カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/17 08:35
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が50年この仕事をやってきた中で、何度も「ああ、もったいない」と心の中でつぶやいてきた話、一番もったいない売却についてお話しします。
私はこれまで、数えきれないほどの売却を見てきました。高く売れて喜ばれた方もいれば、安く売って悔しい思いをされた方もいます。
ですが、私が一番もったいないと思うのは、ただ「安く売ってしまった人」ではありません。自分の家や土地が本当は持っていた価値に、最後まで気づかないまま手放してしまった人です。
ここで一歩、立ち止まってください。今日の話は、あなたの家や土地の値段が、あなたが思っているよりずっと高いかもしれない、という話です。
結論から申し上げます
一番もったいない売却とは、値段を間違えた売却ではありません。「売り方」を間違えた売却です。
同じ家、同じ土地でも、売り方ひとつで、手に入るお金が何百万円も変わります。
自分の土地が持っている形、広さ、道路とのつながり。それが何を意味するのかを知らないまま、一番ラクな売り方でまとめて手放してしまう。
これが、50年見てきた中で一番もったいない売却です。これは断言できます。
では、なぜ多くの方が、自分の不動産の本当の価値を活かせないのか。50年見てきて、理由は四つあります。
1. 土地の「形」や「道路付け」が持つ意味を知らない
広い土地、間口の広い土地、角地。これらは、ただ広い、ただ角にあるというだけではありません。
「二つに分けて売れる」「二軒建てられる」という、別の価値を持っていることがあります。
その価値は、家に住んでいるだけでは見えません。図面を見ても、ふつうの方には分かりません。だからこそ、知っている人だけが得をします。
2. 「家を売る」と思い込んで、「土地を売る」発想がない
長く住んできた方ほど、「この家を売る」と考えます。当然です。思い出のある家ですから。
ですが、買う人の多くは、家ではなく土地を見ています。特に築40年を超えた家は、買い手にとっての値打ちは、ほぼ土地です。
「家を売る」と「土地を売る」は、同じようでいて、値段の付き方がまるで違います。
3. 業者がすすめる売り方を、そのまま信じてしまう
業者がすすめてくる売り方が、あなたにとって一番得な売り方とは限りません。
業者にとって一番ラクで、一番儲かる売り方かもしれないのです。ここを、ほとんどの方が疑いません。
4. 急いで、一番手間のかからない道を選んでしまう
「もう面倒だ、まとめて引き取ってほしい」。その気持ちで、価値を考える前にハンコを押してしまう。
手間を惜しんで手放した何百万円。これが、本当にもったいないのです。
鈴蘭台のBさんの話
具体的な話をします。
神戸市北区の鈴蘭台に、Bさんという男性がいらっしゃいました。当時72歳。
お母様を亡くされて、実家を相続されました。築43年の戸建てで、Bさんご自身は別の場所に家を持っておられたので、その実家をどうするかが悩みでした。
その家の土地は、約80坪ありました。間口が広く、形のいい整形地で、前面の道路もしっかり幅がありました。
Bさんは、こうおっしゃいました。「古い家だし、もう手間をかけたくない。まとめて買い取ってもらえるなら、それでいい」
そこへ来たのが、買取をやっている業者でした。業者は言いました。「古家付きのままで結構です。解体もこちらでやります。1,500万円でいかがでしょう」
Bさんは、ほっとされたそうです。面倒な解体もしなくていい、すぐ現金になる。Bさんは、その話で売りました。
ここからが、もったいない話です。
その業者は、家を解体しました。そして、80坪の土地を、40坪ずつ二つに分けたのです。
分けた土地それぞれに、建売の家を一軒ずつ建てました。そして二軒を、土地と建物あわせて一軒3,180万円ほどで売り出しました。
二軒で6,000万円を超えます。建築費を引いても、業者にはかなりの利益が残りました。
もし、Bさんが最初から「この土地は二つに分けて売れる」と知っていたら、どうだったか。
