カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/08/29 07:38
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、神戸電鉄沿線の家がこれからどうなるのかについてお話しします。私がこの仕事を始めたときから、神鉄はずっと北区の真ん中を走っていました。50年です。私はこの電車の窓から、山が削られて住宅地になっていくのを見て、その住宅地に若い夫婦が入っていくのを見て、その夫婦が今、家を売りに来るのを見ています。
ここ数年、一番よく聞かれる質問があります。
「あきちゃん、神鉄って将来大丈夫なんですか」
「粟生線が廃線になるって聞きました。うちの家、価値がなくなりませんか」
この質問に、私は正直に答えます。ただし「大丈夫ですよ、神戸市内ですから」という、不動産屋がよく使う逃げ方はしません。それは答えていないのと同じだからです。
結論から申し上げます
神戸電鉄沿線の家は、これから「沿線」でひとくくりにはできなくなります。同じ神鉄でも、駅ごと、いや、駅からの距離ごとに、はっきり二つに分かれていきます。
伸びる側にいるのは、谷上から北の三田線側で、駅から歩ける家。苦しくなるのは、粟生線側と、どの駅であってもバスでしか行けない家です。
この差は、もう始まっています。そして今後20年で、もっと開きます。これは断言できます。
なぜそう言えるのか。4つに分けてお話しします。
1. 2020年に、50年で一番大きなことが起きました
まずこれをご存じない方が、まだ相当いらっしゃいます。
2020年6月、北神急行電鉄が神戸市営地下鉄の北神線になりました。それまで民間の会社が運営していた谷上と新神戸の間のトンネルが、市営になったのです。
何が起きたか。運賃が半分になりました。谷上から三宮まで550円だった運賃が280円です。270円下がりました。
これがどれだけ大きいことか、通勤で考えてください。往復で540円。月20日で約1万800円。年間で約13万円です。夫婦で共働きなら、年間26万円です。
岡場に住んでいる方、田尾寺に住んでいる方、有馬温泉の方、三田の方、全員がこの恩恵を受けています。三田から三宮までは1,080円が810円に、有馬温泉から三宮も950円が680円になりました。
50年やってきて分かったことがあります。住宅地の値段を動かすのは、建物でも間取りでもありません。三宮まで、いくらで、何分で行けるか。この2つだけです。
そのうちの「いくら」が、いきなり半分になった。こんなことは、私の50年で一度もありませんでした。ですから私は、谷上から北の駅前については、正直、悲観していません。
2. 一方で、粟生線の数字は正直に申し上げます
ここは隠しません。はっきり申し上げます。神戸電鉄の粟生線は、赤字が続いています。
鈴蘭台から西へ伸びていく、あの路線です。粟生線の年間の利用者は、平成4年度をピークにして、そこから約53パーセント減っています。半分以下です。
赤字額も出ています。近年の資料では、粟生線だけで年間10億円前後の赤字が続いています。直近では9億7,600万円ほどまで縮んできてはいますが、それでも10億円規模です。
ここで、皆さんが一番気にされることを先に申し上げます。粟生線は、今の時点で廃止が決まったわけではありません。
地元の自治体、住民、鉄道会社が集まって、利用を増やす取り組みがずっと続いています。赤字額も少しずつ縮小しています。「明日にでもなくなる」という話ではないのです。
ただし、と私は続けます。「なくならない」ことと「家の値段が下がらない」ことは、まったく別の話です。
利用者が半分になった路線の沿線で、家を買う若い人が増えると思われますか。増えません。
私が見ている限り、粟生線側の中古住宅は、買い手の年齢層が上がっています。これは非常に良くない兆候です。買い手が高齢化した地域は、10年後に売り手だらけになるからです。
3. 神鉄は「坂の鉄道」です。駅から歩けるかどうかが全部です
3つ目です。ここが一番大事かもしれません。
神戸電鉄という鉄道は、日本でも屈指の急勾配を登る鉄道です。有馬線に乗って湊川から鈴蘭台まで上がると、体で分かります。ぐいぐい登ります。
