カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/07/17 07:17
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、多くの方が「難しそうだから」と後回しにするテーマ、不動産と税金の話をします。
「税金は税理士さんの仕事でしょう」と言われます。その通りです。私は税理士ではありませんから、個別の申告のお手伝いはできません。それでも、この話を今日する理由があります。
50年やってきて分かったことがあります。不動産で大きく損をする人は、値段の交渉で負けたのではありません。税金を知らないまま、売る日を決めてしまったのです。
100万円の値引きには半日悩むのに、200万円の税金には一言も触れないまま契約する。そういう場面を、私は数え切れないほど見てきました。
ここで一歩、立ち止まってください。今日の話は、覚えるための話ではありません。「売る前に、これだけは確認してください」という話です。
結論から申し上げます
不動産の税金は、山ほどあるように見えて、たった4つの場面しかありません。
買うとき。持っているとき。売るとき。渡すとき。
この4つです。そして、あなたが本当に気をつけるべきなのは、そのうちの「売るとき」だけです。
さらに言えば、覚える数字は3つで足ります。「5年」と「3,000万円」と「3年」。
この3つを知っているかどうかで、手取りが200万円、300万円と変わります。順番にお話しします。
1. 買うときの税金
家や土地を買うと、値段とは別にお金がかかります。
まず不動産取得税。買った不動産の評価額に対してかかる税金で、本来は4パーセントです。ただし住宅と住宅用の土地については軽減されていて、今のところ3パーセントで済みます。この軽減は期限付きで、これまで何度も延長されてきました。
次に登録免許税。名義を自分に書き換えるための税金です。相続で引き継ぐ場合は評価額の0.4パーセント。売買で買う場合はもっと高くなります。
それから印紙税。売買契約書に貼る印紙です。1,000万円を超えて5,000万円以下の契約なら、今は1万円ほど。金額としては小さいので、ここで悩む必要はありません。
はっきり申し上げます。買うときの税金は、金額が決まっていて、逃げ場もありません。だから、ここは考えなくていいのです。問題は次からです。
2. 持っているときの税金
不動産を持っている限り、毎年かかるのが固定資産税です。評価額の1.4パーセント。市街化区域なら、これに都市計画税が最大0.3パーセント上乗せされます。
ここに、知らないと痛い目を見る仕組みがあります。
住宅が建っている土地は、200平米までの部分について、固定資産税の計算のもとになる金額が「6分の1」に圧縮されます。小規模住宅用地の特例といいます。200平米を超えた部分は3分の1です。
言い換えると、家が建っているというだけで、土地の税金は6分の1で済んでいるということです。
これは断言できます。だから家を壊すと、税金が跳ね上がります。
空き家を「片付けてすっきりさせよう」と解体した途端、翌年の固定資産税が一気に上がって驚く方がいます。6分の1が外れるのですから、当たり前なのです。解体は、売る目処が立ってからにしてください。
3. 売るときの税金
ここが本番です。家や土地を売って利益が出たら、その利益に税金がかかります。譲渡所得税です。
覚えるのは、まず「5年」という数字です。
持っていた期間が5年を超えていれば長期。税率は20.315パーセントです。5年以下なら短期。税率は39.63パーセントです。
倍近く違います。同じ家を、同じ値段で売っても、です。
そして、ここに落とし穴があります。この「5年」は、売った日から数えるのではありません。売った年の1月1日の時点で5年を超えているかどうかで判定します。
つまり、2026年に売るなら、2020年の大晦日までに買っていないと長期にはなりません。2021年の1月に買った家は、2026年中はずっと短期のままです。感覚では「もう5年経った」と思っていても、税務署の数え方は違うのです。
次の数字が「3,000万円」です。
自分が住んでいた家を売る場合、利益から3,000万円を引けます。居住用財産の3,000万円特別控除といいます。これがあるので、普通の住み替えなら税金はゼロで済むことがほとんどです。
さらに、住んでいた家で所有期間が10年を超えていれば、税率がもっと下がります。利益6,000万円までの部分が14.21パーセントになります。
最後が「3年」です。
これは相続した空き家の話です。条件が合えば、相続した親の家を売るときも3,000万円を引けます。ただし期限が厳しい。亡くなった日から3年目の年末までに売らないと使えません。しかも令和6年からは、相続人が3人以上いる場合、一人あたり2,000万円に減らされました。
「5年」「3,000万円」「3年」。この3つだけです。
4. 渡すときの税金
最後に、次の世代へ渡すときの税金です。
相続税には基礎控除があります。3,000万円に、法定相続人の数かける600万円を足した金額。相続人が3人なら4,800万円までは相続税がかかりません。
