「あきちゃんの不動産お役立ちコラム」の記事一覧(138件)
不動産暦50年のあきちゃんが神戸市北区の皆様に不動産に関するお役立ち情報をお届けします。
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/27 07:28
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、「売れない家」の話をします。半年たっても、一年たっても売れない。そういう家には、必ず理由があります。そして、その理由の多くは、直せるのです。
「うちの家、なかなか売れなくてね」。私は、こういう相談を、本当に数えきれないほど受けてきました。皆さん、ご自分の家が悪いのか、ご縁がないのか、時期が悪いのか、と悩んでおられます。
ここで一歩、立ち止まってください。家が売れないのは、運や縁のせいではありません。必ず、はっきりした理由があります。そして、その理由を一つずつ見ていけば、たいていは手を打てるのです。
結論から申し上げます
売れない家には、必ず理由があります。そして、その理由のほとんどは、「直せる理由」です。
50年やってきて分かったことがあります。売れない家を「縁がない」で片付ける人は、いつまでも売れません。売れない家を「どこに理由があるのか」と一つずつ見ていく人は、必ず売れます。
今日は、家が売れない理由を、四つに分けて整理します。そのうえで、一年売れなかった家を、二か月で売った話をします。
1. 値段が、相場とずれている(これが一番多い)
はっきり申し上げます。家が売れない理由の、いちばん多いものは、値段です。
どれだけいい家でも、相場より高ければ、買う人は離れていきます。今は、買う人もネットでいくらでも他の家と見比べます。同じような家が2,500万円で出ているのに、お宅が2,900万円なら、誰もお宅を選びません。
しかも、値段が高いまま売れずに時間がたつと、もっと厄介なことになります。「この家、ずっと売れ残っているな」「何か問題があるんじゃないか」と、買う人に勘ぐられる。これが、後で詳しくお話しする「塩漬け」です。値段は、売れない理由のなかで、一番大きく、そして一番直しやすいものです。
2. 「見せ方」が、悪い
次に多いのが、見せ方です。
今、家を探す人は、まずネットの写真を見ます。その写真が、暗くて、三枚しかなくて、生活感だらけだったら、それだけで「次の家」に行かれてしまいます。実際の家がよくても、写真が悪ければ、内見にすらつながりません。
内見のときも同じです。玄関に物が溢れている。部屋が散らかっている。ペットや煙草のにおいがする。これだけで、買う人の気持ちは冷めます。家そのものは変えられなくても、見せ方は、今日からでも直せます。
3. 「売り方」が、間に合っていない
これは、任せている会社の問題です。
あなたの家が、ちゃんとネットに、たくさんの写真とともに載っているか。いろいろな会社が、買いたいお客さんに紹介できる状態になっているか。ここが、できていない家が、驚くほど多いのです。
特に気をつけてほしいのが、後でお話しする「囲い込み」です。会社が自分の儲けのために、お宅の家をわざと他社に紹介しない。そうなると、買いたい人がいても、その人にお宅の家は届きません。売り方がふさがれていたら、どんないい家でも売れないのです。
4. 物件そのものに、弱点がある
最後は、家や土地そのものの弱点です。
前の道が狭い。再建築がしにくい。日当たりが悪い。過去に何かあった。こういう弱点は、確かにあります。そして、これは「直せない理由」のこともあります。
けれど、これも諦めることはありません。弱点がある家は、その弱点を正直に出したうえで、値段で調整すれば、必ず買う人はいます。怖いのは、弱点を隠して相場の値段で売ろうとすること。それをやると、いつまでも売れず、後でトラブルにもなります。
一年売れなかった家を、二か月で売った話
ここで、忘れられない一件をお話しします。
神戸市北区で、Cさん(当時65歳)が、別の不動産会社に頼んで、一戸建てを売りに出しておられました。ところが、一年たっても、まったく売れない。困り果てて、私のところに相談に来られました。
私が、その売り出しの中身を見て、すぐに理由が分かりました。理由は、一つではありませんでした。まず、値段が相場より400万円ほど高い。次に、ネットに載っている写真が、暗いものが三枚だけ。しかも、よく調べると、ほとんど自社の中だけで抱えていて、他社にきちんと紹介されていない。そのうえ、内見に行くと、玄関も廊下も、物で溢れていました。
つまり、売れない理由が、四つとも揃っていたのです。これでは、売れるはずがありません。
そこで、Cさんと一緒に、一つずつ直しました。値段を、現実的な相場に合わせて見直す。晴れた日に、明るく、部屋ごとの写真をきちんと撮り直す。どこの会社からでも紹介できるよう、広く情報を出す。そして、玄関と各部屋を片付けて、すっきりさせる。
すると、どうなったか。あれだけ一年動かなかった家に、売り出し直してから、次々と内見が入りました。そして、わずか二か月で、買い手が見つかったのです。Cさんは、こうおっしゃいました。「あきちゃん、家が悪かったんじゃなかったんだね。売り方が、全部間違っていただけだったんだ」と。
業界の裏側を、正直に明かします
ここで、聞きたくないかもしれない話をします。
なぜ、Cさんの家は、一年も塩漬けにされていたのか。一つの大きな原因が、「囲い込み」です。会社が、自分のところだけで売主と買主の両方を見つけて、手数料を二倍もらいたいために、お宅の家を、わざと他社に紹介しない。だから、外には情報が届かず、家は売れずに眠り続ける。
そして、もう一つ。専任で家を預かった会社は、毎週のように動かなくても、契約期間のあいだは、その家を「在庫」として持っていられます。熱心に動かず、ただ抱えているだけの会社も、残念ながらあるのです。値段が高いまま、写真も直さず、ずるずると時間だけが過ぎていく。Cさんが、まさにそうでした。
はっきり申し上げます。あなたの家が売れないのは、家のせいではなく、任せた会社が動いていないせいかもしれません。これは断言できます。一度、ご自分の家がネットでどう出ているか、見てみてください。
正直に言うと、こういう面もあります
ここまで「理由は直せる」と申し上げてきました。けれど、正直に、別の面も書いておきます。
すべての理由が、直せるわけではありません。土地の形がいびつ、前の道が極端に狭い、立地そのものが不便。こういう「動かせない弱点」は、確かにあります。その場合は、見せ方や売り方を直したうえで、最後は値段で勝負するしかありません。
それから、見せ方を直すのにも、多少の手間やお金はかかります。片付けや、簡単な手入れに、いくらか必要なこともある。けれど、それで何百万円も高く、何か月も早く売れるなら、安いものです。「直さずに塩漬けにする」ことの方が、よほど高くつくのです。
まとめます
もう一度、結論を繰り返します。
売れない家には、必ず理由があります。そして、その理由のほとんどは、直せます。
だから、家が売れないと感じたら、この四つを順番に見直してください。
- 値段が、今の相場とずれていないか
- 写真や内見の「見せ方」が、悪くなっていないか
- 広く情報が出ているか、囲い込まれていないか
- 弱点を隠していないか、正直に出して値段で調整しているか
この四つを見直すだけで、Cさんのように、一年動かなかった家が、二か月で売れることもあるのです。
最後に、これだけは申し上げたい
私は、神戸市北区・西宮北部・三田で、50年、たくさんの「売れない家」を見てきました。そして、その多くを、理由を一つずつ直して、売ってきました。
家が売れないと、人は不安になります。「うちの家には、何か悪いところがあるんじゃないか」と。けれど、その前に、見てほしいのです。値段は適正か。写真は明るいか。ちゃんと広く出ているか。家のせいにする前に、できることが、まだたくさんあります。
「うちの家、なかなか売れなくて」と悩んでおられるなら、どうか一度、私にお声がけください。今の売り出しのどこに理由があるのか、50年の現場の目で、正直にお話しします。家を責める前に、まずは理由を、一緒に探しましょう。
お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも構いません。あなたの家が、Cさんの家のように、ちゃんと売れるようになるなら、私にとって、これほど嬉しいことはありません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/25 05:49
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が50年この仕事をやってきた中で、忘れられない「一番トラブルになった契約」の話をします。胸の痛む話ですが、これを知っておくだけで、あなたは同じ目に遭わずに済みます。
家や土地の売買というのは、契約書にサインをして、お金が動いて、鍵を渡せば終わり。多くの方は、そう思っておられます。けれど、本当の勝負は、契約が終わった「後」に始まることがあるのです。
ここで一歩、立ち止まってください。私が50年で見てきた大きなトラブルは、そのほとんどが、契約のときには誰も気づいていませんでした。買主も、売主も、仲介の担当者でさえも。だからこそ、後になって、取り返しのつかない揉め事になるのです。
結論から申し上げます
不動産のトラブルの9割は、契約書にサインする「前」に、もう決まっています。
これは断言できます。後で揉めるかどうかは、運でも、相手が悪い人だったかどうかでもありません。サインする前に、「知っていることを正直に出したか」、そして「知らないことを、知らないと書面に残したか」。たったそれだけで決まります。
50年やってきて分かったことがあります。一番揉める契約は、悪人が起こすのではありません。「まあ、これくらいは言わなくていいだろう」という、ごく普通の、善良な人の小さな油断から起きるのです。
今日はまず、なぜ契約がトラブルになるのか、その理由を四つお話しします。そのうえで、私が50年で一番揉めた、今でも忘れられない契約の話をします。
1. 「言わなくていいだろう」が、一番危ない
これが、すべての始まりです。
家を売るとき、売主には「知っていることを、買主に告げる義務」があります。雨漏りしたことがある。シロアリが出たことがある。昔ここに何かが建っていた。床下に湿気がたまりやすい。こういう「都合の悪いこと」を、人はつい黙ります。「もう直したから」「昔のことだから」「関係ないだろう」と。
ところが、黙ったことは、たいてい後で全部出てきます。買主が住み始めて、雨漏りが再発する。床下を覗いてシロアリの跡を見つける。そのとき、「聞いていない」と言われたら、売主は契約不適合責任を問われます。知っていて黙っていた事実は、あとから必ず、あなたに返ってくるのです。
2. 「現況のまま」「免責で」という特約を、軽く考えてはいけない
契約のとき、業者はよく「現況有姿で、契約不適合責任は免責にしておきましょう」と言います。「これで売主さんは、後から責任を問われませんから安心です」と。
ここで安心してはいけません。はっきり申し上げます。免責特約は、万能の盾ではありません。売主が「知っていたのに告げなかった」事実については、たとえ免責特約があっても、責任は消えません。これは法律で決まっています。「免責にしたから何を黙っていてもいい」と思った瞬間に、あなたは一番危ない橋を渡っているのです。
3. 境界・面積・付帯設備を、曖昧なまま進めてはいけない
土地のどこからどこまでが自分のものか。隣の家の塀やブロックが、自分の敷地に少しはみ出していないか。引き渡すエアコンや給湯器は、ちゃんと動くのか。
こういう、地味で面倒なことを「だいたいで」進めると、引き渡しの後に必ず揉めます。「境界の杭がない」「測ったら面積が違う」「給湯器が動かない」。一つひとつは小さく見えても、買主にとっては「話が違う」になる。契約前に、はっきりさせておくことです。
4. 急かされて、重要事項説明書を読まずにサインしてはいけない
契約の当日、分厚い書類を、担当者が早口で読み上げます。一時間も二時間も座らされて、頭はもうぼんやり。最後に「ここと、ここにサインを」と言われ、よく分からないまま判を押す。
これが、一番危ない瞬間です。重要事項説明書の、特に「容認事項」という欄には、本当に大事なことが小さな字で書いてあることがあります。そこを読み飛ばしてサインすれば、後で「聞いていない」は通りません。あなたは「読んで、納得して、サインした」ことになるのです。
私が50年で、一番揉めた契約の話
ここから、忘れられない一件をお話しします。
神戸市北区のある住宅地で、Cさん(当時72歳)が、親から相続した古家付きの土地を売られました。Cさんご自身は別の場所にお住まいで、その土地には何十年も足を運んでいませんでした。古い家を解体して更地にし、3,180万円で売る契約。買主は、そこに新築を建てて住むつもりの、若いご夫婦でした。
