにくいことです。

北区にも、正直これから厳しい地区があります。

坂の上で、駅から遠く、バス便も減っている団地。今は静かでいい町ですが、10年後、20年後に買い手がつくかというと、私は楽観していません。

地元愛では、資産は守れません。

だから私は、ご相談に来られた方に「ここは早めに動かれたほうがいい」と申し上げることがあります。地元の人間として言いにくい話ですが、言わなければ嘘になります。


まとめ


もう一度、結論を申し上げます。

私が神戸市北区にこだわるのは、この町が好きだから、それだけではありません。知っている土地でしか、お客さんに損をさせない仕事はできないからです。

土地の値段は、地図ではなく記憶で決まります。買う人の顔が浮かばない人間が付けた値段は、当てずっぽうです。50年前の造成を見ていない人間には、契約前に「先に言っておくべきこと」が言えません。

そして私は、明石の物件を断ります。知らんからです。

エリアが狭いことは、業者にとっては弱みです。断る仕事のほうが多いくらいです。

けれど、お客さんにとっては強みになります。それだけは、50年やってきて確信しています。


最後に、これだけは申し上げたい


もし今、北区や西宮の北のほう、三田あたりで、ご実家やご自宅の売却を考えておられるなら。

「その会社は、この土地に何年いますか」

これを一度、聞いてみてください。

担当者が何年その支店にいるか。会社がその地域で何年商売しているか。それだけでも、ずいぶん見えるものがあります。

そして、まだ売ると決めていなくても構いません。「うちの土地、どういう場所なんやろか」というだけのご相談で結構です。

値段を付けにくい土地ほど、値段を付けられる人間に相談してください。それだけで、数百万円が変わることがあります。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

なぜ無料相談をやっているのか
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/31 09:49

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、私自身のことを書きます。なぜ、うちは相談をタダでやっているのか。その理由を全部お話しします。

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「あきちゃんとこ、なんで相談タダなん」

これ、よく言われます。同業の若い者からも言われますし、お客様からも聞かれます。「タダより高いもんはないって言うやろ。あとで何か請求されるんちゃうか」と、冗談まじりに言われたこともあります。

もっともな疑問だと思います。世の中、タダには必ず理由があります。

ですから今日は、その理由を全部書きます。きれいごとの部分も、そうでない部分も、隠さずに書きます。


結論から申し上げます


私が無料相談をやっているのは、善意でも社会貢献でもありません。私の商売のやり方そのものです。

ただし、よその「無料査定」とは、中身が全く違います。ここが一番大事なところです。

これは断言できます。私が相談料を取らないのは、取ってしまうと一番助けたい人が来なくなるからです。理由はそれだけです。

そして、私の商売は1件で回収するようにできていません。50年かけて回収するようにできています。だから1件ごとにお金をいただかなくても成り立つんです。


1. お金を取ると、一番困っている方が来なくなる


仮に、相談料を「5,000円」いただくとします。

そうすると、どうなるか。売ると決めている方は払います。5,000円で数百万円が変わるなら安いものですから、当然です。

来なくなるのは、決めていない方です。

「まだ売るかどうか分からへんのに、5,000円払うのはもったいない」

こう思われます。当たり前です。私が逆の立場でもそう思います。

ところがです。50年やってきて分かったことがあります。損をされるのは、いつも「決めていない段階の方」なんです。決めている方は、もう調べています。人にも聞いています。だいたい大きな失敗はしません。

決めていない方は、何も知らないまま最初の一歩を踏み出します。そこで間違えると、あとから全部が狂うんです。

つまり、相談料を取った瞬間に、一番助けが必要な方だけが来なくなる。これでは意味がありません。

だから取らないんです。理念というより、単純な引き算です。


2. 私の仕事は「売ること」ではなく「損を防ぐこと」


若い頃の私は、売ることが仕事だと思っていました。

昭和50年代です。売れば手数料が入る。だから売る。それしか考えていませんでした。恥ずかしい話ですが、本当のことです。

考えが変わったのは、ひとつの出来事がきっかけでした。それは後で書きます。

今の私が仕事だと思っているのは、売ることではありません。目の前の方が「損をしたまま終わらないようにすること」です。

これは、売らせない判断も含みます。

  • 今は売らんほうがええです
  • あと2年待ったほうがええです
  • その値段では出さんほうがええです
  • その業者には返事をせんほうがええです

こういうことを申し上げると、その場では1円にもなりません。むしろ売上が遠のきます。

それでも申し上げます。なぜなら、そこで正直に言った方が、5年後10年後に戻ってきてくださるからです。もしくは、ご近所やご兄弟を連れてきてくださいます。

はっきり申し上げます。これは私なりの計算でもあります。善人ぶるつもりはありません。50年この土地で商売を続けるというのは、そういうことなんです。


3. 一度きりの商売なら、無料相談はやりません


ここは正直に書きます。

もし私が、明日この街を出ていく商売人だったら、無料相談などやりません。1件ごとにきっちりお金をいただいて、次の街に行きます。そのほうが効率がいい。

でも私は北区から出ません。50年出ませんでした。これからも出ません。

同じ町内に、私が20代のときに家を仲介した方のお子さんがおられます。今その方が60代になって、実家の相続の相談に来られます。3代目のお孫さんが家を買うときに、また来られます。

こういう商売なんです。1回の相談で稼ぐ必要がない。だから無料でできる。

逆に言えば、無料相談ができるのは「その土地に居続ける覚悟がある店」だけです。ここは、お店を選ぶときの目安にしていただいていいと思います。


4. 私が無料相談を始めた本当の理由


ここからが、この記事で一番書きたかったことです。

昭和58年のことです。私が34歳のときでした。

近所に、父の代からお世話になっていた方がおられました。仮にAさんとします。当時67歳、少し足の悪い方でした。

ある日の夕方、Aさんが店の前まで来られて、こう言われたんです。

「章雄くん、ちょっと聞きたいことがあるんやけど、今ええか」

その日、私はバブル前の忙しい時期で、契約を2件抱えていました。それで、こう答えてしまったんです。

「すんません、今ちょっと立て込んでまして。また今度でよろしいですか」

Aさんは「ああ、ええよ、ええよ」と言って、笑って帰られました。

その「今度」は来ませんでした。

半年ほどして、人づてに聞きました。Aさんは、持っておられた田んぼと畑を、知り合いの紹介で来た業者に売られていました。

金額を聞いて、私は言葉が出ませんでした。当時の相場で見て、少なく見積もっても「1,200万円」は低い値段でした。しかも、隣接地との境界がはっきりしないまま、そのまま渡しておられました。

