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境界がわからない土地の直し方
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/09/11 07:50

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、「うちの土地、どこまでがうちなのか分からない」という境界の話をします。

kyoukai

実家を売ろうとして、あるいは相続した土地を整理しようとして、初めてこの問題にぶつかる方が本当に多いのです。

「親の代から住んでいるのだから、境界なんてはっきりしているだろう」と思っておられる方ほど、いざ売る段になって慌てられます。

測量にいくらかかるのか、どのくらい時間がかかるのか、放っておいたら何が起きるのか。私が現場で見てきたことを、そのままお話しします。


結論から申し上げます


境界がわからない土地は、「売ると決める前に」直してください。

売り出してから、あるいは買主さんが決まってから測量を始めると、ほぼ間違いなく値段か時間のどちらかを失います。

費用の目安は、お隣さんとの境界だけなら「30万円から50万円」、道路との境界も確認するなら「60万円から80万円」ほど。期間は早くて2か月、道路との立会いが入ると半年近くかかることもあります。

これは断言できます。

境界の問題は、放っておいて良くなることは1つもありません。時間がたつほど、話をまとめられる人がいなくなっていきます。


1. そもそも「境界がわからない」とはどういう状態か


境界がわからない、と言っても中身はいくつかに分かれます。

  • 地面に打ってあるはずの境界標(コンクリートの杭や金属のプレート)が見当たらない
  • 法務局に土地の図面(地積測量図)が残っていない、あっても古くて当てにならない
  • 登記簿の面積と、実際に測った面積が合わない
  • お隣さんと「ここが境界」と思っている線が食い違っている

北区で特に多いのは、1つ目と2つ目です。

昭和40年代から50年代に造られた鈴蘭台、北五葉、山の街、ひよどり台あたりの住宅地は、分譲当時に杭を打ってあったはずなのです。けれど50年たつうちに、ブロック塀を積み直したとき、駐車場を広げたとき、外構工事をしたときに、杭が抜かれたり埋もれたりしてしまっています。

それから、法務局の図面です。

古い時代の図面は、今のように座標(地球上の位置を数字で表したもの)が入っていないものが多く、図面どおりに現地を復元できないことがあります。平成17年ごろより後に作られた図面なら、かなり当てになります。

面積のずれもよくあります。昔の測り方はおおらかでしたから、登記簿では50坪なのに、実際に測ったら52坪あった(これを「縄伸び」と言います)、逆に48坪しかなかった(「縄縮み」)ということが、北区の古い土地では珍しくありません。


2. 境界を直す方法は3つあります


境界を直す、つまり「ここからここまでが私の土地です」とはっきりさせる方法は、大きく3つです。

1つ目は、現況測量です。

今の塀や杭の位置をそのまま測って図面にするものです。費用は「10万円から30万円」ほどで、期間も2週間から1か月程度。安くて早いのですが、お隣さんの同意を取るものではありませんから、境界を「確定」させる力はありません。

2つ目は、確定測量です。

土地家屋調査士さんに頼んで、お隣さん全員に現地で立ち会ってもらい、「この線で間違いありません」と書類(境界確認書)にハンコをいただくものです。売買で「測量してください」と言われるのは、ほとんどがこれです。

お隣さんとの境界だけなら「30万円から50万円」。前の道路が市道なら、神戸市にも立ち会ってもらう必要があり(官民境界と言います)、その場合は「60万円から80万円」ほど。角地や、お隣さんが多い土地、傾斜地で測りにくい土地だと、100万円を超えることもあります。

期間は、スムーズにいって2か月から3か月。道路との立会いは役所の日程に合わせますから、半年ほど見ておくと安心です。

3つ目は、筆界特定制度です。

お隣さんがどうしても立ち会ってくれない、行方が分からない、というときに、法務局に申し立てて、登記上の境界(筆界)がどこにあるかを判断してもらう制度です。

裁判よりはずっと安く済みます。申請手数料は土地の評価額によって決まり、住宅地なら数千円から数万円ほど。ただし測量の費用は別に数十万円かかりますし、結論が出るまで半年から1年ほど見ておく必要があります。


