カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/08/18 11:22
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、山の街と北鈴蘭台。この二つの駅の街が、なぜ「現実的な選択肢」になるのかをお話しします。
鈴蘭台の話は、これまで何度もしてきました。北区といえば鈴蘭台、というくらい、あの街には名前があります。けれど、その一つ北、二つ北にある山の街と北鈴蘭台のことを、ちゃんと聞いたことがある方は少ないと思います。
私のところに来られるお客さんも、最初はまず言われません。「鈴蘭台で探しています」「西鈴で探しています」。山の街と北鈴蘭台の名前が出るのは、たいてい、三回目くらいの相談のときです。
でも、最終的にこの二つの街を選ばれる方が、毎年必ずおられます。しかも、そういう方に限って、あとから「ここでよかった」と言われる。これは偶然ではありません。
結論から申し上げます
山の街と北鈴蘭台は、憧れで買う街ではありません。計算で買う街です。
そして、計算で買った人のほうが、10年後に後悔していません。これは50年やってきて分かったことの一つです。
鈴蘭台と比べて、同じ広さ、同じ築年数で「300万円から500万円」安い。学区は変わらないか、むしろ通学が楽になる場合すらある。そして買主層は、身の丈で家を買おうとしている真面目な子育て世帯です。
この三つが揃っている街は、北区の中でもそう多くありません。
1. 山の街と北鈴蘭台が、どういう場所なのか
まず、位置関係を整理させてください。
神戸電鉄の有馬線で、鈴蘭台の次が北鈴蘭台、その次が山の街です。鈴蘭台からたった二駅、時間にすれば数分の距離です。
ところが、この数分で値段が変わります。
なぜか。名前です。
はっきり申し上げます。鈴蘭台という地名には、値段が乗っています。北区で家を探し始めた方が最初に検索するのが鈴蘭台です。人が集まるところに値段がつく。これは不動産の大原則で、良いも悪いもありません。
一方、北鈴蘭台と山の街は、地元の方以外はほとんど検索しません。検索されない街は、値段が上がりません。逆に言えば、割高になりにくいということでもあります。
もう一つ、地形の話をしておきます。この二つの駅の周りは、鈴蘭台と同じで平らではありません。駅から放射状に住宅地が広がっていて、坂の上の区画と、駅前から平坦に歩ける区画があります。この差が、あとで大きく効いてきます。値段にも、売りやすさにも効きます。
2. 価格帯の現実。差は「300万円から500万円」です
具体的な数字で申し上げます。
去年、私がお手伝いした北鈴蘭台の中古戸建は、築25年、土地45坪、延床32坪で「1,780万円」で成約しました。
同じ条件のものを鈴蘭台の駅近くで探すと、いくらになるか。「2,280万円」から「2,400万円」です。物によっては、もっと上がります。
差は500万円です。
これは、35年ローンで考えると月々の返済で1万3千円ほどの違いになります。年間で15万円以上、35年で500万円以上。教育費に回せる金額として考えると、決して小さくありません。
山の街になると、もう一段下がります。築38年、土地50坪の家が「1,280万円」で出ることがあります。土地の坪単価で言えば、鈴蘭台の駅前が坪33万円前後のときに、山の街は坪25万円を切ることも珍しくありません。
固定資産税も違います。北鈴蘭台のさきほどの物件で、年間「8万円台」でした。鈴蘭台の駅近くの同じ規模の家だと、11万円から12万円くらいになります。毎年の話ですから、これも20年30年で効いてきます。
ここで一歩立ち止まってください。
安いというのは、必ず理由があります。理由のない安さはこの世に存在しません。この街が安い理由は、次の三つです。
- 駅の知名度が低い
- 速い電車が停まらない
- 駅前に大きな商業施設がない
問題は、その三つがあなたの生活にとって「致命的か」「我慢できるか」です。ここを正直に自分に問える人が、この街を選んで幸せになっています。
3. 学区で選ぶ方が、実は一番多い
意外に思われるかもしれませんが、この二つの街を選ばれる方の理由で一番多いのは、値段ではありません。学区です。
北区で小さいお子さんを持つご家庭が家を探すとき、まず学区から入る方が本当に増えました。20年前はここまでではありませんでした。
そして、鈴蘭台の学区と、北鈴蘭台・山の街の学区は、実際にはそれほど遠く離れていません。同じ校区に入る区画もありますし、境目のすぐ向こう側という物件もよくあります。
ここが大事なところです。
学区の境目をまたいだだけで、家の値段が300万円変わることがあります。学校が変わらないのに、です。
私は現場で何度もこれを見てきました。あるご夫婦は、上のお子さんが通っている小学校を変えたくないという理由で探しておられて、鈴蘭台側では予算が全然届かなかった。ところが北鈴蘭台側で、同じ校区に入る家が500万円安く出た。徒歩の時間は3分伸びただけです。
