カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/26 07:23
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、昭和の家の間取りをどう変えるか、つまり「和室」「長い廊下」「離れ離れの水回り」をどう扱えばいいのかについてお話しします。
ここ数回、中古住宅を買って直すお話を続けてきました。
北区で中古の一戸建てを探すと、昭和50年代、60年代に建った家がたくさん出てきます。
玄関を入ると長い廊下があって、奥に和室が二間続き、台所は北側の暗い場所、お風呂とトイレは家の反対側。そういう間取りです。
内覧に来られた方の多くが、こうおっしゃいます。
「壁を全部取っ払って、広いLDKにしたいんです」
お気持ちはよく分かります。
けれど、その一言から始まって、予算が倍になった方、住んでみたら冬が寒くて後悔した方を、私は何人も見てきました。
今日はそのあたりを、正直にお話しします。
結論から申し上げます
昭和の家の間取りは、全部を変えようとしてはいけません。
変えるのは「台所まわりと、つながる和室一間」だけ。
長い廊下は無理に消さない。お風呂やトイレの位置は動かさず、中身だけ替える。
これは断言できます。昭和の家のリフォームで損をする方は、壁を抜きすぎた方と、水回りを動かした方です。
逆に、動かす場所を絞った方は、予算の中でちゃんと住みやすい家にされています。
1. 和室は全部つぶさず、一間だけ変える
昭和の家には、6畳と8畳の和室が襖でつながった「続き間」がよくあります。
昔は法事や親戚の集まりに使った部屋です。
今の暮らしで、二間とも和室のまま使う方はほとんどいません。ですから手を入れること自体は正解です。
ただ、私がお勧めするのは、台所に近い一間だけをフローリングにして、台所とつなげることです。
もう一間は畳のまま残すか、表替えだけにしておく。
親御さんが泊まりに来たとき、体調を崩して横になりたいとき、孫が昼寝をするとき。畳の部屋が一つあると、本当に助かります。
押入れは、中段を外して洋服を掛けられるようにするだけで、立派な収納になります。
6畳の畳をフローリングに替える工事は、床の下地の状態にもよりますが、私の見てきた範囲でおおよそ20万円から30万円前後です。二間とも替えれば、その倍かかります。
2. 長い廊下には、抜けない理由がある
「この廊下がもったいない。部屋に取り込みたい」
これもよく聞くご相談です。
けれど、昭和の木造住宅では、廊下の両側の壁が家を支える「耐力壁」になっていることが少なくありません。
特に昭和56年5月以前に建築確認を受けた、いわゆる旧耐震の家は、もともと壁の量が今の基準より足りないことが多いのです。
そこからさらに壁を抜けば、補強の柱や金物、場合によっては梁の入れ替えが必要になります。
もう一つ、廊下には「寒さを止める」役目があります。
玄関の冷たい空気が、廊下で一度止まってから部屋に入る。昭和の家は断熱材が薄いので、この廊下のおかげで居間がなんとか暖かかったのです。
廊下を消すなら、壁と窓の断熱も一緒にやらないと、冬は広いだけの寒い部屋になります。
私は、廊下は残して、壁の一部に棚を付けて本や掃除道具の収納にする方法をよくお勧めしています。
3. お風呂とトイレは、場所を動かさず中身を替える
昭和の家は、お風呂、洗面、トイレがばらばらの場所にあることがよくあります。
「水回りを一か所にまとめたい」というお気持ちも分かります。
けれど、水回りを動かすと、給水と排水の配管を床下で延ばし直すことになります。排水には勾配が必要なので、床を上げたり、基礎に穴を開けたりすることもあります。
在来のタイル張りのお風呂をユニットバスに替えるだけなら、北区の相場でおおよそ100万円から150万円。
同じことを場所を移してやると、そこに配管と床と壁の工事が乗って、さらに100万円以上かかることが珍しくありません。
場所はそのまま、中身を新しくする。
そのうえで、脱衣所に暖房を付ける、廊下とお風呂の段差をなくす、手すりを付ける。こちらにお金を回したほうが、暮らしはずっと楽になります。
昭和の家のお風呂は、北側の寒い場所にあることが多く、冬のヒートショックが本当に怖いのです。
4. 間取りより先に、床下と壁の中を見る
どこを変えるか決める前に、必ずやっていただきたいことがあります。
床下と屋根裏の点検です。
土台が湿気で傷んでいないか、シロアリの跡はないか、雨漏りのしみはないか。
ここに問題があると、間取りをいくら考えても、そのお金は下地の修理に消えていきます。
点検自体は数万円でできることが多いので、買う前、少なくとも契約の前にやってください。
実例:900万円の家に、1,300万円のリフォーム見積り
北区の南のほうで、築46年の木造2階建てを買われたAさんご夫婦のお話です。
ご主人が59歳、奥様が56歳。お子さんが独立されて、マンションから一戸建てに移りたいというご相談でした。
家は延床およそ30坪、価格は900万円。玄関から奥へ長い廊下、和室が二間続き、台所は北側、お風呂は台所と反対の端にありました。
Aさんご夫婦は、買う前にリフォーム会社で見積りを取っておられました。
