カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/18 07:09
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、中古の一戸建てを買われる方が、ほぼ全員見落とす場所の話をします。給排水管、つまり水の通り道です。
家を見に行くと、皆さんキッチンの蛇口はひねられます。お風呂のシャワーも出してみられる。トイレの水も流してみられる。
そして「ちゃんと水が出ますね」と安心して帰られます。
けれど、水が出るかどうかと、配管があと何年もつかは、まったく別の話です。
蛇口から出てくる水は、床下と壁の中と、庭の土の下を通って来ています。その通り道を見た方は、私が知る限り一人もおられません。
結論から申し上げます
給排水管は、家の中で一番見えない場所にあって、一番お金のかかる場所です。
築30年を超えた家を買うなら、給排水管の入れ替えに「100万円から200万円」が、いつか必ず要ると思っておいてください。
築40年を超えているなら、それは「いつか」ではなく「数年以内」です。
これは断言できます。
屋根や外壁は見れば傷みが分かります。壁紙の汚れも、畳の傷みも、目で見えます。配管だけは、壊れるその日まで何も教えてくれません。
そして壊れ方が厄介なのです。屋根が傷めば雨漏りで済みますが、配管が壊れると、床を剥がすか、庭を掘るかの二択になります。
1. 見えない二本の管、給水管と排水管
まず言葉を整理させてください。家の水回りには、性格のまったく違う二本の管が通っています。
一本目が給水管です。道路の下を通っている水道の本管から、敷地に引き込んで、家の中の蛇口まで水を運んでくる管です。
中を水圧のかかった水が通ります。ですから傷むと「漏れる」「赤い水が出る」「出が悪くなる」という形で出てきます。
二本目が排水管です。使った水を、家から敷地の桝を通して、道路の下水本管まで流す管です。
こちらは水圧がかかっていません。傾きだけで流しています。ですから傷むと「詰まる」「臭う」「逆流する」という形で出てきます。
この二本は、材料も寿命も工事の値段もまったく違います。ところが不動産の広告には、どちらも一言も書いてありません。
「上水道・公共下水」とだけ書いてあって、それで終わりです。その管が何でできていて、いつ入れたものなのかは、どこにも書いていないのです。
2. 築年数でだいたい決まります。材料と寿命の目安
50年やってきて分かったことがあります。その家の配管が何でできているかは、築年数を聞けばだいたい見当がつきます。
まず給水管です。
昭和50年代より前に建った家は、亜鉛メッキ鋼管という鉄の管が使われていることが多いです。現場では「白ガス管」と呼びます。
これは中が錆びます。20年から30年で内側に赤い錆がびっしり付きます。朝一番の水が赤い、という家はほぼこれです。
昭和の終わりから平成の初めの家は、塩ビライニング鋼管という、鉄の管の内側に塩ビを貼ったものが多くなります。
中は錆びにくくなりましたが、継手のねじ切り部分から錆びます。目安は30年から40年。
平成の半ばより後の家は、ポリエチレン管や架橋ポリエチレン管という樹脂の管がほとんどです。これは錆びません。40年から50年はもつと言われています。今の新築はまずこれです。
次に排水管です。
古い家は、屋外の排水に陶器の管、いわゆる土管を使っていることがあります。継ぎ目から木の根が入り込んで詰まります。家の中の縦の管には鋳鉄管が使われていた時代もあります。これも中が錆びて細くなります。
今は屋内も屋外も塩ビ管です。塩ビ管そのものは50年近くもちます。
ただし、桝が問題です。古い家の桝はコンクリート製で、これが割れたり、底が抜けたり、木の根が入ったりします。排水のトラブルは、管本体より桝と継手と傾きから起きることのほうがずっと多いのです。
そして工事の値段です。ここが一番聞きたいところだと思いますので、私が北区の現場で見てきたおおよその金額を申し上げます。
- 家の中の給水管を全部やり直す 60万円から120万円
- 床下の配管だけ部分的に直す 30万円から60万円
- 道路から敷地への引込管をやり直す 30万円から60万円(道路を掘る工事があると跳ね上がります)
- 屋外の排水管と桝をやり直す 40万円から100万円
- 排水の高圧洗浄(詰まり掃除だけ) 1回1万5千円から3万円
- 給湯器の交換 20万円から35万円