これは覚えておいてください。学区で探すなら、必ず「校区の地図」と「物件の地図」を重ねて見てください。駅名で探していると、この差に一生気づきません。
不動産屋がわざわざ教えてくれることは、あまりありません。理由は後で申し上げます。
4. 買主層の実態。この街を買っているのは誰か
私が実際に契約書を交わしてきた顔ぶれを申し上げます。
この二つの街の中古住宅を買われるのは、圧倒的に30代の共働きご夫婦です。ご主人が三宮や元町、あるいは大阪まで通勤されている。奥様は北区か中央区でお勤め。お子さんが1人か2人、まだ小さい。
世帯年収は600万円前後から800万円くらい。予算は総額で2,500万円から3,000万円。この予算だと、鈴蘭台の駅近で希望の広さは正直、届きません。
次に多いのが、地元の方の住み替えです。ご実家が北区で、結婚して市内のマンションに住んでいたけれど、子どもが生まれて戻ってきた。この層は、街の実情をよく分かった上で買われるので、迷いがありません。
三つ目が、五十代の方の「終の住処」としての購入です。駅から平坦、駐車場が2台とれる、という条件で探される。数は少ないですが確実にいます。
逆に、この街をほとんど買わない層もいます。
- 投資目的の方
- 転勤族の方
- 駅前の便利さを最優先する方
つまり、この街の買主は「実際にここで暮らす人」だけです。
これは、売るときには弱みになります。買い手の母数が少ないということですから。ただ、住む側から見れば、投機的な値上がりや値下がりに振り回されにくい、落ち着いた街だということでもあります。
5. 実例。鈴蘭台をやめて北鈴蘭台にされたAさんご夫婦
具体的なお話をします。
Aさんご夫婦。ご主人36歳、奥様34歳。お子さんが5歳と2歳。世帯年収は「620万円」でした。
最初に来られたとき、ご主人はこう言われました。「鈴蘭台で、庭のある一戸建てを探しています。予算は2,800万円です」
私は正直に申し上げました。「その予算だと、鈴蘭台の駅から歩ける範囲で、築20年以内、駐車場2台は、まず出てきません」
ご主人は少し不機嫌になられました。当然です。夢を否定されたわけですから。
それでも3か月、鈴蘭台で探されました。出てくるのは、坂の上の築35年か、駅から徒歩20分の物件ばかりです。奥様が「これなら今の賃貸のほうがまし」とおっしゃったのを、私は覚えています。
4か月目に、北鈴蘭台で1件出ました。築22年、土地48坪、延床33坪、駐車場2台、駅から徒歩12分。値段は「2,180万円」でした。
ご主人は最初、「北鈴蘭台か」という顔をされました。あの顔は今でも覚えています。名前で判断されたのです。
私は、お二人を車で現地に連れて行きました。そして、こう申し上げました。「まず、上のお子さんが通う小学校まで一緒に歩いてみましょう」
歩いてみたら、徒歩9分でした。鈴蘭台で検討されていた物件より、実は近かったのです。
さらに、駅までの道が平坦でした。坂を登らない。奥様が「これは大きい」とおっしゃいました。自転車で保育園の送り迎えをされる予定でしたから、坂の有無は毎日の話です。
結局、Aさんは「2,080万円」で買われました。予算より700万円余りました。
その700万円をどうされたか。300万円を水回りのリフォームに使い、200万円を繰上げ返済の元手として貯め、残りをお子さんの教育資金に回されました。
月々の返済は「6万4千円」です。今住んでおられた賃貸の家賃より、8千円安くなりました。
去年、Aさんから年賀状が来ました。「駅の名前で家を選ばなくて本当によかったです」と書いてありました。
6. 業界の裏側。なぜ営業マンは、この街をあまり勧めないのか
ここからは、業界の中の話をします。あまり気持ちのいい話ではありませんが、知っておいたほうが得です。
理由その一。手数料が安いからです。
不動産屋の仲介手数料は、成約価格に比例します。2,000万円の家と3,000万円の家では、手数料が30万円以上違います。同じ手間をかけるなら、高い家を売りたい。これは人情です。
だから、若い営業マンほど、鈴蘭台や西鈴蘭台の高い物件を先に出してきます。安い街を先に出す営業マンは、正直、多くありません。
理由その二。自社の預かり物件に誘導したいからです。
これを「両手取引」と言います。売主からも買主からも手数料をもらえるので、会社としては倍おいしい。だから、他社が預かっている山の街の掘り出し物より、自社が預かっている鈴蘭台の物件を熱心に勧めます。
お客さんには、こう言います。「あちらは坂がきついですよ」「あの駅は不便ですよ」
嘘ではありません。けれど、公平でもありません。
理由その三。単純に、街を知らないからです。
これが一番多いかもしれません。北区に何年もいない営業マンは、山の街や北鈴蘭台の中の細かい差が分かっていません。どの通りが平坦で、どこから急に坂になって、どの区画がどの校区か。分からないから、勧めようがない。
はっきり申し上げます。街を知らない人間が「あそこはやめておいたほうがいい」と言うとき、その言葉には中身がありません。ただ自分が説明できないから避けているだけです。
