カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/04 07:07
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、北区の家を買うときにも売るときにも必ず引っかかる「前面道路が4メートルない家」の話をします。
図面を見て、道路の幅員のところに「3.2m」と書いてある。それだけで、この家の値段も、建て替えの可否も、解体費用も、全部変わってきます。
けれど、これを契約の前にきちんと説明してもらえたという方に、私はほとんど会ったことがありません。
結論から申し上げます
前面道路が4メートルない家は、北区ではまったく珍しくありません。そして、そのほとんどは建て替えができます。
ただし、条件が2つ付きます。土地が減ることと、値段が下がることです。
本当に怖いのは、幅が4メートルないことそのものではありません。「うちは建て替えできるのかできないのか」を、売る前・買う前に誰も確かめていないことです。
ここで一歩立ち止まってください。この一点を確かめるかどうかで、数百万円が動きます。
1. 前面道路が4メートルない家は、北区にいくらでもあります
山田町、道場町、有馬、大池。北区の古い集落を歩けば、車がやっとすれ違えるかどうかという道が普通にあります。
3メートル、3.5メートル。中には2.7メートルという道もあります。
なぜこんなことになっているのか。建築基準法という法律が、幅4メートル以上の道路に敷地が2メートル以上接していなければ建物を建ててはいけない、と決めているからです。
そしてこの法律ができたのは昭和25年です。北区の古い集落は、それよりずっと前からそこにあります。
法律ができた時点ですでに家が建ち並んでいた道については、幅が4メートルなくても「道路とみなす」という救済がされました。これがいわゆる2項道路、みなし道路と呼ばれるものです。
50年やってきて分かったことがあります。北区の中古住宅で、私が扱った古い家の3軒に1軒くらいは、この2項道路に面しています。決して特殊な話ではないのです。
2. セットバックすると、土地は実際どれだけ減るのか
2項道路に面した土地は、建て替えるときに道路の中心線から2メートル下がったところまで、自分の敷地を道路として提供しなければなりません。これがセットバックです。
たとえば幅3.2メートルの道なら、中心から2メートルということは、こちら側は0.4メートル下がることになります。
間口が9メートルある土地なら、0.4メートル×9メートルで3.6平方メートル。約1.1坪が道路になります。
「1坪くらいなら」と思われるかもしれません。ですが、話はそれで終わりません。
セットバックした部分は、敷地面積に入れられません。
つまり、建ぺい率や容積率を計算するときの分母から消えます。建てられる家がその分だけ小さくなるということです。
さらに、その部分には塀も物置も置けません。門柱を建てることもできません。
もう一つ、知っておいてほしいことがあります。道の向かい側が崖や水路の場合は、向かい側から4メートル分をこちら側だけで負担することになります。
この場合、同じ幅3.2メートルの道でも、こちらが下がるのは0.8メートルです。間口9メートルなら7.2平方メートル、約2.2坪が消えます。
これは断言できます。図面の「セットバック要」という4文字を、面積に換算して見せてくれる会社は少ないです。
3. 建て替えできる家と、できない家があります
ここが一番大事なところです。
2項道路に2メートル以上接している土地なら、セットバックを条件に建て替えができます。これは大丈夫です。
問題はここからです。
- 道路に接している幅が2メートルに足りない
- そもそも前の通路が「道路」ではなく、他人の私有地である
- 通路の途中がくびれていて、2メートルを切る箇所がある
こういう土地は、建て替えができません。いわゆる再建築不可です。
救済の道がないわけではありません。建築基準法43条2項2号という制度があって、周囲に広い空地があるなどの条件を満たせば、許可を受けて建てられる場合があります。
ですが、はっきり申し上げます。これは「申請すれば必ず通るもの」ではありません。役所と協議して、条件を整えて、それでも下りないことがあります。
「多分いけると思いますよ」という営業マンの言葉を信じて買ってはいけません。買う前に、役所の建築指導課で確認してください。無料です。私はいつもお客様と一緒に行きます。
4. 値段には、はっきり反映されます
去年、山田町のCさん(71歳)から売却のご相談をいただきました。
木造2階建て、築48年。土地は41坪。前面道路は3.2メートル、間口は9メートルでした。
Cさんは最初、1,250万円で売りたいとおっしゃいました。近所で似た広さの家が、それくらいで出ていたからです。
私は現地を見て、こう申し上げました。
「Cさん、あちらの家は前が5メートル道路です。ここはセットバックで約1坪減ります。有効な宅地は40坪を切ります。それに、この道幅だと解体費も新築の工事費も上がります。買主さんはそこを引きます」
Cさんは不服そうでした。当たり前です。自分の家が安く見積もられて気分のいい人はいません。
実際に売り出してみて、最初の1か月で内見が4件ありました。そのうち2件は、道を見た瞬間に車を降りずに帰られました。
