カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/24 08:01
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、古い家を「一度に全部直す」のではなく、「住みながら少しずつ直していく」という選択についてお話しします。
前回は、リノベーション前提で中古住宅を買うときの予算の分け方をお話ししました。
すると、お客様からこんなご相談をいただきました。
「あきちゃん、全部いっぺんに直すお金はないんです。住みながら、少しずつ直していくのはダメですか」
ダメではありません。
むしろ、北区の古い戸建てを買う方の多くは、実際にはこのやり方をしておられます。
ただし、やり方を間違えると、同じ場所に2回お金を払うことになります。
今日はそこをはっきりお話しします。
結論から申し上げます
住みながら少しずつ直すなら、「どこから直すか」の順番を、工事を始める前に決めておいてください。
順番は、雨と水、次に毎日の暮らし、最後に見た目です。
そしてもう一つ。足場を組む工事は、必ず一度にまとめてください。
これは断言できます。段階的なリフォームで失敗する方は、お金が足りなかったのではありません。順番を間違えたのです。
1. 足場代は、組むたびにかかる
屋根と外壁の工事には足場が要ります。
北区の一般的な2階建てで、足場代だけでおよそ20万円から25万円かかります。
屋根を直した3年後に外壁を塗ると、足場代をもう一度払うことになります。
屋根、外壁、雨どい、2階の窓まわりのように、足場がないとできない工事は、一度にまとめる。
これだけで数十万円が浮きます。
2. 見えないところから先に直す
雨漏り、シロアリ、床下の配管。
こういう場所は、普段の暮らしでは目に入りません。
だからつい後回しにして、目に見えるキッチンや壁紙から手をつけてしまいます。
けれど、きれいにした天井に雨じみが出たら、そのきれいな天井ごとやり直しです。
家を守る工事が先、気分が上がる工事は後。これが鉄則です。
3. 住みながらの工事は、暮らしに響く
お風呂を入れ替えると、およそ1週間はお風呂が使えません。
キッチンなら3日から5日、食事は外か、お弁当になります。
ご家族が住んだままの工事は、職人さんも家具をよけながらの作業になるので、少し割高になることもあります。
工事の時期は、ご家族の予定と合わせて決めることが大切です。
4. 年齢とお金の流れで計画を立てる
50代で家を買って「10年かけて直そう」と考えると、最後の工事は60代になります。
定年を過ぎると、リフォームのお金を借りるのは難しくなりますし、手元の現金も大事になってきます。
大きな工事ほど、収入がある前半に済ませてください。
5. 補助金は年度ごとに変わる
窓の断熱や省エネの設備には、国や市の補助金が出ることがあります。
ただ、補助金は年度ごとに内容が変わり、予算がなくなれば締め切られます。
「来年やろう」と思っていたら、来年はもう無かった、ということも珍しくありません。
補助金が使える工事は、計画の中で前に持ってくる価値があります。
実際にあった二つのご家族のお話
ここからは、私が実際に関わったお話です。お名前は伏せています。
一組目は、藤原台に築38年の戸建てを買われたAさんご夫婦です。
ご主人が52歳、奥様が48歳。物件は1,280万円でした。
最初にリフォーム会社で全面改装の見積りを取ったら1,150万円。とても一度には払えません。
そこで私は、工事を始める前に、ご夫婦と工務店さんと三人で、10年分の順番表を作りましょうと申し上げました。
- 1年目:屋根と外壁と雨どいを足場込みでまとめて190万円
- 2年目:給湯器と、冬に寒かったタイル張りの浴室を入れ替えて125万円
- 4年目:キッチンを95万円
- 6年目:内窓で断熱をよくする工事を60万円(補助金で実際の負担は40万円ほど)
ここまでで、およそ450万円です。
全面改装の見積りの半分以下で、住むうえで困ることはほとんど無くなりました。
壁紙や和室の畳は、まだ昔のままです。
奥様は「お金が貯まったら、そのうちね」と笑っておられました。
私は、それでいいと思っています。