このとき、Cさんの頭の片隅に、一つだけ引っかかることがありました。「子どもの頃、あの敷地の隅に、納屋だか作業小屋だか、小さい建物が建っていた気がする」。でも、もう何十年も前の、あいまいな記憶です。Cさんは「まあ、関係ないだろう」と思い、誰にも言いませんでした。仲介の担当者も、特に何も聞いてきませんでした。
契約は、何ごともなく終わりました。Cさんは古家を解体し、きれいな更地にして、買主ご夫婦に引き渡しました。Cさんは、ほっと胸をなで下ろされたそうです。
ところが、半年後でした。買主ご夫婦が、新築の基礎工事のために地面を掘ったところ、地中から、古いコンクリートの基礎、割れたブロック、そして使われなくなった浄化槽まで、大量に出てきたのです。Cさんが「あった気がする」と思っていた、あの納屋の名残でした。
この「地中埋設物」を撤去しなければ、家は建てられません。撤去にかかる見積もりは、280万円。買主ご夫婦は、当然、激怒されました。「こんなものがあるとは、一言も聞いていない。撤去費用を出してほしい」と。
Cさんは青ざめました。「私だって、こんなものが埋まっているとは知らなかった」。仲介の担当者は、こう言いました。「契約書に、現況有姿で契約不適合責任は免責、と書いてあります。だから、Cさんが払う必要はありません」と。
ところが、話はそれで終わりませんでした。買主側にも知恵のある人がついていて、こう主張してきたのです。「地中に埋まっていて、外から見えないものは、現況有姿の免責ではカバーされない。しかも、売主は昔そこに建物があったと知っていたのではないか」と。あの「納屋の記憶」が、ここで重くのしかかってきました。
そこから先は、泥沼でした。買主側に弁護士が立ち、Cさんも慌てて弁護士を頼みました。話し合いは半年以上もつれ、Cさんは、その間ずっと眠れない夜を過ごされました。72歳の方が、です。最終的に、撤去費用の半分ほど、140万円をCさんが負担することで、ようやく和解しました。
和解が済んだあと、Cさんは私のところに、別の土地のことで相談に来られました。そのときに、この話をぽつりとされたのです。そして、こうおっしゃいました。「あきちゃん、私はね、あの納屋のことを、契約の前に一言、言っておけばよかったんだ。たった一言だよ。それを『まあ関係ないだろう』で黙ったばっかりに、140万円と、半年の心労だ」と。
私は、Cさんを責める気にはなれませんでした。Cさんは、嘘をついたわけでも、騙そうとしたわけでもない。ただ、「言わなくていいだろう」と思っただけです。けれど、その小さな油断が、一番大きなトラブルを生む。これが、50年見てきた現場の、いちばん怖いところなのです。
業界の裏側を、正直に明かします
ここで、聞きたくないかもしれない話をします。
なぜ、こういうトラブルの芽を、仲介業者が事前に摘んでおかないのか。理由は単純です。仲介業者は、一日でも早く契約をまとめたいからです。「昔そこに何かありませんでしたか」「地中を調べておきましょうか」とやり始めると、契約が遅れ、費用がかかり、何より、売主が嫌がります。だから、聞かない。調べない。
そして、「免責にしておけば安心ですよ」と、軽く言うのです。売主に安心してもらえれば、契約のハンコは早く押される。担当者にとっては、その方が都合がいい。免責特約が後で通用するかどうかなんて、契約のときには、誰も真剣には考えていないのです。
もう一つ、これも申し上げておきます。同じ業者が売主と買主の両方から手数料をもらう「両手取引」のとき、業者は買主にも強く言えません。売主の不利になる情報を、わざわざ買主に深く調べさせて、契約をこじらせたくない。だから、双方にとって都合の悪いことは、そっと触れずに進む。その「触れずに進んだこと」が、引き渡しの後で、爆発するのです。
正直に言うと、こういう面もあります
ここまで「知っていることは全部言え」と申し上げてきました。けれど、正直に、デメリットも書いておきます。
全部を正直に開示すると、たいてい、売値は下がります。「昔、雨漏りしたことがあります」「地中に何か埋まっているかもしれません」と書けば、買主は当然、警戒します。値引きを求められることもあるでしょう。場合によっては、買主が逃げて、売れにくくなることもあります。だから、人は黙りたくなる。その気持ちは、私にもよく分かります。
それでも、私はこう申し上げます。目先の数十万円を惜しんで黙れば、後から数百万円と、裁判と、眠れない夜が来る。Cさんが、まさにそうでした。正直に言って多少安く売る方が、黙って高く売って後で訴えられるより、よほど安いのです。どちらが本当の得か。これは断言できます。
まとめます
もう一度、結論を繰り返します。
不動産のトラブルの9割は、契約書にサインする「前」に決まっています。
だから、契約の前に、この四つだけは必ず守ってください。
- 知っていることは、都合が悪くても、全部正直に出す
- 知らないことは、「知らない」と、はっきり書面に残す
- 「免責特約があるから安心」と、絶対に油断しない
- 重要事項説明書は、容認事項まで、急かされても読み込む
この四つを守るだけで、あなたが契約で大きなトラブルに巻き込まれる確率は、ぐっと下がります。Cさんのように、たった一言を黙ったせいで、何百万円も失うことは、避けられるのです。
最後に、これだけは申し上げたい
私は、神戸市北区・西宮北部・三田で、家や土地を売る方を、50年見てきました。その中で、契約の後に泣いた人を、何人も見てきました。みなさん、悪い人ではありません。ただ、「言わなくていいだろう」「業者に任せておけば大丈夫だろう」と、ほんの少し油断しただけなのです。
家や土地の売買は、人生で何度もあることではありません。だからこそ、分からないことだらけで当たり前です。「これは言った方がいいのか」「この特約で本当に大丈夫なのか」。そう迷ったときは、契約書にサインをする前に、どうか一度、私にお声がけください。
私は、あなたを急かしません。契約を無理に勧めることもしません。あなたが知っていることを一緒に整理して、契約の前に何をはっきりさせておくべきか、50年の現場の目で、正直にお話しします。サインの後では遅いのです。サインの前なら、まだ間に合います。
お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも構いません。あなたが、Cさんのような思いをせずに済むなら、私にとって、これほど嬉しいことはありません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/24 11:17
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、「とりあえず査定」の危険性についてお話しします。軽い気持ちで査定を頼んだだけのつもりが、思わぬ落とし穴にはまる話です。
家や土地を、いつか売ろうかと考え始めると、多くの人がまず同じことをします。「とりあえず、いくらになるか査定だけしてもらおう」。スマートフォンで「不動産 査定 無料」と打ち込んで、一括査定サイトに住所と名前を入れる。たった3分の、軽い気持ちです。
ここで一歩、立ち止まってください。その「とりあえず」の3分が、あなたの売却を、業者のペースに乗っ取られる入口になることがあります。50年この仕事をやってきて、私は「軽い気持ちの査定」から、大きく損をした人を何人も見てきました。
結論から申し上げます
査定とは、「あなたが情報をもらう行為」ではありません。「業者に、あなたという見込み客の情報を差し出す行為」です。
これは断言できます。無防備に、軽い気持ちで、あちこちに査定を頼むと、あなたは「相場を知る」前に、「営業される側」になります。
50年やってきて分かったことがあります。とりあえず査定で損をする人は、決まって「査定はタダだから」と思っています。けれど、タダより高いものはありません。タダにできるのには、タダにできる理由があるのです。
今日は、軽い気持ちの査定がなぜ危ないのか、その理由を四つ、正直に申し上げます。
1. 営業電話が、鳴り止まなくなる
これが、一番すぐにやってくる落とし穴です。
一括査定サイトの仕組みを、考えてみてください。あなたが一度住所と名前を入れると、その情報は、提携している不動産会社に「一斉に」送られます。5社、6社、多いと10社近く。つまり、あなたは「一回の入力」で、見ず知らずの会社全部に、自分の連絡先を配ったことになります。
どうなるか。翌日から、電話が鳴り止みません。朝も、昼休みも、夜も。「査定書ができました、一度お会いしたい」「今が売り時です」と、各社が先を争って連絡してきます。なぜそんなに必死なのか。早く会った会社が、契約を取れるからです。
「とりあえず数字だけ知りたかった」だけなのに、気づけば毎日、複数の営業マンの相手をする羽目になる。これが「軽い気持ちの査定」の、最初の代償です。
2. 一番高い査定を出す業者ほど、危ない
これは、本当に覚えておいてください。
複数社に査定を頼むと、必ず金額に差が出ます。そして人は、当然、一番高い数字を出した会社に気持ちが傾きます。「ここが3,400万円と言ってくれた。よし、ここに任せよう」と。
ところが、業界には「高預かり」という言葉があります。わざと高い査定額を出して、まず専任で物件を預かってしまう。そして契約してから、「やはり反響が弱いですね」と、じわじわ値下げさせていく手口です。
考えてみてください。査定額には、何の法的な拘束力もありません。いくら高い数字を書いても、業者は一円も損をしません。だからこそ、高い数字は「撒き餌」として使えるのです。一番高い査定は、一番正直な査定ではなく、一番あなたを釣りたい査定であることが、珍しくないのです。
3. 「とりあえず」のつもりが、断れなくなる
ここが、人の心の、いちばん弱いところを突かれる部分です。
査定を頼むと、向こうは必ず「では、一度お会いして詳しくご説明します」と訪問してきます。家に上がり、お茶を出し、一時間も二時間も熱心に話を聞いてもらえば、人は情が移ります。「ここまでしてもらって、断るのは申し訳ない」と。
不動産屋は、それをよく分かっています。だから、まず会う。会って、時間をかけて、資料を作って、何度も足を運ぶ。「これだけやってもらったから」という気持ちが膨らんだ頃に、「では、専任媒介で」と切り出してくるのです。
「とりあえず数字だけ」のはずが、いつの間にか、まだ売ると決めてもいないのに、契約書を前にしている。軽い気持ちで開けた扉は、思ったより閉めにくいのです。
4. 一度渡した個人情報は、取り戻せない
最後に、これも正直に申し上げておきます。
一度どこかに渡した、あなたの名前、住所、電話番号は、もう取り戻せません。「もう結構です」と一社に断っても、あなたの情報は、すでに何社もの手元に残っています。
中には、その情報が業者間で回ったり、名簿として扱われたりすることもあります。だから、半年経っても、一年経っても、「その後、売却はいかがですか」と電話がかかってくる。売る気がなくなっても、です。
「とりあえず」の3分で差し出した情報は、何年も、あなたを追いかけてくることがある。これが、軽い気持ちの査定の、いちばん長く尾を引く代償です。
業界の裏側を、少し明かします
聞きたくないかもしれませんが、はっきり申し上げます。
無料の一括査定サイトが、なぜタダで使えるのか。あれは、慈善事業ではありません。サイトの運営会社は、あなたという「反響」を、不動産会社に売って稼いでいるのです。あなたが住所を入れた瞬間、あなたは「商品」になります。不動産会社は、その情報を一件あたり数千円から、高いときは一万円以上で買っています。
お金を払って、あなたの連絡先を買った会社が、おとなしく数字だけ伝えて引き下がると思いますか。買った以上、何としても契約まで持っていこうとする。だから電話が鳴り止まず、訪問が続くのです。
そして、その競争の中で勝つために、各社は数字を盛りがちになります。正直に「2,900万円が妥当です」と言う会社より、「3,400万円でいけます」と言う会社の方が、お客様の心をつかむ。結果、正直な業者が負け、高い数字を出した業者が勝つ。これが、一括査定という仕組みの、いちばん根っこにある問題です。
実際にあった話を一つ
神戸市北区の鈴蘭台にお住まいの、Fさん(当時67歳)の話です。
Fさんは、お子さんが独立されて、ご夫婦には少し広くなった一戸建てを売って、駅近のマンションに住み替えようと考えておられました。まずは相場を知ろうと、ネットの一括査定サイトに、軽い気持ちで登録されたそうです。
翌日から、電話が鳴り止まなくなりました。一週間で30件を超え、奥様が「もう電話が怖い」と参ってしまわれた。その中で、一番高い数字を出した会社が「3,400万円で売れます」と言い、Fさんは「ここなら高く売ってくれる」と、専任媒介で預けられました。
