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若い頃の失敗を正直に話します
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/08/04 06:57

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、少し書きにくい話をします。私が若い頃にやらかした失敗の話です。

若い

うまくいった話なら、いくらでも書けます。あの土地を高く売った、あのお客さんに感謝された。そういう話は気持ちよく書けますし、読んでいる方も気分がいい。

でも、それだけ書いている不動産屋を、私は信用しません。

50年もこの仕事をやっていて、失敗がないわけがないんです。失敗を語らない業者は、失敗していないのではなくて、隠しているだけです。

ここで一歩立ち止まってください。

あなたが不動産屋を選ぶとき、「うちは実績があります」「安心してお任せください」としか言わない担当者と、「昔こういう失敗をしました。だから今はこうしています」と言う担当者、どちらを信じますか。

私は後者だと思っています。だから今日は、自分の恥をさらします。


結論から申し上げます


私が若い頃にやった失敗は、突き詰めると全部ひとつのことに集約されます。

お客さんの話を、最後まで聞かなかった。

これだけです。

知識が足りなかったから失敗したのではありません。段取りが悪かったから失敗したのでもありません。相手が本当に何を望んでいるのかを聞かずに、自分が「これが正解だ」と思ったほうへ話を進めてしまった。それが原因でした。

これは断言できます。不動産の失敗の大半は、知識不足ではなく、聞き足らずから起きます。


1. 27歳のとき、売り急がせてしまった話


私が27歳、この業界に入って5年目くらいの頃です。

当時、神戸市北区の団地の一角にある古い一戸建てを、Aさん(当時63歳)からお預かりしました。ご主人を亡くされて間もない、静かな奥様でした。

築28年、木造2階建て、駅からバス便。相場からすると1,180万円あたりが妥当な線でした。

私は張り切っていました。若かったですし、早く決めて自分の成績にしたかった。今思えば、それが全部でした。

Aさんは最初、こうおっしゃっていたんです。

「主人との思い出があるので、もう少し考えさせてください」

私はそれを「迷っているだけ」だと解釈しました。だから、こう申し上げてしまった。

「奥様、この地域は今、動きが鈍っています。半年経つともっと下がります。今のうちに決めたほうがいいですよ」

嘘ではありませんでした。実際その地域は緩やかに下がっていました。

でも、それは私の都合の言葉でした。

Aさんは3か月後、1,050万円で売却されました。私が持ってきた買主でした。私は自分の中で「相場より少し下だけど、早く現金化できたんだからよかった」と思っていました。