3. 放っておいたら何が起きるか


ここが今日一番お伝えしたいところです。

境界が分からない土地を放っておくと、次のようなことが起きます。

1つ目は、売れない、または安くなることです。

今の不動産売買では、買主さんの多くが「境界を確定してから引き渡してください」と条件を付けます。住宅ローンを貸す銀行も、境界がはっきりしない土地には慎重です。境界が決まっていないというだけで、買い手の数がぐっと減ります。

2つ目は、立ち会える人がいなくなることです。

これが一番怖い。

10年前ならお隣のご主人がお元気で、「ああ、ここですよ」と一言で済んだ話が、ご主人が亡くなり、相続人が大阪と東京に3人、となると、3人全員の同意を取らなければなりません。そのうち1人でも連絡がつかない、ハンコを押さない、となると話が止まります。

3つ目は、国に引き取ってもらう道も閉ざされることです。

令和5年に始まった相続土地国庫帰属制度(いらない土地を国に引き取ってもらう制度)では、境界が明らかでない土地や、お隣さんと境界で争いがある土地は、申請そのものが受け付けてもらえません。山林や農地を相続して困っておられる方も、境界の整理が入口になります。

4つ目は、お隣さんとの関係です。

建て替えや塀の積み直しをするときに、どこに塀を立てるかで揉めることがあります。境界の話は、一度こじれると親戚同士でも口をきかなくなるくらい、根の深い争いになります。


4. 実例をひとつお話しします


北五葉にご実家があったFさんの話です。

Fさんは68歳の女性で、お父様が亡くなってご実家を相続されました。土地は登記簿で52坪、家は築48年。Fさんご自身は西宮にお住まいで、ご実家は3年ほど空き家になっていました。

売り出したところ、30代のご夫婦が「1,450万円」で買いたいと言ってくださいました。ありがたい話です。

ただし、条件が1つ付いていました。「境界を確定して、測量図を付けて引き渡してください」。住宅ローンを組む銀行からも、同じことを求められていました。

ここで一歩立ち止まってください。

調べてみると、4か所あるはずの境界標のうち、残っていたのは2か所だけ。裏のお宅との間は古いブロック塀で、その塀が誰のものかも分かりません。

さらに、裏のお宅のご主人は5年前に亡くなっておられて、名義はそのまま。相続人は大阪に1人、東京に2人。うち1人とは、なかなか連絡がつきませんでした。

土地家屋調査士さんに頼んで、手紙を出し、電話をかけ、東京まで書類を持って行っていただいて、ようやく全員のハンコがそろったのが、お話を始めてから9か月後です。前の道路の神戸市との立会いも、その間に済ませました。

測量費用は、官民の立会いを含めて「58万円」でした。

ところが、その9か月の間に、買主のご夫婦は待ちきれずに別の家を決めてしまわれました。契約書に「期限までに境界が確定しなければ白紙に戻す」という約束が入っていましたから、仕方がありません。

境界が確定してから売り直して、決まったのは「1,320万円」でした。

最初の話より130万円安く、測量費が58万円。その間の固定資産税、草刈り、空き家の管理費で、さらに20万円ほど。Fさんは合わせて200万円以上を失った計算になります。

Fさんはこうおっしゃいました。「お隣のおじさんが元気なうちに、一言聞いておけばよかった」と。

一方で、同じ北区の山の街で、ご実家を売られたHさんご夫婦は、売り出す前に私から「先に測量だけ済ませておきましょう」とお話しして、確定測量をしておかれました。費用は「42万円」、期間は2か月半。お隣さんがご健在で、話が早かったのです。

売り出してからは、2か月で買主さんが決まりました。境界確定済みで、測量図もある。買主さんも銀行も安心して話を進められました。

同じような土地、同じような築年数でも、準備の順番1つでこれだけ違います。


5. 業界の裏を申し上げます


1つ目は、「公簿売買で大丈夫ですよ」という言葉です。

公簿売買とは、測量をせずに登記簿の面積のまま売る方法です。売主さんからすれば測量代がかからず、早く売れる。業者からすれば、早く契約できて手数料が早く入る。

けれど、境界があいまいなまま買った買主さんは、次に売るとき、建て替えるときに、同じ問題を抱えます。そのとき「前の持ち主と仲介業者は何をしていたのか」と揉めることになります。公簿売買が悪いのではありません。境界の問題を「後回しにしただけ」で済ませるのが良くないのです。

