カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/08/13 08:05
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が一番よく聞かれる質問にお答えします。「鈴蘭台と西鈴蘭台、買うならどちらがいいですか」という質問です。
この質問は、本当によく受けます。月に何回も受けます。
そして正直に申し上げますと、この質問に一言で答える不動産屋は、信用しないでください。
「鈴蘭台のほうが便利ですよ」と即答する人。「西鈴蘭台のほうが安くてお買い得ですよ」と即答する人。
どちらも、あなたの生活を一度も聞いていません。
今日は、価格の差、毎日の動線、そして10年後に売れるかどうか。この3点で、はっきり比べます。
結論から申し上げます
鈴蘭台と西鈴蘭台、どちらが上ということはありません。分かれ目は、あなたのご家庭が「電車中心」か「車中心」か、それだけです。
はっきり申し上げます。
毎朝、ご夫婦のどちらかが電車で三宮方面に通われるなら、鈴蘭台です。
車が2台あって、買い物も送り迎えも車で回るご家庭なら、西鈴蘭台です。
そしてもうひとつ、これは断言できます。
同じ2,000万円を出すなら、西鈴蘭台のほうが「良い家」が買えます。けれど、10年後に売るときに強いのは、鈴蘭台の平坦なエリアです。
この2つは矛盾していません。買うときの満足と、売るときの強さは、別物だからです。そこを一緒くたにして考えると、必ずどこかで損をします。
1. まず、この2つの駅の関係を整理します
意外に思われるかもしれませんが、この2つの駅の関係を正確にご存じの方は、地元の方でも多くありません。
鈴蘭台駅は、神戸電鉄の有馬線と粟生線が分かれる駅です。北区役所が入っているベルスト鈴蘭台があるのも、この駅です。
西鈴蘭台駅は、そこから粟生線に入って2つ目の駅です。間に鈴蘭台西口という駅があります。
距離にすると、鈴蘭台駅から西鈴蘭台駅まで、電車で4分ほどです。車なら5分から7分です。つまり、そんなに離れていません。
ここで一歩立ち止まってください。近いのに、この2つの街は、成り立ちがまったく違います。
鈴蘭台のほうは、戦後、山を削りながら少しずつ広がっていった街です。だから道が細く、坂が多く、区画がバラバラです。
西鈴蘭台のほうは、昭和40年代から50年代にかけて、五葉地区として計画的に造られた街です。だから道がまっすぐで、区画が整っていて、平坦なところが広い。
この「成り立ちの違い」が、今の値段と、売りやすさの差を、そのまま作っています。
50年見てきて分かったことがあります。街の性格は、造られた年代で決まります。あとから変わることは、まずありません。
2. 価格の差は、はっきりあります
数字を申し上げます。細かい条件で上下しますので、あくまで私の実感としてお聞きください。
鈴蘭台駅から徒歩10分以内、ほぼ平坦、駐車2台、築25年前後の一戸建て。これで「1,900万円から2,300万円」あたりです。
西鈴蘭台駅から徒歩10分以内、平坦、駐車2台、築25年前後の一戸建て。これで「1,500万円から1,850万円」あたりです。
ざっと「300万円から400万円」、西鈴蘭台のほうが安いです。なぜ安いのか。理由は3つです。
- 路線の数(鈴蘭台は有馬線と粟生線、西鈴蘭台は粟生線だけ)
- 区役所と駅前の商業施設の有無
- まとまった土地が動きやすく、供給が細りにくいこと
ただし、ここからが大事です。その「300万円から400万円」の差で、西鈴蘭台では何が買えるかというお話です。
鈴蘭台で2,000万円のご予算だと、駅から徒歩10分を超えるか、坂を受け入れるか、駐車1台で我慢するか、どこかで妥協が要ります。
同じ2,000万円を西鈴蘭台に持っていくと、駅から徒歩8分、平坦、駐車2台、敷地40坪、築20年台という家が、現実に射程に入ります。
これは大きな差です。毎日の暮らしの質という点では、はっきり西鈴蘭台に軍配が上がります。
3. 毎日の動線で比べます
不動産の広告には、駅からの分数しか書いてありません。しかし実際の暮らしは、駅までの分数だけでは決まりません。朝、家を出てから会社の机に座るまで。それが本当の動線です。
まず、電車の動線です。
西鈴蘭台から新開地までは、粟生線で16分ほどです。乗り換えなしで着きます。新開地で阪急か阪神に乗り換えて、三宮まで6分から7分です。うまくつながれば、西鈴蘭台から三宮まで25分前後で行けます。