多くのご家庭は、この枠に収まります。「うちは相続税がかかるのだろうか」と何年も心配していた方が、計算してみたら全然かからなかった、ということはよくあります。
生前に渡す場合は贈与税です。1年に110万円までなら、贈与税はかかりません。
ただし、これは断言できます。不動産は110万円ずつ切り分けて渡せません。土地の持分を毎年少しずつ動かす方もいますが、登記の費用が毎回かかりますし、共有名義は後々もめます。私は勧めません。
5. 実際にあった話
北区のEさんご夫婦の話をします。
ご主人が58歳のとき、転勤で家を手放すことになりました。2021年の3月に買った家です。売ろうと決めたのが2025年の秋でした。
「もうすぐ5年ですから、税金は安いほうですよね」
そうおっしゃいました。買ったのは2021年3月ですから、2026年3月で丸5年。感覚としては間違っていません。
でも違うのです。1月1日で数えるからです。2026年の1月1日時点では、まだ4年10か月。短期のままです。長期になるのは2027年の1月1日から。つまり、2026年中に売ったら短期、2027年に入ってから売れば長期。それだけの違いでした。
Eさんの家は、利益がおよそ1,000万円出る計算でした。
- 短期で売れば、税金はおよそ396万円
- 長期で売れば、およそ203万円
差は193万円です。
年をまたぐだけで、193万円。私はそれをお伝えして、「急ぐ事情がないなら、年明けの引き渡しにしましょう」と申し上げました。Eさんは黙って計算し直して、それから「誰も教えてくれませんでした」と言いました。
その前に相談されていた大手の会社は、11月の時点で「年内に決めましょう」と勧めていたそうです。
業界の裏側を正直に話します
なぜ、その会社は年内を勧めたのか。
正直に申し上げます。不動産会社にも、決算があります。3月や12月に売上を立てたい会社は、年内の決済を勧めます。あなたの税金より、自分の期の数字が先なのです。
しかも、逃げ道が用意されています。「税金のことは税理士さんにご確認ください」。この一言です。
宅建業者は税理士ではありませんから、個別の税務相談はできません。これは法律で決まっていて、正しいのです。ただ、この正しさが便利に使われることがあります。「うちは税金の話はできませんので」と言っておけば、売り急がせた結果あなたが200万円多く払っても、こちらの責任にはならない。そういう構造になっているのです。
はっきり申し上げます。税務の判断はできなくても、「1月1日で5年を数えます。一度税理士さんに確認されたほうがいい」と伝えることはできます。それを言うか言わないかは、法律の問題ではありません。誠実さの問題です。
ここは正直に、デメリットも話します
では、税金を軸に売る日を決めればいいのか。そう単純でもありません。
Eさんのように2か月待つだけなら簡単です。でも「長期になるまであと2年待ちましょう」となったら、話は変わります。その2年で相場が10パーセント下がったら、税金で得した分など吹き飛びます。北区でも、2年で数百万円動く場所はあります。
空き家も同じです。3,000万円控除のために解体して更地にしたのに、思ったように売れず、6分の1の特例が外れた高い固定資産税を何年も払い続ける。こういう方を、私は実際に見ています。
それから、特例には併用できないものがあります。住宅ローン控除と居住用の3,000万円控除は、同じ時期には使えません。片方を取れば、片方を諦めることになります。
税金は、判断材料の一つです。判断のすべてではありません。ここを取り違えると、税金には詳しいのに、損をする人になります。
まとめ
もう一度言います。
不動産の税金は、買うとき、持っているとき、売るとき、渡すとき。4つだけです。
そして、あなたが本当に確認すべき数字は3つです。
- 長期か短期かを分ける「5年」。1月1日で数えます
- 住んでいた家で使える「3,000万円」控除
- 相続した空き家を売る期限の「3年」
家が建っているだけで土地の税金が6分の1になっていること。だから壊すと跳ね上がること。これも覚えておいてください。
全部を勉強する必要はありません。売ると決める前に、この3つを誰かに確認してもらう。それだけで、損の大半は防げます。
最後に、これだけは申し上げたい
税金の話は、地味です。誰も好きこのんで調べません。だから、みんな同じところで損をします。
そして怖いのは、損に気づかないことです。値引きで100万円下げたら悔しさが残ります。でも税金で200万円多く払っても、「そういうものか」で終わってしまう。誰も教えてくれないからです。
私は税理士ではありません。ですから申告のお手伝いはできません。その代わり、「その売り方だと税金で損をしますよ」「その日付は一度確認したほうがいい」と申し上げることはできます。必要なら、信頼できる税理士さんもご紹介します。
私は「売らせるため」ではなく「損をさせないため」に、この仕事を50年やってきました。売ろうかと考え始めた段階で構いません。値段の話をする前に、まず日付と特例の確認から、一緒にやりましょう。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


