ホーム  >  あきちゃんの不動産お役立ちコラム  >  あきちゃんの不動産お役立ち情報  >  なぜ無料相談をやっているのか

なぜ無料相談をやっているのか
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/07/31 09:49

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、私自身のことを書きます。なぜ、うちは相談をタダでやっているのか。その理由を全部お話しします。

naze

「あきちゃんとこ、なんで相談タダなん」

これ、よく言われます。同業の若い者からも言われますし、お客様からも聞かれます。「タダより高いもんはないって言うやろ。あとで何か請求されるんちゃうか」と、冗談まじりに言われたこともあります。

もっともな疑問だと思います。世の中、タダには必ず理由があります。

ですから今日は、その理由を全部書きます。きれいごとの部分も、そうでない部分も、隠さずに書きます。


結論から申し上げます


私が無料相談をやっているのは、善意でも社会貢献でもありません。私の商売のやり方そのものです。

ただし、よその「無料査定」とは、中身が全く違います。ここが一番大事なところです。

これは断言できます。私が相談料を取らないのは、取ってしまうと一番助けたい人が来なくなるからです。理由はそれだけです。

そして、私の商売は1件で回収するようにできていません。50年かけて回収するようにできています。だから1件ごとにお金をいただかなくても成り立つんです。


1. お金を取ると、一番困っている方が来なくなる


仮に、相談料を「5,000円」いただくとします。

そうすると、どうなるか。売ると決めている方は払います。5,000円で数百万円が変わるなら安いものですから、当然です。

来なくなるのは、決めていない方です。

「まだ売るかどうか分からへんのに、5,000円払うのはもったいない」

こう思われます。当たり前です。私が逆の立場でもそう思います。

ところがです。50年やってきて分かったことがあります。損をされるのは、いつも「決めていない段階の方」なんです。決めている方は、もう調べています。人にも聞いています。だいたい大きな失敗はしません。

決めていない方は、何も知らないまま最初の一歩を踏み出します。そこで間違えると、あとから全部が狂うんです。

つまり、相談料を取った瞬間に、一番助けが必要な方だけが来なくなる。これでは意味がありません。

だから取らないんです。理念というより、単純な引き算です。


2. 私の仕事は「売ること」ではなく「損を防ぐこと」


若い頃の私は、売ることが仕事だと思っていました。

昭和50年代です。売れば手数料が入る。だから売る。それしか考えていませんでした。恥ずかしい話ですが、本当のことです。

考えが変わったのは、ひとつの出来事がきっかけでした。それは後で書きます。

今の私が仕事だと思っているのは、売ることではありません。目の前の方が「損をしたまま終わらないようにすること」です。

これは、売らせない判断も含みます。

  • 今は売らんほうがええです
  • あと2年待ったほうがええです
  • その値段では出さんほうがええです
  • その業者には返事をせんほうがええです

こういうことを申し上げると、その場では1円にもなりません。むしろ売上が遠のきます。

それでも申し上げます。なぜなら、そこで正直に言った方が、5年後10年後に戻ってきてくださるからです。もしくは、ご近所やご兄弟を連れてきてくださいます。

はっきり申し上げます。これは私なりの計算でもあります。善人ぶるつもりはありません。50年この土地で商売を続けるというのは、そういうことなんです。


3. 一度きりの商売なら、無料相談はやりません


ここは正直に書きます。

もし私が、明日この街を出ていく商売人だったら、無料相談などやりません。1件ごとにきっちりお金をいただいて、次の街に行きます。そのほうが効率がいい。

でも私は北区から出ません。50年出ませんでした。これからも出ません。

同じ町内に、私が20代のときに家を仲介した方のお子さんがおられます。今その方が60代になって、実家の相続の相談に来られます。3代目のお孫さんが家を買うときに、また来られます。

