カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/21 05:39
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
前回、中古マンションを見るときは「管理費」「修繕積立金」「総戸数」の3つを見てくださいというお話をしました。今日はその続きで、修繕積立金が足りているかどうかを、どの書類のどこで見抜くかについてお話しします。
前回の記事を読んでくださった方から、さっそくお電話をいただきました。
「あきちゃん、積立金が足りてるかどうかって、どうやって調べたらええの」
ごもっともです。大事なのは分かった、で、どこを見るのか。
正直に申し上げて、地味な話です。書類の話ですから。間取りを見るような楽しさはありません。
けれど、この地味な書類を15分読むかどうかで、数年後に「一時金として120万円お願いします」という通知が郵便受けに入るかどうかが決まります。
15分で120万円です。これほど割のいい15分を、私は他に知りません。
結論から申し上げます
見るべき書類は2つです。長期修繕計画書と重要事項調査報告書。この2枚を管理会社から取り寄せて、4つの数字を拾ってください。それだけです。
1戸あたりの積立金残高。計画の期間。値上げの予定。滞納額。
この4つが分かれば、そのマンションの積立金が足りているのか足りていないのか、8割方わかります。
これは断言できます。同じ部屋を3回見に行くより、この2枚を1回読むほうが、よほど役に立ちます。
そして厄介なことに、この2枚は「黙っていたら出てこない」ことがあります。その話も後半でいたします。
1. 1戸あたりの積立金残高を、自分で割り算してください
まず、いちばん簡単で、いちばん効く数字です。
重要事項調査報告書には「修繕積立金の残高」が書いてあります。マンション全体でいくら貯まっているか、という金額です。たとえば「1,850万円」と書いてある。
これを見て「1,850万円もあるのか、けっこうあるな」と思ってはいけません。総戸数で割ってください。
60戸のマンションなら、1戸あたり30万8千円です。100戸なら18万5千円です。
私の目安を申し上げます。築20年を超えたマンションで、1戸あたりの残高が「50万円」を切っていたら黄色信号、「30万円」を切っていたら赤信号だと思ってください。
なぜか。大規模修繕の工事費は、1戸あたり100万円から150万円くらいかかるからです。
足場を組んで、外壁を塗って、屋上の防水をやり直して、鉄部を塗装する。これで1回。12年から15年に1度、これが回ってきます。
残高が1戸あたり30万円で、次の工事に1戸あたり130万円かかる。差額の100万円はどこから出るのか。
毎月の積立金を上げるか、一時金を集めるか、借金するか。この3つしかありません。あなたが買ったあとに、この3つのどれかがやってきます。
2. 長期修繕計画の「期間」を見てください
次が期間です。長期修繕計画書の表紙、あるいは1枚目に「計画期間 平成◯年から◯年間」と書いてあります。
ここが「10年」になっていたら、注意が必要です。
なぜか。大規模修繕は12年から15年周期です。計画期間が10年しかないと、次の大規模修繕が計画の外に出てしまう。つまり、いちばん大きな出費が表に載っていない状態です。
国の指針では「30年以上、かつ大規模修繕が2回入る期間」とされています。
きちんと管理されているマンションは、30年分の表を作っています。そこには2回分の大規模修繕と、給水管の更新と、エレベーターの更新まで書き込まれています。
10年分しかない計画書が出てきたら、私はこう聞きます。「この計画、いつ作られたものですか」
10年前に作ったきり一度も見直していない、というマンションが本当にあります。そういうところは、まず間違いなく足りていません。
3. 「値上げの予定」が書いてあるかどうか
3つ目です。ここが意外と見落とされます。
長期修繕計画書の後ろのほうに、収支の表があります。年度ごとに「収入」と「支出」と「残高」が並んでいる表です。
この表の「残高」の列を、上から下まで指でなぞってください。どこかでマイナスになっていませんか。
マイナスになっている年があれば、その時点で資金がショートするという意味です。計画書が自分で「足りません」と言っているわけです。
そして、その下に小さく書いてあることがあります。
「第◯年度より、修繕積立金を月額◯◯円に改定する前提」
これが段階増額方式というやつです。最初は安く設定しておいて、あとから上げていく。新築で売るときに「月々の負担が軽いですよ」と見せるために、こういう設定にされたマンションが山ほどあります。
