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市街化調整区域の土地に手を出す前に
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/09/05 10:58

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は「市街化調整区域」の土地の話をします。

shigaika

「250坪で480万円」

「畑つき、南向き、山の見える土地、格安」

こういう広告を、北区や三田のあたりで見たことはありませんか。

坪単価にすると1万9千円です。藤原台の分譲地なら坪40万円はしますから、20分の1以下です。

安いものには、安いだけの理由があります。

その理由をひとことで言います。

「その土地には、家が建てられないかもしれない」

もっと正確に言うと、こうです。

「その土地には、あなたには家が建てられないかもしれない」


結論から申し上げます


市街化調整区域の土地は、値段を見る前に、この2つを確かめてください。

  • その土地に家を建てる許可が下りる土地かどうか
  • その許可を受けられるのが、あなたかどうか

この2つは別の話です。ここを一緒くたにして、大金を失う方を、私は何人も見てきました。

これは断言できます。調整区域で失敗する人は、土地を見ています。失敗しない人は、役所を見ています。

今日は、実際にあった2件を、金額まで書きます。


1. 市街化調整区域とは何か、手短に申し上げます


昭和45年前後、都市計画法によって、日本の街は2つに線引きされました。

市街化区域は、街にしていく区域です。

市街化調整区域は、市街化を抑制する区域、つまり「街にしない」と決めた区域です。

北区でいうと、淡河町、八多町、大沢町、長尾町、道場町、山田町のあたりに広く分布しています。ただし同じ町名の中でも市街化区域と調整区域は分かれますから、町名だけで判断はできません。地番で確かめる必要があります。

調整区域では、建物は原則として建てられません。例外にあたるときだけ、開発許可(都市計画法29条)や建築許可(同43条)を受けて建てられます。

ここが一番の勘所です。

許可は「土地」に下りるのではありません。「誰が」「何のために」建てるのかを見て下りるんです。

農家の方が自ら住む農家住宅を建てるのか、その地域に代々住んできた家の分家住宅(都市計画法34条12号)なのか、市街化区域に隣接した条例指定区域(同34条11号)なのか。神戸市はこれを1件ずつ審査します。

つまり、同じ土地でも、Aさんには建てられて、Bさんには建てられません。


2. 「既存宅地だから建つ」は、もう通用しません


昔は「既存宅地制度」というものがありました。線引き前から宅地だった土地なら、届出で建てられた制度です。

これは平成13年、つまり2001年の法改正で廃止されています。もう25年近く前の話です。

ところが現場では、いまだにこの言葉が出てきます。地主さんが言います。近所の方も言います。困ったことに、業者まで言います。

「ここは昔から宅地やから建つで」

はっきり申し上げます。「既存宅地」という言葉が出てきたら、その話はいったん全部疑ってください。25年前に消えた制度を根拠にした売買が、まだあるんです。


3. 建てられるかどうかの調べ方


現地に立って分かることは、ほとんどありません。日当たりも、道の広さも、大事なことは大事ですが、建てられるかどうかは全部「紙」と「窓口」で決まります。

回るのは3か所です。

  • 神戸市の開発指導の窓口
  • 農業委員会・農業振興センター
  • 建築指導と水道局

まず開発指導の窓口で、地番を出して、区域区分を確かめます。そのうえで「この土地に、この人が、住宅を建てられる号はありますか」と事前相談します。11号の条例指定区域に入っているのか、12号の既存集落や分家住宅に当たるのか。ここで「該当なし」と言われたら、その時点で終わりです。

次に農業委員会です。地目が田や畑なら、農地転用の許可(農地法4条または5条)が要ります。さらにその土地が農業振興地域の農用地区域、いわゆる青地なら、まず「農振除外」から始めなければなりません。これは受付が年に数回しかなく、しかも通らないことがあります。1年2年は平気でかかります。

最後に接道と排水です。上下水道の本管がどこまで来ているか。これは後で書きますが、お金に直結します。

買う前に、不動産会社に必ずこう聞いてください。

「都市計画法と農地法、両方どうなっていますか。事前相談には行かれましたか」

これに答えられない会社からは、買わないでください。


4. 淡河のAさんが、手付金50万円を失いかけた話


Aさんご夫婦、ご主人56歳。定年が見えてきて、畑をしながら平屋で暮らしたいと考えておられました。

ネットで見つけたのが、淡河町の250坪、480万円、現況畑という土地です。現地に行くと南向きで日当たりがよく、道もちゃんと付いている。周りには古い民家が何軒か建っている。

Aさんは仲介業者に聞きました。「ここ、家は建ちますか」

業者の答えはこうでした。「調整区域ですが、この辺り、建ってる家もありますよ」

Aさんはこれを「建てられる」と受け取りました。契約し、手付金50万円を払われました。

その後、建築の相談で私のところへ来られて、調べたら、こうでした。

  • 地目は畑。しかも農業振興地域の農用地区域、つまり青地
  • まず農振除外が要る。受付は年に限られ、認められる保証もない
  • 仮に除外できても、次に農地転用の許可、その次に都市計画法の許可
  • Aさんは農家ではなく、淡河に親族もいない。分家住宅にも既存集落の要件にも当たらない