あのとき、5分でも話を聞いていれば、私は「その値段はおかしい」と言えました。「境界だけは先にはっきりさせてください」と言えました。

たった5分です。5分を惜しんだせいで、私は近所のお年寄りに1,200万円損をさせたんです。

Aさんは私を責めませんでした。その後もお会いすると、変わらず声をかけてくださいました。それがまた、こたえました。

人は「相談したい」と思ったその日にしか、相談に来ません。次の機会はないんです。あの日を逃したら、もう来ないんです。

だから私は決めました。誰が来ても、何を聞かれても、忙しくても、必ずその場で話を聞く。お金は取らない。

無料相談は、その日から始まっています。理念というより、私の後悔です。


5. 業界の裏側「無料査定」はタダではありません


ここで、業界の中の話をします。

世の中には「無料査定」があふれています。ネットで家を売ろうと調べれば、一括査定サイトが山ほど出てきます。全部タダです。

しかし、あれはタダではありません。誰かがお金を払っています。

一括査定サイトに情報を入れると、複数の不動産会社から電話がかかってきます。あの電話は、なぜ来るのか。

不動産会社が、その情報をお金で買っているからです。私が聞いている範囲では、1件あたり数千円から1万数千円が動いています。

会社の側から見れば、1万円払って買った見込み客です。だから必死になります。電話がしつこいのは当然なんです。元を取らないといけませんから。

これが「無料査定」の正体です。皆さんはお金を払っていません。かわりに、皆さんの名前と住所と物件情報が商品になっています。

もうひとつ申し上げます。買取業者の無料査定です。

買取業者にとって、査定は仕入れの入り口です。安く買うことが利益になります。ですから、高く売る方法を教えてくれることはありません。教えたら自分の商売にならないからです。

無料の相続セミナーも同じです。あれは名簿を集める場です。終わったあとの個別相談会が本番です。

私はこれらを悪だとは言いません。商売としては成り立っています。

ただし、皆さんは知っておいてください。無料の裏側には必ず回収の仕組みがあります。その仕組みが「早く売らせる」方向に働いているのか、「損をさせない」方向に働いているのか。そこを見てください。

私の場合の回収の仕組みは、50年です。急いで回収する必要がないから、急がせません。それだけの違いです。


6. 無料相談で救えた話も書いておきます


最近の例を書きます。

去年です。北区のBさんご夫婦が来られました。ご主人が69歳、奥様が66歳でした。

ご相談は「実家を売って、駅前のマンションに住み替えたい」というものでした。

すでに、ネットで一括査定を使っておられました。5社から電話があって、そのうち1社が来て「3,180万円でいけます」と言ったそうです。

Bさんは、その数字にすっかり乗り気になっておられました。「もう契約しようかと思って」と言われました。

私は正直に申し上げました。「その値段では売れません。うちが査定するなら2,700万円台です」

Bさんのお顔が曇りました。当然です。400万円以上、下の話をされたのですから。

それでも申し上げました。理由は3つあります。

  • ご自宅は接道が4m未満で、セットバックが必要な土地だった
  • 住み替えは売りと買いの順番を間違えると資金がまわらない
  • 売却の前に大きなリフォームをしても、その分は値段に乗らない

先に買ってしまうと、売り急ぐことになって、結局安くなります。リフォームは150万円かけても、売値は150万円上がりません。

Bさんは、その日は何も決めずに帰られました。

3週間後、また来られました。「あの3,180万円のところ、他の家でも同じようなこと言うてるらしいわ」と。ご近所で聞いてこられたそうです。

結果として、Bさんは「2,780万円」で売り出し、2か月半で「2,690万円」で成約されました。買いは、売却の契約が済んでから動かれました。

このとき私がいただいたのは、法律で決まった仲介手数料だけです。相談の分は1円もいただいていません。

でも、あの日の30分がなければ、Bさんは3,180万円で契約して、半年かけて2,400万円台まで下げていた可能性がありました。


7. デメリットも正直に書きます


いいことばかり書くと嘘になります。無料相談の限界を書きます。

ひとつ目。無料でできるのは「話を聞くこと」と「順番をお伝えすること」までです。

測量、境界確定、登記、相続の申告。これらは専門家の仕事で、お金がかかります。測量なら、うちの近辺で「35万円から60万円」ほどです。ここまで無料にはできません。無料でやると言う業者がいたら、そのぶんはどこかで取られています。

ふたつ目。税金の細かい話は、私は断言しません。

相続空き家の3,000万円控除にしても、要件は年々細かくなっています。私は「使える可能性があるので税理士に確認しましょう」までしか申し上げません。ここで断言する不動産屋がいたら、それは危ないです。

みっつ目。無料だと、軽く見られることがあります。

これは私の側の愚痴です。何度も来られて、その足で他社と契約される方もおられます。50年で何度もありました。腹は立ちます。人間ですから。

ただ、それを言い出すと無料の意味がなくなるので、飲み込んでいます。10人のうち1人が戻ってきてくだされば、それで商売は続きます。

よっつ目。私は77歳です。

若い担当者のような機動力はありません。夜遅くの対応も難しいです。パソコンやSNSは若い者に任せています。この点は先に申し上げておきます。

いつつ目。無料でも、お受けできないことがあります。

遠方の物件や、私の手に負えない特殊な案件は、正直に「うちより、この人に聞いたほうがええです」とお伝えします。無理に引き受けて中途半端になるほうが、ご迷惑ですから。


まとめ


もう一度、結論を申し上げます。

私が無料相談をやっているのは、善意ではありません。理由はこれだけです。

  • お金を取ると、一番助けが必要な方が来なくなる
  • 私の仕事は売ることではなく、損を防ぐこと
  • 私の商売は1件ではなく、50年で回収する形になっている
  • 昭和58年、5分を惜しんで近所の方に1,200万円損をさせた後悔がある

そして、皆さんに知っておいていただきたいことも並べます。

  • 世の中の「無料査定」は、誰かが1件いくらでお金を払って買った情報である
  • 買取業者の無料査定は、安く仕入れるための入り口である
  • 無料の裏側にある回収の仕組みが、どちらを向いているかを見てほしい

無料という言葉に飛びつく必要はありません。中身を見てください。


最後に、これだけは申し上げたい


あの日、Aさんに「また今度」と言った自分を、私は今でも思い出します。

77歳になった今、思うことはひとつです。あと何年この店を開けていられるか分かりませんが、開けている間は、来てくださった方の話を必ずその日に聞く。それだけは守ろうと思っています。

売る話でなくて結構です。決まっていなくて結構です。資料を持ってこられなくても結構です。

お茶を一杯お出しします。30分ほどお話を伺って、今してはいけないことと、動く順番だけお伝えします。そのまま帰っていただいて構いません。

お代はいただきません。そのかわり、もし周りに困っておられる方がいたら、こんな不動産屋が北区にいると伝えていただければ、それで十分です。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

「相談だけでもいいですか?」への答え
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/30 08:08

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、私が店をやっていて一番よく聞く一言、「相談だけでもいいですか?」への答えをはっきり書いておきます。

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電話でも、店に入ってこられたときでも、皆さんまずこれを言われます。しかも、言い方が申し訳なさそうなんです。声が小さくなる方もいます。

「まだ売るかどうか決めてないんですけど…」「冷やかしみたいで悪いんですけど…」と、先に謝ってくださる方もいます。

50年やってきて、この一言を何千回聞いたか分かりません。だから今日は、その答えを正面から書きます。


結論から申し上げます


いいです。むしろ、それが一番いい。

売ると決めてから来る人より、決めていない人のほうが、私は助けられます。

これは断言できます。決めてから来られると、もう選べる道が減っているんです。決めていない段階で来てくださると、道が全部残っている。だから助けられるんです。

「相談だけ」は遠慮ではありません。一番賢い使い方です。


1. 相談だけの人が、なぜ得をするのか


理由は単純です。不動産の売却で損をする人は、たいてい「動いたあと」に相談に来られるからです。

たとえば、もう他社と媒介契約を結んでしまった。もう買取業者に査定を出して、金額を聞いてしまった。もうリフォームに300万円かけてしまった。もう仏壇や家具を業者に頼んで処分してしまった。