買うときは月6,500円。15年後には月19,000円。3倍近くになります。
はっきり申し上げます。これは詐欺ではありません。ちゃんと計画書に書いてあります。ただ、誰も読んでいないだけです。
4. 滞納額を見れば、住人の空気が分かります
4つ目は滞納です。重要事項調査報告書には「管理費等の滞納額」という欄があります。ここに金額が入っています。
ゼロなら結構です。問題は、何十万円、何百万円と入っている場合です。
滞納額が積立金残高の5パーセントを超えていたら、私は相当慎重になります。
理由は2つあります。ひとつは、単純にお金が足りなくなるからです。
もうひとつが大事です。滞納が多いマンションは、住んでいる方の入れ替わりが激しいか、高齢化が進んでいるか、そのどちらかだということです。
年金暮らしになったご高齢の方が、月2万円の管理費と積立金を払い続けるのは、正直しんどい。私はそういう方を何人も見てきました。責められる話ではありません。
ただ、そういうマンションで「積立金を月8,000円上げましょう」という議案を総会にかけても、通りません。
数字の裏に人がいます。滞納額は、そのマンションの住人の体力を表しています。
5. 総会議事録は、いちばん出てこない書類です
最後にもうひとつ。直近3年分の総会議事録を見せてもらってください。ここに、そのマンションの本当の姿が出ます。
- 積立金の値上げ案が出たけれど否決された
- 修繕工事の予算が足りず、工事の内容を削った
- 理事のなり手がいなくて、輪番制が回らなくなっている
こういうことは、長期修繕計画書には書いてありません。議事録にしか書いてありません。
そして、この議事録がいちばん出てきません。
「個人情報が含まれますので」と言われることがあります。氏名を伏せてもらえばいいだけの話です。それでも渋られるなら、何かあると思ってください。
6. Cさんご夫婦が、3年後の120万円を回避した話
具体的な話をします。
Cさんご夫婦、ご主人が52歳、奥様が49歳。鈴蘭台の中古マンションを見に来られました。
築32年、総戸数60戸、3LDKで2,180万円。日当たりもよく、室内はリフォーム済みで綺麗でした。奥様は「ここがいい」とおっしゃっていました。
管理費が月9,800円、修繕積立金が月6,500円。
この積立金の額を見て、私は引っかかりました。築32年で月6,500円は、明らかに安すぎます。
管理会社に重要事項調査報告書を取り寄せました。3,300円かかりました。
積立金残高、1,850万円。60戸で割ると1戸あたり30万8千円。
そして長期修繕計画書です。3年後に第2回大規模修繕、予定工事費8,700万円と書いてありました。
8,700万円に対して残高1,850万円。3年分の積立を足しても2,600万円ほどです。6,100万円足りません。1戸あたり約102万円です。
さらに議事録を見ると、5年前に「積立金を月13,000円に改定する」という議案が出て、否決されていました。
私はCさんにこう申し上げました。
「このお部屋は良いです。ただ、3年後に100万円前後の一時金か、月々の積立金が2倍になるか、どちらかが来ます。それを分かった上でなら、止めません」
Cさんは1週間考えて、見送られました。
結局、有野台の築28年、総戸数78戸のマンションを買われました。こちらは修繕積立金が月14,200円。Cさんが最初に「高いですね」とおっしゃった物件です。
けれど積立金残高は7,300万円、1戸あたり93万円ありました。大規模修繕は過去に2回実施済みで、計画は30年分、収支表の残高はどの年度もプラスでした。
月々の負担は8千円近く増えました。年間で約9万6千円です。
でも、3年後に120万円の請求書は来ません。
今年で4年目になりますが、先日お会いしたときに「あのとき止めてくれて助かった」と言っていただきました。
7. 業界の裏側を申し上げます
ここから本音の話です。
まず、重要事項調査報告書は、頼めば出ます。管理会社が有料で発行します。3,000円から1万円くらいです。本来は売主側の不動産屋が取り寄せて、買主に説明するものです。
ところが、契約の直前まで取り寄せない業者がいます。
なぜか。早く取り寄せて、積立金が足りないことが分かってしまうと、話が壊れるからです。
契約日の重要事項説明のときに、大量の書類の中に紛れ込ませて、早口で読み上げる。買主は緊張していますから、頭に入りません。
これは実際にあることです。私は他社の重説に同席していて、何度も見ました。
次に、営業トークです。「このマンション、管理費も積立金も安くてお得ですよ」
はっきり申し上げます。これは褒め言葉ではありません。
積立金が安いということは、将来の工事のお金が貯まっていないということです。安いのには理由があります。褒めるところではなく、疑うところです。
