カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/08/20 09:43
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、田尾寺、二郎、道場。この三つのエリアについてお話しします。北区の中でも一番北、三田寄りの地域です。
「うちのあたりって、売れるんでしょうか」
このご相談を、私はこの三つの地域から本当によく受けます。
藤原台や有野台のお客様からは、あまりこういう聞かれ方をしません。「いくらで売れますか」と聞かれます。ところがこの地域の方は、金額より先に「売れるのか」を心配される。
その感覚は、間違っていません。
結論から申し上げます
この三つの地域は、売れます。ただし、時間がかかります。
藤原台の中古住宅なら3か月で決まるところを、この地域は半年から1年見ておいてください。これは断言できます。
理由は単純です。買いたい人の数が、少ないからです。
安くすれば早く売れる、という話ではありません。値段の問題ではなく、そもそも「この地域を探している人」の母数が違うのです。
ここを分かっていないまま売りに出すと、必ず値下げ地獄に落ちます。なぜ落ちるのかを、これからお話しします。
1. まず、この三つは別物だと知ってください
ひとくくりに「三田寄り」と言われがちですが、中身はまったく違います。
田尾寺は、住宅地です。
神戸電鉄三田線の駅があって、周りには一戸建ての団地が広がっています。上下水道も道路も整っていて、いわゆる普通の住宅地です。北区の中で見れば「郊外の住宅地」の顔をしています。
二郎は、農の土地です。
いちご狩りで有名な地域ですから、名前だけご存じの方も多いでしょう。ただ実際に歩いてみると、田んぼと畑と、その間に家がある。住宅地というより、農地の中の集落です。
道場は、自然と広さの土地です。
神戸電鉄の道場南口と、JR福知山線の道場駅がある。同じ「道場」でも、この二つの駅は距離が離れています。周りは川と山で、敷地が驚くほど広い家が普通にあります。
この三つを「北区の北のほう」と一括りにする業者がいます。
はっきり申し上げます。そういう業者に任せてはいけません。買い手の顔がまるで違うのですから、売り方も値段の付け方も変わって当然なのです。
2. 誰が買うのかを、はっきりさせておきます
50年やってきて分かったことがあります。売れない物件というのは、たいてい「誰に売るか」を決めないまま売りに出されています。
この地域を買う人は、大きく四つです。
- 三田や宝塚、大阪方面に通う人
- 車を前提に生活を組み立てている人
- 親御さんや親戚がこの近くにいる人
- 広い土地と自然が目的の人
ここに神戸の三宮へ毎日通う人は、ほとんど入ってきません。
田尾寺から三宮まで、神戸電鉄で乗り換えて1時間近くかかります。それなら同じ予算で、鈴蘭台や北鈴蘭台を選ぶ人が多い。これは好き嫌いの話ではなく、通勤時間という数字の話です。
逆に言えば、三田の駅前の新築マンションを見ていたご夫婦が、「同じ値段で庭付きの一戸建てが買えるのか」と気づいてこちらに流れてくる。これは実際によくあります。
だから私は、この地域の物件をお預かりしたとき、神戸市内向けの宣伝だけでは絶対に終わらせません。三田市、宝塚市、西宮北部。この方向を向いている人に届けないと、話が始まらないのです。
3. 売却期間の目安を、正直に申し上げます
よその不動産屋があまり言いたがらない数字を出します。
田尾寺の駅から徒歩15分以内、築30年前後の一戸建て。上下水道が入っていて、駐車場が2台。この条件で、だいたい4か月から6か月です。
二郎、道場の集落の中にある家。敷地は広いが、上下水道や道路の条件に癖がある。ここは8か月から1年、それ以上かかることもあります。
なぜ差が出るか。田尾寺は「住宅として普通に住める」ことを説明しなくていいからです。
二郎や道場の物件は、説明しなければならないことが多い。浄化槽なのか、道が私道なのか、市街化調整区域にかかっていないか、農地が付いていないか。買主が住宅ローンを組むときに、金融機関が確認したいことが多いのです。
確認が多いということは、それだけ時間がかかるということです。
ここを最初に聞かされていないと、3か月経ったところで売主さんが不安になる。不安になった売主さんは、必ずこう言います。「値段、下げましょうか」
ここが分かれ道です。
4. Aさんの話をします
道場町にお住まいだったAさん、当時72歳。
奥様を亡くされて、市街地のマンションに移りたいというご相談でした。土地は220坪。建物は築42年の木造。ご自宅の裏には物置と、使わなくなった小さな畑が付いていました。
最初に相談された業者さんは、2,480万円で売り出しました。理由は「広いから」です。坪単価に面積を掛けただけの値段でした。
4か月動きませんでした。内見はゼロです。
そこで業者は2,180万円に下げました。また2か月動きません。次に1,880万円。それでも動かない。
Aさんが私のところに来られたのは、売り出しから9か月経った頃でした。「もう1,500万円でもいいから」とおっしゃいました。
私は現地を見て、Aさんにこう申し上げました。値段の問題ではありません、と。
何が問題だったか。
まず、220坪という広さが、売り文句として使われていました。ところがこの地域で家を探している人にとって、220坪は「魅力」であると同時に「管理の負担」です。草刈りだけで年に何万円もかかる。そこの答えが用意されていなかった。
次に、浄化槽であることも、私道の持分のことも、資料に一言も書かれていませんでした。書いていないから、興味を持った買主が調べて、不安になって消えていく。
そしてもう一つ。神戸市内のお客様にしか案内されていませんでした。
私がやったことは三つです。
- 裏の畑を含めた区画の使い方を図にして、「駐車場4台と家庭菜園と犬走り」という具体的な絵を示した