問題はその1年後です。

Aさんが店に来られました。

「あきちゃん、私、あの家を売らなければよかったと思っているんです」

息子さんご夫婦が神戸に戻ってくることになったそうです。あの家に住みたいと言われたそうです。

そのときAさんは、私を責めませんでした。「私が決めたことですから」とだけおっしゃった。

私はそれが一番こたえました。責められたほうが、まだ楽でした。

あのとき私がやるべきだったのは、「半年経つと下がります」と言うことではありませんでした。

「息子さんは将来こちらに戻られる可能性はありませんか」

たったこの一言を聞けばよかったんです。聞かなかった。聞くと売却が止まるかもしれないと、心のどこかで思っていたからです。

はっきり申し上げます。あれは私の失敗です。相場の判断は間違っていませんでしたが、人として間違っていました。


2. 33歳のとき、境界を確認せずに契約した話


もうひとつ、これは金銭的にはっきり損害が出た失敗です。

私が33歳の頃、神戸市北区の傾斜地にある土地の売買を仲介しました。売主はBさん(当時71歳)、買主は市外から移住してこられた40代のご夫婦でした。

土地は約58坪。売買価格は880万円

問題は、境界でした。

古い土地で、境界標が現地に見当たりませんでした。公図と現況もずれていました。

売主のBさんは「昔から隣とはこの塀が境界だと言い合ってきた。何も問題ない」とおっしゃる。隣地の方に電話で聞いても「そうだね」と言う。

私はそれで済ませてしまいました。測量をせず、境界の立会いも書面にせず、「現況有姿」で契約したんです。

コストを抱えたくなかった売主の気持ちを汲んだつもりでした。実際には、測量費が40万円ほどかかりますから、その話をBさんに切り出すのが面倒だっただけです。

引き渡しから2年後、隣地が相続になりました。

相続した息子さんは、当然ながら「昔からの言い合い」を知りません。測量したら、塀の位置が実際の境界から約80cm買主側にはみ出していることが分かりました。

そこから揉めに揉めました。

最終的に、買主のご夫婦が塀の作り直しと測量で約110万円を負担されました。売主のBさんは既に亡くなられていて、請求先もありませんでした。

私は自分の報酬から一部を出しました。それで解決したわけではありません。あのご夫婦は、移住してきた土地で最初にやったことが、隣とのもめ事だったんです。

50年やってきて分かったことがあります。

土地の境界は、当事者が生きているうちにしか確認できません。

「昔からこうだった」は、相続が起きた瞬間に消えます。人が代わると、口約束は存在しなかったのと同じになります。

今の私は、境界が不明な土地は、必ず確定測量をお願いします。売主に嫌な顔をされても、費用の話を切り出します。あのご夫婦のことを思い出すからです。


3. 41歳のとき、身内の売却で判断を誤った話


これは技術の話ではなく、心の話です。

41歳の頃、親戚筋の家の売却を任されました。

身内ですから、私は「絶対に高く売ってやろう」と思いました。相場が2,300万円あたりのところを、2,680万円で売り出しました。

これが完全に裏目に出ました。

不動産には「物件が枯れる」という言葉があります。売り出してから時間が経つと、業者間でも「あそこ、まだ残ってるな」「何か理由があるんじゃないか」と見られ始める。ポータルサイトを見ている一般のお客さんも、同じ物件が何か月も出ていると、それだけで敬遠されます。

半年で3回値下げしました。2,680万円、2,480万円、2,280万円。

最終的に売れたのは2,120万円でした。

最初から2,300万円で出していれば、おそらく3か月以内に2,250万円前後で決まっていました。私が欲を出したせいで、130万円ほど安くなったわけです。

身内には言い訳ができませんでした。

このとき学んだことがあります。高く売り出すことと、高く売れることは、まったく別物だということです。

高く売り出すのは誰でもできます。売主が喜ぶからです。だから、査定価格をわざと高く出して媒介契約を取る業者がいます。業界では「高預かり」と呼びます。

これは今もあります。3社に査定を頼んで、1社だけ極端に高い金額を出してきたら、疑ってください。その業者は売る自信があるのではなく、まず契約を取りたいだけかもしれません。


4. 業界の裏側を、ついでに申し上げます


自分の失敗を書いたので、業界の話もついでに正直に書きます。

私が若い頃、まだ「囲い込み」という言葉が今ほど問題視されていなかった時代があります。

囲い込みというのは、預かった物件を他社に紹介せず、自社で買主も見つけて、売主と買主の両方から手数料をもらうやり方です。両手取引と言います。片手なら手数料は売主からだけ、両手なら倍になります。

他社から「あの物件、内見できますか」と電話が来ても、「もう商談中です」と断る。実際には商談中でもなんでもない。

私はやりませんでしたが、周りには普通にありました。それを「営業努力」と呼ぶ空気もありました。

売主からすると、買主候補が減るわけですから、確実に不利です。売れるのが遅くなり、結果として値下げにつながります。

これは今でも完全にはなくなっていません。

見分け方をひとつだけ申し上げます。

自分の家がポータルサイトにきちんと出ているか、レインズという業者間のデータベースに登録されているか、登録証明書を見せてもらってください。専任媒介や専属専任媒介を結んだら、業者には登録義務があり、証明書を発行してもらえます。

それを渋る業者は、何か理由があります。


5. デメリットも正直に書きます


ここまで読んで、「あきちゃんは正直だな」と思っていただけたなら嬉しいのですが、私にも欠点があります。

  • 売り急がせないので、とにかく早く現金化したい方には向いていません
  • 派手な広告をしません。全国ネットのCMも豪華なチラシもありません
  • 都市部のタワーマンションを高値で回転させる取引は得意ではありません
  • 私は77歳です。長いお付き合いを前提にされる場合、私一人に依存するのはリスクです

若い頃の失敗が骨身に染みているので、私は「もう少し考えたほうがいい」と言うことがよくあります。勢いのある若い担当者のほうが合う方は、必ずいらっしゃいます。

年齢のことも、はっきり申し上げておくべきだと思っています。店にはちゃんと後進もおりますが、そこはご承知おきください。

こういうことを書くと「営業として損じゃないか」と言われます。でも、隠して契約を取って、あとで「聞いていない」と言われるほうが、私はよほど嫌です。


まとめ


若い頃の私の失敗を、3つ書きました。

売り急がせて、お客さんの人生を狭めてしまったこと。境界を確認せず、買主に110万円を負担させてしまったこと。欲を出して高く売り出し、身内に130万円損をさせたこと。

どれも、聞き足らずが原因でした。

50年やってきて分かったことがあります。不動産の仕事は、物件を扱う仕事ではなく、人の事情を扱う仕事です。

物件は数字で測れます。事情は聞かないと分かりません。

だから今の私は、査定の前に必ず1時間はお話を伺います。ご家族のこと、これからのこと、お金の不安。それを聞かないと、値段も出せませんし、売るべきかどうかの判断もできません。

これは断言できます。あなたの事情を聞かずに、いきなり査定額だけ出してくる業者には、任せないほうがいいです。


最後に、これだけは申し上げたい


私は失敗をしてきました。だから今、慎重にやっています。

もし今、家や土地のことで迷っておられるなら、まだ何も決まっていない段階で構いませんので、一度お話を聞かせてください。

「売るかどうかも決めていない」で結構です。むしろ、そういう段階のほうがお役に立てます。決まってしまってからでは、選べる道が減ってしまいますから。

私は売り込みません。50年の間に、それで何度も痛い目を見ましたので。

あなたが損をしない道を、一緒に探させてください。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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