もう一つ、売主側の裏も申し上げておきます。
この二つの街で家を売ろうとするとき、一部の業者は最初にわざと高い査定を出します。「2,000万円で売れますよ」と言って媒介契約を取り、3か月経ってから「反応がないので下げましょう」と言ってくる。これを「高預かり」と言います。
北区の中でも、この街のように取引の数が多くない場所ほど、この手が通用してしまいます。比べる材料が少ないからです。
査定を取るときは、必ずその会社が「この街で去年何件成約したか」を聞いてください。答えられない会社の数字は、根拠がありません。
7. デメリットを正直に申し上げます
いいことばかり言うつもりはありません。この街の弱点を、全部申し上げます。
まず、速い電車が停まりません。
通勤時間帯に、鈴蘭台までは速い電車で来られても、そこから乗り換えが必要になる場合があります。毎朝のことですから、これは実際に一度、通勤時間に自分で乗ってみてください。時刻表を見るだけでは分かりません。
次に、駅前が寂しいです。
大きなスーパーや商業施設が駅前にあるわけではありません。買い物は車が前提になる場面が多いです。車を持たない生活をお考えなら、正直、この街はお勧めしません。
三つ目、坂です。
平坦な区画もありますが、坂の上の区画も多い。そして坂の上は、20年後に必ず苦戦します。今のあなたが元気に登れても、次にその家を買う人は登れないかもしれない。ここは値段の安さに目がくらんではいけないところです。
四つ目、値上がりしません。
これは断言できます。山の街も北鈴蘭台も、これから地価が大きく上がることはありません。資産として増やす目的で買う街ではありません。住むために買う街です。
五つ目、売るのに時間がかかります。
鈴蘭台なら2か月で決まる物件が、この街だと4か月、5か月かかることがあります。買い手の母数が違うからです。
去年、山の街で売却をお手伝いしたBさん。74歳の男性で、お子さんの住む大阪へ移られるために家を手放されました。築40年、土地50坪。最初「1,450万円」で出しましたが、3か月動かず、最終的に「1,280万円」で決まりました。売り出しから成約まで5か月です。
Bさんはこうおっしゃいました。「安く買えたから、安くしか売れんのやな」
そのとおりです。買うときの得は、売るときの損とセットです。ここを納得できるかどうかが、この街を選ぶかどうかの分かれ目です。
8. それでも私がこの街を勧める理由
デメリットを並べたうえで、それでも申し上げます。
家を買うことの目的は、資産を増やすことではありません。その家で、家族が何年、どんな暮らしをするかです。
30代のご夫婦が3,000万円の家を買って、月々の返済に追われて、旅行にも行けず、お子さんの習い事も我慢する。これで20年暮らして、家だけが残る。
同じご夫婦が2,100万円の家を買って、月々に余裕を持って、年に一度は家族で旅行に行き、お子さんのやりたいことをやらせてやる。20年後に残る家の値段は少し低いかもしれません。けれど残るものは、家だけではありません。
私は50年、両方のご家庭を見てきました。どちらが幸せそうかは、はっきりしています。
山の街と北鈴蘭台は、後者を選べる街です。だから私は、身の丈で考えるご家族に、この街を勧めます。
まとめ
もう一度申し上げます。
山の街と北鈴蘭台は、憧れで買う街ではなく、計算で買う街です。
鈴蘭台と比べて300万円から500万円安い。学区は境目をまたぐだけで変わらないことも多く、通学がむしろ楽になる場合すらある。買っているのは、実際にここで暮らす30代の共働き世帯が中心です。
弱点も申し上げました。速い電車が停まらない。駅前が寂しい。坂の上は将来苦戦する。値上がりしない。売るのに時間がかかる。
この弱点を全部飲み込めるなら、北区で一番、身の丈に合った選択肢だと私は思っています。
そして最後に一つ。この街で買うなら、坂だけは妥協しないでください。値段が安いことより、平坦であることのほうが、20年後のあなたを助けます。
最後に、これだけは申し上げたい
もしあなたが今、北区で家を探していて、鈴蘭台や西鈴蘭台で予算が届かず、諦めかけておられるなら。
一度だけ、私に「学区の地図」を見せる時間をください。駅名ではなく校区で線を引き直すと、選択肢が急に増えることがあります。Aさんご夫婦がそうでした。
それから、すでに山の街や北鈴蘭台に家をお持ちで、いずれ手放すことをお考えの方。この街は、売り方と時期で結果が変わります。何もしないまま「そのうち」と思っているのが、一番損をします。
私は50年、この地域だけを見てきました。北鈴蘭台のどの通りが平坦で、山の街のどの区画が校区の境目にあるか、頭に入っています。値段を高く言って喜ばせることはしません。その代わり、本当のことを申し上げます。
お茶を飲みながらの世間話で構いません。お気軽にお声がけください。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