こうなってから「これで良かったんでしょうか」と聞かれても、私は正直に「もう少し早く来てほしかった」と言うしかありません。

一方、何も決めていない方が来られたときは、こう言えます。「まだ何もしないでください。順番があります」と。

50年やってきて分かったことがあります。不動産で一番お金が変わるのは、売り方ではなく「動く順番」です。順番を間違えると、同じ家でも数百万円変わります。

その順番を決めるのが、まさに「相談だけ」の段階なんです。


2. 皆さんが遠慮している本当の理由


なぜ「相談だけでもいいですか」と、あんなに申し訳なさそうに言われるのか。私はずっと考えてきました。たぶん、こういうことだと思います。

  • 相談したら売らないといけなくなる気がする
  • 査定を頼んだら断れなくなる気がする
  • 名前と住所を書いたら営業がしつこくなる気がする
  • 「売る気がないなら来るな」と思われそう
  • 素人みたいな質問をして呆れられたくない

はっきり申し上げます。全部、皆さんの思い込みではありません。実際にそういう業者がいるから、そう思うようになったんです。

これは業界の人間として認めます。しつこい会社は本当にあります。査定を入り口にして、断ってもかけてくる。断ってもハガキが来る。「今なら高く売れます」と急かしてくる。

だから皆さんが警戒するのは当たり前なんです。悪いのは皆さんではなく、そういうやり方をしてきた業界です。


3. 相談だけで帰られた方の話


具体的にお話しします。3年ほど前です。北区にお住まいのCさん、当時66歳の女性が、店に入ってこられました。第一声が「相談だけなんですけど、いいですか」でした。

お母様が施設に入られて、実家が空き家になった。築42年の木造で、道路から少し上がったところにある家です。ご兄弟から「早く売ったら」と言われている。でもCさんご自身は、まだ気持ちが決まっていない。

30分ほどお話を伺いました。私が申し上げたのは3つです。

ひとつ、お母様がご健在で、家がお母様の名義なら、今は売れません。売るには成年後見の手続きが必要になり、時間もかかります。

ふたつ、固定資産税は年間およそ9万円。空き家のままでも、この程度なら急いで叩き売る理由にはなりません。

みっつ、家の中の物を今のうちに少しずつ片づけておくと、いざ動くときに費用と時間が半分になります。

Cさんは「今日は何も決めなくていいんですね」と、少しほっとしたお顔で帰られました。契約もしていません。査定書も出していません。

それから1年8か月後です。お母様がお亡くなりになって、Cさんが相続されました。そのときに、また来てくださいました。

家の中はもう、ほとんど片づいていました。ご兄弟とも話がついていました。私が最初に申し上げた3つを、ご自分のペースで進めておられたんです。

結果、相続から6か月以内に2,180万円で売却できました。相続空き家の3,000万円特別控除も使えました。もし慌てて先に動いていたら、控除の要件を外していた可能性がありました。

あの日の「相談だけ」が、この結果を作ったんです。


4. 逆のケースも申し上げます


正直に書きます。相談に来られなかった方の話です。

同じ北区で、Dさんご夫妻。ご主人が72歳でした。お会いしたのは、もう他社と3か月の媒介契約を結んだ後でした。

売り出し価格が2,980万円でした。相場から見ると、300万円ほど高い。私が見ても高いと分かる値段です。

Dさんは「高く売れるほうがいいと思って」と言われました。当たり前です。誰でもそう思います。

ここが業界の裏側です。契約を取りたい会社は、わざと高い査定を出します。専任媒介を結べば、3か月は他社が入れません。その間に反響がないと分かってから、少しずつ値下げを提案していくんです。

これを業界では「高預かり」と言います。高く預かって、あとで下げる。売主は「売れないのは相場が悪いから」だと思わされます。

Dさんの家は結局、9か月かかりました。最終的に2,450万円です。最初から2,680万円くらいで出していれば、3か月以内に売れていた可能性が高い家でした。

長く売れ残った物件は「物件が枯れる」と言います。ポータルサイトに何か月も出続けると、買主から「何か問題がある家だ」と見られます。そうなると、相場より下げないと動かなくなるんです。

Dさんが契約前に一度でも「相談だけ」に来ていれば、私は「この値段はおかしい」と申し上げていました。

相談は、契約の後にするものではありません。契約の前にするものです。


5. 私が相談のときに何をしているか


期待させたくないので、正直に書きます。私は相談のときに、魔法のような話はしません。やっていることは、こういうことです。

まず聞きます。売りたいのか、貸したいのか、まだ決めていないのか。誰の名義なのか。ご家族の意見は揃っているのか。お金の期限があるのか。

次に、今の状況で「してはいけないこと」を先に申し上げます。多くの場合、これが一番役に立ちます。

そして、動く順番だけをお伝えします。1番目にこれ、2番目にこれ、と。

最後に「今日は決めなくていいです」と申し上げて終わります。

査定書を無理に押しつけません。名義や間取りを聞いただけで概算の幅はお伝えできますから、正式な査定は「売る方向で考えたい」と思われたときで十分です。

これだけです。派手なことは何もしていません。でも、この30分で数百万円変わった方を、私は何人も見てきました。


6. デメリットも書いておきます


いいことばかり書くと嘘になります。相談のデメリットも申し上げます。

ひとつ目。私の話を聞くと、迷いが増える方がいます。「早く売ってすっきりしたい」と思って来られた方に、私が「まだ動かないでください」と申し上げると、宙ぶらりんの気持ちが長引きます。これはしんどいことです。すぐに終わらせたい方には、正直つらい話だと思います。

ふたつ目。私は高く売れるとは言いません。他社で「3,000万円で売れます」と言われた方に、私は「2,600万円くらいですね」と申し上げることがあります。聞いていて気持ちのいい話ではありません。相談に来られて、がっかりして帰られる方もいます。それでも本当の数字を言います。

みっつ目。私は77歳です。若い担当者のようなスピードでは動けません。SNSを使った派手な集客も得意ではありません。ネットの操作は息子や若い者に任せています。そこは正直に申し上げておきます。

よっつ目。相談されても、うちで扱わないことがあります。遠方の物件や、私の手に余る特殊な案件は「うちより、この方に聞いたほうがいい」とお伝えします。無理に受けて中途半端になるほうが、お客様に迷惑ですから。

こういうデメリットを承知の上で、それでもいいという方だけ来ていただければいいと思っています。


7. 「素人の質問」は存在しません


もうひとつだけ、遠慮の理由をつぶしておきます。「こんなこと聞いたら恥ずかしい」と思っておられる方が多いんです。50年やってきて、実際に聞かれた質問を書きます。

  • 家って、どうやって売るんですか
  • 不動産屋さんにお金はいつ払うんですか
  • 家の中の物は片づけてから売るんですか
  • 古い家は壊さないと売れないんですか
  • うちの土地は何坪あるんでしょうか

