カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/07/08 07:27
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、少し切り出しにくい話をさせていただきます。私が50年この仕事をやってきた中で、その大切さを嫌というほど見てきた「親が亡くなる前にやるべき不動産対策」についてお話しします。
縁起でもない、と思われた方もいるでしょう。親が元気なのに、死んだ後の話なんてできるか、と。そのお気持ちは、よく分かります。
けれど、親が元気なうちに準備をしていた家族と、何もしないままその日を迎えた家族とでは、その後の負担がまるで違います。今日はその「差」がどこで生まれるのか、包み隠さずお話しします。
結論から申し上げます
親が元気なうちに、確認しておくことは3つだけです。
「名義」「境界と書類」「親の気持ち」
この3つを押さえておけば、相続で大きく損をする可能性はぐっと減ります。逆に、この3つを放っておくと、あとで数百万円単位の損につながります。これは断言できます。順番にご説明します。
1. まず「名義」を確認してください
実家の土地と建物の登記名義が誰になっているか、確認したことはありますか。
50年やってきて分かったことがあります。「実家の名義は当然、父親だろう」と思い込んでいるご家族のうち、1〜2割は、実際に調べると違うのです。お祖父様の名義のまま、ひどい場合は曽祖父様の名義のまま、という家が本当にあります。
名義が古いままだと、相続人がねずみ算式に増えます。会ったこともない親戚全員の判子が必要になり、1人でも連絡が取れなければ、家は売れません。
しかも2024年4月から、相続登記は義務になりました。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料の対象になります。
確認の方法は簡単です。法務局で登記事項証明書を取るだけ。費用は1通600円です。まずはそこから始めてください。
2. 「境界」と「書類」をそろえてください
土地の境界がはっきりしていない家は、売るときに必ずつまずきます。
境界確定測量には、お隣さんの立ち会いが必要です。費用はおおむね50万〜80万円、期間は3ヶ月から半年かかります。
ここで大事なことを申し上げます。親が元気なうちなら、「昔からこの塀がうちとお宅の境や」という話を、親自身が隣近所と直接できるのです。亡くなった後では、それができません。昔の経緯を知る人がいなくなった境界の話し合いは、こじれると本当に長引きます。
それから、書類です。以下の4つがどこにしまってあるか、親御さんに聞いておいてください。
- 権利証(登記識別情報)
- 測量図
- 建築確認済証
- 購入したときの契約書
仏壇の引き出し、タンスの奥、貸金庫。亡くなった後に家中を探し回るご家族を、私は何十組も見てきました。
3. 親の「気持ち」を聞いてください
実は、これが一番大事で、一番後回しにされます。
親は実家をどうしたいのか。誰に残したいのか。施設に入ることになったら、売ってもいいと思っているのか。
これを聞かないまま親が認知症になると、はっきり申し上げます、家は売れなくなります。
不動産の売買には、所有者本人の意思確認が必須です。意思確認ができない状態になれば、家庭裁判所で成年後見人を立てるしか方法がありません。成年後見人がつくと、報酬が月2万〜6万円、親御さんが亡くなるまで払い続けることになります。しかも自宅を売るには家庭裁判所の許可が必要で、自由に売ることはできません。
「親が元気なうちに、気持ちを聞いておく」。たったそれだけで、この事態は防げるのです。
4. できれば遺言を。せめて兄弟で一度だけ話を
公正証書遺言の手数料は、財産の額にもよりますが、おおむね5万〜15万円です。この15万円を惜しんだ結果、兄弟の関係が壊れ、弁護士費用に100万円以上かかった例を、私は何件も見てきました。
遺言まではハードルが高い、というご家庭も多いでしょう。それなら、せめて兄弟が集まる正月やお盆に、一度だけでいい、「実家、将来どうする」という話をしておいてください。
そして一つだけ。「とりあえず兄弟の共有名義で」というのだけは、やめてください。共有名義は、将来「全員の合意がないと売れない家」を作る、一番の火種です。
実例:準備しなかったAさんと、準備したBさん
三田市にお住まいだったAさん(享年82歳)のご家族の話です。
Aさんが亡くなった後、息子さん(55歳)が実家を売りたいと私のところへ相談に来られました。ところが登記を調べてみると、土地の名義は大正生まれのお祖父様のまま。相続人を確定させると、会ったこともない親戚を含めて11人いました。
判子集めに2年。戸籍集めや司法書士への費用に約130万円。その間に「買いたい」と言ってくださっていた方は離れてしまい、最終的に当初の査定より330万円安い1,850万円での売却になりました。
一方、藤原台のBさん(当時80歳)は、3年前に娘さんと一緒に私の店へ来られました。名義の確認、境界確定測量(65万円)、公正証書遺言(11万円)を済ませ、権利証や測量図は一つの箱にまとめて、置き場所を家族全員で共有しました。
昨年Bさんが亡くなられた後、娘さんは相続登記から売却まで4ヶ月、査定通りの2,480万円で売り切りました。準備にかかった費用は合計80万円ほど。Aさんのご家族との差は、歴然です。
業界の裏側:相続直後のご家族は「狙われて」います
ここからは、業界の裏側の話です。
親御さんが亡くなった直後の家には、買取業者のダイレクトメールが束になって届きます。「現金で今すぐ買い取ります」「面倒な手続きはすべてこちらで」。登記の情報などから相続が発生した家を調べて、送ってくるのです。
悲しみの中にいて、手続きに疲れているご家族に、「面倒から解放されますよ」とささやく。その買取価格は、相場の2〜3割安が当たり前です。2,000万円で売れる家なら、1,400万円。それでも「楽になるなら」と判を押してしまう方がいるのです。
準備ができているご家族は、急ぐ必要がありません。急がない売主は、買い叩かれません。事前の準備こそ、最大の防御なのです。
デメリット:事前準備にも、お金と気まずさがかかります
正直に、マイナス面も申し上げます。
事前準備はタダではありません。境界確定測量に50万〜80万円、公正証書遺言に5万〜15万円。合わせれば100万円近くかかることもあります。
それから、気まずさです。親に「死んだ後の話」を切り出すのは、誰だって嫌なものです。一度で話がまとまらないことも多いですし、親のほうが「まだ早い」と怒ってしまうこともあります。
それでも、何もしなかった場合の数百万円の損や、兄弟の争いと比べれば、安い保険だと私は思います。切り出し方のコツは、「相続登記が義務になったらしいよ」というニュースの話から入ることです。国の制度の話なら、親も聞く耳を持ってくれます。
まとめ
もう一度申し上げます。親が元気なうちに確認するのは、3つだけです。
- 名義は誰か(法務局で600円)
- 境界と書類はそろっているか
- 親は実家をどうしたいのか
この3つを、親御さんがお元気なうちに。早すぎるということは、絶対にありません。
最後に、これだけは申し上げたい
「何から手をつけていいか分からない」「親への切り出し方が分からない」。その段階のご相談で構いません。
私は神戸市北区で50年、相続と売却の現場を見てきました。名義の調べ方から、境界の話、ご兄弟での話し合いの進め方まで、実家の一軒一軒に合わせてお手伝いします。
親御さんがお元気なうちのご相談こそ、一番の親孝行だと私は思っています。どうぞお気軽にお声かけください。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


