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私がこの仕事で一番大切にしていること
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/08/08 07:19

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、私がこの仕事で一番大切にしていることを、一つだけ書きます。

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一つだけ、というのが大事です。

十個も二十個も並べる不動産屋を、私は信用しません。パンフレットに「誠実」「迅速」「地域密着」「お客様第一」と四つも五つも並べてある会社ほど、いざ契約の場になると何も守っていない。50年見てきて、これははっきりしています。

だから私は、一つに絞りました。守れることしか書かない、というのも私なりの正直さのつもりです。


結論から申し上げます


私がこの仕事で一番大切にしているのは、

都合の悪いことを、契約の前に、こちらから言う。

これだけです。

聞かれたら答える、ではありません。こちらから、先に言う。しかも契約が済んだあとではなく、お客様がまだ「やめる」という選択肢を持っている段階で言う。

たったこれだけのことです。難しい理屈は一つもありません。

けれど、これができている不動産屋は、私が知る限り半分もいません。


1. なぜ「聞かれたら答える」では駄目なのか


お客様は、何を聞けばいいのか分からないからです。

これは断言できます。不動産の取引で損をする人は、頭が悪いのでも欲張りなのでもありません。「そこに聞くべきことがある」と気づけないだけです。

前の道が私道で、その持ち主が誰なのか。水道管が隣の敷地の下を通っているのか。擁壁が何年前に積まれたもので、今の基準を満たしているのか。

こんなものは、素人が思いつくはずがありません。家を買うのは人生で一度か二度。私は50年で何千件も見てきた。この差は、努力では埋まりません。

ですから、知っている側が先に言うしかない。

「聞かれなかったから言わなかった」

これは業界で一番よく使われる言い訳です。そして法律上は、これで通ってしまうことが少なくない。だから私は、自分に禁じました。


2. 言うタイミングは「契約前」でなければ意味がない


不動産の取引には、重要事項説明という手続きがあります。契約の直前に、宅建士が物件の欠点も含めて読み上げるものです。

法律を守るという意味では、ここで言えば違反ではありません。

けれど、はっきり申し上げます。あの場で欠点を初めて聞かされて、「やめます」と言えるお客様は、100人に3人もいません。

考えてみてください。手付金を用意して、印鑑を持って、家族の予定も調整して、その席に座っている。ご主人は会社を半日休んでいる。奥さんは実家に報告済み。子どもの学校の話まで進んでいる。

そこで「実は前面道路が私道で、掘削の承諾が取れていません」と言われて、立ち上がれますか。

立てないんです。だから業界は、その席まで黙っていられる。

私はこれを、卑怯だと思っています。だから私は、案内の車の中で言います。まだ何も始まっていないうちに、です。


3. 実際にあった話をします


3年前、藤原台のある中古戸建てを、Bさんご夫婦(ご主人44歳、奥さん41歳、お子さん2人)にご案内しました。

築28年、価格は2,780万円。日当たりがよく、間取りも学区も申し分ない。奥さんは玄関を入って30秒で「ここがいい」とおっしゃいました。ご主人も乗り気でした。

私はその場で、三つ申し上げました。

  • 裏の擁壁が築年数と同じ28年もので、今の基準では確認が取れていないこと
  • そのため将来売るときに、買主のローンが通りにくくなる可能性があること
  • 直すとなれば、規模から見ておそらく300万円前後かかること

奥さんの顔から、笑顔が消えました。

正直に申し上げると、私は一瞬、言わなければよかったかと思いました。人の喜んでいる顔を自分で消すのは、50年やっても慣れません。

ご夫婦はその日、決めずに帰られました。

それから2週間、連絡がありませんでした。私は「他社で買われたな」と思っていました。実際、そういうことはよくあります。

3週間目に電話が鳴りました。

「あの家、やっぱり買います。あきちゃんが言うてくれた300万を、値段の交渉に使いたいんですけど、できますか」

私は売主側と交渉し、最終的に2,600万円でまとまりました。180万円下がった計算です。

そのうえでBさんは、擁壁の調査だけ先にやっておきたいとおっしゃった。私も同意しました。

この話には、続きがあります。

去年、Bさんの奥さんのお姉さん夫婦が、家を売りたいとうちに来られました。お姉さんはこうおっしゃいました。

「妹から聞いてます。悪いことを先に言う不動産屋さんやと」

私が50年で欲しかったのは、この一言です。売上ではありません。


4. 業界がなぜ「先に言わない」のか、本当の理由を書きます


きれいごと抜きで書きます。

一つ目。言えば、その場で契約が壊れるからです。

不動産の営業には、たいてい月ごとの数字があります。今月あと1本という状態で、目の前のお客様が乗り気になっている。そこで欠点を出せば、まず飛びます。飛べば数字が届かない。届かなければ、上司に詰められる。