どれも、まともな質問です。恥ずかしいことは何もありません。

だいたい、皆さん家を売るのは人生で一度か二度です。分からないのが普通なんです。分かっている方のほうがおかしい。

私だって、病院に行けば何も分かりません。医者に「そんなことも知らないのか」と言われたら傷つきます。同じことです。

はっきり申し上げます。呆れる不動産屋のほうが間違っています。


まとめ


もう一度申し上げます。「相談だけでもいいですか?」の答えは、いいです、それが一番いい。理由を並べます。

  • 決めていない段階なら、選べる道が全部残っている
  • 損をする人は、動いたあとに相談に来る
  • 不動産で一番お金が変わるのは、動く順番
  • 相談は契約の前にするもの。後では遅い

そして、遠慮しなくていい理由も並べます。

  • 相談したから売らなければならない義理はない
  • 名前を書かなくても話はできる
  • 分からないのが普通で、恥ずかしいことは何もない

Cさんは、相談だけで帰られてから1年8か月後に動かれました。それでいいんです。急がなくていい。決まっていなくていい。


最後に、これだけは申し上げたい


私はこの仕事を50年やってきました。もう、たくさん売りたいとは思っていません。思っているのは、北区で家や土地を持っている方に、損をしたまま終わってほしくないということです。

売らなくていい方には「売らなくていい」と申し上げます。今動かないほうがいい方には「待ってください」と申し上げます。それで私の売上にならなくても、構いません。

ですから、どうぞ気軽にお声をかけてください。「相談だけ」で結構です。決めていなくて結構です。何も持ってこなくて結構です。

お茶を一杯お出しします。30分ほどお話を伺って、してはいけないことと、動く順番だけお伝えします。それで帰っていただいて構いません。

そのうえで、いつか動くときが来たら、また思い出してくだされば、それで十分です。


センチュリー21・ハートピア
田中章雄

私が実際に受けた相談トップ10
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/29 07:10

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、私がこの50年で実際に受けてきた相談の中から、特に多かったものを「相談トップ10」という形でお話しします。

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この仕事を50年やっていますと、一日に何件も相談の電話が鳴ります。店の前を通りかかって、ふらっと入ってこられる方もいます。相続の話、空き家の話、離婚の話、お金の話。人生の重たい部分を、皆さん打ち明けてくださいます。

そのひとつひとつを思い返してみると、実は相談には「はっきりした傾向」があるのです。今まさに同じことで悩んでいる方が、きっといらっしゃると思うので、その傾向をありのままにお見せします。


結論から申し上げます


私が受けてきた相談の9割は、「もっと早く相談してくれていれば、もっと得をした」という内容です。

これは断言できます。損をする人は、動けなくなってから相談に来ます。得をする人は、まだ何も起きていないうちに相談に来ます。この差だけで、最終的に手元に残るお金が「数百万円」変わります。

では、実際に多かった相談を、多い順に並べていきます。


1. 相続した実家をどうすればいいか


これがダントツの1位です。親御さんが亡くなって、誰も住まなくなった実家。売るべきか、貸すべきか、そのまま置いておくべきか。ご兄弟の間で意見が割れて、身動きが取れなくなっている。こういう相談が本当に多いのです。

神戸市北区のAさん(62歳)は、藤原台のご実家を相続されました。ご兄弟3人で「いつか売ろう」と話しているうちに5年が過ぎ、その間ずっと固定資産税を年「12万円」払い続けていました。空き家のまま傷んで、いざ売るときには価格も下がっていました。

はっきり申し上げます。相続した家は、方針を決めるのが早ければ早いほど得をします。


2. 空き家を持て余している


1位と近いのですが、こちらは相続に限らず、住み替えたあとの元の家などを含みます。「まだ使うかもしれない」「思い出があるから」と置いておく気持ちは、よく分かります。

ですが空き家は、置いておくだけで固定資産税がかかり、庭は荒れ、屋根は傷みます。草刈りだけ頼まれて10年通ったお宅もありましたが、その10年で家の価値は半分以下になっていました。


3. 今の不動産会社が動いてくれない


「半年前に売りに出したのに、内見が一度もない」「営業マンから連絡が来ない」。こういう声を、私は何百回と聞いてきました。

ここで業界の裏側をお話しします。「囲い込み」というものがあります。売主から預かった物件を、自社のお客さんにだけ売ろうとして、他社からの「お客さんを紹介したい」という問い合わせをわざと断る。これをやられると、売れるはずの家がいつまでも売れません。会社が両方から手数料をもらう「両手取引」を狙って、わざと動きを遅くする業者がいるのです。


4. 査定価格がバラバラで、何を信じればいいか


3社に査定を頼んだら、2000万円、2400万円、2800万円とバラバラだった。どれが本当なのか。これも定番の相談です。

覚えておいてください。一番高い査定額を出した会社が、一番良い会社とは限りません。契約が欲しいがために、わざと相場より高い金額を出す。これを業界で「高預かり」と言います。高い金額に釣られて契約すると、結局売れず、あとから「やっぱり下げましょう」と値下げを何度も迫られることになります。


5. 買取を勧められているが、損をしないか


買取そのものは悪いものではありません。急いでいる方、他人に知られたくない事情がある方には向いています。

ですがデメリットも正直に申し上げます。買取価格は、普通に売る場合(仲介)の「6割から7割」になるのが相場です。2800万円で売れる家が、2000万円以下になることも珍しくありません。急いでいないのなら、まず仲介で売ることをお勧めします。


6. 住み替えの順番で迷っている


今の家を売ってから次を買うのか(売り先行)、先に次を買ってから売るのか(買い先行)。この順番の相談です。

ここは失敗すると大きな損につながる部分です。買い先行で先に新居を買ったものの、今の家がなかなか売れず、ローンが二重になって苦しくなった方を何人も見てきました。


7. 離婚に伴って自宅をどうするか


デリケートな相談ですが、件数としては確実に上位に入ります。名義は誰か、ローンは誰が払うのか、財産分与はどう分けるのか。感情がからむだけに、こじれると本当に長引きます。

第三者である私が間に入って、淡々と数字だけを整理することで、話が前に進むことも多いです。


8. 農地や山林、再建築不可などの厄介な土地


「親から継いだけれど、どうにもならない土地がある」という相談です。農地は簡単には売れません。再建築不可の土地は、建て替えができないので買い手が限られます。

こういう土地は、専門的な知識がないと二束三文で手放すことになります。


9. いくらで売り出せばいいか


値付けの相談です。高く出しすぎると売れず、安く出しすぎると損をする。この見極めは、地域の相場を肌で知っている業者でないとできません。

50年この北区にいる私だからこそ、「この道一本入ると値段がこう変わる」ということまで分かります。


10. そもそも売るべきか、貸すべきか


最後は、この根本的な相談です。貸せば家賃が入りますが、大家としての責任と手間がかかります。売れば一度にまとまったお金が入りますが、その家は二度と戻ってきません。

どちらが正解かは、その方の年齢や家族構成、その家の状態によって変わります。


まとめ


50年やってきて分かったことがあります。相談に来られる方の悩みは、10種類くらいに集約されるということです。

そして、そのどれもが「早く相談すれば得をして、遅れるほど損をする」という同じ構造を持っています。今日ご紹介した10個の中に、ひとつでも「これ、うちのことだ」と思うものがあったなら、それはもう相談どきです。