- 浄化槽の交換費用、私道の状況、境界の位置を、こちらから先に全部出した
- 三田と宝塚方面のお客様に、真正面から出した
売れたのは、その3か月後です。1,950万円でした。
買われたのは、三田市内にお勤めの40代のご夫婦です。犬を3頭飼っておられました。「探していたのはこれです」とおっしゃいました。
最初の業者が9か月かけて1,880万円でも売れなかった家が、出し方を変えたら1,950万円で決まった。
家は同じです。値段の付け方でも、運でもありません。届け先が違っただけです。
5. 業界の裏側を申し上げます
この地域で一番多い被害は、値下げではありません。放置です。
はっきり申し上げます。反響が少ない地域の物件は、業者にとって「手間がかかる割に売れない在庫」です。
専任媒介で預かるだけ預かって、レインズには載せる。自社のホームページにも一応載せる。けれど、そこから先の営業を何もしない。
なぜそんなことをするのか。
一つは、看板を増やしたいからです。売り物件をたくさん抱えている会社に見せたい。
もう一つは、そのうち売主さんが値段を下げてくれるのを待っているからです。下がるところまで下がれば、最後は買取業者に流せばいい。そこで自分は両手で手数料を取る。
この地域では、これが本当に多い。
半年間、内見が一度もなかった。それなのに担当者から連絡が来るのは月に一度、「まだ動きがないですね」という電話だけ。心当たりのある方は、少なくないと思います。
もう一つ申し上げておきます。買取査定の話です。
「この地域は流通性が低いですから」と言われて、相場の半値を提示されるケースがあります。1,900万円で売れる家に、900万円の買取価格を出してくる。
流通性が低いのは事実です。ただ、それは「時間がかかる」という意味であって、「半値でしか価値がない」という意味ではありません。
時間を買うために半分を捨てるかどうかは、売主さんが決めることです。業者に決めさせてはいけません。
6. デメリットも、隠さず書きます
ここまで読んで「うちも売れそうだ」と思われた方に、正直なことを申し上げます。この地域の売却には、はっきりした弱点があります。
一つ目。値段の根拠が作りにくいことです。
藤原台なら、同じ団地で年に何十件も取引があります。だから「お隣が3,200万円で売れました」と言える。ところが二郎や道場は、成約事例が年に数件しかありません。だから査定価格の幅が広くなります。私が出す査定も、正直に「1,800万円から2,200万円の間です」という言い方になることがあります。
二つ目。買主のローンが通りにくい場合があることです。
市街化調整区域にかかっている、道路が建築基準法上の道路でない、農地が混じっている。こういう物件は、金融機関によって融資の判断が分かれます。買いたいという人が現れても、ローンで白紙になることが実際にあります。
三つ目。維持費が売れるまで続くことです。
固定資産税は毎年かかります。空き家にしていれば、草刈りと風通しに年に5万円から10万円。1年かかるということは、その分だけ持ち出しが増えるということです。
四つ目。冬です。
道場や二郎は、北区の中でも冷えます。雪の日は坂道が凍る。これは住んだ人にしか分からない話で、内見の季節によって印象が変わります。私は買主様には必ずこの話をします。売主様には嫌がられることもありますが、隠して売った家は、後で必ずもめます。
7. では、どうすればいいか
この地域で損をせずに売る方法を、順番に申し上げます。
最初に、売却期間を1年と決めて動くことです。
3か月で焦らない。半年で下げない。この覚悟が最初にあるかどうかで、最終の手取りが200万円も300万円も変わります。
次に、物件の弱点を先に全部出すことです。
浄化槽、私道、境界、農地、擁壁。隠して後から出てくると、買主は必ず値引きを言ってきます。先に出しておけば、それは「正直な売主」という信用になります。この地域では、この信用が効きます。
そして、三田方面を向いている業者に頼むことです。
神戸市内の駅前にしか看板を出していない会社が、三田や宝塚のお客様を持っているとは限りません。「うちのお客様で、この地域を探している方はいらっしゃいますか」と、はっきり聞いてください。答えに詰まる会社は、預けても放置されます。
最後に、専任にするなら期間で区切ることです。
3か月契約を、成果を見ずに自動更新しないでください。3か月で内見が一度もなかったのなら、それは値段のせいではなく、届け方のせいです。担当者に「この3か月で何をしてくださいましたか」と聞いてください。答えられない会社は、次の3か月も同じです。
まとめ
田尾寺、二郎、道場は、売れない地域ではありません。時間がかかる地域です。この二つは、まったく違います。
売れない地域だと思うと、人は値段を下げます。
時間がかかる地域だと分かっていれば、人は待てます。
待てた人が、正しい値段で売れています。焦った人が、半値で手放しています。50年見てきて、この差が一番大きいと感じます。
220坪のAさんの家は、9か月放置されて1,880万円でも売れませんでした。それが、届け先を変えて3か月で1,950万円になりました。土地も家も、一寸も変わっていません。
最後に、これだけは申し上げたい
もし今、田尾寺、二郎、道場のあたりに、売るかどうか迷っているご実家やご自宅があるなら、まず「いくらか」より先に「誰が買うのか」を聞いてください。
その答えを具体的に言える相手なら、任せて大丈夫です。「まあ、頑張って探します」としか言わない相手なら、危ないです。
売る決心がついていなくても構いません。何年か先の話でも構いません。この地域は、動く前に知っておくべきことが本当に多いところです。
私は50年、この北区だけを見てきました。田尾寺の団地も、二郎の畑も、道場の川沿いも、自分の足で何度も歩いています。お茶を飲みながらの世間話で構いませんので、いつでも声をかけてください。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