つまり、何年待っても建たない土地でした。

「建ってる家もありますよ」という言葉は、嘘ではありません。ですが「あなたが建てられます」とは、全く別の話です。

契約書には、建築の許可が下りることを条件とする白紙解除の特約が入っていませんでした。本来なら手付金50万円は戻りません。私が間に入って売主さんに事情を説明し、40万円だけ返していただきました。10万円は費用で消えました。

Aさんは「安いと思ったんです」とだけ言われました。


5. 八多のBさんの、建て替えられない実家


Bさん、71歳。八多町の築52年の木造住宅、お父さんが昭和40年代に建てた家です。Bさんご自身は東灘にお住まいで、実家は空き家になっていました。

「息子夫婦に住ませたい。リフォームでいけますか」というご相談でした。

工務店に見てもらうと、耐震も水回りも屋根も全部やり直しで、見積もりは1,400万円。それなら建て替えたほうが早い、という話になりました。

ところが建て替えには、都市計画法43条の許可が要ります。従前の許可の内容、用途、敷地の継続性、そして建てる人の要件を見られます。息子さんご夫婦は八多に住んだことがなく、農業もしておられません。

結論は「今の家は建っているが、同じように建て替えられる人は限られる」でした。

Bさんは本当に驚いておられました。

「50年、税金を払うてきたのに、建て替えられへんのか」

固定資産税は年1万3千円でした。安いんです。安いから、誰も真剣に調べてこなかった。それだけの話でした。

では売ろうか、という流れになり、私が査定に入りました。出した数字は、土地建物あわせて280万円。しかも「買い手がつくかどうかは分かりません」という但し書き付きです。

Bさんは、しばらく黙っておられました。


6. 業界の裏側を申し上げます


調整区域の物件には、独特の売り文句があります。3つ挙げます。

ひとつ。「再建築の可否については行政にご確認ください」

物件資料の隅に、小さく書いてあります。これは業者が「調べていません」と言っているのと同じです。責任だけ買主に渡している。ちゃんとした会社なら、11号か12号か、どの根拠で行けそうなのか、事前相談の結果まで書きます。

ふたつ。「農地転用可能見込み」

「見込み」です。誰の見込みでしょうか。たいていは、誰の見込みでもありません。青地かどうかすら調べていないことがあります。この5文字を見たら、必ず「農業委員会に事前相談されましたか、いつ、誰が行かれましたか」と聞いてください。

みっつ。買取業者の「調整区域でも買います」という広告です。

これは本当に買います。ただし値段は、市街化区域の同じ広さの土地の10分の1、ときには20分の1です。しかも現況有姿、契約不適合責任は免責という条件で買います。買った後、資材置き場や太陽光として出口を作る。そういう転売先を持っているから、安く買えるんです。

売主さんが「他で断られたのに、ここは買ってくれた」と喜ばれることがあります。喜ぶ前に、もう1社か2社、必ず当ててください。

50年やってきて分かったことがあります。急いで売った人は、必ず後になって相場を知って、落ち込まれます。


7. デメリットを、正直に全部書きます


先にいいところを書きます。調整区域には調整区域の良さがあります。土地が安い。広い。静か。固定資産税が安い。畑ができる。隣の家が近くない。淡河や大沢で本当に楽しそうに暮らしておられる方を、私はたくさん知っています。

そのうえで、マイナスをはっきり書きます。

住宅ローンが付きにくい。担保の評価が出ませんから、都市銀行はまず断ります。JAや地元の信用金庫が理解を示してくださることはありますが、金利は高め、期間は短めになります。現金の比率がどうしても高くなります。

上下水道が来ていないことがある。本管から100m引くだけで200万円300万円かかります。下水がなければ浄化槽です。設置に80万円前後、その後も年1回の保守点検と法定検査で毎年2万円3万円かかり続けます。

売るときに時間がかかる。買える人が限られるからです。私の実感で申し上げると、市街化区域の家なら3か月で決まるところが、調整区域は1年2年、あるいは決まりません。

そして一番きついのが、子や孫の代に「処分できない財産」として残ることです。誰も住まない、売れない、しかし固定資産税と草刈りだけは毎年ついてくる。八多のBさんのお子さんが、いま向き合っておられるのがこれです。

このデメリットを全部分かったうえで、なお「ここに住みたい」と思われるなら、それは立派な選択です。私は止めません。

私が止めたいのは、分からないまま、安さだけで手を出す人です。


まとめ


もう一度申し上げます。

市街化調整区域の土地は、「建てられる土地かどうか」と「あなたが建てられるかどうか」を、契約より前に、役所で確かめてください。

  • 既存宅地という言葉はもうありません
  • 農地なら、青地かどうかから調べてください
  • 「見込み」と書いてある紙は、何も保証していません
  • 契約するなら、許可が下りなければ白紙に戻る特約を必ず入れてください

安さには、必ず理由があります。その理由を全部見てから、それでも安いと思えたなら、買えばいいんです。


最後に、これだけは申し上げたい


調整区域の土地でご相談に来られる方の多くは、契約した後に来られます。Aさんもそうでした。

契約の前に来ていただければ、私は役所に行って、地番を出して、どの号で行けるのか、農地はどうなっているのか、確かめてご報告できます。買わないほうがいいと分かれば、はっきりそう申し上げます。

その一手間で、50万円が守れます。280万円の実家が、もっと早く手を打てたかもしれません。

北区の調整区域の土地のこと、実家のこと、相続で受け取った畑のこと。どんな段階でも構いませんので、値段の話をする前に、まず一度ご相談ください。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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