最後の給湯器は配管の話ではありませんが、必ず一緒に来ます。寿命が10年から15年ですから、築30年の家を買えば、まず間違いなく数年以内に出ていくお金です。
はっきり申し上げます。
築35年から40年の中古住宅を買うということは、この一覧のうちいくつかを、買ってから10年以内に引き受けるということです。
3. 有野台のAさんご夫婦の話
3年ほど前の話です。Aさんご夫婦、ご主人が42歳、奥さんが39歳。小学生のお子さんが二人。賃貸のマンションが手狭になって、庭のある家を探しておられました。
見つかったのが有野台の築38年、土地50坪、木造二階建て。売り出しが2,180万円でした。
中は驚くほどきれいだったのです。前の持ち主が5年前に水回りをリフォームしておられて、キッチンもお風呂も洗面台も新品同様。壁紙も張り替え済み。
奥さんが「この台所なら毎日立てる」と、その場で気に入られました。
ご主人だけが慎重で、私に電話をくださいました。「見た目はきれいなんですけど、築38年って大丈夫なんでしょうか」
私は一緒に見に行きました。そして床下の点検口を開けさせてもらって、懐中電灯を突っ込みました。
出てきたのは、リフォームで新しくなった台所の下、その少し先から、錆びた鉄の管でした。
つまり、蛇口とシンクは新しくなっているけれど、床下から先の配管はそのまま残っている家だったのです。
庭に出て桝の蓋も開けました。コンクリートの桝にひびが入っていて、内側に木の根が一本入り込んでいました。
風呂場の排水の流れも確かめました。水を張って一気に抜くと、ゴボゴボと音がして、抜けるのに時間がかかりました。
私はその場でご夫婦にこう申し上げました。
「中はきれいです。けれどこの家は、あと5年以内に給排水で150万円くらい見ておいてください」
奥さんの顔が曇りました。
ここからが大事なところです。私はこの家をやめなさいとは言いませんでした。むしろ「この家は買っていい家です」と申し上げたのです。
理由は三つありました。土地50坪で南向き、道路付けも良い。有野台は学校が近く、バス便も残っている。そして何より、悪いのが配管という「値段に換算できる場所」だったからです。
屋根が落ちている、基礎が割れている、境界が揉めている。こういう問題は、値段では解決できません。けれど配管は違います。いくらかかるか、はっきり数字が出るのです。
私は業者を呼んで見積もりを取りました。給水管の引き直しが88万円、屋外の排水管と桝のやり直しが62万円、合わせて150万円。
その見積書を持って、売主さん側の不動産屋に交渉に行きました。
「中はリフォーム済みですが、配管は築38年のままです。この見積もりの分だけ、値段を見ていただけませんか」
結果、2,180万円が1,980万円になりました。200万円下がったのです。
Aさんご夫婦は買われて、引っ越し前に配管工事をされました。床下と壁を一部開けて、樹脂の管に入れ替え、庭を掘って排水も桝も新しくしました。
工事が終わったあと、ご主人が言われた言葉を今でも覚えています。「あきちゃん、これ、もし何も知らずに買ってたら、どうなってたんですかね」
私はこう答えました。「2年目の冬に、床下で水が漏れてます。台所の床がぶよぶよしてきて、そこで初めて気づかれる。
そのときは床を全部剥がすことになりますから、150万円では済みません。250万円くらいでしょうね」
4. なぜ誰も配管の話をしないのか
ここからは、業界の内側の話をします。読んで気持ちのいい話ではありませんが、知っておいていただきたいのです。
一つ目。配管は、売主さんも知りません。
これは悪気の話ではないのです。40年住んでおられても、床下に潜ったことのある方はほとんどおられません。「特に困っていません」というのが売主さんの本当の実感で、嘘をついているわけではないのです。
けれど「困っていない」は「傷んでいない」ではありません。
二つ目。仲介の業者は、あえて聞きません。
お客さんが気に入っておられるときに「ところで配管が」と言い出せば、話がまとまらなくなるかもしれない。聞かなければ、知らなかったで済む。だから見に行かない。だから聞かない。これが業界の実態です。
三つ目。ここが一番申し上げたいところです。水回りリフォーム済みという言葉が、配管の傷みを隠してしまうのです。
キッチンやお風呂を入れ替えるリフォームは、見た目には劇的に効きます。写真映えもします。値段も乗せられます。
けれど、床下から先の配管まで入れ替えると、工事の値段が倍近くになります。売るためのリフォームをする業者が、どちらを選ぶか。答えは申し上げるまでもありません。