ところが、二か月経っても、ほとんど内覧がありません。三か月目、担当者は「反響が弱いので、3,180万円に下げましょう」。五か月目、「2,980万円なら動きます」。結局、売り出しから七か月かかって、最終的に2,680万円で成約されました。
Fさんは、私のところへ別件で相談に来られたとき、この話をされました。私は、近隣の成約事例をお見せして、こう申し上げました。「Fさん、このお宅は、最初から2,900万円くらいで出していれば、おそらく三か月以内に、2,850万円前後で売れていましたよ」と。
Fさんは、しばらく黙ってから、こうおっしゃいました。「一番高い数字を出した会社が、結局、一番安く売ったんですね。あの3,400万円は、私を釣るための数字だったのか」と。高い査定に釣られて失った金額は、ざっと170万円。そして、半年以上の時間でした。
デメリットも、正直に書きます
ここまで「とりあえず査定は危ない」と申し上げてきました。けれど、誤解しないでいただきたいことがあります。
私は、「査定をするな」と言っているのではありません。むしろ逆です。相場を知らずに、勘や思い込みだけで値段を決めて売るのは、いちばん危ない。査定そのものは、絶対に必要です。
一括査定サイトも、頭から全部が悪いわけではありません。複数の数字を並べて見られるのは、便利な面もあります。最近は、名前や電話番号を出さずに、おおよその相場だけ分かる「匿名査定」のようなものもあります。要は、使い方なのです。
危ないのは、「査定」そのものではなく、「軽い気持ちで」「無防備に」「複数の会社に」「個人情報をばらまく」ことです。相場を知りたいだけなら、まずは匿名で調べる。きちんと話を聞きたいなら、信頼できそうな一社か二社に絞って頼む。これだけで、電話の嵐も、高預かりの罠も、ぐっと避けられます。
まとめます
もう一度、結論を繰り返します。
査定とは、「あなたが情報をもらう行為」ではなく、「業者に、あなたという見込み客の情報を差し出す行為」です。
軽い気持ちで、あちこちにばらまいてはいけません。これは断言できます。
査定を頼む前に、こう自分に問いかけてください。
- この入力で、私の連絡先は何社に渡るのか
- 一番高い数字に、つい気持ちが傾いていないか
- まだ売ると決めていないのに、断れない流れに乗っていないか
- 相場だけ知りたいなら、匿名で調べる方法はないか
この四つを思い出すだけで、あなたが「とりあえず査定」から損をする確率は、ぐっと下がります。
最後に、これだけは申し上げたい
私は、神戸市北区・西宮北部・三田で、家や土地を売る方を、50年見てきました。軽い気持ちの査定から営業の嵐に巻き込まれた人も、高い査定に釣られて結局安く売ってしまった人も、たくさん見てきました。
「まずは相場だけ知りたい。でも、しつこい営業には巻き込まれたくない」。そう思われるのは、当たり前のことです。
どうぞ、一括査定サイトに住所を打ち込む前に、一度、私にお声がけください。電話の嵐を起こすことも、無理に契約を勧めることも、いたしません。近隣でいくらで売れているか、あなたのお宅なら正直いくらか、まずはそれだけを、落ち着いてお話しします。
お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも、構いません。50年の現場が、あなたが「とりあえず」の3分で損をしないための、お手伝いになるなら、私にとってこれほど嬉しいことはありません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/23 07:54
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、不動産屋がしてくる「親切そうな提案」の見分け方についてお話しします。「お客様のために」という言葉の、本当の意味を読む話です。
家や土地を売ろうと不動産屋に相談すると、向こうはたいてい、とても親切です。「お客様のために」「あなたのことを思って」と、いろいろな提案をしてくれます。
ここで一歩、立ち止まってください。その提案は、本当にあなたのための提案でしょうか。それとも、不動産屋が儲かるための提案に、「親切」という上着を着せただけのものでしょうか。50年この仕事をやってきて、私はその両方を、嫌というほど見てきました。
結論から申し上げます
不動産屋の提案が本物かどうかは、「その提案で誰が一番得をするか」を考えれば、たいてい分かります。
これは断言できます。あなたが得をする提案と、不動産屋が得をする提案は、よく似た顔をしています。けれど、中身はまるで違います。
50年やってきて分かったことがあります。本当に親切な提案ほど、不動産屋にとっては面倒で、儲けが薄いものです。逆に、聞こえはいいのに不動産屋がやたらと勧めてくる提案は、たいてい不動産屋の側に得がある提案です。
今日は、特に「親切そうに見えて、実は業者の都合」という提案を、四つ、正直に申し上げます。
1. 「まず価格を下げて、早く売りましょう」
これが一番多い「親切そうな提案」です。
「相場よりちょっと安くして、早く買い手を見つけましょう。長く売れ残ると、印象が悪くなりますから」。一見、あなたのための助言に聞こえます。けれど、よく考えてください。
不動産屋の手数料は、成約価格の3%ほどです。仮に2,000万円の家が1,800万円で売れても、手数料の差は6万円ほどしか変わりません。けれど、安くすれば「早く」「確実に」売れます。不動産屋にとっては、6万円減っても、半年早く確実に手数料が入る方がありがたいのです。
つまり「早く売るために安くしましょう」は、あなたより不動産屋のための提案であることが多い。本当にあなたのことを思う業者なら、「もう少し高くても、こういう買い手なら付きます。一緒に待ちましょう」と言えるはずです。
値段を下げる提案が出てきたら、こう聞いてください。「なぜ、その値段なのですか。近隣の成約事例を見せてください」と。きちんと根拠を出せる業者かどうかで、本物かどうかが分かります。
2. 「うちが買い取りますよ。すぐ現金になります」
これも、困っている人にはありがたく聞こえる提案です。
「仲介だと売れるまで時間がかかります。うちが直接買い取れば、すぐに現金になりますよ」。確かに、急ぐ事情がある人には、ありがたい話です。
けれど、ここに大事なことが隠れています。買取の金額は、仲介で売れる相場の、だいたい7割前後です。残りの3割は、買い取った業者が、後で他の人に売って得る利益です。つまり「すぐ現金」と引き換えに、あなたは数百万円を手放していることになります。
買取そのものが悪いのではありません。本当に急ぐ事情があるなら、立派な選択肢です。問題は、急いでもいない人にまで「買取が一番ですよ」と勧めてくる場合です。それは、あなたのためではなく、安く仕入れて儲けたい業者のための提案です。
「買取」を勧められたら、必ず「仲介で売ったら、いくらで売れますか」と、両方の金額を聞いてください。差額を見て、それでも急ぐかどうかは、あなたが決めることです。
3. 「専任媒介にしてください。広告も全部、当社が出します」
これは、本当に注意してほしい提案です。
「うちに専任で任せていただければ、責任を持って、広告も内覧も全部やります」。熱心で、頼もしく聞こえます。実際、ちゃんとやってくれる業者も、たくさんいます。
けれど、一部の業者は、専任で預かった物件を、わざと他社に紹介しないことがあります。これを業界では「囲い込み」と言います。なぜそんなことをするのか。自分の会社で売主と買主の両方を見つければ、手数料を双方から取れる「両手取引」になり、儲けが二倍になるからです。
そのために、他社から「お客さんがいるので紹介してください」と問い合わせが来ても、「もう商談中です」と嘘をついて断る。あなたの家は、本当はもっと早く、もっと高く売れたかもしれないのに、業者の儲けのために、わざと買い手を絞られているのです。
専任を勧められたら、「他社からの問い合わせにも、ちゃんと対応してくれますか」「販売状況を定期的に書面で報告してくれますか」と確かめてください。胸を張って「もちろんです」と言える業者なら、信用していい。言葉を濁す業者は、危ない。
4. 「売る前に、リフォームしておきましょう」
最後に、これも親切そうで、裏のある提案です。
「このままだと古く見えます。少しリフォームすれば、ぐっと高く売れますよ。安くやってくれる業者を紹介します」。良かれと思って言ってくれているように聞こえます。
けれど、ここにも落とし穴があります。一つは、リフォーム業者を紹介すると、不動産屋に紹介料が入る場合があること。もう一つは、かけたリフォーム代が、そのまま売値に乗るとは限らないことです。
200万円かけて水回りを新しくしても、売値が200万円上がるかというと、まず上がりません。買う人は「自分の好みで直したい」と思っていることが多く、売主が良かれとやったリフォームが、かえって邪魔になることさえあります。
本当に親切な業者は、「ここは直さなくていいです。ハウスクリーニングと、傷んだ網戸の張り替えくらいで十分です」と言ってくれます。大きなリフォームを勧められたら、「それをやると、売値はいくら上がるのですか」と、必ず数字で聞いてください。
業界の裏側を、少し明かします
聞きたくないかもしれませんが、正直に申し上げます。
私たち不動産屋の提案には、いつも二つの軸があります。「お客様の得」と「自分の得」です。この二つが同じ方を向いているとき、提案は本物です。けれど、二つがぶつかったとき、どちらを優先するかで、その業者の本性が出ます。
そして、ここが大事なところですが、自分の得を優先する業者ほど、言葉は親切で、対応は丁寧です。なぜなら、親切に見せないと、損をさせられないからです。ぶっきらぼうな業者より、にこやかで親切な業者の方が、かえって油断できないこともあるのです。
見分けるコツは、たった一つ。「その提案で、不動産屋はいくら儲かりますか」と、心の中で問い続けることです。値下げ、買取、専任、リフォーム、どの提案も、必ず「相手の儲け」とセットで見る。これだけで、だまされる確率はぐっと下がります。
実際にあった話を一つ
神戸市北区にお住まいのEさん(当時72歳)の話です。
Eさんは、長く住んだ藤原台の一戸建てを、住み替えのために売ることにされました。ある大手の業者に相談したところ、担当者はとても感じが良く、親切でした。
その担当者は、こう提案しました。「築年数も経っていますから、まず水回りを中心に250万円ほどリフォームしましょう。そのうえで、相場より少し安い2,300万円で売り出せば、すぐに買い手が付きますよ。安心してお任せください、専任でお預かりします」と。
Eさんは、親切な担当者を信じかけました。けれど、なんとなく引っかかって、私のところにも相談に来られました。
私は、現地を見て、こう申し上げました。「Eさん、このお宅はリフォームは要りません。掃除と片付けだけで十分です。それから、近隣の成約事例を見ると、この家は2,650万円で売り出して、十分に勝負できます」と。
Eさんは驚かれました。「あちらは2,300万円と言っていたのに」と。私はこう説明しました。「リフォーム250万円は、紹介業者から紹介料が入る話かもしれません。値段を下げるのは、早く確実に売って手数料を取りたいからかもしれません。専任にしたがるのは、両手取引を狙っているからかもしれません」と。
結局、Eさんはリフォームをやめ、掃除と片付けだけして、2,650万円で売り出されました。少し時間はかかりましたが、4か月後に2,580万円で売れました。最初の提案どおり250万円かけて2,300万円で売っていたら、手取りはおよそ2,000万円。実際の手取りはおよそ2,500万円。その差は、ざっと500万円です。
Eさんは、こうおっしゃいました。「親切な人だったから、すっかり信じるところだった。提案の裏に、誰の得があるのか。それを考えるだけで、500万円違うんですね」と。
デメリットも、正直に書きます
ここまで「親切な提案を疑え」と申し上げてきました。けれど、これにも行き過ぎると困る面があります。
不動産屋の提案を、何もかも疑ってかかると、今度はあなた自身が動けなくなります。
世の中の不動産屋が、全員ずるいわけではありません。本当にお客様のために、損を承知で正直な助言をする業者も、たくさんいます。そういう人まで疑って、誰の言うことも信じられなくなると、いつまでも売れず、結局あなたが損をします。
それから、もう一つ正直に申し上げます。不動産屋が手数料で儲けること自体は、悪いことではありません。私たちも商売です。大事なのは、その儲けが「あなたに損をさせたうえでの儲け」なのか、「あなたに得をさせたうえでの、正当な儲け」なのか、の違いです。
疑うことが目的ではありません。提案の意図を読んで、「自分も得をし、相手も正当に儲ける」提案を選ぶ。これが、一番かしこい付き合い方です。
まとめます
もう一度、結論を繰り返します。
不動産屋の提案が本物かどうかは、「その提案で誰が一番得をするか」を考えれば、たいてい分かります。