鈴蘭台からも、新開地までは同じような時間です。では何が違うのか。本数です。
鈴蘭台には有馬線と粟生線の両方が来ます。だから朝の時間帯の選択肢が多い。1本逃してもすぐ次が来ます。
西鈴蘭台は粟生線だけです。1本逃すと、朝でも数分から10分近く待つ時間帯があります。雨の日、子どもがぐずった朝、この差は思ったより効きます。
ここは正直に申し上げます。西鈴蘭台からでも、三宮への通勤は十分できます。「不便で通えない」というのは言い過ぎです。ただし、電車の本数に神経を使う生活にはなります。
次に、車の動線です。ここは逆転します。
西鈴蘭台のあたりは、区画が整っているので、家の前まで車がすっと入ります。道がまっすぐで、切り返しが少ない。だから駐車場が2台取れる家が多い。しあわせの村もホームセンターも大きなスーパーも、車で10分から15分の範囲に揃っています。
鈴蘭台の坂の上は、これが逆です。道が細く、家の前が急坂で、冬に凍る。軽自動車でないと入れない家も現実にあります。駐車場が1台しかない、あるいは離れた月極を借りている、というお宅も珍しくありません。
もうひとつ、意外と大事な話をします。ご高齢になってからの動線です。
鈴蘭台の駅前は、区役所も、買い物も、病院も、駅を降りてすぐに揃っています。免許を返納したあとの生活を考えると、これは本当に大きい。
西鈴蘭台は、駅前で全部が済むとは言えません。車を手放したあとの生活を、駅からの距離とバス便で組み立て直す必要があります。
ですから、こうなります。40代でお子さんが小さいご家庭には、西鈴蘭台のほうが暮らしやすい。70代でご夫婦だけになったご家庭には、鈴蘭台の駅前のほうが暮らしやすい。
同じ家族が、20年経つと、答えが変わるのです。
4. 10年後に売れるかどうかで比べます
ここが今日の本題です。これは断言できます。売りやすさで比べると、順番はこうなります。
- 一番強い:鈴蘭台の平坦なエリア
- 次に強い:西鈴蘭台の平坦で駐車2台のエリア
- その下:西鈴蘭台のバス便エリア
- 一番弱い:鈴蘭台の坂の上
つまり、駅名では並びません。同じ駅の中で上と下に分かれます。
なぜ鈴蘭台の平坦なエリアが強いのか。買主さんの層が広いからです。
鈴蘭台の駅前平坦エリアは、若いご家族も買いますし、坂の上から降りてこられるご高齢のご夫婦も買います。投資でお持ちになる方もおられます。買い手の入口が3つあるわけです。
西鈴蘭台の場合、買い手の主力は「車を2台持つ30代から40代のご家族」に、ほぼ絞られます。これは弱いという意味ではありません。この層は今も確実にいます。
ただ、入口が1つしかないということは、その層の景気や住宅ローン金利に、直接影響を受けるということです。
それからもうひとつ、正直に申し上げておかなければならないことがあります。西鈴蘭台の駅前です。
神戸市も認めていることですが、西鈴蘭台の駅前は、商業施設や駐輪場の老朽化が進んでいます。土地の使われ方も、本来の力を出せていません。利用者数は粟生線の中で鈴蘭台に次いで多い駅なのに、駅前がその人数に見合っていないのです。
ここに手が入れば、西鈴蘭台の評価は変わります。私はそう思っています。ただし、いつ、どこまで手が入るのかは、まだ確かなことは言えません。
はっきり申し上げます。「これから西鈴蘭台の駅前も再開発されますから、上がりますよ」という営業を受けたら、その場で判断しないでください。決まってもいない話で査定を吊り上げるのは、業界の常套手段です。
5. 実際にあった3つの話
ここからは実例です。細かいところは変えていますが、金額と流れはそのままです。
まず、Dさんご夫婦です。当時、ご主人が38歳、奥様が36歳。お子さんが2人。ご主人は三宮の会社にお勤めでした。
ご相談に来られたとき、Dさんは2つの物件で迷っておられました。ひとつは鈴蘭台駅から徒歩14分、上り坂、駐車1台、築30年、2,080万円。もうひとつは西鈴蘭台駅から徒歩9分、平坦、駐車2台、築28年、1,880万円。
Dさんは最初、鈴蘭台のほうに気持ちが傾いておられました。「区役所も買い物も駅前で済むので」と。
私はこう申し上げました。「奥様は今後、お車を使われますか」と。
奥様は、下のお子さんの保育園の送りと、上のお子さんの習い事の送迎で、毎日車に乗るとおっしゃいました。そのとき私は、はっきり西鈴蘭台をお勧めしました。