最後に、これだけは申し上げたい


相談は無料です。そして、相談したからといって「必ず売らなければならない」わけでは一切ありません。

「売らない」という結論を一緒に出すことも、私の大事な仕事のひとつです。売るために背中を押すのではなく、損をさせないために本当のことをお伝えします。どんな小さなことでも、まだ何も決まっていない段階でも構いません。お茶でも飲みながら、あなたのお話をお聞かせください。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

不動産会社を変えたら売れた話
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/28 08:06

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、私のところに来られたお客さんの中でも、忘れられない一件についてお話しします。「1年半まったく売れなかった家が、会社を変えた途端に2か月で売れた」、そんな話です。

変え

最初にお伝えしておきますが、これは「うちに来たら売れますよ」という宣伝のために書いているのではありません。世の中には、売れないのを「相場のせい」「立地のせい」にして、本当の理由を売主さんに言わない会社があります。その仕組みを、正直にお話ししたいのです。

結論から申し上げます


家が売れない理由の多くは、家そのものではありません。売り方です。もっと言えば、任せた会社の「やる気」と「売る仕組み」です。

立地が悪いわけでも、値段が高すぎるわけでもないのに売れない。そういう家が、担当を変え、会社を変えただけで動き出すことが、本当にあります。

これは断言できます。50年やってきて、私は何度もこの場面を見てきました。


1. 1年半、内見がたった3件だった家


神戸市北区の藤原台に、Bさんご夫婦(ともに60代)の一戸建てがありました。

築25年、駅からバス便、庭付きの4LDK。決して条件のいい物件ではありません。けれど、住み替えのために売りに出して、1年半が過ぎても売れませんでした。

Bさんが不思議に思っていたのは、内見の少なさです。1年半で、家を見に来た人がたったの3組。「そんなに人気がないんですかね」とBさんは言いました。

私は媒介の状況を見せてもらって、すぐに違和感を持ちました。ポータルサイトの写真は暗く、玄関の一枚だけ。物件の紹介文は3行。しかも「専任媒介」で、その会社が1年半、抱え込んだままでした。

はっきり申し上げます。この家は「売れない家」ではありませんでした。「売られていない家」だったのです。


2. 「囲い込み」という言葉を、正直にお話しします


不動産の世界には「囲い込み」という、あまり表に出ない話があります。

売主さんから預かった物件を、その会社が自分のところだけで抱え込み、他社からの「買いたい」という問い合わせを断る。これが囲い込みです。

なぜそんなことをするのか。理由はお金です。

売主さんから預かった家を、その会社が自分で見つけた買主さんに売れば、売主・買主の両方から手数料が入ります。これを「両手取引」と言います。他社が連れてきた買主さんに売ると、手数料は売主側の片方だけ。だから、他社に売らせたくないのです。

その結果どうなるか。買いたい人がいても、話が売主さんまで届かないのです。Bさんの家は、たぶんこれでした。「反響がない」のではなく、「反響を止められていた」

これは、売主さんからは絶対に見えません。だから怖いのです。


3. 会社を変えて、まずやったこと


Bさんが私のところに来られて、媒介を切り替えました。私がやったことは、派手なことではありません。

  • 写真を撮り直した(晴れた午前中に全部屋を明るく、20枚以上)
  • 紹介文を書き直した(暮らしが見えるように、正直に具体的に)
  • レインズにきちんと載せ直し、他社にどんどん紹介してもらう形にした(囲い込みをやめた)

すると、どうなったか。媒介を切り替えて3週間で、内見が5件入りました。1年半で3件だった家に、です。そして2か月目に、他社が連れてきたご家族が「ここにします」と決めてくれました。


4. 値段は、ほとんど下げていません


ここが大事なところなので、覚えておいてください。

売れなかった1年半、前の会社はBさんに何度も「値下げしましょう」と言っていました。3,180万円で出していたものを、2,780万円まで下げさせられていたのです。400万円です。1年半かけて、じわじわと。

私は、売り方を変えれば、この値段でも十分に買い手はつくと判断しました。実際、最終的に成約したのは2,730万円。値下げ幅は、私が引き継いでからはたった50万円です。

前の会社の1年半で消えた400万円は、家の価値が下がったからではありません。「売れないのは高いからだ」という理屈で、値段だけを動かされていたのです。

これは、業界の一番くやしいところです。売り方の問題を、値段の問題にすり替える。売主さんは、それに気づけません。


5. 正直に、デメリットもお話しします


ここまで読むと「じゃあ会社を変えれば全部うまくいくのか」と思われるかもしれません。そう単純ではありません。

  • 専任媒介は通常3か月契約。途中で切ると広告費などを請求されることがまれにある(契約書を必ず確認)
  • 頻繁に会社を変えると、他社の担当者に「あちこち回されている物件だな」と見られることがある
  • 会社を変えたら必ず売れる、わけではない。本当に相場から外れた家、需要のないエリアの家は、どこに頼んでも苦戦する

だからこそ、変える前に見極めが要ります。売れないのは「売り方」なのか「値段」なのか「立地」なのか。ここを正直に言ってくれる不動産屋を選ぶことです。


まとめ


もう一度、結論を申し上げます。家が売れないとき、まず疑うべきは家ではなく、売り方です。

内見が極端に少ない。写真が暗い、少ない。紹介文が短い。値下げの話ばかりされる。他社からの問い合わせがあった気配がない。こういうときは、囲い込みや「やる気のない預かり」を疑ってください。

Bさんの家は、立地も値段も、1年半前と何ひとつ変わっていません。変わったのは、売り方と、任せた相手だけです。それで2か月で売れました。


最後に、これだけは申し上げたい


もし今、あなたの家が長く売れずに困っているなら、一度、冷静に売り方を見直してください。写真を見てください。紹介文を読んでください。「他社さんから問い合わせは来ていますか」と、今の担当者に聞いてみてください。答えに詰まるようなら、何かがおかしいのです。

私は、売るために書いているのではありません。あなたが損をしないために書いています。判断に迷ったら、遠慮なくご相談ください。今の状況を見て、正直に、変えるべきか、待つべきか、お伝えします。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

セカンドオピニオンの重要性
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/27 08:27

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、不動産で損をしないための一番簡単で、一番効く方法についてお話しします。それが「セカンドオピニオン」、つまり一社だけで決めずに、複数の会社に相談することです。

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病院では当たり前になりましたね。大きな手術の前に、別の先生の意見も聞く。命に関わることだから、皆さん慎重になる。

ところが、何千万円という財産を動かす不動産では、たった一社の言うことだけを信じて、ハンコを押してしまう人が本当に多いんです。ここで一歩立ち止まってください。


結論から申し上げます


不動産で大きく損をする人は、ほぼ全員「一社しか話を聞いていない」人です。

逆に、得をする人、失敗しない人は、面倒でも二社、三社の意見を並べて比べています。

これは断言できます。50年やってきて、一社だけで即決した人ほど、あとで「こんなはずじゃなかった」と言って戻ってこられます。今日は、なぜセカンドオピニオンがそこまで効くのか、実例と業界の裏側を交えてお話しします。