親切そうな言葉ほど、裏を読む。これは断言できます。
提案を受けたら、こう自分に問いかけてください。
- この提案で、不動産屋はいくら儲かるのか
- 値段や金額に、きちんと根拠を見せてくれるか
- 「あなたのため」と「業者のため」が、同じ方を向いているか
- 都合の悪いことも、正直に話してくれる業者か
この四つを思い出すだけで、あなたが「親切」にだまされて損をする確率は、ぐっと下がります。
最後に、これだけは申し上げたい
私は、神戸市北区・西宮北部・三田で、家や土地を売る方を、50年見てきました。親切な言葉を信じて損をした人も、提案の裏を読んで得をした人も、両方見てきました。
「不動産屋からこんな提案をされたけれど、これは本当に自分のためなのだろうか」。そう迷ったとき、どうぞ、その場で判を押す前に、一度、私にお声がけください。
その提案で誰が得をするのか、値段の根拠は正しいのか、もっといい道はないのか。私は、私の儲けより先に、あなたの損得を一緒に考えます。値段を急かすことも、無理に契約を勧めることも、いたしません。
お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも、構いません。50年の現場が、あなたが「親切」という上着にだまされないための、お手伝いになるなら、私にとってこれほど嬉しいことはありません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/22 05:57
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、家や土地を売るときの「タイミング」の話をします。「売却で絶対にやってはいけないタイミング」というテーマです。
家を売るとき、多くの人が気にするのは「いくらで売れるか」です。もちろん、それも大事です。けれど50年やってきて、私がそれと同じくらい大事だと思っているのは、「いつ売るか」「どんな状態のときに売るか」です。同じ家でも、売るタイミングを間違えると、数百万円、平気で損をします。
ここで一歩、立ち止まってください。「売り時」と聞くと、多くの人は「景気がいいとき」「相場が高いとき」を思い浮かべます。けれど私が「やってはいけない」と申し上げるタイミングは、相場の話ではありません。あなた自身が「どんな気持ちでいるか」「どれだけ追い込まれているか」の話です。
結論から申し上げます
売却で絶対にやってはいけないのは、「気持ちが追い込まれているとき」「期限に追われているとき」「他人の都合に乗せられたとき」に売ることです。
これは断言できます。慌てて売った家は、必ずと言っていいほど、安く買い叩かれます。
50年やってきて分かったことがあります。家の値段を下げるのは、相場ではありません。「売主の焦り」です。買う側、間に入る業者は、売主が焦っているかどうかを、驚くほど正確に見抜きます。
今日は、私が見てきた「やってはいけないタイミング」を、五つ、正直に申し上げます。チラシにも、会社のホームページにも、絶対に書かれていない話です。
1. 相続や葬儀の直後、気が動転しているとき
これが一番多い、そして一番もったいない失敗です。
親が亡くなって、実家が空き家になる。葬儀、四十九日、相続の手続き、遺品の整理。気持ちも体も、くたくたです。そういうときに「とにかく早く片付けてしまいたい」という気持ちが、ふっと湧いてきます。
その気持ちのまま売ると、まず損をします。
なぜか。判断する力が、一番落ちているときだからです。悲しみと疲れの中で、「面倒なことを早く終わらせたい」という気持ちが先に立ち、最初に来た業者の言い値で、ぽんと売ってしまう。後から「もっと高く売れたのに」と気づいても、もう戻れません。
私はいつも申し上げます。「相続した家は、四十九日を過ぎて、気持ちが少し落ち着いてから動いてください」と。一か月や二か月で家の値段は大きく動きません。けれど、あなたの判断力は、その一か月で大きく戻ります。
2. ローンが払えなくなって、競売間際に追い込まれたとき
これも、見ていてつらいパターンです。
住宅ローンの返済が苦しくなる。最初は「なんとかなる」と思って、誰にも相談せず、ずるずると滞納が続く。気づいたときには、銀行から督促が来て、保証会社が動き出し、「競売」の二文字が目の前に迫っている。
ここまで追い込まれてから売ると、ほぼ確実に安くなります。
競売にかけられた家は、市場の相場より2割から3割安く落札されることが珍しくありません。そうなる前に、銀行と話し合って自分の意思で売る「任意売却」という方法もありますが、これも時間との勝負です。期限が迫っていればいるほど、足元を見られます。
はっきり申し上げます。ローンが苦しいと感じたら、滞納が始まる前に動いてください。一番やってはいけないのは、「恥ずかしいから」「なんとかなると思って」放置することです。早く動けば動くほど、選べる道は多く残っています。
3. 「今が売り時ですよ」の営業トークに乗せられたとき
これは、業界の人間として正直に申し上げます。
「今が売り時です」「今を逃すと値下がりします」「今お決めいただければ」。こういう言葉で背中を押されて、急いで売ってしまう。その「今」は、本当にあなたにとっての売り時でしょうか。
業者にも、業者の都合があります。決算期が近い。今月のノルマがある。早く契約をまとめたい。そういう事情が、「今が売り時です」という言葉の裏に隠れていることが、現実にあります。
私が見てきた中で、本当の売り時は、人によって違います。子供が独立したタイミング、住み替え先が決まったタイミング、税金の特例が使えるタイミング。それは、あなたの人生の事情で決まるものであって、業者の決算月で決まるものではありません。
「今が売り時です」と急かされたら、一度、深呼吸してください。そして「なぜ、今なのですか」と聞いてみてください。きちんと答えられない業者なら、その「今」は、あなたのための今ではありません。
4. 離婚や親族トラブルで「とにかく早く手放したい」と思ったとき
これも、感情が判断を狂わせるタイミングです。
離婚で家を処分する。兄弟で相続争いになって、もう関わりたくない。そういうとき、人は「とにかく早く、きれいさっぱり手放したい」と思います。お金よりも、その関係から早く抜け出したい、という気持ちが先に立ちます。
その気持ちは、よく分かります。けれど、それを業者に見抜かれた瞬間、値段は下がります。
「ご事情がおありなんですね、それなら早くまとめましょう」。一見、親切な言葉です。けれど、急いでいる売主は、買い叩く絶好の相手です。「期限がある」「揉めている」「早く手放したい」、こういう事情が相手に伝わるほど、強気の値段交渉ができなくなります。
感情で売ると、必ず後悔します。揉めているときこそ、間に冷静な第三者を入れて、相場をきちんと確かめてから動いてください。
5. 税金の特例の期限を、知らないまま動いてしまうとき
最後に、これは知らないと本当に大きく損をする話です。
不動産を売って利益が出ると、譲渡所得税という税金がかかります。ところが、この税金には、知っているか知らないかで何百万円も変わる「特例」と「期限」があります。
たとえば、相続した空き家を売る場合。一定の条件を満たせば、利益から3,000万円を差し引ける特別控除があります。けれど、これには期限があります。「相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売らないと、使えません。これを知らずに4年放置して、控除を取り逃した方を、私は何人も見てきました。
自分が住んでいた家を売る場合にも、3,000万円の特別控除があります。
それから、所有していた期間によって税率が大きく変わります。売った年の1月1日の時点で、所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡」で税率はおよそ20%。5年以下だと「短期譲渡」でおよそ39%です。つまり、あと数か月待って「5年超」になってから売れば、税金が半分近くになる、ということが起こり得ます。
これを知らずに、5年になる少し手前で慌てて売ってしまう。これも、やってはいけないタイミングです。
ただし、税金の話は一人ひとり事情が違いますし、制度も変わります。実際に売る前には、必ず税務署か税理士に確認してください。「売る前のひと手間」が、何百万円も守ります。
業界の裏側を、少し明かします
ここからは、聞きたくないかもしれない話です。
私たち不動産業者は、売主と話して数分で、「この人は急いでいるか、急いでいないか」を見抜きます。言葉の端々、表情、相談に来た時間帯、口に出してしまった事情。そういうものから、「この人は早く売りたがっている」と分かると、正直に申し上げて、強気の査定は出しにくくなります。
買取業者は、もっとはっきりしています。「相続で困っている」「離婚で急いでいる」「ローンが厳しい」、こういう事情を聞き出すための質問を、最初にさりげなくしてきます。事情が深いほど、買取価格は下がります。これは、意地悪でそうしているのではなく、「急いでいる人は安くても売る」ということを、商売として知っているからです。
だからこそ、売主が一番強いのは、「焦っていないとき」「期限がないとき」です。この立場で交渉に臨めるかどうかで、最終的な手取りは何百万円も変わります。
実際にあった話を一つ
神戸市北区にお住まいだったDさん(当時68歳)の話です。
Dさんは、藤原台のご実家を相続されました。お母様が長く一人で住んでおられた、築40年ほどの一戸建てです。お母様が亡くなって、葬儀やら手続きやらで疲れ切っていたDさんは、四十九日が済んだ頃、「もう、早く売って楽になりたい」と思われました。
ちょうどそのとき、ポストに「空き家、高価買取します」というチラシが入っていました。Dさんは、そこに電話をしました。来た業者は「相続のお家ですか、それは大変でしたね。すぐに買い取れますよ」と、とても親切でした。提示された金額は1,750万円。Dさんは「これで肩の荷が下りる」と、ほっとして、その場で話を進めようとされました。
幸い、契約の前に、ご近所の方から「一度、地元の不動産屋にも見てもらったら」と勧められて、私のところに相談に来られました。
私が現地を見て、近隣の成約事例を調べたところ、その家と土地は、普通に売り出せば2,400万円から2,500万円で売れる見込みでした。買取業者の提示額は、相場のおよそ7割だったのです。
私はDさんにこう申し上げました。「Dさん、今すぐ現金が必要で、どうしても急ぐ事情があるなら、買取も一つの道です。でも、もし数か月待てるなら、普通に売り出しましょう。600万円以上、変わるかもしれません」と。
Dさんは、少し考えて、急ぐ事情はないことに気づかれました。結局、仲介で売り出して、3か月後に2,420万円で売れました。最初の買取価格より、670万円多い手取りです。
後でDさんは、こうおっしゃいました。「あのとき疲れていて、早く終わらせたい一心だった。一本の電話を踏みとどまって、本当に良かった」と。一か月か二か月、心を落ち着けただけで、670万円。これが「タイミング」の重みです。
デメリットも、正直に書きます
ここまで「焦って売るな」「追い込まれて売るな」と申し上げてきました。けれど、「では、いつまでも待てばいいのか」というと、それも違います。
家や土地は、持っているだけでお金がかかります。
- 固定資産税が毎年かかる
- 空き家のままだと、傷みが早く進む
- 庭木の手入れ、雨漏りの修繕、近所への気遣いが続く
- あまりに管理が悪いと「特定空き家」に指定され、固定資産税が跳ね上がることもある
つまり、「焦って売る」のも損ですが、「だらだら放置する」のも、また損なのです。空き家を10年放置している間に、家が傷み、相場が下がり、結局二束三文になった、という例も、私は何度も見てきました。
正しいのは、「焦らず、でも放置せず」です。気持ちが落ち着いたら、期限や税金を確かめて、計画的に動く。これが一番、損のない売り方です。
それと、もう一つ正直に申し上げます。私のような仲介業者にとって、「すぐ売りたい」「いくらでもいいから手放したい」というお客様は、実は、手間のかからない楽な仕事です。黙って買取業者につなげば、それで終わります。それでも今日こうしてお話ししているのは、「焦り」につけ込まれて何百万円も損をされる方を、50年で数え切れないほど見てきたからです。
まとめます
もう一度、結論を繰り返します。
売却で絶対にやってはいけないのは、「気持ちが追い込まれているとき」「期限に追われているとき」「他人の都合に乗せられたとき」に売ることです。
家の値段を下げるのは、相場ではなく、売主の焦りです。これは断言できます。
売る前に、こう自分に問いかけてください。
- 私は今、冷静に判断できる気持ちでいるか
- 何かに追い立てられて、焦っていないか
- 税金の特例や期限を、確かめたか
- 「今が売り時」という言葉を、誰の都合で言われているか
