カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/07/03 07:35
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が50年この仕事をやってきて、一番「見ていてつらい」と思ってきた話をします。兄弟で揉める土地の話です。
親御さんが亡くなって、実家と土地が残る。それまで仲の良かった兄弟が、その土地をきっかけに口をきかなくなる。ひどいときは、裁判所で顔を合わせることになる。
私はこれを、50年で何十件も見てきました。
結論から申し上げます
兄弟で揉める土地には、共通点があります。
それは「一つの土地を、複数人で持ってしまっている」ことです。
専門用語で「共有」と言います。この共有名義こそが、兄弟仲を壊す一番の原因です。
はっきり申し上げます。相続でもらった土地を、そのまま兄弟の共有名義にして放っておくのは、一番やってはいけないことです。
なぜそう言い切れるのか。今日はその理由と、実際に私が見てきた失敗を正直にお話しします。
1. 共有名義が「なぜ揉めるのか」を先に言います
まず、共有というのがどういうことか、簡単に説明させてください。
たとえば、お父さんが土地と家を残して亡くなった。相続人が長男、次男、長女の3人だとします。
このとき「とりあえず3人で3分の1ずつ分けておこう」とすることがあります。これが共有名義です。
一見、平等で公平に見えます。けれど、ここに落とし穴があります。
共有名義の土地は、一人では何もできません。
売るにも、貸すにも、建て替えるにも、原則として共有者「全員」の同意が必要になります。
3人のうち2人が「売りたい」と言っても、1人が「売りたくない」と言えば、売れないのです。これが、兄弟仲を壊します。
2. 実際にあった話をします
神戸市北区の、あるご家族の話です。
お父さんが亡くなって、藤原台の一戸建てと土地が残りました。相続人は長男のAさん(当時58歳)、次男のBさん(当時55歳)、それに嫁いだ長女の3人です。
そのときは、みんな仲が良かった。葬儀のあとも「とりあえず3人の名義にしておこう」と、深く考えずに共有にしました。
問題が起きたのは、それから7年後です。
長男のAさんが「実家はもう誰も住んでいないし、固定資産税(年間12万円)も払い続けるのはもったいない。売ろう」と言い出しました。長女も賛成しました。ところが、次男のBさんが「思い出のある家だ。売りたくない」と反対したのです。
Aさんと長女は「2対1だから売れるだろう」と思っていました。けれど、売れないのです。共有は全員の同意がいるからです。
Bさんは「自分は住むわけじゃないが、売るのは反対」と言うだけ。話し合いは平行線。そのあいだも、固定資産税と、傷んでいく空き家の管理費だけがかかり続けました。
最終的にどうなったか。AさんとBさんは、10年近く口をきかなくなりました。
家は誰も手を入れないまま傷み、当初「2,400万円」で売れたはずの土地が、揉めているあいだに周辺の相場も下がり、10年後にやっと売れたときには「1,700万円」になっていました。
700万円が、兄弟の意地の張り合いで消えたのです。
3. 揉める土地には、もう一つ共通点があります
共有名義に加えて、私が見てきた「揉める土地」には、もう一つの共通点があります。
それは「誰か一人が、その家に住んでいる」ケースです。
たとえば、親と同居していた長男が、そのまま実家に住み続ける。土地は兄弟3人の共有のまま。住んでいる長男からすれば「自分の家」です。けれど、名義上は次男や長女も権利を持っています。
次男が「自分の分をお金で欲しい」と言い出したとき、住んでいる長男には、その分を払うお金がない。ここから泥沼が始まります。
- 住んでいる人は「出ていけと言うのか」と怒る
- 住んでいない人は「こっちの権利はどうなる」と怒る
- どちらも間違っていない。だから、余計にこじれる
こういうケースは、親御さんが元気なうちに決めておかないと、まず揉めます。これは断言できます。
4. 業界の裏側も、正直に話します
ここで、少し業界の話をします。
共有名義で兄弟が揉めている土地。実は、これを狙っている業者がいます。「共有持分の買取業者」というものです。
さきほどのBさんのように「売りたくない」と一人が反対しているとき、売りたい側の持分だけを、こういう業者が安く買い取るのです。たとえば本来なら800万円の価値がある持分を「今すぐ現金化できますよ」と言って、300万円や400万円で買い取る。
そして、その業者が今度は「共有者」の立場で、残った兄弟に対して「この持分を買い取ってくれ」「でなければ土地を分割してくれ」と、法的手段で迫ってくるのです。
赤の他人が、いきなり共有者として家族の中に入ってくる。こうなると、もう家族だけの問題では収まりません。
「早く現金にできますよ」という甘い言葉には、必ず裏があります。持分を安く買い叩かれたうえに、残った兄弟にも迷惑がかかる。誰も得をしません。
5. デメリットも正直に申し上げます
ここまで「共有はダメだ」と申し上げてきました。ただ、正直に言えば、共有名義がすぐに悪さをするわけではありません。
みんなが元気で、仲が良くて、その土地に誰も執着がないうちは、共有のままでも問題は起きません。問題が表に出るのは「10年後、20年後」です。
- 相続した兄弟が、さらに亡くなる
- すると、その持分が、今度は「甥や姪」に相続される
- 気がつけば、一つの土地の名義人が「7人」「10人」に膨れ上がる
こうなると、もう誰と話をつけていいのかも分かりません。会ったこともない親戚に、印鑑をもらいに頭を下げて回ることになります。
私は、名義人が12人にまで増えてしまった土地を扱ったことがあります。全員の同意を集めるのに、2年かかりました。
共有は「今」は楽です。決めなくていいから。けれど、その先送りのツケは、必ず次の世代が払うことになります。
まとめ
もう一度、結論を申し上げます。兄弟で揉める土地の共通点は「共有名義のまま放っておくこと」です。
避けるために、できることは3つあります。
- 相続のとき、できるだけ共有にせず「誰か一人の名義」にまとめる。かわりに他の兄弟には現金や別の財産で埋め合わせる
- 分けにくいなら、いっそ売ってお金で分ける。土地は分けられないが、お金なら1円単位で公平に分けられる
- 親御さんが元気なうちに「この家と土地をどうするか」を家族で話しておく
「まだ元気だから」「縁起でもない」と、この話を先延ばしにする家族ほど、あとで揉めます。50年やってきて分かったことがあります。揉める家族は、みんな「話し合いを避けてきた」家族です。
最後に、これだけは申し上げたい
土地やお金の話を、家族でするのは気が引けるものです。私もよく分かります。
けれど、その話を避けたばっかりに、仲の良かった兄弟が一生口をきかなくなる。私はそういう場面を、何度も見てきました。土地は分けられても、壊れた家族の仲は、元には戻りません。
もし今、実家の相続や、兄弟での土地の分け方に少しでも不安があるなら、揉める前に、一度お話を聞かせてください。売る売らないの前に「どう分けるのが一番揉めないか」を、50年の経験からお話しします。相談だけでも構いません。損得より先に、ご家族の仲を守る方法を一緒に考えます。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