1. なぜ一社だけだと危ないのか


理由は単純です。不動産会社は、あなたの味方であると同時に、契約を取りたい商売人でもあるからです。

一社しか話を聞かないということは、その会社の言う「相場」「売り方」「値段」が正しいかどうかを、比べる物差しが何もないということです。

担当者が「この値段が妥当です」と言えば、あなたはそれを信じるしかない。高いのか安いのか、早いのか遅いのか、判断のしようがないんです。

相手が一枚の紙を出して「これが相場です」と言えば、素人の方はそれを疑えません。でも別の会社に持っていけば、まったく違う数字が返ってくることは、いくらでもあります。


2. 査定額は、会社によってこれだけ変わる


はっきり申し上げます。査定額は、会社によって数百万円、ときには1,000万円以上変わります。

去年、鈴蘭台のAさん(68歳)が相談に来られました。自宅を売ろうと、まず近所の一社だけに査定を頼んだ。そこで出た数字が「2,400万円」。担当者が感じの良い人だったので、そのまま任せようとしていました。

私はこう申し上げました。「Aさん、悪いことは言いません。あと二社だけ、査定を取ってみてください」。

Aさんが別の二社に頼んだところ、一社は「2,850万円」、うちは「2,780万円」とお伝えしました。最初の一社だけで決めていたら、Aさんは400万円以上を取りこぼすところだったんです。

逆のパターンもあります。一社だけが飛び抜けて高い数字を出してくる。これはこれで危ない。次の章でお話しします。


3. 「一番高い査定」に飛びついてはいけない


ここが大事なところです。セカンドオピニオンを取ると、たいてい会社ごとに数字がバラつきます。そこで一番高い数字に飛びつく人がいる。これも失敗のもとです。

複数の会社に査定を出させると、中には契約欲しさに、わざと高い数字をぶつけてくる会社があります。これを業界では「高預かり」と言います。高い数字で気を引いて、まず専任媒介の契約を取る。売れなければ、あとからじわじわ値下げを迫る。

三田のBさんご夫婦は、三社に査定を出して、一番高い「3,500万円」の会社を選びました。ところが半年たっても内覧すら入らない。担当者は「そろそろ値段を見直しましょう」と言い出し、最終的に「2,950万円」まで下げてやっと売れました。最初から他の二社が言っていた値段です。

大事なのは、高い数字ではなく「その値段で本当に売れる根拠」を説明できるかどうかです。セカンドオピニオンは、数字を比べるためだけでなく、根拠のない高値を見抜くためにも効くんです。


4. 「セカンドオピニオンを嫌がる会社」は要注意


これは覚えておいてください。あなたが「他の会社にも相談してみます」と言ったときの反応で、その会社の本性が分かります。

信頼できる会社は、こう言います。「ぜひそうしてください。比べていただいた方が、うちの説明にも納得いただけますから」。

逆に、あわてて引き止める会社があります。「他はやめた方がいい」「今日決めてもらえれば特別に手数料を下げます」「その会社は評判が悪い」。

岡場のCさん(72歳)は、一社の担当者に「今日ハンコを押してくれたら、この値段は今日だけです」と急かされました。おかしいと思って、うちにも相談に来られた。話を聞くと、その会社は専任媒介を取ったあとで、他社への情報公開を止める「囲い込み」をする業者でした。危ないところで防げたんです。

他社と比べられて困るのは、比べられると都合が悪いことがあるからです。堂々としている会社ほど、セカンドオピニオンを歓迎します。


5. 相続や税金こそ、二人目の専門家に聞く


不動産だけの話ではありません。相続や税金がからむときは、なおさら複数の専門家に聞いてください。

北区のDさんは、相続した実家を売るとき、知り合いの税理士一人だけに相談しました。その先生は不動産にはあまり詳しくなく、「空き家を売ったときの3,000万円特別控除」が使える物件だったのに、要件を満たす前に解体してしまい、控除が受けられなくなった。数百万円の税金を、余計に払うことになりました。

不動産屋、税理士、司法書士。それぞれ得意分野が違います。一人の「たぶん大丈夫でしょう」を信じて動く前に、もう一人に確かめる。それだけで防げる損が、山ほどあります。


6. デメリットも正直に申し上げます


ここまで良いことばかり言ってきましたが、セカンドオピニオンにも面倒な面はあります。正直に書きます。

まず、手間と時間がかかります。会社ごとに査定を頼めば、その都度、家の中を見せたり、書類を用意したりしないといけない。何度も同じ説明をするのは、正直しんどいです。

次に、数字がバラついて、かえって迷うことがあります。三社が三様のことを言うと、どれを信じていいか分からなくなる。素人の方ほど、混乱してしまいます。

それでも私は、セカンドオピニオンを勧めます。迷うことは悪いことではありません。迷わずに一社で即決することの方が、何倍も危ないからです。迷ったら、その理由を一社ずつにぶつけて、納得いくまで説明させればいい。


まとめ


今日お伝えしたことを、もう一度繰り返します。

不動産で損をする人は、一社しか話を聞いていません。得をする人は、面倒でも二社、三社を並べて比べます。査定額は会社によって数百万円変わります。ただし一番高い数字に飛びついてはいけません。そして、セカンドオピニオンを嫌がる会社は、比べられると困る理由があるということです。

一社の「大丈夫です」を信じる前に、もう一社の意見を聞いてください。たったそれだけで、防げる損が山ほどあります。


最後に、これだけは申し上げたい


「もう他の会社に査定を頼んでしまったんですが、それでも相談していいですか」。よく、そう言って来られる方がいます。もちろんです。むしろ大歓迎です。

私は、あなたがうちで売ってくれなくても構いません。うちの意見が二社目、三社目として、あなたの判断の役に立てば、それでいいと思っています。

比べてもらって困ることは、うちには何もありません。他社で出た査定書を持って、世間話のつもりで聞きに来てください。50年やってきた私の目で、正直なところをお伝えします。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

売却までにやったこと全部公開します
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/25 07:11

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、いつもと少し趣を変えてお話しします。「家を売る」と一口に言いますが、私が実際に一軒の売却で最初から最後まで何をやっているのか、その中身を全部お見せしたことは、実はあまりありません。

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チラシを作って、内覧をして、契約をして、はい終わり。そう思っている方が多いのですが、現場はまったく違います。

今日お話しするのは、神戸市北区にお住まいだったBさんご夫婦(ご主人72歳・奥様69歳)の実家を売ったときの、私の作業の全記録です。査定の電話をいただいてから、鍵をお渡しして引き渡すまで、私が何をやったか。順番に、包み隠さず公開します。

長くなりますが、これを読んでおくと「今、自分の担当者が何をやっているのか」「何をやっていないのか」が分かるようになります。これは、あなたの財産を守るうえで、とても大事なことです。


結論から申し上げます


家がきちんと売れるかどうかは、売り出す前の段取りで、もう八割が決まっています。

査定、掃除、書類集め、価格の決め方、写真、売り出しのタイミング。この地味な準備をどれだけ丁寧にやったかで、最後に手元に残るお金が「200万円」変わることも珍しくありません。派手な広告よりも、この地味な下ごしらえのほうが、はるかに効きます。