この四つを思い出すだけで、あなたの手取りは、大きく変わります。
最後に、これだけは申し上げたい
私は、神戸市北区・西宮北部・三田で、家や土地を売る方を、50年見てきました。焦って安く手放して泣いた人も、心を落ち着けて待って得をした人も、両方見てきました。
相続した実家をどうしようか迷っている方、ローンが少し苦しくなってきた方、離婚や事情で家を処分しなければならない方、「今が売り時」と言われて迷っている方、どうぞ、慌てて契約書に判を押す前に、一度、私にお声がけください。
今が本当に売り時なのか、もう少し待った方がいいのか、税金の特例は使えるのか。値段を急かすことはいたしません。まず、あなたの事情と気持ちをうかがいます。
お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも、構いません。50年の現場が、あなたが損をしないための、ひと呼吸のお手伝いになるなら、私にとってこれほど嬉しいことはありません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/21 07:16
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、家を買うときに誰もが気にする「駅からの距離」の話をします。「駅近だから安心、本当ですか」というテーマです。
「駅から徒歩7分」と書いてあれば、人は安心します。「駅徒歩15分」と書いてあれば、ちょっと考える。これは、家を探したことがある人なら誰でもやる判断です。
けれど50年、神戸市北区・西宮北部・三田の物件を見てきて、私ははっきり申し上げます。「駅近だから安心」は、半分本当で、半分嘘です。
ここで一歩、立ち止まってください。なぜ半分嘘なのか。それは、「駅徒歩◯分」という数字の中に、書かれていない条件が、いくつも隠れているからです。
結論から申し上げます
家の価値は、駅からの距離だけでは決まりません。
これは断言できます。同じ「駅徒歩10分」の家でも、価値が500万円違うことが普通にあります。場合によっては1,000万円違います。
50年やってきて分かったことがあります。駅近かどうかより、もっと大事な要素が五つある、ということです。
今日は、その五つを正直に申し上げます。チラシや広告では絶対に書かれない話です。
1. その駅は、これから10年後も今と同じ駅でいられるか
まず、これが一番大きな話です。
「駅近」と聞くと、皆さんは「駅さえあれば一生安心」と思います。けれど、駅は変わります。
神戸市北区の沿線、神戸電鉄を見てください。ピーク時の乗降客数と比べて、今はどこの駅も大きく減っています。20年前ににぎわっていた駅前の商店街が、今はシャッター通りになっている場所もあります。
私が見てきた中で、はっきり言える法則があります。乗降客数が減っている駅の周辺は、家の値段も静かに下がっていきます。
ですから、家を買うときに見るべきは「今の駅」ではなく、「10年後の駅」です。
具体的には、こういう点を見てください。
- その駅から都心(三宮や大阪)まで何分で行けるか、所要時間が短くなる傾向か長くなる傾向か
- その駅周辺で大規模な再開発、新しいマンション計画があるか
- その駅の沿線に大学、大病院、企業の本社など、人を呼び込む施設があるか
- その駅の市バス、神鉄バスの便数が増えているか減っているか
「徒歩何分」より、こちらの方がはるかに大事です。
2. 駅から家までの「道」の中身
これも、見落としやすい大事な点です。
「徒歩10分」と書いてあれば、皆さんは「歩いて10分なんだな」と思います。けれど、その10分が、どんな10分かはチラシに書かれていません。
50年見てきた目から言わせてもらうと、同じ「徒歩10分」でも、こんなに違います。
- 平坦な道を10分歩く家
- 急な上り坂を10分歩く家
- 交通量の多い国道沿いを10分歩く家
- 夜になると街灯が少なく、人通りも消える道を10分歩く家
- 途中に踏切があって、待たされると実質15分かかる家
神戸市北区は、特に坂が問題になります。北神急行の谷上駅、神鉄の岡場駅、田尾寺駅、ウッディタウン中央駅、いずれも徒歩圏に高低差のある住宅地があります。
「岡場駅徒歩12分」の家を実際に夏に歩いてみると、汗だくになる坂道だった、ということが本当にあります。逆に「徒歩15分」でも、フラワータウンの平坦な遊歩道なら、楽に歩けます。
はっきり申し上げます。チラシの「徒歩◯分」を信じる前に、必ずその道を、雨の日か夏の暑い日に、自分の足で歩いてみてください。50代までは大丈夫でも、60代、70代になると、その坂が「資産価値の重し」になります。
3. 駅前の商業の中身が、家の価値を決めます
これは、買う人の多くが見落とします。
「駅前にスーパーがある」「駅前にコンビニがある」と書いてあると、便利そうに見えます。けれど、駅前に何があるか、というよりも、駅前が「育っているか、枯れているか」が大事です。
私が見てきた中で、価値が落ちる駅前には共通点があります。
- 老舗の地元スーパーが撤退して、別のチェーンに替わるサイクルが早い
- 駅前のテナントが入れ替わるたびに、規模が小さくなる(銀行→コンビニ→個人店、のような流れ)
- 駅前のロータリーに人がいない時間帯が増えている
- 駅前のドラッグストアが、最近撤退した
逆に、価値が保たれる駅前は、こうです。
- スーパーが2軒以上、長く競合している
- 病院、歯科医院、銀行、郵便局が徒歩圏に揃っている
- 保育園、こども園、小学校が近くにある
- 夕方、駅前に人が増える時間帯がある
神戸市北区で言えば、藤原台中町の駅前(神鉄岡場駅前のエコール・リラ周辺)は、長くスーパー、銀行、医療施設が揃って機能している、価値の落ちにくい駅前です。一方で、人口流出が止まらないニュータウンの中の駅前は、「駅は近いけれど駅前に何もない」状態に向かいつつあります。
家を買うときは、駅前を一度、平日の夕方17時から19時に歩いてみてください。本当に生きている駅前か、よく分かります。
4. その家が「車社会の駅近」か「徒歩社会の駅近」か
ここからは、神戸市北区・西宮北部・三田で家を探す方には、特に大事な話です。
都心の駅近は「車を持たなくていい駅近」です。買い物も病院も、駅周辺で完結します。
ところが北区・三田の駅近は、ほとんどが「車を持ったまま使う駅近」です。通勤には電車を使うけれど、買い物は車、子供の送り迎えも車、休日のお出かけも車。
そうすると、家を選ぶときに見るべき条件が変わります。
- 駐車場が敷地内に2台分とれるか
- カーポートが設置できる広さか
- 家の前の道が、車をスムーズに出し入れできる幅か(4m未満は要注意)
- 近所のスーパー、コストコ、ホームセンターまで車で何分か
- 国道176号、阪神高速北神戸線への動線が良いか
「駅徒歩6分・駐車場1台」の家と、「駅徒歩12分・駐車場2台+来客スペース」の家を比べたとき、北区では後者の方が高く売れるケースがしばしばあります。
これは断言できます。地域に合った「駅近」を選ばないと、住み始めてから後悔します。
5. 駅近プレミアム価格を、あなたが本当に必要としているか
最後にもう一つ、お話しします。
不動産の世界では、駅近物件には「駅近プレミアム」と呼ばれる上乗せ価格がついています。同じ広さ、同じ築年数、同じ間取りでも、駅徒歩5分と徒歩15分では、500万円〜1,000万円の差が出ます。
ここで考えてほしいのは、その上乗せ分のプレミアムを、あなたの生活が本当に使うのか、ということです。
- 平日、駅を使うのは家族の中で誰ですか
- 週に何往復、その駅を使いますか
- 65歳、70歳になっても、その駅を歩いて使いますか
- 車中心の生活ではないですか
たとえば、ご主人だけが通勤で駅を使い、奥様は専業主婦、子供はもう独立、というご家庭で「徒歩5分」のために1,000万円上乗せして払うのは、もったいないことがあります。
逆に、共働きで、ご夫婦どちらも電車通勤、お子様が成長して塾や習い事で電車を使う、というご家庭なら、その1,000万円は十分に元が取れます。
50年やってきて分かったことがあります。「駅近だから損しない」のではなく、「自分の生活が駅近を必要としているなら、駅近は得をする」ということです。
業界の裏側を少し明かします
ここからは、聞きたくないかもしれない話です。
チラシに書かれている「駅徒歩◯分」は、不動産公正取引協議会のルールで「80m=1分」と決まっています。これは「直線距離」ではなく「道路上の距離」ですが、信号待ち、踏切待ち、坂道の登り、こういうものは一切考慮されていません。
つまり「徒歩10分」とは、健康な大人が、信号も踏切も坂もない理想の道を、80mで1分のペースで歩いた時の時間です。現実には、その通りに着くことは、まずありません。
もう一つ、お話しします。業者は「徒歩◯分」が短い物件ほど、売りやすいことを知っています。だから、不動産情報サイトに掲載するときに、いちばん駅に近い敷地の角から測ります。実際に玄関ドアまで歩くと、もう1〜2分多くかかることが普通です。
「徒歩7分」と書かれた家を、現地で玄関から駅まで実測すると「9分」「10分」だった、ということは、私の50年で数え切れないほど見てきました。
それから、もう一つだけ。「駅近=高値で売れる」は本当ですが、これは「駅前に活気が残っている駅」に限った話です。乗降客が減って、駅前のテナントがどんどん減っている駅では、駅徒歩5分でも値段は落ちます。「駅近の高値」を期待して買った人が、いざ売ろうとしたら、思ったほど値がつかなかった、というケースが現実にあります。
実際にあった話を一つ
三田に住むCさんご夫婦(ご主人62歳・元会社員、奥様59歳)の話です。
ご夫婦は、定年後に「駅近のマンションに移って、車を手放したい」と考えておられました。神戸市北区から三田にかけて、いくつかの駅近マンションを見て回りました。
候補は二つに絞られました。
一つ目は、ある駅の「徒歩4分・3LDK・2,950万円」。築15年、駅前にスーパーもコンビニも揃っている、便利そうな立地です。
二つ目は、別の駅の「徒歩11分・3LDK・2,380万円」。築18年、駅前には小さなコンビニが1軒、駅自体は無人化が進んでいる小さな駅です。
普通に考えれば、徒歩4分の一つ目を選ぶでしょう。Cさんも最初はそう傾いていました。
ところが、私のところに相談に来られたとき、私はこうお聞きしました。「Cさん、その徒歩4分の駅、これから10年、20年、賑わいが続くと思いますか。徒歩11分の駅は、これからどうなると思いますか」と。
二つを並べて、駅前の商業の体力、乗降客数の推移、再開発の予定、周辺の人口動態を、一緒に見ました。すると、徒歩4分の駅の方が、実は乗降客が大きく減っており、駅前商業が縮小傾向にある、ということが見えてきました。一方、徒歩11分の駅は、駅は小さいけれど、徒歩圏に新しい大型病院ができる計画があり、人の流れが増えそうだ、ということも分かりました。
最終的にCさんは、徒歩4分のマンションを選ばれました。けれど「駅近だから」ではなく、「自分たちが10年後もこの駅を使い、徒歩4分が本当に必要だから」という理由で選ばれた。これが、大事なところです。
もし「駅近だから安心」とだけ考えて、私のところに来ずに即決していたら、20年後に売ろうとしたとき、思った値段がつかなかったかもしれません。
デメリットも正直に書きます
ここまで「駅近だけで決めるな」と申し上げてきましたが、「駅近は意味がない」と言っているわけではありません。
駅近には、はっきりとした強みがあります。
- 将来、家を売るときに買い手が見つかりやすい
- 高齢になって運転を辞めても、最低限の移動手段が残る
- 子供が中学、高校、大学と成長したときに、本人だけで電車を使える
- 災害時に、徒歩で職場や学校から帰れる安心感がある
これらは、軽い話ではありません。特に、これからの時代、70代以降に「車を運転しない生活」を考えるなら、駅近の価値はむしろ上がっていきます。
それと、もう一つ正直に申し上げます。私のような地元の小さな不動産屋にとって、「駅近物件」は売りやすい商品です。何も言わなくても売れます。だから本来は、駅近物件を黙って勧めたい立場です。
それでも今日こうしてお話ししているのは、「駅近だから」というだけで2,000万、3,000万のお金を動かして、5年後、10年後に後悔されるのを、何度も見てきたからです。
まとめます
もう一度、結論を繰り返します。
「駅近だから安心」は、半分本当で、半分嘘です。本当に大事なのは、駅からの距離そのものではなく、「その駅が10年後も活きているか」「駅までの道がどんな道か」「駅前が育っているか」「自分の生活が駅近を必要としているか」、この四つです。
50年やってきて分かったことがあります。家を買うときに「徒歩◯分」だけを見ると、必ずどこかで損をします。逆に、駅と道と街と自分の生活を一緒に見れば、判断は大きく狂いません。
