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相続で一番損する売り方
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/16 06:13

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

前回は「相続で一番得する売り方」の話をしました。今日はその裏返し、「相続で一番損する売り方」についてお話しします。

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50年やってきて分かったことがあります。相続の売却で損をする人は、たいてい同じ道を通ります。頭が悪いわけでも、運が悪いわけでもありません。ただ、疲れていて、急いでいて、誰にも相談しなかった。それだけです。

親が亡くなって、四十九日が済んで、ようやく一息ついた頃。郵便受けに「相続不動産 高価買取」のチラシが入り始めます。電話も鳴ります。そこから、損への道が静かに始まります。

ここで一歩、立ち止まってください。今日話す「損する売り方」を一つでも避けられれば、あなたの手取りは数百万円変わります。


結論から申し上げます


相続で一番損する売り方は、これです。

期限に追われて、税金の特例を確認せず、一社の言い値で、急いで手放す。

急いで、確認せず、言われるまま。この3つが重なったとき、人は一番損をします。順番に、私が現場で見てきた実際の損を話します。


1. 「早く現金にしたい」で買取に投げる


一番多い損がこれです。相続した実家を、業者の「買取」で手放す。チラシに「即現金化」と書いてある、あれです。

買取というのは、不動産会社があなたから直接買う取引です。仲介と違って、内覧もいらない、すぐ現金になる。楽なんです。疲れているとき、この「楽」に飛びつきたくなる気持ちはよく分かります。

でも、これは断言できます。買取の値段は、相場の7割前後です。

3000万円で個人に売れる家が、買取だと2000万円そこそこ。この差の800万、900万円は、そっくりそのまま業者の利益になります。業者は買い取った家を、少し手を入れて、あなたが売れたはずの3000万円で売り直すだけです。

急いでいない相続なのに、「気持ちの疲れ」だけで買取に投げる。これで数百万円を捨てる人を、私は何人も見てきました。


2. 一番高い査定に飛びついて「塩漬け」にする


買取とは逆に、こういう損もあります。数社に査定を頼んだら、一社だけ飛び抜けて高い数字を出してきた。「うちなら3500万円で売れます」と。嬉しくなって、その会社に任せる。

はっきり申し上げます。飛び抜けて高い査定は、契約を取るための「エサ」であることが多いです。

これを業界では「高預かり」と言います。高い値段で預かって、まず契約を取る。売れないのは当たり前です。相場より500万も高いんですから。そして3か月経った頃、「反響が弱いので少し下げましょう」と言ってくる。下げて、また下げて、結局は相場より安い値段で、疲れ切ったあなたが手放す。

高い査定に飛びつくと、時間だけが過ぎて、最後は相場割れ。これが「塩漬け」です。相続案件は売主が相場を知らないことが多いので、この手が本当によく効きます。


3. 兄弟で意見が割れて、底値で投げ売る


相続がやっかいなのは、売主が一人ではないことです。

三田のケースをお話しします。母親が亡くなり、実家(築45年)を姉妹3人で相続しました。長女は「じっくり高く売りたい」、次女は「早く現金にして分けたい」、三女は「思い出があるから売りたくない」。

見事に三人三様でした。話がまとまらないまま半年が過ぎ、固定資産税と管理の話でギスギスし始める。最後は次女が「もういいから安くていいから売ろう」と言い出して、相場より300万円安い値段で決着しました。

これは断言できます。相続で一番の敵は、買主でも業者でもなく、「兄弟の足並みが揃わないこと」です。揃わないと、必ず一番せっかちな人の意見に引きずられて、底値で投げることになります。


4. 税金の特例を確認せず、期限を逃す


これが金額として一番大きい損です。相続した空き家を売るとき、条件が合えば利益から3000万円を引ける「特別控除」という強い制度があります。ところがこの制度には、細かい条件と、厳しい期限があります。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた家であること
  • 亡くなった親が一人で住んでいたこと
  • 売る相手が親族でないこと
  • 耐震リフォームをするか、家を取り壊して更地にしてから売ること

さらに一番怖いのが期限です。相続が始まった日から3年目の年末までに売らないと、この控除は使えません。相続税そのものの申告は10か月以内。相続税を取得費に足せる「取得費加算」という別の特例も、3年10か月以内です。

先ほどの三田の姉妹は、この期限に気づかず、耐震も解体もしないまま普通に売ってしまいました。3000万円控除は不発。譲渡所得税で数百万円、余分に払うことになりました。

しかもここに、あまり知られていない落とし穴があります。この3000万円控除、令和6年からは、相続人が3人以上いる場合、一人あたり2000万円に減らされました。姉妹3人はまさにこれに当たります。知らずに手放すと、二重、三重に損をするわけです。


不動産屋が言わない業界の裏側


なぜ相続の売却で、こんなに損が起きるのか。正直に申し上げます。相続案件は、業者にとって「一番おいしい」からです。

売主が相場を知らない。悲しみと疲れで判断力が落ちている。相続人が複数いて意見がバラバラ。急いでいる。これだけ条件が揃うと、買取に誘導するのも、高預かりで囲い込むのも、簡単なんです。

「相続に強い」「相続専門」をうたう一括査定サイトもたくさんあります。全部が悪いとは言いません。でも、そこに登録している会社の中には、あなたの家を安く仕入れて転売したい会社も、平気で混じっています。「専門」という言葉は、あなたを守る言葉とは限りません。


ここは正直に、デメリットも話します


では、とにかく慌てず、じっくり時間をかければいいのか。そう単純でもありません。

空き家を持ち続ければ、固定資産税がかかります。庭の草も伸びます。屋根も傷みます。誰も住まない家は、驚くほど早く傷みます。兄弟間の「あの家どうするの」という気まずさも、長引くほど関係を削っていきます。

そして、先ほどの3年の期限。急がなさすぎて期限を過ぎれば、それはそれで控除を失います。だから「急ぐな」ではありません。「期限から逆算して、正しく急げ」です。ここを取り違えると、今度は逆方向で損をします。


まとめ


相続で一番損する売り方を、もう一度言います。期限に追われて、税金の特例を確認せず、一社の言い値で、急いで手放す。

買取に飛びつく。高い査定に釣られる。兄弟でまとまらず底値で投げる。特例と期限を確認しない。この4つのどれか一つでも、数百万円が飛びます。

逆に言えば、やることは決まっています。まず相続登記を済ませる。税理士に特例と期限を確認する。複数の目で相場を確かめる。そして兄弟で「いつまでに、いくらで」を先に決めておく。それだけで、損の大半は防げます。


最後に、これだけは申し上げたい


相続の売却は、一生に何度もあることではありません。だからこそ、知らないうちに損が起きます。そして一度手放したら、やり直しはききません。

私は「売らせるため」ではなく「損をさせないため」に、この仕事を50年やってきました。相続した家や土地のことで、少しでも迷いや不安があれば、売ると決める前に、どうか一度ご相談ください。値段の話をする前に、まず期限と特例の確認から一緒にやりましょう。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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