理由は単純です。鈴蘭台のほうの家は、駐車場が1台分しかありませんでした。2台目は、歩いて6分の月極で「月8,000円」。年間で「9万6,000円」、10年で「96万円」です。
それに加えて、坂です。徒歩14分と書いてありましたが、実際に私が歩くと18分かかりました。しかも帰りは上りです。雨の日に、保育園の荷物を持って、この坂を上れますか、とお聞きしました。
Dさんは西鈴蘭台を選ばれました。9年後、ご主人が広島に転勤になりました。その家は「1,650万円」で、3か月ほどで売れました。
1,880万円で買って、9年住んで、1,650万円。差額は230万円です。同じ9年、賃貸で月10万円払っていれば1,080万円が出ていっています。私はこれを、良い買い物だったと思っています。
次はEさんです。当時66歳のご夫婦。西鈴蘭台のバス便エリアにお住まいでした。駅からバスで8分、そこから徒歩7分。築38年、敷地50坪、駐車2台の一戸建てです。
ご主人が膝を悪くされて、駅前のマンションに移りたいというご相談でした。
私が申し上げた金額は「950万円から1,100万円」でした。Eさんは驚かれました。「30年前に3,200万円で買った家ですよ」と。
はっきり申し上げました。「バス便のエリアは、車が運転できる方にしか売れません。そして今、車が運転できる30代40代のご家族は、駅から歩ける平坦な家を探しておられます」と。
Eさんは半年悩まれて、最終的に「1,020万円」で売られました。時間は7か月かかりました。
ここで申し上げたいのは、値段の話ではありません。Eさんが西鈴蘭台のバス便エリアを選ばれた30年前、あの判断は間違っていなかったということです。当時は車社会が広がる一方で、広い庭のある家に価値がありました。ご家族4人で暮らすには、あれが最適でした。
ただ、30年後にご夫婦2人になったとき、同じ条件が全部裏返る。これは誰にも予測できたことではありません。
だから私は、家を買うときに「30年後に売れるか」まで考えてくださいとは申しません。そのかわり「10年後に売れるか」は、必ず考えてくださいと申し上げています。10年なら、まだ読めるからです。
最後にFさんです。当時72歳の女性、お一人暮らしです。鈴蘭台の坂の上、駅から徒歩17分、階段が18段、築42年の一戸建てにお住まいでした。
Fさんは、西鈴蘭台の駅近くのマンションに移りたいとおっしゃいました。ご友人が住んでおられるからです。売却は「880万円」、購入は西鈴蘭台駅から徒歩5分の築22年の3LDKで「1,250万円」でした。差額は370万円です。Fさんはご預金から出されました。
この住み替えについて、私は正直に、ひとつだけ懸念をお伝えしました。「今のお身体なら西鈴蘭台で問題ありません。ただ、あと10年してお車を手放されたとき、西鈴蘭台の駅前だけで生活が完結するかは、正直分かりません」と。
Fさんはこうおっしゃいました。「あと10年のことは、10年後に考えます。今は友達の近くに行きたい」
私は、これでいいと思っています。不動産屋の仕事は、正解を押し付けることではありません。判断の材料を全部お見せして、決めるのはご本人だという形にすることです。
6. 業界の裏側を、隠さず書きます
この2つの街を比べる話には、業界のよくないやり方がいくつも絡んでいます。全部書きます。
ひとつ目。「鈴蘭台」という言葉の使い方です。
鈴蘭台という地名は、広い意味では西鈴蘭台も北鈴蘭台も含みます。実際、行政もそう呼ぶことがあります。これを利用する広告が、あります。
ポータルサイトで「鈴蘭台」と検索して出てきた物件を見に行ったら、実は西鈴蘭台の、さらにバス便のエリアだった。こういうことが、実際に起きています。
嘘ではありません。だから始末が悪いのです。物件を見に行かれる前に、必ず「最寄り駅はどこですか」と確認してください。「鈴蘭台エリアです」という答えが返ってきたら、もう一度「駅名を教えてください」と聞き直してください。
ふたつ目。徒歩分数のカラクリです。
これは覚えておいてください。不動産広告の「徒歩◯分」は、道のりを80メートルで1分として計算した数字です。そして、この計算には坂も階段も信号待ちも入っていません。
つまり、平坦な道を歩いて10分かかる距離と、急な上り坂を10分かかる距離が、広告では同じ「徒歩10分」になります。
鈴蘭台と西鈴蘭台を比べるとき、この差は決定的です。西鈴蘭台の平坦な徒歩12分と、鈴蘭台の坂の上の徒歩12分は、まったく別物です。実測すると、坂のほうは16分から18分かかることが普通にあります。
