カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/07/07 06:35
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、相続した空き家を売るときに使える「3000万円の特別控除」について、その落とし穴をお話しします。
「空き家を売っても3000万円まで税金がかからない制度があるらしい」。最近、相談に来られる方の多くがこれを口にされます。たしかにありがたい制度です。
けれど、この制度ほど「知らなかった」「一年違いで使えなかった」と悔しがる方が多いものはありません。
結論から申し上げます
この3000万円控除は、条件が一つでも外れると、まったく使えません。
昭和56年5月31日以前に建った家であること。亡くなった方が一人で住んでいたこと。相続開始から3年目の年末までに売ること。この3つが特に外れやすい落とし穴です。
順番にお話しします。
1. そもそもこれは何の制度か
正しくは「被相続人の居住用財産を売ったときの3000万円特別控除」、通称「空き家特例」といいます。
親御さんが一人で住んでいた家を、相続した方が売る。そのときに出た利益(譲渡所得)から、最大3000万円を差し引ける。差し引いた残りにだけ税金がかかる、という制度です。
たとえば古い実家を売って「2500万円」の利益が出たとします。本来ならその利益に約2割の税金、つまり「500万円」近くが持っていかれます。ところがこの控除が使えれば、2500万円まるごと差し引けて、税金はゼロ。これは大きいです。
だからこそ、みなさん飛びつく。けれど、飛びつく前に条件を確かめてください。
2. 落とし穴その一 昭和56年5月31日以前の家であること
これが一番多い取りこぼしです。
この制度が使えるのは、昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた家に限られます。いわゆる旧耐震の建物です。
つまり「昭和57年築」だと、たった1年違いで使えません。「昭和56年の秋に完成した家」も、5月31日を過ぎているので対象外です。
はっきり申し上げます。建てた年を「だいたい昭和50年代だったかな」で済ませてはいけません。登記簿や建築確認の記録で、正確な建築時期を確かめてください。ここを勘違いしたまま話を進めて、売ったあとで「使えませんでした」と分かる。これが本当に多いのです。
それともう一つ。マンションは対象外です。区分所有の建物、つまり分譲マンションの一室は、どれだけ古くてもこの特例は使えません。あくまで一戸建てのお話です。
3. 落とし穴その二 亡くなった方が「一人で」住んでいたこと
この制度は、亡くなった方が「一人暮らし」だった家が前提です。
同居しているご家族がいた場合は、原則として使えません。「親と一緒に住んでいた息子さんが相続して売る」というケースは、この特例からは外れてしまいます。
ここでよく聞かれるのが、老人ホームのことです。亡くなる前に施設へ入っていた場合はどうなるのか。
これは、要介護認定を受けて老人ホームに入っていたなど、一定の条件を満たせば、施設に入る前に一人で住んでいた家として認められます。ただし、家を空き家にしたあと、誰かを住まわせたり、人に貸したりしていると、その時点で崩れます。ここは細かいので、必ず税理士か税務署に確認してください。
4. 落とし穴その三 「3年目の年末まで」という期限
これも見落とす方が非常に多い落とし穴です。
この控除には期限があります。相続が始まった日、つまり親御さんが亡くなった日から、3年を経過する日の属する年の12月31日まで。この日までに売買を終えていないと使えません。
「3年もあるなら余裕だ」。そう思った方ほど、危ないのです。
相続の話は、そう簡単に進みません。兄弟で「どうする」「いつ売る」と言い合っているうちに、あっという間に1年、2年と過ぎます。名義変更が済んでいない、遺品の片づけが終わっていない、そうこうしているうちに3年目の年末が来る。
私が実際に見た、Aさんのお話をします。
神戸市北区にお住まいのAさん(65歳)は、藤原台のご自宅とは別に、亡くなったお父様の実家を相続されました。昭和55年築の木造一戸建て。まさにこの控除が使える家でした。
ところが、Aさんと弟さんの間で「もう少し様子を見よう」「相場が上がるかも」という話になり、動き出したのが亡くなってから3年半後でした。売れたのは良かったのですが、3年目の年末をわずかに過ぎていた。控除は使えず、利益「2300万円」にそのまま課税され、およそ「450万円」の税金を納めることになりました。
