カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/10 07:46
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が50年この仕事をやってきた中で、何度も何度も見てきた「すぐ売れますよ」というセリフの裏側についてお話しします。
これは、不動産屋の営業マンがよく使う、ある種の殺し文句です。
「奥さん、この物件なら2週間で買い手がつきますよ」
「先生のマンション、すぐにでも売れます。お任せください」
こう言われて、ふっと心が動いた経験はありませんか。
もし今、その言葉を信じて媒介契約を結ぼうとしているなら、ちょっとだけ立ち止まってください。
そのセリフの裏には、売主にとって決して気持ちのいい話ではない仕掛けが、いくつも隠れているからです。
結論から申し上げます
「すぐ売れますよ」と言われたら、それは喜ぶ場面ではなく、警戒する場面です。
理由は3つあります。
「相場より安く設定されている」「ただの空手形に終わる」「両手取引狙いで囲い込まれる」。このどれかに当てはまることが、ほとんどです。
50年やってきて分かったことがあります。本当に売主の側に立つ業者は、軽々しく「すぐ売れます」とは言わないのです。
1. 不動産には「適正な売却期間」があります
まず、これを覚えておいてください。
戸建てもマンションも、適正な価格で売り出して、売れるまでに「3ヶ月から6ヶ月」かかるのが普通です。
これは私の感覚だけではありません。レインズ(不動産流通機構)のデータでも、近畿圏の中古マンションの平均成約期間は、おおむね90日前後です。
つまり、3ヶ月かかるのが「平均」であって、決して遅いわけではないのです。
ところが、営業マンが「2週間で売れます」「1ヶ月以内に決まります」と言ってきたら、これは平均よりはるかに早いということになります。
平均より早く売れるには、必ず理由があります。その理由を、営業マンが正直に話してくれるかどうか。それが、信用できる業者かどうかの分かれ道です。
2. 「すぐ売れる価格」とは、相場より安い価格のこと
はっきり申し上げます。
「すぐ売れる」というのは、ほとんどの場合「安いから売れる」という意味です。
不動産の値段というのは、相場というものが必ずあります。神戸市北区の藤原台で、築20年・3LDK・75平米のマンションなら、だいたいの相場が決まっています。
その相場どおりに出せば3〜6ヶ月、相場より100万円高ければ半年から1年、相場より200万円安ければ2週間から1ヶ月。これが現場の感覚です。
「2週間で売れる価格」というのは、相場より200万円から300万円安い価格、つまり「買主にとって超お買い得な価格」ということです。
買主にとってお買い得ということは、売主にとっては損ということです。
このカラクリを、営業マンは口に出しません。「すぐ売れますよ、お任せください」と笑顔で言うだけです。
3. 「すぐ売れますよ」が空手形に終わる仕組み
もう一つのパターンがあります。
それは、媒介契約を取るためだけに「すぐ売れますよ」と言って、実際には何の根拠もないというケースです。
これを業界では「高預かり」と言います。
最初に高い価格を提示して「この値段で売れます」と売主に夢を見せ、媒介契約を結んでしまう。媒介契約は通常3ヶ月縛りです。
そして契約後、1ヶ月もしないうちに「反応が悪いですね」「やはり少し値下げしましょうか」と言ってくる。
このとき売主は、もう他の業者に頼みにくい状況になっています。「あと2ヶ月待ってから他に頼もう」と考えるうちに、ずるずると値下げ誘導が始まります。
最初に「すぐ売れます」と言った業者ほど、後で「値下げしましょう」と言ってくる確率が高い。これは50年見てきて、断言できます。
4. 一番怖いのは「すぐ売れる」と言って囲い込むパターン
もっと厄介なのが「囲い込み」です。
囲い込みというのは、自社で売主から預かった物件の情報を、他社に教えないようにすることです。
なぜそんなことをするかというと、買主も自分の会社で見つけたい、つまり売主からも買主からも仲介手数料を取りたい、いわゆる「両手取引」にしたいからです。
「すぐ売れますよ」と言って預かった物件を、レインズには形だけ登録しても、他社から問い合わせが来ると「申し訳ありません、商談中でして」「先約が入っておりまして」と断ります。