ですから、必ず現地で歩いてください。しかも、朝の通勤時間帯に、帰り道の方向で歩いてください。行きは下り坂で気持ちよく、帰りは地獄という土地が、北区にはいくらでもあります。
三つ目。粟生線の話をしない会社です。
はっきり申し上げます。西鈴蘭台の物件を勧めるとき、粟生線の経営が長く厳しいという話を、自分から説明する会社は少ないです。聞かれれば答えます。しかし、聞かれなければ言いません。なぜか。買う気が鈍るからです。
私は、これは説明すべきことだと思っています。明日どうこうという話ではありません。ただ、30年住む家を買うのなら、路線の将来は判断材料に入れるべきです。
四つ目。値段の付け方です。
鈴蘭台と西鈴蘭台は近いので、査定のときに「あちらの駅ではこの値段で出ています」と、隣の駅の事例を持ってくる会社があります。
鈴蘭台の売主さんに、あえて鈴蘭台の高い事例だけを見せる。西鈴蘭台の売主さんに、鈴蘭台の事例を見せて「ほら、このあたりはこの値段ですよ」と言う。
どちらも、媒介契約を取るための「高預かり」です。高い値段を付けた会社が、その値段で売ってくれるわけではありません。契約を取ってから、3か月ごとに値下げの相談をしてくるだけです。
査定書を出されたら、必ずこう聞いてください。「その根拠にした成約事例は、どの駅の、どのくらいの築年数の、いくらの物件ですか」と。即答できない会社の査定書は、根拠がないと思ってください。
7. デメリットも、両方とも全部書きます
いい面ばかり書くと嘘になりますので、両方の弱点を正直に書きます。まず、西鈴蘭台の弱点です。
- 路線が粟生線ひとつ。ダイヤが乱れたときの代替がバスか車になる
- 駅前の商業施設と駐輪場が古く、駅前だけで生活が完結しない
- バス便のエリアが広く、歩けるかバスかで値段が倍近く違う
- 五葉地区は一斉開発のため、一斉に高齢化している
- 駅近くのUR団地の存在で、賃貸に出したときの家賃の上限が抑えられる
次に、鈴蘭台の弱点です。
- 坂。駅から平坦に歩ける範囲は、実際にはそう広くない
- 道が細く、家の前まで車が入らない物件が多い
- 同条件なら西鈴蘭台より300万円から400万円高く、予算内で選べる家の質が下がる
- 駅前が便利になった分、駅から遠い家の評価が相対的に下がった
そして、両方に共通する弱点も書いておきます。標高が高いので、三宮が雨の日に雪ということが、毎年のようにあります。凍る朝もあります。三宮に出るには新開地での乗り換えが必要で、運賃は安くありません。そして、北区全体が人口の減る局面に入っています。
これは断言できます。北区で家を持つということは、値上がりを期待して持つということではありません。住みやすさと値段のつり合いで持ち、必要になったときに、そこそこの時間で売れる家を選ぶということです。
まとめ
鈴蘭台と西鈴蘭台、どちらが上ということはありません。
電車で毎日通われるなら鈴蘭台。車中心の生活なら西鈴蘭台。同じ予算で良い家が買えるのは西鈴蘭台。10年後に売りやすいのは鈴蘭台の平坦なエリアです。
そして、どちらの駅を選ばれるにしても、値段を最後に決めるのは駅名ではありません。平坦に歩けるか。家の前まで車が入るか。駐車が2台取れるか。この3つです。
50年やってきて分かったことがあります。
家で損をする人は、駅名で選びます。家で損をしない人は、朝、家を出てから駅に着くまでの道を、自分の足で歩いてから決めます。
広告の徒歩12分は、歩いた12分ではありません。これだけは、覚えて帰ってください。
最後に、これだけは申し上げたい
もし今、鈴蘭台か西鈴蘭台で家をお探しなら、あるいはどちらかに家をお持ちで売却を考えておられるなら、一度お聞かせください。
ご家族の人数、通勤先、お車の台数、10年後の暮らし方。それをお聞きすれば、あなたのご家庭にとってどちらが向いているかは、はっきり申し上げられます。
向いていないほうを勧めることは、私はしません。そして、お持ちの家が売りにくい条件にあるなら、その理由と、ではどうすれば一番損が少ないかを、隠さずお話しします。
私は売るために書いているのではありません。損をしていただかないために書いています。相談だけで結構です。売る売らない、買う買わないは、その後で決めていただければいいのです。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