3つ目。資金計画表です。
住宅ローンの返済額と、管理費と積立金を足した「月々のお支払い」を書いた紙を渡されます。あの紙には、将来の値上げが入っていません。今の金額のまま30年並んでいます。
長期修繕計画書に「10年後に月額18,000円に改定」と書いてあっても、資金計画表には反映されません。
聞かれなければ言わない。この業界にはそういう文化が、今も残っています。
4つ目。これがいちばん根が深い話です。
管理会社と工事会社が同じグループだと、大規模修繕の見積もりが高くなりがちです。
相見積もりを取らず、管理会社が持ってきた1社だけで決める。8,700万円の工事が、他社に見積もらせたら6,500万円だった、ということが普通にあります。その差額の2,200万円は、住人が払っています。
こういうことが起きているかどうかも、総会議事録を読めば分かります。「相見積もりを3社から取得」と書いてあれば、そのマンションの理事会はまともです。
8. デメリットも正直に申し上げます
ここまで「積立金がしっかりしているマンションを選びなさい」と申し上げてきました。けれど、デメリットがあります。
月々が高いです。
積立金が月15,000円のマンションを買えば、管理費と合わせて月25,000円前後になります。年間30万円。30年で900万円です。
この900万円は、住宅ローンとは別に出ていきます。ローンの審査でも、この金額は「返済負担率」の計算に含まれません。だから審査は通ってしまう。でも家計には確実に効きます。
積立金が安いマンションのほうが、毎月の生活は楽です。それは事実です。
私は、それでも高いほうを勧めます。なぜなら、あとから来るお金のほうが払えないからです。
毎月1万5千円なら払えます。ある日いきなり120万円と言われたら、多くのご家庭は払えません。払えなければ借りることになり、そのマンションは「修繕積立金の借入金がある物件」として、売るときに嫌われます。
もうひとつ、正直に申し上げます。書類を読んでも、外れることはあります。
私は2018年に、あるお客様に「このマンションは資金計画がしっかりしているから大丈夫です」と申し上げました。実際、計画書の残高はどの年度もプラスでした。
ところがその5年後、そのマンションは積立金を4割値上げしました。理由は工事費と人件費の高騰です。計画を立てた時点の単価では、もう工事ができなくなっていました。
私の読み違いです。お客様には謝りに行きました。
50年やってきて分かったことがあります。書類を読めば確率は上げられます。でも100パーセントにはなりません。
だから私は「大丈夫です」ではなく「ここは危ないです」を言うようにしています。危ないほうの判定は、まず外れません。
まとめ
長期修繕計画書と重要事項調査報告書。この2枚を取り寄せてください。そして4つの数字を見てください。
- 1戸あたりの積立金残高が50万円以上あるか
- 計画期間が25年以上あるか
- 収支表の残高がマイナスになる年がないか
- 滞納額が残高の5パーセントを超えていないか
これに総会議事録の3年分を足せば、素人の方でも判断できます。専門知識は要りません。割り算ができれば十分です。
積立金が安いマンションは、お得なのではありません。あとで払うだけです。
築40年でも積立金がしっかり貯まっているマンションは、買っていいです。築15年でも空っぽのマンションは、やめておいたほうがいい。
築年数ではありません。お金が貯まっているかどうかです。
最後に、これだけは申し上げたい
書類を取り寄せるのを、遠慮しないでください。
「そこまで言うと、嫌がられるんじゃないか」とおっしゃる方がおられます。
2,000万円を超える買い物です。3,300円の書類を1枚頼むくらいで嫌がるような業者なら、その時点で分かることがあります。
私は、お客様から書類を求められたら、ありがたいと思います。あとで揉めなくて済むからです。
ご自分で管理会社に連絡するのが難しければ、私が代わりに取り寄せます。読み方が分からなければ、一緒に並んで読みます。表の見方だけなら、30分あれば説明できます。
お売りになる側の方も同じです。ご自分のマンションの積立金の状態を、売り出す前に把握しておいてください。足りていないなら、それを踏まえた値段の付け方があります。隠して売り出すと、買主のローン審査や重説の段階で必ず出てきて、そこから値引き交渉が始まります。
神戸市北区のマンションのことでしたら、だいたい把握しております。気になる物件があれば、物件名を教えていただくだけで構いません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