50年やってきて分かったことがあります。売却で得をする人は、売り出す前を大事にしています。損をする人は、売り出してからあわてています。


1. まず私がやったのは「現地に3回行くこと」


Bさんから最初の電話をいただいたのは、去年の春でした。「親の家を売りたいんですが、いくらになりますか」

このとき、電話口だけで「だいたい2,500万円くらいですね」と答える不動産屋がいます。はっきり申し上げます。それは、まともな査定ではありません。

私はまず、現地に行きました。それも1回ではなく、3回行っています。

  • 1回目は昼間。日当たり、道路の広さ、車の通り、隣家との距離を見る
  • 2回目は夕方。人通り、下校時間、駅までの人の流れ、街灯の位置を見る
  • 3回目は雨の日。水はけ、道路の水たまり、家に回った湿気を見る

雨のときにしか分からないことがあります。Bさんの家は、雨の日に裏の擁壁から少し水がしみていました。これを事前につかんでいたから、あとで買主さんに正直に説明でき、契約が最後まで揉めませんでした。

現地に何度も足を運ぶ。これは断言できます。ここを省く不動産屋には、大事な家を任せてはいけません。


2. 次にやったのは「掃除と片付けの段取り」


Bさんの実家は、お母様が亡くなってから2年、誰も住んでいませんでした。家具も仏壇も、押し入れの布団もそのまま。台所には食器が残り、庭は草が伸びていました。

この状態のまま写真を撮って売り出す不動産屋がいます。私はやりません。

人が住まなくなった家は、驚くほど早く傷みます。空気が動かないので湿気がこもり、畳にカビが出て、木が反ってきます。放っておくほど、家の値打ちは下がっていきます。

私はBさんに、こうお願いしました。「全部きれいにしなくていいです。玄関と、南の部屋と、水回りだけ、私と一緒に片付けましょう」

家財を全部業者に頼むと「30万円」の見積もりでした。ここで正直な話をします。まだ使える家具や仏壇の魂抜きだけを手配し、残りはBさんご夫婦と私で3日かけて片付けました。おかげで処分費は「12万円」で済みました。

家をきれいにするのは、高く見せるためではありません。買う人に「大事にされてきた家だ」と感じてもらうためです。人は、そういう家を選びます。


3. 書類集めは、売り出しより先にやる


ここは地味ですが、抜けると後で大変なことになる部分です。私がBさんの売却で集めた書類を、全部並べます。

  • 権利証(登記識別情報)
  • 固定資産税の納税通知書
  • 建物の図面と間取り図
  • 境界を示す測量図
  • 過去のリフォームの記録

このうち、Bさんの家は測量図が古く、隣との境界がはっきりしていませんでした。境界があいまいなまま売ると、あとで買主と隣の家がもめます。最悪、契約そのものが飛びます。

私はすぐに土地家屋調査士さんに連絡し、隣の家3軒に頭を下げて、境界の確認に立ち会ってもらいました。費用は「18万円」かかりましたが、これをやっておいたから、契約のときに買主さんが安心してハンコを押せました。

ここで業界の裏を申し上げます。境界があいまいなのを知っていながら、黙って売り出す不動産屋がいます。売った後に問題が出ても「それは売主と買主の話ですから」と逃げるためです。

書類は、売り出す前に全部そろえる。これをやらない不動産屋は、あなたのためではなく、自分が楽をするために動いています。


4. 価格の決め方を、全部見せます


さて、いよいよ値段です。Bさんの家は、近所の似た家が「2,700万円」で売りに出ていました。だからBさんは「うちも2,700万円で」とおっしゃいました。

私は、こう申し上げました。「そのお隣は、半年売れずに残っています。同じ値段をつけたら、うちも同じように売れ残ります」

ここが大事なところです。チラシに出ている値段は「売りたい値段」であって、「売れる値段」ではありません。売れずに残っている家の値段を参考にしてはいけません。

私が見たのは、この半年で実際に「売れた」家の値段です。北区で似た広さ、似た築年数の家が、いくらで成約したか。全部調べると、現実に売れているのは「2,450万円」から「2,550万円」の間でした。

私はBさんに「2,580万円で売り出して、2,480万円あたりで着地する作戦でいきましょう」とお話ししました。

ここで業界の裏をもう一つ。契約が欲しいために、わざと高い値段で「売れますよ」と言って預かる不動産屋がいます。これを「高預かり」と言います。高く預かって、売れないと何度も値下げさせ、結局は相場より安く売らせる。よくある手口です。

最初から現実的な値段をつけたBさんの家は、売り出して3週間で「2,480万円」の買主が見つかりました。ほぼ狙いどおりでした。


5. 写真と売り出しのタイミングは、私が全部やる


価格が決まったら、次は見せ方です。写真は業者任せにせず、私が晴れた日の午前中に行って、南の部屋に光が一番きれいに差す時間を狙って撮りました。暗い写真の家は、それだけで問い合わせが半分に減ります。これは本当です。

そして、売り出すタイミング。Bさんの家は、私はあえて2月の終わりに売り出しました。3月から4月にかけて、転勤や入学で家を探す人が一番多いからです。買う人が多い時期に売り出せば、それだけ競争が起きて、値段が下がりにくくなります。

真夏や年末に売り出すと、見に来る人が減ります。同じ家でも、売る時期を間違えるだけで「100万円」損することがあります。タイミングを計るのも、不動産屋の仕事です。


6. 正直に申し上げる、デメリットの話


ここまで、私がやったことを並べてきました。でも、正直に申し上げます。こうやって手間をかけて丁寧に売ると、時間がかかります。Bさんの売却は、最初の電話から引き渡しまで、およそ5か月かかりました。

「すぐ現金がほしい」という方には、この売り方は向きません。そういう方は買取という手もありますが、買取だと相場より「2割から3割」安くなります。Bさんの家なら、500万円以上安くなる計算です。

それから、掃除も書類集めも、売主であるBさんご夫婦にも動いていただきました。全部を不動産屋に丸投げして楽をしたい、という方には、少ししんどい売り方かもしれません。

ただ、私はいつもこう申し上げます。「面倒なことを、売り出す前にやるか、売った後に泣くか。どちらかです」手間を惜しんで後で泣く人を、私は50年で何人も見てきました。


まとめ


今日は、Bさんの実家を売るまでに私がやったことを、全部お見せしました。もう一度、順番だけ並べます。

  • 現地に3回行く
  • 掃除と片付けの段取りをする
  • 書類を売り出す前にそろえる
  • 売れた値段を調べて現実的な価格をつける
  • 写真とタイミングにこだわる
  • デメリットも正直に話す

派手なことは、一つもありません。でも、この地味な段取りをやったからこそ、Bさんの家は3週間で売れて、狙いどおりの値段で着地しました。

結論をもう一度申し上げます。売却は、売り出す前に八割が決まります。


最後に、これだけは申し上げたい


もしあなたが今、家の売却を考えているなら、担当者にこう聞いてみてください。「現地に何回来てくれますか」「書類は売り出す前にそろえてくれますか」「この半年で実際に売れた値段を見せてください」

これにきちんと答えられない担当者なら、任せないほうがいいです。私は、売るためではなく、あなたに損をさせないために動きます。査定の電話一本でも、遠慮なくおかけください。現地を見て、正直な話をさせていただきます。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

査定価格が1000万円違った理由
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/24 05:50

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、先日うちの店に来られたご夫婦が持ってこられた「3枚の査定書」のお話をします。同じ家の査定なのに、一番高い会社と一番安い会社で、その差はちょうど1000万円ありました。