「あと半年早く動いていれば」。Aさんは何度もそうおっしゃいました。これは断言できます。この制度で損をする人は、たいてい「期限を甘く見た人」です。
5. 落とし穴その四 令和6年から控除額が変わった
これは新しい話なので、特に気をつけてください。
令和6年(2024年)1月1日以降に売る場合、相続した人が3人以上いるときは、一人あたりの控除額が3000万円から「2000万円」に減らされました。
相続人が1人か2人なら、これまで通り一人3000万円。ですが3人以上で分けると、一人2000万円まで。兄弟が多いご家庭は、ここで思ったより控除が小さくなることがあります。
それともう一点。売った値段が「1億円」を超えると、この特例は一切使えません。共有名義でそれぞれが持ち分を売った場合も、全員の売却代金を合算して1億円で判定します。「自分の取り分は1億円以下だから大丈夫」ではないのです。
6. 落とし穴その五 空き家のまま売らないといけない
意外と知られていないのがこれです。
この控除を使うには、相続してから売るまでの間、その家を空き家のまま保っておく必要があります。
一時的に人に貸した。物置として使った。誰かを住まわせた。こういうことがあると、原則として使えなくなります。「どうせ空いているから」と親戚に貸したりすると、それだけで控除が飛びます。
そして家の状態にも条件があります。古い家をそのまま売る場合は、耐震リフォームをしてから売るか、家を取り壊して更地にして売るか、どちらかが必要でした。
ここは令和6年から少し緩みました。売ったあと、買主が翌年の2月15日までに耐震改修か取り壊しをすれば、売主が事前に工事をしていなくても認められるようになりました。少し使いやすくなったのは確かです。ただし、この制度そのものの適用期限は令和9年(2027年)12月31日まで。いつまでもある制度ではありません。
7. ここが業界の裏側です
正直に、業界の裏の話もしておきます。
相続で空き家が出ると、どこで聞きつけたのか、買取業者が次々と声をかけてきます。「うちで買い取りますよ」「今なら高く買えます」。親切そうに見えます。
ですが、彼らはこの3年の期限を知っています。だからこそ、期限が近づくほど足元を見てきます。「もう時間がないでしょう」「早く決めないと控除も使えなくなりますよ」。そう言って焦らせ、相場よりずっと安い金額で買い叩く。私はこういう場面を、何度も見てきました。
それから、これも本音で言います。不動産屋の中には、この特例の細かい条件を正確に把握していない者もいます。「たぶん使えますよ」と気軽に言われて信じたら、あとで税理士に「使えません」と言われる。税金の最終判断は不動産屋ではなく、税務署と税理士の領分です。ここを混同してはいけません。
8. デメリットも正直に申し上げます
良いことばかりではありません。
まず、この控除を使うには、必ず確定申告が要ります。「税金がゼロなら申告もいらないだろう」ではありません。申告して初めて控除が認められます。ここを忘れると、せっかくの3000万円がまるごと無駄になります。
それから、取り壊して更地で売る場合、その解体費用は自分持ちになることが多いです。木造一戸建ての解体で、およそ「150万円から250万円」はかかります。控除が使えるからといって、手元にまるまる残るわけではありません。
そして繰り返しますが、条件が一つでも外れれば、この話は全部ゼロになります。中途半端な理解で「使えるはず」と動くのが、一番危ないのです。
まとめ
もう一度申し上げます。
相続した空き家の3000万円控除は、たしかに大きな制度です。けれど、昭和56年5月31日以前の家であること、亡くなった方が一人で住んでいたこと、そして相続から3年目の年末までに売ること。この条件をどれか一つでも外すと、まったく使えません。
50年やってきて分かったことがあります。相続の不動産で得をする人は、早く、正確に、専門家を交えて動きます。損をする人は、「まだ大丈夫」と先延ばしにして、期限や条件で足をすくわれます。
最後に、これだけは申し上げたい
相続した空き家をお持ちで、「これは控除が使えるのだろうか」と少しでも気になったら、売る前に一度ご相談ください。建築年、住んでいた方の状況、相続の時期。この3つを確認するだけで、使えるか使えないかの見当はつきます。
私は50年、この北区で不動産を見てきました。税金の最終判断は税理士の仕事ですが、どういう順番で、いつまでに動けばいいのか、その道筋はお示しできます。損をしてからでは遅いのです。動く前に、まずお声がけください。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