ですから、こういう言い方をさせてください。中古住宅で「水回りリフォーム済み」と書いてあったら、それは安心材料ではなく、確認材料です。
「どこまでやりましたか。床下の配管は替えましたか。書類はありますか」
この一言を聞くだけで、話がまるで変わります。
四つ目。中古住宅の販売価格には、配管の更新費用は入っていません。
これは業界全体の慣習です。築40年の家が「2,000万円」で出ているとき、その2,000万円には、5年以内に出ていく給排水と給湯器の200万円は含まれていないのです。
買う側は「2,000万円の家を買った」と思っておられますが、実際には「2,200万円の家を、200万円後払いで買った」ことになります。
5. 正直に申し上げる、配管工事のいやなところ
いい話ばかりでは嘘になりますから、配管をやり直すことの、しんどい面も申し上げます。
まず、工事中は住めないか、住みにくいかのどちらかです。家の中の給水管を全部やり直すとなると、床や壁を部分的に開けます。水も止まります。
住みながらやれないことはありませんが、1週間から10日、台所とお風呂が使えない日が出ます。ですから、買ってから引っ越すまでの間にやってしまうのが一番安く、一番楽です。これは間違いありません。
次に、直しても家の値段は上がりません。
150万円かけて配管を新しくしても、その家が150万円高く売れるかというと、売れません。見えない場所だからです。買う人は写真で判断しますから、床下の新しい配管は誰も評価してくれません。
ですから、売る直前に配管を直すのは、私はおすすめしません。損になることが多いのです。配管を直すのは、自分がこれから20年住むためです。売るためではありません。
三つ目。全部を一度にやる必要はありません。
給水も排水も給湯器も一度にやると200万円を超えますが、実際には緊急度が違います。赤い水が出ているなら給水が先。流れが悪いなら排水が先。給湯器が動いているなら、それは壊れてからで構いません。
一度にやらなければと思い込んで、それで中古住宅をあきらめる方がおられますが、それはもったいない話です。
四つ目。見積もりは必ず複数取ってください。
配管の工事は、外から出来を確かめられません。ここが怖いところです。「床下に潜って直しておきました」と言われても、本当に潜ったかどうか、素人には分からないのです。
工事の前後の写真を必ず出してもらってください。まともな業者なら、言わなくても出してきます。
まとめ
もう一度申し上げます。給排水管は、家の中で一番見えなくて、一番お金のかかる場所です。
覚えて帰っていただきたいのは、この三つだけです。
- 築30年を超えた中古住宅は、給排水と給湯器で100万円から200万円をあらかじめ見ておく
- 「水回りリフォーム済み」は、床下の配管まで替えたかどうかを必ず確かめる
- 傷んでいるなら、それを理由に値段を交渉する材料にできる
最後の一つが大事なのです。配管が古いこと自体は、その家をあきらめる理由にはなりません。Aさんご夫婦のように、見積もりを取って、その分を値段から引いてもらえばいいのです。
怖いのは、傷んでいることではありません。傷んでいるのを知らないまま、満額で買ってしまうことです。
最後に、これだけは申し上げたい
50年やってきて分かったことがあります。
家というのは、目に見えるところで人を喜ばせて、目に見えないところで人を泣かせます。
新しいキッチンは、毎日あなたを喜ばせてくれます。床下の錆びた鉄の管は、ある朝突然あなたを泣かせます。
どちらも同じ家の中にあって、値段が高いのは後のほうなのです。
ですから、内見に行かれるときは、どうか床下の点検口を開けさせてもらってください。
たいてい台所か洗面所の床にあります。懐中電灯で覗くだけでも、管が鉄か樹脂かくらいは分かります。庭の桝の蓋も、開けていいか聞いてみてください。断られる家は、それだけで一つ情報が増えます。
もし今、気になっている中古住宅があるなら、契約の前に一度ご相談ください。
私が一緒に行って、床下を覗き、桝を開け、風呂の水を抜いて流れを見ます。そのうえで「この家はあと何年で、いくらかかるか」を申し上げます。必要なら、その見積もりを持って値段の交渉もいたします。
そして、やめておいたほうがいい家なら、そのときははっきりそう申し上げます。
50年やってきて、売れなかった家より、売ってしまって後悔した家のほうが、ずっと心に残るものですから。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