こういう商売なんです。1回の相談で稼ぐ必要がない。だから無料でできる。

逆に言えば、無料相談ができるのは「その土地に居続ける覚悟がある店」だけです。ここは、お店を選ぶときの目安にしていただいていいと思います。


4. 私が無料相談を始めた本当の理由


ここからが、この記事で一番書きたかったことです。

昭和58年のことです。私が34歳のときでした。

近所に、父の代からお世話になっていた方がおられました。仮にAさんとします。当時67歳、少し足の悪い方でした。

ある日の夕方、Aさんが店の前まで来られて、こう言われたんです。

「章雄くん、ちょっと聞きたいことがあるんやけど、今ええか」

その日、私はバブル前の忙しい時期で、契約を2件抱えていました。それで、こう答えてしまったんです。

「すんません、今ちょっと立て込んでまして。また今度でよろしいですか」

Aさんは「ああ、ええよ、ええよ」と言って、笑って帰られました。

その「今度」は来ませんでした。

半年ほどして、人づてに聞きました。Aさんは、持っておられた田んぼと畑を、知り合いの紹介で来た業者に売られていました。

金額を聞いて、私は言葉が出ませんでした。当時の相場で見て、少なく見積もっても「1,200万円」は低い値段でした。しかも、隣接地との境界がはっきりしないまま、そのまま渡しておられました。

あのとき、5分でも話を聞いていれば、私は「その値段はおかしい」と言えました。「境界だけは先にはっきりさせてください」と言えました。

たった5分です。5分を惜しんだせいで、私は近所のお年寄りに1,200万円損をさせたんです。

Aさんは私を責めませんでした。その後もお会いすると、変わらず声をかけてくださいました。それがまた、こたえました。

人は「相談したい」と思ったその日にしか、相談に来ません。次の機会はないんです。あの日を逃したら、もう来ないんです。

だから私は決めました。誰が来ても、何を聞かれても、忙しくても、必ずその場で話を聞く。お金は取らない。

無料相談は、その日から始まっています。理念というより、私の後悔です。


5. 業界の裏側「無料査定」はタダではありません


ここで、業界の中の話をします。

世の中には「無料査定」があふれています。ネットで家を売ろうと調べれば、一括査定サイトが山ほど出てきます。全部タダです。

しかし、あれはタダではありません。誰かがお金を払っています。

一括査定サイトに情報を入れると、複数の不動産会社から電話がかかってきます。あの電話は、なぜ来るのか。

不動産会社が、その情報をお金で買っているからです。私が聞いている範囲では、1件あたり数千円から1万数千円が動いています。

会社の側から見れば、1万円払って買った見込み客です。だから必死になります。電話がしつこいのは当然なんです。元を取らないといけませんから。

これが「無料査定」の正体です。皆さんはお金を払っていません。かわりに、皆さんの名前と住所と物件情報が商品になっています。

もうひとつ申し上げます。買取業者の無料査定です。

買取業者にとって、査定は仕入れの入り口です。安く買うことが利益になります。ですから、高く売る方法を教えてくれることはありません。教えたら自分の商売にならないからです。

無料の相続セミナーも同じです。あれは名簿を集める場です。終わったあとの個別相談会が本番です。

私はこれらを悪だとは言いません。商売としては成り立っています。

ただし、皆さんは知っておいてください。無料の裏側には必ず回収の仕組みがあります。その仕組みが「早く売らせる」方向に働いているのか、「損をさせない」方向に働いているのか。そこを見てください。

私の場合の回収の仕組みは、50年です。急いで回収する必要がないから、急がせません。それだけの違いです。


6. 無料相談で救えた話も書いておきます


最近の例を書きます。

去年です。北区のBさんご夫婦が来られました。ご主人が69歳、奥様が66歳でした。

ご相談は「実家を売って、駅前のマンションに住み替えたい」というものでした。

すでに、ネットで一括査定を使っておられました。5社から電話があって、そのうち1社が来て「3,180万円でいけます」と言ったそうです。

Bさんは、その数字にすっかり乗り気になっておられました。「もう契約しようかと思って」と言われました。

私は正直に申し上げました。「その値段では売れません。うちが査定するなら2,700万円台です」

Bさんのお顔が曇りました。当然です。400万円以上、下の話をされたのですから。

それでも申し上げました。理由は3つあります。

  • ご自宅は接道が4m未満で、セットバックが必要な土地だった
  • 住み替えは売りと買いの順番を間違えると資金がまわらない
  • 売却の前に大きなリフォームをしても、その分は値段に乗らない