結局、3か月目に1,080万円で決まりました。170万円の差です。
ここでCさんに申し上げたのは、この170万円は「値切られた」のではなく「もともとそういう土地だった」ということです。
近所の5メートル道路の家と同じ値段が付くはずがないのです。それを認めるのが、売却の第一歩です。
5. 業界の裏側を申し上げます
道幅の話は、業者にとって都合の悪い話です。だから、いろいろな隠し方をします。
一つ目。図面の隅に「セットバック要」とだけ小さく書いて、口頭では一切触れない。
これは嘘をついていないので、後から責められません。けれど、買主は何坪減るのか分かりません。私は面積と図で説明しますが、そこまでする会社は多くありません。
二つ目。再建築不可の物件を「現況渡し」「要相談」と書く。
再建築不可とは書かない。書くと問い合わせが激減するからです。「格安物件」として出して、来た人に後から説明する。この手口は今もあります。
三つ目。「セットバック済み」という表示です。
前の所有者が下がったつもりでいても、道路中心線の位置が役所と確定していないことがあります。実際に測ったらもう少し下がる必要があった、という例を私は何度も見ています。「済み」と書いてあっても、必ず役所で確認してください。
四つ目。買取業者の叩きです。
道が狭い、建て替えに手間がかかる、これを理由に相場の半値以下を提示してくる業者がいます。売主さんは「そういう土地だから仕方ない」と思って売ってしまう。
けれど、狭い道の家を欲しがる人はちゃんといるのです。前が静かで、子どもが飛び出す車がなくて、その分安い。そういう価値を分かって買う人がいます。急いで買取に流す必要はありません。
6. デメリットは正直に申し上げます
前面道路が狭い家には、値段以外にもはっきりしたマイナスがあります。
まず、工事費が上がります。
4トントラックが入らない道だと、資材を小さい車で何度も運ぶことになります。解体も重機が入らず、手壊しの部分が増えます。
私が去年扱った木造30坪の家では、普通なら150万円ほどの解体費が、220万円になりました。70万円の差です。
次に、住宅ローンです。
セットバックが必要なだけなら、たいていの銀行は通ります。ですが再建築不可となると話は別で、担保価値が付かないため融資が出ない金融機関がほとんどです。現金で買える人しか買えない、つまり買主が一気に減るということです。
そして、日々の暮らしのことです。
- ゴミ収集車が入らず、集積所まで歩く
- 宅配や引っ越しのトラックが路上に停まる
- 救急車や消防車が家の前まで来られない
これは軽く見ないでください。ご高齢のご家族がいる家では、救急車が入れるかどうかは本当に大事です。
7. 再建築不可の家を、680万円で売った話
大池のDさん(64歳)からご相談を受けたのは、お母様が亡くなられた後でした。
路地の奥にある古い平屋です。接道が1.6メートルしかなく、はっきり再建築不可でした。
大手の査定は580万円。買取業者は380万円を提示してきました。Dさんは「もう面倒だから380万でいい」とおっしゃいました。
私は少し待ってくださいと申し上げました。
この家、隣の家が買えば話が変わるのです。隣の敷地とくっつけば接道が確保でき、将来まとめて建て替えができるようになる。つまり、隣の方にとってだけは価値が跳ね上がる土地なのです。
私は隣家のご主人に手紙を書き、ご挨拶に伺いました。3回足を運びました。
最終的に680万円でお譲りいただくことになりました。買取業者の提示より300万円上です。
50年やってきて分かったことがあります。道が狭い土地、接道が足りない土地は、一般の市場では弱いのです。けれど、隣の人にとっては誰よりも欲しい土地であることが多い。
ここを探しにいくかどうかが、不動産屋の仕事の差です。
まとめ
前面道路が4メートルない家について、覚えておいていただきたいことをもう一度申し上げます。
- 北区では珍しくなく、ほとんどはセットバックを条件に建て替えできる
- セットバックで土地は1坪から2坪ほど減り、その部分は敷地面積に入らない
- 接道が2メートルに足りない土地は再建築不可で、融資が付かず買主が限られる
- 値段には必ず反映される。前が広い家と同じ値段は付かない
- 解体費も新築費も上がる
けれど、それは「売れない」という意味ではありません。条件を正直に出して、その条件を分かって買ってくれる人を探せば、ちゃんと決まります。
いちばんまずいのは、道の話を伏せたまま話を進めることです。契約直前や引き渡し後に出てくると、話がこじれます。
最後に、これだけは申し上げたい
ご自宅の前の道の幅を、測ったことがあるでしょうか。
メジャー一本あれば5分で分かります。3.6メートルなのか4.1メートルなのか、それだけでも知っておいてください。
そして、売ることを少しでもお考えなら、建て替えができる土地なのかどうかを先に確かめてください。役所で分かります。お金はかかりません。
私は、その調べものを一緒にやるところから始めます。査定書を持ってくる前に、まず役所へ行きます。それが50年やってきた私のやり方です。
北区で、道の狭い家のことでお困りのことがありましたら、遠慮なく声をかけてください。売る売らないは、その後で決めていただければ結構です。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