2つ目は、買取業者の値引きです。

境界が決まっていない土地を買取業者に持っていくと、「境界が未確定なので」と、100万円から200万円ほど値段を引かれることがあります。

ところが、買い取った業者は自分で測量を入れて、数か月で境界を確定させて、普通の値段で売り直します。業者は慣れていますから、測量費は数十万円で済みます。売主さんが自分で直していれば手元に残ったはずのお金が、業者の利益になっているわけです。

3つ目は、口約束の境界です。

「境界はこのブロック塀の真ん中ですよ」「うちの親父がそう言っていました」。こういう話を、売却のときに業者がそのまま買主さんに伝えてしまうことがあります。

はっきり申し上げます。

口約束の境界は、お隣さんの代が替わった途端に通用しなくなります。書類になっていない境界は、境界ではありません。


6. デメリットを正直に書きます


境界を直すことにも、良くない面はあります。

まず、お金をかけても値段は上がりません。

確定測量に50万円かけたからといって、売値が50万円上がるわけではありません。「売れるようにするための費用」であって、「高く売るための費用」ではない。ここは割り切っていただく必要があります。

次に、測ったら面積が減ることがあります。

登記簿で52坪の土地が、測ったら49坪しかなかった、ということが起こり得ます。実測の面積で売るなら、その分値段は下がります。面積を登記簿に反映させる手続き(地積更正登記)にも、別に費用がかかります。

それから、お隣さんとの関係です。

「境界の立会いをお願いします」と言っただけで、「うちの土地を取るつもりか」と身構えられることがあります。長年うまくいっていたご近所づきあいが、立会いをきっかけにぎくしゃくすることも、正直に言ってあります。

最後に、筆界特定制度は万能ではありません。

法務局が判断してくれるのは「登記上の境界線」だけで、お隣さんの感情までは片付けてくれません。塀の位置や、長年使ってきた部分の所有権でもめている場合は、結局裁判になることもあります。


7. では、どう直せばよいのか


50年やってきて分かったことがあります。

境界の話がすんなりまとまる家は、測量の技術ではなく「順番」がうまくいっています。

私がいつもお勧めしている順番は、こうです。

  • まず、手元の書類を探す(昔の測量図、境界確認書、売買契約書)
  • 次に、法務局で地積測量図を取り寄せる(1通数百円)
  • 現地で境界標を探す(草の下、塀の足元、側溝の縁)
  • お隣さんがご健在なうちに、土地家屋調査士さんに相談する
  • 売ると決めたら、売り出す前に確定測量を済ませる

特に4つ目です。

お隣さんがお元気で、話ができる。それが、境界を直すうえで一番の財産です。お金をかけても、後から取り戻せないものがあります。

お隣さんに話をするときは、いきなり「測量させてください」ではなく、「親から相続した土地を整理しておきたいので」と、事情を先にお伝えすると角が立ちにくい。立会いは、お互いの土地の境界がはっきりするのですから、お隣さんにとっても損な話ではありません。


まとめ


境界がわからない土地は、売ると決める前に直すのが一番安く、一番早い。

費用の目安は、お隣さんとの境界だけなら30万円から50万円、道路との境界も含めると60万円から80万円。期間は2か月から半年。

放っておくと、売れない、値段が下がる、立ち会える人がいなくなる、国にも引き取ってもらえない。

Fさんは、買主さんが決まってから測量を始めて、200万円以上を失いました。Hさんご夫婦は、先に測量を済ませて、2か月で売却が決まりました。

違いは、順番だけです。


最後に、これだけは申し上げたい


境界の問題は、目に見えないうちに少しずつ重くなっていく問題です。

「うちの土地の杭、どこにあったかな」と少しでも思われた方。ご実家を相続して、いずれ売るかもしれないと考えておられる方。お隣さんとの境界が気になりながら、言い出せずにおられる方。

住所を教えていただければ、法務局の図面がどうなっているか、現地に杭が残っていそうか、測量にどのくらいかかりそうか、私の知っている範囲で正直にお話しします。付き合いのある土地家屋調査士さんへのおつなぎもできます。

お隣さんがお元気なうちに、一度ご相談ください。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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