1階の壁を抜いて廊下も和室も全部LDKにする。お風呂と洗面を台所の横へ移す。その見積りが1,300万円でした。
家と合わせて2,200万円を超えます。退職金を当てにしても、老後の資金がほとんど残らない金額です。
私はご夫婦と一緒にもう一度家を見て回りました。
床下を見てもらうと、お風呂の周りの土台が少し傷んでいました。これは直さなければいけません。
そのうえで、こう変えました。
- 台所に近い和室一間だけをフローリングにして、台所とつなげて16畳ほどのLDKにする
- 奥の和室は畳の表替えだけにして、奥様のお母様が泊まりに来たときの部屋にする
- 長い廊下はそのまま残し、片側の壁に奥行きの浅い棚を付ける
- お風呂は場所を動かさずユニットバスに替え、傷んだ土台もこのとき直す
- トイレは便器を替えて手すりを付け、脱衣所に暖房を付ける
- 窓は、居間と寝室だけ内窓を付ける
別の工務店で取り直した見積りは680万円でした。
最初の見積りより620万円少ない金額です。
入居されて最初の冬、奥様から電話がありました。
「あきちゃん、廊下を残しておいてよかった。玄関を開けても、居間まで寒い風が来ないのよ」
ご主人は廊下の棚に釣りの道具を並べて、うれしそうにしておられました。
逆に、壁を抜きすぎて後悔したBさん
一方で、別の業者さんの勧めで1階をほぼ全部抜いたBさん(60代・ご夫婦)もいらっしゃいます。
工事が始まってから、抜いた壁の代わりに補強が必要だと分かり、追加で180万円。
さらに、LDKの真ん中に補強の柱が2本残り、思っていた広々とした部屋にはなりませんでした。
断熱の工事は予算が足りずに見送ったため、冬は石油ファンヒーターを2台回しても足元が冷えるそうです。
Bさんは「最初に言ってくれていたら、こんなに抜かなかった」とおっしゃっていました。
5. 業界の裏側:大きな工事を勧める理由
はっきり申し上げます。
「どうせやるなら全部やりましょう」「スケルトンにして一から作り直しましょう」という提案には、業者側の都合が入っていることがあります。
工事は、金額が大きいほど利益も大きくなります。間取りを大きく変える工事は、見積りの中身が素人には分かりにくく、比べにくいのです。
もう一つ、よくあるのが「解体してみたら追加工事が出ました」という話です。
古い家ですから、開けてみて分かることは確かにあります。
けれど、中には最初の見積りをわざと安く出して契約を取り、解体後に追加で取り戻す業者もいます。床下や屋根裏を見ずに出した見積りは、そういう意味でも信用しすぎないでください。
私たち不動産屋にも反省すべき点があります。
古い家を売るとき、「リフォームすれば見違えますよ」と軽く言ってしまう営業がいます。売れればいいので、いくらかかるかまでは責任を持たない。
また、業者が安く買い取って表面だけきれいにした「リフォーム済み物件」も増えました。クロスと床は新しくても、壁を抜いたところの補強や、配管の中まで直してあるかは、図面と工事の記録を見ないと分かりません。
「どこを、どう直したのか」を書いた書類を出してもらってください。出せない業者は、それが答えです。
6. デメリットも正直に申し上げます
動かす場所を絞るやり方にも、もちろんマイナス面があります。
まず、雑誌やテレビで見るような「開放的な広いLDK」にはなりません。間取りは昭和の骨組みのままです。
廊下を残せば、そのぶん部屋は狭くなりますし、家具の置き方にも制約が出ます。
水回りを動かさないので、家事の動線が理想どおりにならないこともあります。
それから、これも覚えておいてください。
リフォームにかけたお金は、売るときの値段にそのまま乗るわけではありません。
北区の築40年を超える木造住宅なら、700万円かけて直しても、売るときの値段が上がるのはその一部だと思っておいたほうがいい。リフォームは「自分たちが快適に住むため」のもので、財産を増やすためのものではありません。
そして、どれだけ絞っても、開けてみて傷みが見つかれば費用は増えます。予算の1割から2割は、予備として残しておいてください。
まとめ
50年やってきて分かったことがあります。
昭和の家の間取りで大事なのは、どこを変えるかより、どこを変えないかです。
和室は一間だけ変えて、一間は残す。長い廊下は、家を支え、寒さを止める役目があるので無理に消さない。お風呂やトイレは場所を動かさず、中身と段差と寒さを直す。
そして、間取りを考える前に床下と屋根裏を見る。
これだけで、同じ家でも数百万円の差が出ます。Aさんご夫婦は、それで620万円を老後に残されました。
最後に、これだけは申し上げたい
昭和の家は、よく見ると丈夫な木を使っていて、風通しも考えられていて、まだまだ住める家がたくさんあります。
けれど、直し方を間違えると、家もお金も傷めてしまいます。
北区で昭和の家を買おうか迷っている方、親御さんから受け継いだ家をどう直そうか考えている方は、リフォーム会社と契約する前に、一度私に間取り図を見せてください。
どこを残して、どこを変えるか。50年分の現場で見てきたことを、正直にお話しします。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