家を選ぶ前に、こう自分に問いかけてください。
- 10年後、この駅は今と同じくらい使われているだろうか
- 雨の日、夏の暑い日に、この道を歩いて駅まで通えるだろうか
- 平日の夕方、この駅前に人はいるだろうか
- 私たちの生活は、本当に駅近を必要としているだろうか
この四つを思い出すだけで、家選びの精度はぐっと上がります。
最後に、これだけは申し上げたい
私は、神戸市北区・西宮北部・三田の駅と街を、50年見てきました。にぎわっていた駅前がシャッター通りになる現場も、寂れていた駅前が再開発で生き返る現場も、両方見てきました。
「駅徒歩◯分」だけで家を決めようとしている方、駅近マンションのチラシで心が動いている方、いつかは駅近に住み替えたいと考えている方、どうぞ気軽にお声がけください。
その駅が10年後どうなりそうか、その道があなたの脚で歩ける道か、その駅前が本当に生きているか、地元の50年の目から正直にお話しします。値段の話ではなく、まずあなたの生活と将来をうかがいます。
お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも、構いません。50年の現場が、あなたの判断のお手伝いになるなら、私にとってこれほど嬉しいことはありません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/20 07:01
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、新聞の折り込みや郵便受けに入ってくる、あの不動産チラシの話をします。「なぜチラシの価格は信用できないのか」というテーマです。
私のところに相談に来られる方の多くが、こうおっしゃいます。「先生、チラシでこんな値段の家がありましたよ」「うちの近くで2,000万円の戸建てが出てます」と。
私はそのチラシを受け取って、にこっと笑って、こう言います。「それ、今もう無いと思いますよ」と。
ここで一歩、立ち止まってください。なぜ、いつも私が「無いと思いますよ」と言えるのか。それは、チラシの仕組みを50年間、内側から見てきたからです。
結論から申し上げます
チラシに載っている価格は、「その家の本当の値段」ではありません。「あなたに電話をかけさせるための値段」です。
これは断言できます。チラシの本当の目的は、家を売ることではなく、問い合わせを取ることなのです。
50年やってきて分かったことがあります。この仕組みを知らずにチラシを見ると、まず損をします。逆に、この仕組みを知っていれば、チラシは「業者の本性を見抜く道具」に変わります。
今日は、チラシの値段がなぜ信じられないのか、その理由を四つにしぼって、正直にお話しします。
1. 釣り広告は、わざと安く見せています
まず、これが一番大きな話です。
業界の言葉で「釣り広告」「おとり広告」というものがあります。本当はもう売れている、あるいは最初から存在しない物件を、相場より安い値段で載せておくのです。
なぜそんなことをするのか。理由は単純です。電話をかけさせるためです。
「藤原台南町・3LDK・2,180万円」と書いてあれば、近所の人はびっくりします。「そんなに安いの」と。そして電話をします。
電話を取った担当者は、申し訳なさそうな声で、こう言うのです。「あ、すみません、その物件、つい先ほどお申し込みが入ってしまいまして」と。
そして、続けてこう言います。「ですが、その代わりと言ってはなんですが、もっと条件のいい物件がございまして」と。
これが、釣り広告の正体です。安い値段を撒き餌にして、別の物件にスライドさせる。本当に「2,180万円のマンション」を売る気はなかったのです。
今は宅建業法でおとり広告は禁止されていますが、現実にはなくなっていません。「広告を出したあとに売れたんですよ」と言われたら、こちらは確かめようがないからです。
2. もう売れた物件を、わざと載せ続けます
これも、よくある話です。
ある業者が、ある中古マンションを「2,480万円」で広告に出します。本当はもう契約済みです。なのに、3週間、4週間、ずっとチラシに載せ続ける。
なぜか。これも、問い合わせ集めのためです。
「2,480万円なら、私の予算でも届くかも」と思った人が電話をします。その瞬間、業者の勝ちです。
「申し訳ありません、それは決まってしまいました。ですが、お客様のご希望に近い物件、ほかにもありますよ。一度ご来店いただけませんか」となる。
来店してしまえば、もう向こうのペースです。担当者は、本当はもっと高い物件、あるいは利益率の高い物件を、あの手この手で勧めてきます。
「2,480万円のチラシ」は、あなたを店に呼び込むためだけに、印刷されていたわけです。
3. 「価格応相談」「未公開物件」のからくり
チラシを見ていると、こういう言葉が並んでいます。
- 価格応相談
- 価格は売主にお問い合わせください
- 未公開物件
- 会員限定情報
- 当社専属物件
きれいに聞こえる言葉ですが、これも50年見てきた目から言わせてもらうと、たいていは問い合わせを取るための工夫です。
「未公開物件」と書いてあると、人は「自分だけが教えてもらえる、お得な情報」と感じます。けれど、本当に未公開なら、そもそもチラシに載りません。ばらまかれた時点で、もう公開されているのです。
「価格応相談」も同じです。値段を伏せれば、興味を持った人は必ず聞きに来ます。電話番号を聞き出すための、いい仕掛けなのです。
はっきり申し上げます。値段を堂々と書けない物件は、何かしら裏があると思ってください。相場より高すぎるか、訳ありか、あるいは本当には存在しないか。
4. 表示価格と、実際に売れる価格はそもそも違います
これは買う側だけでなく、売る側にも関わる大事な話です。
不動産には、三つの値段があります。
- 査定価格(業者が出す予想)
- 売出価格(実際にチラシや広告に載る値段)
- 成約価格(最終的に売買された値段)
この三つは、たいてい同じになりません。
たとえば、相場2,500万円の家を、業者の査定では2,600万円と出ることがあります。売主に喜んでもらうためです。
それを、売出価格として2,800万円でチラシに載せる。広告を派手にするためです。
最後に、実際に売れる値段は2,400万円。これが成約価格です。
チラシに載っている「2,800万円」は、誰の値段でもない、ただの「広告用の値段」です。それを信じて「相場は2,800万円なんだ」と思い込むと、判断が完全に狂います。
業界の裏側を少し明かします
ここからは、聞きたくないかもしれない話です。けれど、知っておかないと損をしますから、はっきり書きます。
不動産屋にとって、いちばん大事な仕事は「物件を売ること」ではありません。「お客さんのリストを作ること」です。
なぜか。一度問い合わせて来た人は、その瞬間に「家を買いたい人」「家を売りたい人」のリストに入ります。あとは、半年でも一年でも、追いかければいい。
だから、チラシの値段は、本当はどうでもいいのです。電話さえもらえれば、値段の話は後でいくらでも調整できる。むしろ、最初に出した安い値段で売れてしまっては、業者としては困るのです。手数料が少ないからです。
もう一つ、お話しします。チラシを撒く費用は、誰が払っているか。たいていは売主です。「広告料」「販促費」という名前で、媒介契約の中で売主に負担を求める業者があります。
つまり、あなたの家を派手に広告するふりをして、その費用はあなたが払い、しかも問い合わせを集めるだけ集めて、別の物件に流す。こういうことが、現実に起きています。
実際にあった話を一つ
藤原台に住むBさんご夫婦(59歳・会社員のご主人と58歳の奥様)の話です。
ご夫婦は、定年後に山の手の戸建てを売って、駅前のマンションに住み替えたいと考えていました。
ある日、ポストに入っていたチラシに、こうありました。「藤原台中町・3LDK・2,280万円・駅徒歩7分」。
Bさんご夫婦は、すぐに電話されました。返事はこうでした。「申し訳ありません、それは昨日決まってしまいまして」と。続けて、「ご希望に近い物件がございます。一度ご来店いただけませんか」と言われた。
来店すると、出てきた物件は「2,980万円」「3,250万円」のものばかり。「あの2,280万円のような物件は、もう出てきません」と繰り返し言われた。
Bさんは、私のところに相談に来られて、こうおっしゃいました。「あの2,280万円の物件、本当にあったんでしょうか」と。
私は正直にお答えしました。「あったかもしれないし、最初から無かったかもしれない。けれどはっきりしているのは、その業者はあなたに最初の値段で家を売る気はなかった、ということです」と。
結局、Bさんは別ルートで2,450万円のマンションを見つけ、無事に住み替えを終えました。けれどあのとき、もしチラシの値段を信じて、急いで来店していたら、3,000万円の物件を「これしかない」と思って買わされていたかもしれません。
デメリットも正直に書きます
ここまで「チラシは信用できない」と申し上げてきましたが、チラシそのものが悪だとは申しません。
きちんと値段を出している良心的な業者もあります。地元の物件を本気で売ろうとして、丁寧なチラシを撒く業者もあります。
けれど、こちらが素人だと、見分けがつきません。だからこそ、「値段だけで動かない」という心構えが必要なのです。
それと、もう一つ正直に申し上げます。私たち地元の業者は、派手な全国チラシのような広告は撒けません。費用が違いすぎますから。だから、こういう情報発信や、口コミでつながっていくしか道がない。これは、私たち地元業者の弱みでもあります。
ですから、ぜひ覚えておいてください。チラシが派手で値段が魅力的なほど、その裏には誰かが払った広告費と、誰かを電話に出させたい狙いがある、ということを。
まとめます
もう一度、結論を繰り返します。
チラシの値段は、その家の値段ではありません。あなたに電話をかけさせるための値段です。
50年やってきて分かったことがあります。チラシを見て心が動いたときこそ、深呼吸が必要です。
電話をかける前に、こう自分に問いかけてください。
- この値段、本当に売る気のある値段だろうか
- 電話したあと、別の物件を勧められないだろうか
- この業者は、地元のことを本当に知っているだろうか
この三つを思い出すだけで、損をする確率はぐっと下がります。
最後に、これだけは申し上げたい
私は、派手なチラシは撒きません。撒けません。50年、神戸市北区・西宮北部・三田の地元で、相続や売却、住み替えのご相談に、一軒ずつ向き合ってきました。
チラシの値段で迷ったとき、業者の言い分が信じられないとき、契約の前にもう一度立ち止まりたいとき、どうぞ気軽にお声がけください。値段の話ではなく、まずあなたの状況をうかがいます。そのうえで、本当にその値段が妥当か、その業者が信用できるか、損のない方向を一緒に考えます。
お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも、構いません。50年の現場が、あなたの判断のお手伝いになるなら、私にとってこれほど嬉しいことはありません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/19 07:50
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、少し意地悪に聞こえるかもしれない話をします。「不動産屋が嫌がる質問トップ5」についてです。
私のところには、家を売ろうとしている方が、よく相談に来られます。その方々を見ていて、いつも思うことがあります。みなさん、不動産屋に「お任せ」をしすぎなのです。
不動産屋を選ぶとき、何を見ればいいのか分からない。だから、感じのいい担当者、大きな看板、それくらいで決めてしまう。
ここで一歩、立ち止まってください。不動産屋の良し悪しは、看板の大きさでも、愛想の良さでも分かりません。たった五つの質問をぶつけてみれば、はっきり分かります。
結論から申し上げます
いい不動産屋は、答えにくい質問ほど、正直に、はっきり答えます。よくない不動産屋は、その質問を嫌がり、はぐらかします。
これは断言できます。質問そのものより、その質問にどう答えるか。そこに、その業者の本性が出ます。
今日お教えする五つの質問は、どれも、業者にとっては痛いところを突かれる質問です。だからこそ、答え方を見れば、信用できる相手かどうかが分かるのです。
紙に書いて、持っていってください。そして、担当者の顔色を、よく見てください。
1. いつレインズに載せますか。登録した画面を見せてもらえますか
レインズというのは、不動産屋だけが見られる、全国の物件情報の仕組みです。
ここに載って初めて、よその不動産屋も「こんな家が売りに出た」と知ることができます。買い手を探す入口のようなものです。
専任媒介の契約を結んだら、業者は7日以内にレインズへ登録する義務があります。これは法律で決まっていることです。