この状態を業界では「物件が枯れる」と言います。
売主は「あんなに自信満々だったのに、なぜ売れないのか」と不思議に思うわけですが、実は売る気で売れないようにしているのです。
そして3週間も経つと、こう言ってきます。「やはり相場が動いていますね。100万円下げましょう」。
下がった価格で、自社の買主に紹介する。両手取引が成立する。売主だけが損をする。
5. Sさんの実例。「2週間で売れる」が「250万円の値下げ」に変わるまで
実例をひとつお話しします。
神戸市北区藤原台にお住まいだったSさんご夫婦の話です。お父さんが62歳、お母さんが59歳。お子さんが独立されたので、もう少しコンパクトな住まいに引っ越そうということで、マンションを売りに出されました。
築18年、3LDK、75平米、駅から徒歩8分。悪くない条件のお部屋でした。
最初に大手の業者さんに査定をお願いしたところ、「3,200万円で2週間以内に売れます」と言われたそうです。Sさんご夫婦は喜んで、その業者と専属専任媒介契約を結びました。
ところがどうでしょう。
2週間経っても、1ヶ月経っても、内見の問い合わせは2件しか来ません。
1ヶ月半経った頃、担当者がこう言ってきました。「やはり今は冬で動きが鈍いですね。3,000万円に下げましょう」。
Sさんは渋々応じました。しかしそれでも売れません。
3ヶ月の媒介契約が終わる直前、最終的に「2,950万円」で売れました。
最初に言われた「3,200万円で2週間」が、結果的に「2,950万円で3ヶ月」になったのです。差額は250万円。
私のところに相談に来られたのは、決済が済んだ後でした。「あのとき、適正価格をきちんと教えてくれる業者に頼んでおけば」と、Sさんはずいぶん悔しがっておられました。
最初の3,200万円が「すぐ売れる価格」でなかったことは明らかです。しかし、業者は「すぐ売れますよ」と言って預かり、結果的にSさんから時間と価格の両方を奪ってしまったわけです。
6. 早く売れることのデメリット
ここで、もう一つ大事なことを申し上げます。
「早く売れる」というのは、売主にとって必ずしも良いことではありません。
確かに、相続税の納付期限が迫っているとか、住み替え先の決済日が決まっているとか、急ぐ事情があるなら別です。
しかし、特に急ぐ理由がないのに「早く売れた」場合は、こう考えてください。
買主が即決した、ということは、買主から見て「お得だった」ということです。
不動産は、何千万円もの買い物です。買主だってさんざん悩むのが普通です。それを即決した、つまり「これは安い、逃したらもったいない」と思わせる価格だった、ということなのです。
その分、売主の手取りが減っています。
50年やってきて分かったことがあります。本当に売主の側に立つ仲介業者は、「3ヶ月かけて、適正価格で、ちゃんと比較検討する買主に売りましょう」と言うものです。
「すぐ売れます」と言ってくる業者は、売主の利益より、自社の手数料を優先している可能性が高いのです。
まとめ
「すぐ売れますよ」と言われたら、警戒してください。
それは「相場より安い価格設定」「単なる空手形」「両手取引のための囲い込み」のどれかである可能性が、非常に高いです。
不動産には適正な売却期間があり、3ヶ月から6ヶ月かかるのが普通です。それより極端に早いと言われたら、必ず理由を聞いてください。理由をきちんと説明できない業者は、信用しないほうがよいです。
そして「ご自身の物件の本当の相場はいくらなのか」を、複数の業者に聞いて、安すぎず高すぎず、媒介契約を急がない業者を選んでください。
最後に、これだけは申し上げたい
私は50年この仕事をやってきて、「すぐ売れますよ」という甘い言葉に乗せられて、結果的に200万円、300万円、ときには1,000万円も損をされた方を、何人も見てきました。
不動産は人生で最大の取引です。「早く売れる」より「正しい値段で売れる」ほうが、はるかに大事です。
神戸市北区・西宮北部・三田で売却を検討されている方。媒介契約を結ぶ前の段階で構いません。「うちの物件、本当はいくらで売れるんですか」「この業者の言うことは信用していいですか」、こういうご相談を、私のところに無料で持ち込んでください。
50年、現場でやってきました。売主が損をしないために、できる限りのことを正直にお話しします。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