家を解体して、土地を二区画にして、土地として売る。鈴蘭台のあの場所なら、一区画でだいたい1,400万円台。二区画あわせて2,800万円から2,900万円ほどで売れた土地でした。
解体費はBさん持ちになりますから、これがおよそ160万円。土地を分けるための測量や境界の確定にかかる費用が、およそ60万円。
それでも、Bさんの手元には2,500万円以上残った計算になります。実際に売れた1,500万円との差は、1,000万円を超えます。
Bさんは「家を売る」としか考えていませんでした。「土地を二つに分けて売る」という道があることを、最後まで誰も教えてくれなかったのです。
なぜ業者は「古家付きで結構です」と言ったのか
ここで、はっきり申し上げます。
あの業者が「古家付きのままで結構です。解体はこちらでやります」と言ったのは、親切心ではありません。
あの一言には、はっきりした狙いがあります。Bさんに、土地そのものの価値を計算させないためです。
家がついたままなら、Bさんの頭の中は「古い家を引き取ってもらう」でいっぱいになります。「80坪の整形地を、二区画に分けたらいくらになるか」を考える隙がなくなる。
業者は、土地を分けて二軒建てれば大きな利益が出ることを、最初から分かっていました。分かっていて、その価値の話は一切しなかったのです。
もう一つ、覚えておいてください。
あなたの不動産を一番高く買うのは、たいてい「その土地が特別に欲しい人」です。
たとえば、お隣に住んでいる方。隣の方は、自分の土地とつなげれば使い道が広がりますから、相場より高く買ってくれることがあります。
二区画に分けて家を建てたい建売業者も、本来はあなたに高く払ってでも買いたい一人です。
ところが、まとめて買取業者に売ってしまうと、そういう「一番高く買ってくれる人」に、あなたの土地は届きません。業者は、あなたにその買い手を探させないのです。
正直に申し上げておきます
ここで、私の本音も申し上げておきます。
「では、土地はみんな分けて売ったほうが得なんだな」と思われたかもしれません。そう単純な話ではありません。
土地を分けて売るのが、必ず得とは限らないのです。
分けて売る道には、こういう面倒とリスクがあります。
- 測量や境界の確定が必要で、その費用がかかる
- 解体費が先に出ていく
- 狭く分けすぎると、神戸市の決まりで分けられないことがある
- 買い手が二組見つかるまで時間がかかり、その間も固定資産税を払い続ける
- 二区画がそろって売れる保証はない
ですから、「分ければ必ず得」ではないのです。
買取がいい場合も、もちろんあります。本当に急ぐ事情があるなら、買取の早さには、それだけの値打ちがあります。
問題は、ほかの売り方を一度も比べないまま、一番ラクな道で手放してしまうことです。大事なのは、売る前に「この不動産は、ほかの売り方をしたらいくらになるのか」を、一度きちんと確かめることなのです。
まとめ
50年やってきて分かったことがあります。もったいない売却を防ぐのに、難しい知識はいりません。売る前に、たった一つの問いを立てるだけです。
「この家や土地は、今すすめられている売り方のほかに、もっと価値を活かせる売り方がないだろうか」
この問いを立てた人と、立てなかった人。手に入るお金が、何百万円も変わります。
もう一度、申し上げます。
- 土地の形や広さや道路付けには、見た目では分からない価値が隠れていることがある
- 「家を売る」だけでなく「土地を売る」という目で、自分の不動産を見てみる
- 業者がすすめる売り方を、一度は疑ってみる
これだけで、Bさんの1,000万円は守れたのです。
最後に、これだけは申し上げたい
もし今、ご自宅や、相続した家・土地のことで、「まとめて買い取りますよ」という話が来ているなら。
ハンコを押す前に、どうか一度、立ち止まってください。
その土地は、分けて売れる土地なのか。もっと高く買ってくれる人がいないか。今すすめられている売り方が、本当にあなたにとって一番得なのか。
私は「うちで売ってください」とは申しません。あなたの不動産が本当はいくらの価値を持っているのか、50年この北区を見てきた私が、正直にお話しします。
価値に気づかないまま売ってしまえば、それで終わりです。気づいてからでは、遅いのです。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