もう一組は、鈴蘭台で築42年の戸建てを買われたBさん、45歳です。
Bさんは入居前に、まずキッチンと内装に300万円をかけました。
真っ白な壁紙に新しいフローリング、それは素敵なお部屋でした。
ところが2年後の梅雨に、2階の天井から雨が落ちてきました。
屋根の下地が傷んでいたのです。
屋根の工事に加えて、濡れた天井と床をもう一度張り替えることになり、2年前にかけたお金のうち、およそ100万円分が無駄になりました。
Bさんは、何も悪いことはしていません。
ただ、順番が逆だっただけです。
業界の裏側を、正直にお話しします
はっきり申し上げます。
リフォームの業界には、「少しずつ」をあまり喜ばない方もおられます。
一度に大きな工事を受けたほうが、会社としては利益が大きいからです。
よくあるのが、「ついでに」という言葉です。
「足場を組むついでに、ベランダもやり直しませんか」
これは本当にお得な場合もあります。ただ、ついでの工事が、元の工事より高くなっていることもあります。
「ついでに」と言われたら、その部分だけ別に見積りを出してもらってください。
もう一つは、見た目の工事を先に勧めるやり方です。
キッチンや洗面台は、お客様の気持ちが上がるので決まりやすく、利幅も取りやすい。
屋根裏や床下の話は地味で、なかなか決まりません。
だから、見た目の工事から勧めてくる会社もあります。
それから、突然訪ねてくる「無料で屋根を点検します」という業者には、十分に気をつけてください。
屋根に上がって写真を見せ、「今すぐ直さないと大変なことになる」と言って、その場で契約を迫る。
こういう話は、北区でも毎年のように聞きます。
その場では決めず、近所の顔の見える工務店さんにもう一度見てもらってください。
そして、私たち不動産屋にも耳の痛い話があります。
古い家を売るとき、「住みながら少しずつ直せば大丈夫ですよ」と軽く言ってしまう営業マンがいます。
家が売れればそれでいい、という言葉です。
本当に大丈夫かどうかは、屋根と床下と配管を見てみないと分かりません。
買う前に、建物の状態を専門の方に見てもらう。これは必ずやってください。
このやり方の弱いところ
段階的なリフォームにも、もちろんマイナス面があります。正直に書いておきます。
- 分けて頼むと、合計で1割から2割ほど高くつくことがある
- 工事のたびに、音やほこりで生活が乱れる
- 途中で気持ちが続かず、古い部分と新しい部分が混ざったまま止まる
- 入居後に借りるリフォームのお金は、住宅ローンより金利が高いことが多い
一度にまとめて頼めば値引きもききますし、職人さんの手間も減ります。分けると、どうしてもその分が割高になります。
お年寄りや小さなお子さんがいるご家庭では、何年かおきにやってくる工事の騒がしさが、思った以上に負担になります。
「あと少し」のところで止まった家を売ることになると、買う方からは「中途半端な家」と見られて、値段がつきにくくなります。
大きな工事が最初から分かっているなら、買うときに一緒に借りたほうが得になる場合もあります。
ここは銀行さんとよく相談してください。
まとめ
住みながら少しずつ直すのは、お金が限られている方にとって、とても現実的な選択です。
私は、このやり方をお勧めすることのほうが多いくらいです。
ただし、順番を決めてから始めてください。
雨と水が先、暮らしが次、見た目は最後。
足場を使う工事はまとめて一度に。大きな工事は、収入がある前半に。
50年やってきて分かったことがあります。
家を上手に直していく方は、お金持ちの方ではありません。
最初に紙一枚の順番表を作った方です。
最後に、これだけは申し上げたい
古い家を買って、住みながら直していこうと考えておられる方。
買う前の段階で、一度私に声をかけてください。
その家の屋根と床下がどうなっているか、どこにいくらかかりそうか、何年でどう直していくか。
工務店さんとも一緒になって、無理のない順番を考えます。
すでにお住まいの家を、少しずつ直していきたいというご相談でもかまいません。
お茶でも飲みながら、ゆっくりお話ししましょう。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