だから黙る。悪人だから黙るのではありません。追われているから黙るんです。ここが厄介なところです。

二つ目。両手取引の構造です。

売主からも買主からも手数料をもらう形になると、その物件は「絶対に自分のところで決めたい」物件になります。買主に不利な情報を出すと、その決めたい取引が壊れる。すると、口が重くなる。

これは個人の良心の問題ではなく、仕組みの問題です。仕組みが黙らせるんです。

三つ目。売主自身が隠したがることがあります。

雨漏りの跡、シロアリの駆除歴、近所とのもめごと。売主から「言わんでええやろ」と言われることは、正直に申し上げて、今でもあります。

私はこれを断ります。断って媒介を取れなかったことも、一度や二度ではありません。


5. 正直に言うことの、デメリットも書きます


いいことばかりではありません。ここを書かないと、私が嫌っている「きれいな不動産屋」と同じになってしまいます。

まず、売れるのが遅くなります。

うちが預かった物件は、他社より成約まで平均して1か月ほど長いと思います。欠点を先に出せば、当然、迷う人が出るからです。

次に、価格が下がることがあります。

Bさんの件がまさにそうで、売主から見れば180万円の値下げでした。私が黙っていれば、その180万円は下がらなかったかもしれない。売主側から見れば、私は損をさせた不動産屋です。

ただ、私はそれでいいと思っています。あとで擁壁のことが発覚して契約解除になったり、引き渡し後に揉めたりするほうが、売主にとってはるかに痛い。50年で、そういう後始末を何十件も見てきました。

それから、お客様を不安にさせます。

「そんなに欠点ばっかり言われたら、どの家も買えなくなる」

そう言われたことがあります。ごもっともです。欠点のない家など一軒もありませんから、全部言えば全部が不安になる。

ですから私は、必ずこう付け加えるようにしています。この欠点は、いくらで直るのか。直せないものなのか。直せないなら、いくら値段に反映させるべきなのか。

欠点を言いっぱなしにするのは、ただの無責任です。そこまで言って初めて、正直と呼べます。

最後に、儲かりません。

これははっきり申し上げます。50年やって、私は大きな財産を作れませんでした。同期で派手にやった連中のほうが、はるかに稼いでいます。

けれど、私は今も北区で店を開けていて、彼らの何人かはもういません。


6. なぜ、これを一番大切なことに選んだのか


若い頃の私は、こうではありませんでした。

30代の頃、私は「言わない側」の人間でした。詳しくは以前にも書きましたが、道路の件を黙ったまま契約まで進めて、引き渡しのあとにお客様から電話をもらったことがあります。

「田中さん、知ってはったんですか」

この一言を、50年経った今でも覚えています。私は何も答えられませんでした。

50年やってきて分かったことがあります。

不動産屋が持っている一番の武器は、情報です。そしてその情報を、出すか出さないかを決められる立場にいる。

出さなければ、その日は儲かります。出せば、その日は損をします。

けれど20年、30年という単位で見ると、話がひっくり返る。出さなかった不動産屋のところには、二度目のお客様が来ません。紹介も来ません。地元で商売が続かなくなる。

私が50年続けられた理由は、腕がいいからではありません。出す側を選んだから、それだけです。


まとめ


私がこの仕事で一番大切にしていることは、都合の悪いことを、契約の前に、こちらから言うことです。

聞かれてから答えるのでは遅い。重要事項説明で言うのでも遅い。お客様がまだ「やめます」と言える段階で、こちらから出す。

そのせいで、契約は飛びます。価格は下がります。儲かりません。

それでも私はこれを選びました。50年やって、この選び方が間違っていたとは一度も思っていません。


最後に、これだけは申し上げたい


もし今、どこかの不動産会社と話を進めていらっしゃるなら、一度だけ聞いてみてください。

「この物件の、一番悪いところを教えてください」

この質問に、10秒黙ってから答える会社は、たぶん考えてから正直に言おうとしています。すぐに「特にありません」と返ってくる会社は、見ていないか、言う気がないかのどちらかです。

そして、うちに聞きに来ていただいても構いません。他社で進んでいる話でも結構です。売る予定がなくても結構です。

私は、その物件の悪いところから先にお話しします。それが、私の50年です。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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