先に買ってしまうと、売り急ぐことになって、結局安くなります。リフォームは150万円かけても、売値は150万円上がりません。

Bさんは、その日は何も決めずに帰られました。

3週間後、また来られました。「あの3,180万円のところ、他の家でも同じようなこと言うてるらしいわ」と。ご近所で聞いてこられたそうです。

結果として、Bさんは「2,780万円」で売り出し、2か月半で「2,690万円」で成約されました。買いは、売却の契約が済んでから動かれました。

このとき私がいただいたのは、法律で決まった仲介手数料だけです。相談の分は1円もいただいていません。

でも、あの日の30分がなければ、Bさんは3,180万円で契約して、半年かけて2,400万円台まで下げていた可能性がありました。


7. デメリットも正直に書きます


いいことばかり書くと嘘になります。無料相談の限界を書きます。

ひとつ目。無料でできるのは「話を聞くこと」と「順番をお伝えすること」までです。

測量、境界確定、登記、相続の申告。これらは専門家の仕事で、お金がかかります。測量なら、うちの近辺で「35万円から60万円」ほどです。ここまで無料にはできません。無料でやると言う業者がいたら、そのぶんはどこかで取られています。

ふたつ目。税金の細かい話は、私は断言しません。

相続空き家の3,000万円控除にしても、要件は年々細かくなっています。私は「使える可能性があるので税理士に確認しましょう」までしか申し上げません。ここで断言する不動産屋がいたら、それは危ないです。

みっつ目。無料だと、軽く見られることがあります。

これは私の側の愚痴です。何度も来られて、その足で他社と契約される方もおられます。50年で何度もありました。腹は立ちます。人間ですから。

ただ、それを言い出すと無料の意味がなくなるので、飲み込んでいます。10人のうち1人が戻ってきてくだされば、それで商売は続きます。

よっつ目。私は77歳です。

若い担当者のような機動力はありません。夜遅くの対応も難しいです。パソコンやSNSは若い者に任せています。この点は先に申し上げておきます。

いつつ目。無料でも、お受けできないことがあります。

遠方の物件や、私の手に負えない特殊な案件は、正直に「うちより、この人に聞いたほうがええです」とお伝えします。無理に引き受けて中途半端になるほうが、ご迷惑ですから。


まとめ


もう一度、結論を申し上げます。

私が無料相談をやっているのは、善意ではありません。理由はこれだけです。

  • お金を取ると、一番助けが必要な方が来なくなる
  • 私の仕事は売ることではなく、損を防ぐこと
  • 私の商売は1件ではなく、50年で回収する形になっている
  • 昭和58年、5分を惜しんで近所の方に1,200万円損をさせた後悔がある

そして、皆さんに知っておいていただきたいことも並べます。

  • 世の中の「無料査定」は、誰かが1件いくらでお金を払って買った情報である
  • 買取業者の無料査定は、安く仕入れるための入り口である
  • 無料の裏側にある回収の仕組みが、どちらを向いているかを見てほしい

無料という言葉に飛びつく必要はありません。中身を見てください。


最後に、これだけは申し上げたい


あの日、Aさんに「また今度」と言った自分を、私は今でも思い出します。

77歳になった今、思うことはひとつです。あと何年この店を開けていられるか分かりませんが、開けている間は、来てくださった方の話を必ずその日に聞く。それだけは守ろうと思っています。

売る話でなくて結構です。決まっていなくて結構です。資料を持ってこられなくても結構です。

お茶を一杯お出しします。30分ほどお話を伺って、今してはいけないことと、動く順番だけお伝えします。そのまま帰っていただいて構いません。

お代はいただきません。そのかわり、もし周りに困っておられる方がいたら、こんな不動産屋が北区にいると伝えていただければ、それで十分です。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

ページの上部へ