ところが、わざと載せない業者、載せても問い合わせが来ないようにしておく業者がいます。なぜそんなことをするのか。それは、後でお話しします。
ですから、こう聞いてください。「いつレインズに載せますか。登録したら、その画面か、登録証明書を見せてください」と。
正直な業者は「もちろんです。登録したらすぐお見せします」と言います。
嫌がる業者は、「うちのお客さんで売りますから大丈夫です」「そういうことはこちらにお任せください」と、画面を見せることから逃げようとします。
2. 他社のお客さんも、ちゃんと取り次いでくれますか
家の買い手は、どこの不動産屋から来てもいいはずです。
あなたの家を預かった業者のお客さんでも、よその業者のお客さんでも、いい値段で買ってくれる人ならありがたい。それが当たり前です。
ところが、業者によっては、よその不動産屋から「お客さんが見たいと言っています」と連絡が来ても、「すみません、今ちょうど商談中でして」と嘘をついて、断ってしまうことがあります。
なぜそんなことをするのか。これも、裏側のところでお話しします。
「他社から来たお客さんも、分け隔てなく案内してくれますね」と、はっきり確認してください。
胸を張って「当たり前です」と言う業者は、信用できます。言葉を濁す業者は、あやしいと思ってください。
3. 査定価格を、近所の成約事例で説明してください
査定価格を出されたら、必ずこう聞いてください。
「この値段は、何を根拠にしていますか。この近所で、最近実際に売れた家を、三つか四つ挙げて説明してください」と。
きちんとした業者は、すぐに資料を出します。「○○町のこの家が、築何年で、いくらで売れました」と、具体的な事例で説明できます。
ところが、根拠を言えない業者がいます。「長年の経験と勘で」「うちのお客さんならこれくらいで」と、ふわっとした言葉でごまかす。
はっきり申し上げます。実際に売れた家の値段で説明できない査定価格は、信じてはいけません。
4. 専任にする得と、一般ではいけない理由を教えてください
媒介契約には、専任媒介と一般媒介があります。専任は一社だけに任せる契約、一般は何社にも頼める契約です。
業者は、たいてい専任を勧めてきます。一社で独占できるからです。
それ自体は悪いことではありません。専任には専任の良さもあります。けれど、業者が「専任のいいところ」しか言わないなら、用心してください。
ですから、こう聞いてください。「専任にすると、私にとって何が得ですか。逆に、一般媒介ではいけない理由は何ですか」と。
正直な業者は、専任のメリットも、デメリットも、両方話します。「専任のほうが私たちも力を入れやすいですが、その代わり、一社に任せきりになります。だから、こういう注意は必要です」と。
専任のいいことしか言わない業者は、あなたのためでなく、自分のために専任を取りたいだけかもしれません。
5. 売れなかったら、値下げ以外に何をしますか
最後の質問です。これは、いちばん業者の力量が出ます。
「もし売り出して三ヶ月たっても売れなかったら、次に何をしますか」と聞いてみてください。
力のない業者は、たいてい答えが一つしかありません。「値段を下げましょう」です。
ですが本当は、値下げの前に打てる手が、いくつもあります。
- 写真を撮り直す
- 売り出しの紹介文を書き直す
- 広告の出し方を変える
- 内覧のときの見せ方を直す
「値下げの前に、こういう手があります」と、いくつも答えられる業者は、本当に売る力があります。
「売れなければ下げるしかありません」としか言わない業者は、最初から値下げで売るつもりだと思ってください。
藤原台のAさんが、五つの質問を持っていった話
具体的な話をします。
神戸市北区の藤原台に、Aさんという男性がいらっしゃいました。当時68歳。お父様を亡くされて、長く住んでこられたご実家を相続されました。
築40年ほどの戸建てで、土地は45坪ほど。固定資産税は年に9万円ほどかかっていました。
Aさんは、私のところに「相続した家をどうしたらいいか」と相談に来られました。
私は、すぐに「うちで売ってください」とは申しませんでした。代わりに、この五つの質問を紙に書いて、お渡ししました。「まず、何社か回って、この五つを聞いてみてください」と。
Aさんは、まず、駅前で大きな看板を出している会社に行きました。
査定は2,780万円。担当者は感じのいい若い方でした。Aさんが五つの質問をすると、こうなりました。
「レインズの登録画面を見せてください」と言うと、「あ、それは登録したらお送りしますね」。けれど、後で契約の話になっても、その画面は出てきませんでした。
「2,780万円の根拠を、近所の事例で」と聞くと、「このあたりの相場と、うちの経験から、これくらいなら大丈夫です」。具体的な家の名前は、一つも出てきませんでした。
「売れなかったら次は」と聞くと、「そのときは、価格を見直していきましょう」。値下げ以外の話は、ありませんでした。
Aさんは、不安になって、私のところにもう一度来られました。「あきちゃん、あの会社、なんだか、はぐらかされている気がするんです」と。
私は、別の会社も回るようお勧めしました。Aさんは、もう二社、回りました。そのうちの一社は、まったく違いました。
レインズの話をすると、「契約したら三日以内に登録して、登録証明書をすぐお渡しします」。
査定額は2,650万円と、最初の会社より130万円安かったのですが、「この藤原台の、この通りで、築38年の家が去年いくらで売れて、もう一軒、築42年の家がいくらで売れて」と、実際の家の話で説明してくれました。
「売れなかったら」と聞くと、「まず写真と紹介文を直します。それでも動かなければ、内覧の時間帯を変えます。値下げは、その後の最後の手です」と。
Aさんは、その会社に頼みました。家は、2,650万円の売り出しから、ほぼその値段に近い2,600万円で、二ヶ月で売れました。
もし、最初の会社にそのまま頼んでいたら、どうなっていたか。2,780万円で売り出して、売れずに、ずるずると値下げをして、最後はもっと安く売っていたかもしれません。
Aさんは、こうおっしゃいました。「あきちゃん、あの五つの質問がなかったら、私は看板の大きさだけで決めていました」と。
なぜ、業者はこれらの質問を嫌がるのか
ここで、業界の裏側をお話しします。なぜ、この五つの質問を、業者は嫌がるのか。
理由は、一つの言葉に行き着きます。「両手」です。
不動産の仲介手数料は、家を売る人からも、家を買う人からも取れます。売主からと買主から、両方から手数料を取ることを、業界では「両手」と言います。
ここまで言えば、お分かりかもしれません。業者にとって、いちばん儲かるのは、自分が預かった家を、自分が見つけた買い手に売ることです。両方から手数料が取れますから。
ところが、レインズに正直に載せて、よその不動産屋のお客さんに売れてしまうと、買い手側の手数料は、よその業者に行きます。「片手」になってしまう。
だから、一部の業者は、こうします。レインズに載せない。載せても、よその業者から問い合わせが来たら「商談中です」と断る。自分のお客さんが見つかるまで、家を抱え込んでおく。これを「囲い込み」と言います。
囲い込みをされると、どうなるか。
本当はもっと早く、もっといい買い手が見つかったかもしれないのに、その業者のお客さんが現れるまで、家は売れずに置かれます。その間に「売れ残り」に見えてしまい、結局、値段を下げることになる。損をするのは、いつも売主です。
一つ目と二つ目の質問、レインズと他社の取り次ぎの質問。これは、この囲い込みを見抜くための質問なのです。だから、囲い込みをする業者は、嫌がります。
三つ目の、査定の根拠の質問。これは「高預かり」を見抜くためです。高い査定を出して、まず契約を取る。売れなければ後で下げればいい。そういう業者は、根拠を実際の事例で示すことができません。
四つ目の専任の質問、五つ目の値下げの質問も、同じです。業者が自分の都合で動いているのか、それとも売主のために動いているのか。それが、答え方に出てしまうのです。
正直に申し上げておきます
ここで、私の本音も申し上げておきます。
この五つの質問をすれば、必ず良い業者が見つかる。そんな単純な話ではありません。
まず、質問をすると、嫌な顔をされることがあります。「この客は疑り深い」と思われて、関係が少しぎくしゃくするかもしれません。それは、覚悟しておいてください。
それでも、私は質問したほうがいいと思います。何百万円もの話です。少しの気まずさより、ずっと大事なことです。
それから、もう一つ。質問にすらすら答えたからといって、その業者が完璧だとは限りません。口が上手いだけの人もいます。
逆に、説明が下手で、もたついてしまう正直な業者もいます。特に、年配の業者は、レインズの画面を見せるといった新しいやり方に慣れていないこともあります。答え方が下手でも、中身が誠実なら、それでいいのです。
ですから、答えの「うまさ」ではなく、「正直さ」を見てください。分からないことを「分かりません、調べてお答えします」と言える業者は、信用できます。
そして、質問しすぎて、何もかも疑ってかかるのも、よくありません。疑心暗鬼になると、本当に良い業者まで逃してしまいます。五つだけ、と決めて、あとは答え方を静かに見る。それくらいが、ちょうどいいのです。
まとめ
50年やってきて分かったことがあります。不動産屋の良し悪しは、看板の大きさでも、担当者の愛想でもありません。痛いところを突かれたときの、答え方に出ます。
もう一度、五つの質問を申し上げます。
- いつレインズに載せるか、登録画面を見せてもらえるか
- 他社のお客さんも、ちゃんと取り次いでくれるか
- 査定価格を、近所の実際の成約事例で説明できるか
- 専任にする得と、一般ではいけない理由を、両方説明できるか
- 売れなかったとき、値下げ以外の手を持っているか
この五つを嫌がらず、正直に答える業者を選んでください。それだけで、藤原台のAさんのように、何百万円もの損を避けられます。
最後に、これだけは申し上げたい
もし今、家を売ろうとしていて、どの不動産屋に頼めばいいか迷っているなら。
この五つの質問を、紙に書いて、持っていってください。そして、相手の顔色を、よく見てください。
私は「うちに頼んでください」とは申しません。ですが、もし、回ってみた業者の答えに、どうも腑に落ちないものがあったら。一度、私のところに、その話を持ってきてください。
その業者が言ったことが、まともな話なのか、それともあなたを丸め込もうとしているのか。50年この北区を見てきた私が、正直にお話しします。
質問をすることは、相手を疑うことではありません。あなたの家と、あなたのお金を、自分の手で守ることです。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/18 08:01
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が50年見てきた中で、何度も「ああ、もったいないことをされた」と思ってきた話、「相場より安く売ってしまう人」の共通点についてお話しします。
私はこれまで、たくさんの売却に立ち会ってきました。同じような家、同じような土地でも、上手に売る方もいれば、相場よりずっと安く手放してしまう方もいます。
不思議なのは、安く売ってしまう方が、決して欲のない方でも、おっとりした方でもないことです。しっかりした、賢い方でも、同じ落とし穴にはまります。
ここで一歩、立ち止まってください。今日の話は、値段の話ではありません。値段を決めるときに、人の心がどう動くか、という話です。
結論から申し上げます
相場より安く売ってしまう人は、知識が足りなかったのではありません。「心の動き」に負けてしまったのです。
不動産の売却というのは、人生でそう何度もあることではありません。慣れていない。だから、誰でも不安で、早く楽になりたくて、目の前の相手を信じたくなります。
業者は、その心の動きを、よく知っています。知っていて、上手に使います。
これは断言できます。安く売る人は、頭で負けたのではありません。心で負けたのです。
では、その「心の落とし穴」とは何か。50年見てきて、よくあるものが四つあります。
1. 最初に聞いた数字が、頭に貼りついて離れない
一番はじめに「○○万円で売れます」と言われた、その数字。これが、ずっと頭に残ります。
たとえば最初に2,680万円と言われると、その数字が「自分の家の値段」になってしまう。
そのあとで「2,480万円に下げましょう」と言われても、「最初より下がったけれど、それでもまだ高いほうだ」と感じてしまうのです。
本当は2,480万円でも安すぎるのかもしれない。けれど、最初の2,680万円と比べてしまうから、それが分からなくなる。
最初の数字が高ければ高いほど、人はその後の値下げを受け入れやすくなります。これは、業者がよく分かっていることです。
2. 「早く終わらせたい」気持ちが、値段より強くなる