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家が変わったわけではありません。査定した日も、ほとんど同じです。

それなのに、なぜ1000万円も違うのか。

今日はこの「1000万円の中身」を、50年この仕事をやってきた人間として、できる限り分解してお見せします。査定書の数字がどうやって作られているのか、その裏側まで全部お話しします。

結論から申し上げます


査定価格の差は、「家の価値の差」ではありません。「会社の都合の差」です。

はっきり申し上げます。査定書に書かれた数字は、「この値段で売れます」という予想ではありません。

「この数字を見せれば、あなたがうちと契約してくれるだろう」という、営業の数字です。

だから、あなたの家の価値が変わらなくても、会社の狙いが違えば、数字は1000万円変わります。

高く書く会社には高く書く理由があり、安く書く会社には安く書く理由がある。

その理由は、どちらも「あなたのため」ではないことが多いのです。


1. 1000万円の差の中身を分解してみます


50年やってきて分かったことがあります。査定額の差は、大きく分けると3つの部品でできています。

土地の値付けの差、建物の評価の差、そして会社の狙いの差です。

まず一つ目の「土地の値付けの差」。査定は基本的に、近所で実際に売れた家の値段(取引事例)と比べて出します。ところが、どの事例と比べるかは、担当者が選べるのです。

同じ町内でも、駅に近い区画の成約事例を引っ張れば高くなり、バス便の奥の区画を引っ張れば安くなる。これだけで300万円くらいは平気で動きます。

二つ目は「建物の評価の差」です。木造の家は、築20年を過ぎると建物をゼロ円で査定する会社が少なくありません。

一方で、屋根と外壁の塗り替え、水回りのリフォーム歴をきちんと見て、建物に値段を付ける会社もあります。築25年前後の家なら、ここで250万円は変わります。

そして三つ目が、一番大きい「会社の狙いの差」です。

契約が欲しくて上乗せする会社は、根拠なく300万円でも400万円でも積みます。逆に、最後は自社で安く買い取ろうと考えている会社は、最初から数字を低く抑えてきます。この「狙い」の部分だけで450万円くらいの差は、普通に生まれます。

300万円と250万円と450万円。足し合わせれば、1000万円の差というのは、何も珍しい話ではないのです。


2. 三田のBさんご夫婦、3枚の査定書


実際にあった話をします。

三田市にお住まいのBさんご夫婦(ご主人67歳、奥様64歳)が、住み替えのために自宅を売ろうとされました。築26年の木造2階建て、駅からバスで15分の住宅団地です。

ネットの一括査定サイトに申し込んだところ、すぐに何社からも電話が鳴り、そのうち3社に査定してもらったそうです。結果はこうでした。

  • A社は3,380万円
  • B社は2,880万円
  • C社は2,380万円

一番上と一番下で、ちょうど1000万円です。

Bさんご夫婦は、当然のようにA社を選びました。「うちの家を一番高く評価してくれた会社」に見えたからです。

専任媒介で預けて、最初の1か月は内覧が2件。その後はぱったり止まりました。

3か月目に営業マンから電話が来ます。「反響が弱いので、2,980万円に下げましょう」

5か月目にまた電話です。「思い切って2,680万円にしましょう。あるいは、当社の買取なら2,300万円で確実です」

気づかれたでしょうか。

最初に一番高い数字を見せた会社が、最後は一番安い数字を口にしているのです。C社の査定より、さらに80万円低い金額です。

Bさんご夫婦がうちの店に来られたのは、その直後でした。

私は現地を見て、過去10年分の団地内の成約事例を全部並べて、「2,750万円で出しましょう」と申し上げました。3か月後、2,700万円で成約しました。

最初から適正な値段で出ていれば、半年以上の遠回りも、値下がりの焦りも、要らなかったのです。


3. 一括査定サイトのカラクリ


ここで、業界の裏側を一つお話しします。Bさんご夫婦が使った「ネットの一括査定サイト」の仕組みです。

あのサイトは、無料に見えますが、タダではありません。

不動産会社側が、お客さん一人の連絡先に対して1万円前後の紹介料をサイトに払って、あなたの情報を「買って」いるのです。

1件の紹介に何社も相乗りしますから、会社側から見れば、競争相手が最初から5社も6社もいる状態です。その中で選ばれるには、どうするか。

一番手っ取り早いのは、一番高い数字を出すことです。

これは断言できます。一括査定の場で出てくる一番高い査定額は、「売れる値段」ではなく「勝つための値段」です。

業界ではこれを「高預かり」と呼びます。高く預かって、あとから値下げをお願いすればいい、という発想です。

逆に、最初から安い数字を出す会社にも狙いがあります。

安く預かって早く売れば手間がかからない。もっと言えば、売れ残ったところで自社で買い取り、リフォームして転売すれば、そちらの利益の方が大きい。C社の2,380万円という数字の裏には、そういう計算が透けて見えます。

高い査定にも、安い査定にも、それぞれの「商売の都合」が乗っている。これが、1000万円の差の正体です。


4. 正直に、デメリットも申し上げます


ここまで読むと、「では真ん中の査定を選べばいいのか」と思われるかもしれません。そう単純でもないのです。正直に申し上げます。

まず、適正価格の査定は、見た目が地味です。

隣に3,380万円の査定書を置かれたら、2,750万円の査定書は「うちの家を安く見ている」ように見えてしまう。正直な会社ほど、この場面で負けやすいのです。

次に、複数社に査定を頼むこと自体にも、しんどさがあります。

一括査定に出せば営業電話が何本も鳴りますし、訪問査定を3社受ければ、半日仕事が3回です。ご高齢の方には、これがかなりの負担になります。

そして、これが一番大事なことですが、適正価格で出しても、必ず売れるという保証はありません

不動産には相場の波があり、同じ団地で売り物が重なれば、それだけで買い手は分散します。私の付けた2,750万円も、最後は2,700万円での成約でした。50万円の値引き交渉は入ったのです。

査定は万能ではありません。ただ、根拠のある査定なら、値下げするときも「なぜ、いくら下げるのか」を納得して決められます。

根拠のない3,380万円から始まる値下げは、ただ削られていくだけです。


まとめ


もう一度、結論を申し上げます。

査定価格の差は、家の価値の差ではなく、会社の都合の差です。

1000万円の差の中身は、事例の選び方で300万円、建物の見方で250万円、そして会社の狙いで450万円。一番大きいのは、いつも「会社の狙い」の部分です。

査定書を受け取ったら、金額の大小ではなく、こう聞いてみてください。

「この金額の根拠になった成約事例を、全部見せてください」

高預かりの会社は、ここで口ごもります。根拠のある会社は、喜んで資料を広げます。

たったこれだけの質問で、1000万円の遠回りを防げるのです。


最後に、これだけは申し上げたい


査定書が2枚、3枚と手元にあって、どれを信じていいか分からない。そういう方は、その査定書ごと、うちの店に持ってきてください。

どの数字にどんな狙いが乗っているか、50年この仕事をやってきた人間として、一枚ずつ種明かしをいたします。

もちろん、その上でよその会社に頼まれても構いません。損をしない判断さえしていただければ、私はそれで十分です。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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