家が売りに出てから、一ヶ月、二ヶ月。内覧があっても決まらない。この期間が、本当につらいのです。
家を片付けて、内覧のたびに気を遣って、「今度こそ」と期待しては、また落ち込む。
人は、このつらさが続くと、「もう、いくらでもいいから早く終わらせたい」という気持ちになります。
そして、その気持ちが、値段を守る気持ちより強くなったとき、値下げのハンコを押してしまうのです。
3. 業者に「悪い人」と思われたくない
何ヶ月も付き合った担当者から「下げましょう」と言われると、断りにくいものです。
「この人も一生懸命やってくれている」「断ったら、やる気をなくされるかもしれない」。
そう思って、本心では納得していないのに、うなずいてしまう。
はっきり申し上げます。これは、優しい方ほどはまる落とし穴です。
4. 比べる相手がいない
一社としか付き合っていないと、その業者の言うことが正しいかどうか、確かめようがありません。
「この値段が妥当です」と言われても、ほかの見方を知らないので、信じるしかない。
比べる相手がいないというのは、自分が今どこにいるのか分からないまま歩いているのと同じです。
西宮市山口町のCさんの話
具体的な話をします。
西宮市の山口町、北区のすぐ隣のあたりに、Cさんという女性がいらっしゃいました。当時68歳。
お母様を亡くされて、ご実家の戸建てを相続されました。築38年、土地は約55坪。駅からは少し歩きますが、静かな住宅地の、形のいい家でした。
最初に来た不動産会社の担当者は、感じのいい若い方で、こう言いました。「このお家なら、2,680万円で売り出せます。きれいにお住まいですし、すぐ決まりますよ」
Cさんは、嬉しかったそうです。「思っていたより高い」と。その場で媒介契約を結びました。
ところが、売り出して三週間。内覧は何組か来たけれど、決まらない。
担当者が言いました。「お客様の反応はいいんですが、あと一歩なんです。2,480万円にすれば、ぐっと動きます」
Cさんは少し迷いましたが、「2,680万円から見れば、まだ高いほうだ」と思って、承諾しました。
それから一ヶ月。まだ決まらない。Cさんは、内覧のたびの片付けに、もう疲れていました。
担当者が、また言いました。「Cさん、ここまで来たら、2,280万円で出しましょう。これなら確実です。長引くと、かえって買い手に足元を見られますから」
Cさんは、もう「早く終わらせたい」だけになっていました。承諾しました。
そして最後、買い手から「2,150万円なら買う」と言われ、担当者に「これを逃すと、また振り出しです」と言われて、Cさんは、その値段でハンコを押しました。
2,680万円で始まった話が、2,150万円で終わったのです。
後日、私のところにCさんが来られました。お隣の家を売りたいという親戚の相談で、たまたまです。
私はその山口町の家の場所を聞いて、正直に申し上げました。あの家、あの土地なら、急がず売れば2,450万円から2,500万円では十分売れた家でした。
Cさんは、300万円以上、安く手放していたのです。
Cさんは、こうおっしゃいました。「安く売ったとは、思っていませんでした。最初の2,680万円が高すぎただけで、最後の値段が本当の相場なんだと、思い込んでいました」
これが、最初の数字が頭に貼りつく、ということです。
なぜ最初の査定は「2,680万円」と高かったのか
ここで、業界の裏側をお話しします。
なぜ、最初の査定が「2,680万円」と高かったのか。
正直に申し上げます。あれは、Cさんと契約を結ぶための数字だった可能性が高いのです。
高い数字を出せば、売主は喜んで契約してくれます。契約さえ取ってしまえば、あとはゆっくり値段を下げていけばいい。
業者にとっては、2,150万円で売れても2,500万円で売れても、手数料の差はわずか十数万円です。ですが売主にとっては、その差は350万円です。
業者は「早く・確実に」決めたい。だから、高く釣って契約を取り、そのあと値下げに誘導していく。これは、決して珍しいやり方ではありません。
もう一つ、覚えておいてください。
「長引くと買い手に足元を見られますよ」という言葉。これは、半分は本当で、半分は売主を急がせるための言葉です。
確かに、売り出してから半年、一年と経つと、買い手は「売れ残り」と見て値切ってきます。
ですが、まだ二ヶ月、三ヶ月の段階で「長引くと損だ」と急かすのは、たいてい業者の都合です。本当の理由は、早く手数料にしたいからです。
正直に申し上げておきます
ここで、私の本音も申し上げておきます。
「では、値下げには絶対に応じるな、ということか」と思われたかもしれません。そう単純な話ではありません。
値下げが正しいときも、あります。
最初の値段の付け方が、本当に少し高すぎた。そういうときは、早めに適正な値段に直したほうが、かえって早く、いい値段で売れます。
売り出してから時間が経つほど、家は「売れ残り」に見えてしまう。これは本当のことです。
そして、「とにかく高く、粘って売る」のが正しいわけでもありません。
粘っている間も、こういう負担が続きます。
- 粘っている間も、固定資産税はかかり続ける
- 空き家なら、その間も家は傷んでいく
- 相続した家なら、早く整理したい事情もある
ですから、「値下げは損」でも「粘れば得」でもないのです。
問題は、値段の話なのに、心が疲れたから、断りにくいから、という理由でハンコを押してしまうことです。
値段は、値段の理由で決める。気持ちが疲れたから決める、ではいけないのです。
まとめ
50年やってきて分かったことがあります。相場より安く売ってしまう人は、欲がないのでも、知識がないのでもありません。みんな、同じ心の落とし穴にはまっただけです。
もう一度、申し上げます。
- 最初に聞いた数字を、自分の家の値段だと思い込まない
- 「早く終わらせたい」という疲れで、値段を決めない
- 担当者に悪く思われたくなくて、うなずいていないか、自分に問う
- そして、必ず、比べる相手を持つ
この四つを覚えておくだけで、Cさんの300万円は守れたのです。
最後に、これだけは申し上げたい
もし今、ご自宅や、相続した家のことで、「値段を下げましょう」という話が来ているなら。
ハンコを押す前に、どうか一度、立ち止まってください。
その値下げは、本当に値段の理由で正しいのか。それとも、自分が疲れてしまっただけなのか。最初に聞いた数字に、引きずられていないか。
私は「うちで売ってください」とは申しません。今のその値段が、本当に妥当なのかどうか、50年この北区を見てきた私が、正直にお話しします。
ひとつの数字だけを信じる前に、もうひとつ、別の声を聞いてください。それだけで、何百万円も変わることがあります。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄
カテゴリ:マミーの不動産相続どうするねん / 投稿日付:2026/05/17 17:52
「更年期、つらいのは当たり前——そう思って、ひとりで抱えていませんか?」
40代後半から50代にかけて、女性の体は静かに、でも確実に変わり始めます。
眠れない夜が続く。突然、顔がカーッと熱くなる。わけもなく涙が出る。イライラが止まらない。 昨日まで普通にできていたことが、急にしんどくなる。
「これが更年期か……。」
でも多くの女性は、それを誰にも言えずにいます。
夫には心配をかけたくない。子どもには弱いところを見せたくない。職場では「まだまだ元気です」と笑顔を作る。
「更年期くらいで弱音を吐いたら、情けない。」
そう自分に言い聞かせて、ひとりで抱えてきた女性が、どれだけ多いことか。
でも本当は、体だけじゃなくて心も限界だったりしませんか?
更年期がつらいのは、弱いからじゃない。それだけ一生懸命、誰かのために生きてきたからです。
「私が更年期を乗り越えられた理由は、一度倒れたことにありました。」
正直に言います。
私は更年期の症状を、ほとんど感じませんでした。
周りの友人が「眠れない」「ほてりがひどい」「気力がわかない」と話しているのを聞きながら、「なぜ私は大丈夫なんだろう?」と不思議に思っていました。
その答えは、10年前の「あの夜」にありました。
忘れられない、救急車の中
10年前、突然の激痛で救急搬送されました。
診断は腸閉塞。緊急入院です。
それまでの私は、自分の体のことを後回しにしてきました。ECCの教室、子育て、PTA、地域の活動
——誰かのために動き続けることが当たり前で、自分の体の声を聞くことなんて、考えたこともなかった。
でも病院のベッドの上で、初めて気づきました。
「私、自分の体を大切にしてこなかった。」
その気づきが、私の人生を根本から変えました。
退院後、最初に変えたこと
退院してすぐ、腸のことを徹底的に調べました。
そこで出会ったのが「腸活」という考え方です。腸は第二の脳と呼ばれるほど、心身に深く関わっている。
腸が整うと、免疫力が上がり、メンタルも安定する。
更年期の症状にも、腸内環境が大きく影響するということも知りました。
まず食事を見直しました。
神戸市北区は農家の多い街です。農協や道の駅に行けば、安心安全な新鮮野菜が手に入る。
農家さんから直接いただくこともあります。
顔の見える食材を、体に入れる。それだけで、体の感覚が変わっていきました。
そして出会ったのが麹の発酵食品です。
自分で麹を発酵させて、調味料やドレッシングを手作りする。
ミネラルと麹を中心にした食生活に切り替えてから、体が内側から変わっていく実感がありました。
腸が整うと、不思議なほど気持ちも安定する。あれほど忙しく動き回っているのに、心がざわつかなくなっていきました。
そして8年前、ジムとプールへ
食事を変えてから数年後、さらに一歩踏み出しました。
ジムとプールに通い始めたのです。最初は週1回から。
それがいつの間にか週2回、週3回と増えて、今では週4回が当たり前になりました。
水の中を泳ぐとき、私は無心になれます。
仕事のこと、家族のこと、地域のこと——頭の中をぐるぐるしていたことが、水の中に入った瞬間、すっと消えていく。
体を動かすことが、最高のメンタルケアになっていました。
そして気づいたら、更年期の症状をほとんど感じないまま、50代を過ぎていました。
「腸閉塞で倒れたあの夜が、私の人生で一番大切な転換点だった。」
今は、心からそう思えます。
「更年期を自分らしく乗り越えるための、私が続けてきた3つの習慣」
医学的なアドバイスではありません。私が10年間、体で学んできた「続けられる習慣」をお伝えします。
① 腸を整えることが、心を整える近道
更年期の症状は、ホルモンバランスの乱れだけが原因ではありません。
腸内環境が整うと、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が安定し、気持ちの波が穏やかになります。
まず取り入れてほしいのは発酵食品です。市販のものでも十分ですが、余裕があれば麹から手作りするのがおすすめです。
自分で作った調味料で料理をする。その小さな行為が、自分を大切にしているという自己肯定感にもつながります。
② 「顔の見える食材」を選ぶ
何を食べるかより、どこから来た食材を食べるかを意識するだけで、食事への向き合い方が変わります。
農家さんの顔が見える野菜、地域の道の駅で買った旬の食材。食べることへの感謝が生まれると、自然と体を大切にしたくなります。
③ 「自分だけの時間」を体を動かすことに使う
ジムでもプールでも、ウォーキングでも構いません。大切なのは「誰かのためではなく、自分のための時間」を持つことです。
更年期に自己肯定感が下がる一番の理由は、長年「自分を後回しにしてきた」蓄積です。
体を動かす時間は、自分への投資であり、自分を取り戻す時間でもあります。
「更年期は、自分を一番大切にしていい、人生初の許可証です。」
更年期を「乗り越えるべき試練」と思っている方に、伝えたいことがあります。
更年期は、体があなたに送っているメッセージです。
「そろそろ、自分のことを一番に考えてもいいですよ。」
長年、誰かのために生きてきたあなたへの、体からの優しい合図。つらい症状も、体が正直に「限界だよ」と教えてくれているサインです。
私が腸閉塞で倒れたとき、体は限界を超えていました。あの経験がなければ、今の私はなかった。だから今は、あの夜に感謝しています。
自分を大切にすることは、わがままじゃない。
自分を後回しにしないことは、弱さじゃない。
更年期というこのタイミングに、もう一度自分の体と心に向き合ってみてください。食事を変えてみる。体を動かしてみる。
誰かに話してみる。その小さな一歩が、これからの人生を大きく変えていきます。
私は週4回、ジムとプールに通いながら、大阪から神戸市北区へ車を走らせています。
58歳の今が、人生で一番体も心も充実していると、胸を張って言えます。

あなたにも必ず、そう言える日が来ます。
更年期は終わりじゃない。自分を一番大切にしていい、人生初の許可証です。
柳川真由美
50歳から、しあわせに生きる。更年期も、自分らしく乗り越えましょう。