登るということは、沿線が山だということです。山だということは、駅の周りが平らではないということです。
ですから神鉄沿線では、「駅徒歩10分」の意味が、平地の街とまったく違います。平地の駅徒歩10分なら、80歳でも歩けます。神鉄沿線の駅徒歩10分は、帰りが「登り」なら、70歳で歩けなくなることがあります。
私は査定に行くとき、必ず駅から歩きます。車で行きません。50年ずっとそうしています。歩かないと分からないからです。地図の上では同じ徒歩10分でも、平らな10分と、階段と坂の10分では、20年後の売れ方がまるで違います。
そして運賃の値下げは、この坂を解決してくれません。三宮まで280円で行けても、家から駅までの坂は、そのままそこにあります。
4. 沿線の住宅地は、同じ年に一斉に造られました
4つ目です。これは北区の宿命のようなものです。
鈴蘭台も、有野台も、藤原台も、それぞれの時代に、まとまった規模で一気に造成されました。一気に造って、一気に売り出した。
ということは、入居した方々の年齢もそろっていたということです。30代のご夫婦が同じ年に隣同士で家を買って、同じ年に子どもが小学校に上がって、同じ年にお子さんが出ていって、そして今、同じ時期に80歳になっておられます。
結果、何が起きるか。同じ町内で、同じ時期に、家が一斉に売りに出ます。
私はこれを実際に見ています。ある自治会の中で、1年間に6軒売りに出たことがありました。6軒です。売り出し価格を先に決めた1軒目が、一番高く売れました。最後の6軒目は、1軒目より400万円安い値段で決まりました。
これは物件の差ではありません。順番の差です。はっきり申し上げます。神鉄沿線で家を売るなら、同じ町内の人より先に動いた人が勝ちます。これは、きれいごとではなく現実です。
5. 実際にあった2つの話
数字の話が続きましたので、実際にあったお話をします。
ひとつ目。鈴蘭台のAさん、72歳の男性です。昭和48年に、新築で買われました。当時の価格を伺うと、土地建物で約780万円だったそうです。50坪の土地に、木造2階建て。駅からはバスで12分、バス停から歩いて6分の場所です。
奥様を亡くされて、お一人になり、大阪のお嬢さんのところへ移ることになりました。Aさんが最初に言われた金額は1,180万円でした。近所の方が去年それくらいで売ったと聞いた、とおっしゃる。
私は正直に申し上げました。「Aさん、その方の家は駅から歩けます。Aさんのお宅はバス便です。同じ鈴蘭台でも、別の商品なんです」
Aさんはご納得されませんでした。それはそうです。50年住んだ家です。私も無理に説得はしませんでした。
結果、1,180万円で10か月置きました。内覧は3件です。3件です、10か月で。11か月目に980万円へ下げ、最終的に780万円で成約しました。昭和48年に買った値段と、ほとんど同じでした。
ここでAさんが言われた一言を、私は忘れません。「もっと早く、あんたの言うとおりにしとったら、もう少し高かったんかな」
正直に申し上げると、そのとおりです。最初から980万円で出していれば、おそらく3か月で900万円台の後半で決まっていました。10か月の間に、その物件は「売れ残り」に見えるようになってしまったのです。
ふたつ目。岡場のBさんご夫婦です。ご主人が68歳、奥様が65歳。こちらは駅から歩いて8分。緩やかな下りの道です。築28年の一戸建てでした。
Bさんご夫婦は、2019年の秋に一度、売却を相談に来られました。そのときの査定は2,180万円です。ところが娘さんの出産が重なって、話が止まりました。
再開したのは2021年です。私は査定をやり直して、こう申し上げました。「上がりました。2,380万円で出しましょう」
ご主人は驚かれました。「築年数は2年古くなったのに、上がるんですか」と。上がったのです。北神線が市営化されて、三宮までの運賃が半分になったからです。
岡場から三宮への通勤コストが、年間で13万円下がった。これは、その家に住む人にとって「毎年13万円の値上げに耐えられる家」になったのと同じ意味です。買い手の予算が、そのぶん上がるのです。
結果、2,380万円で、2か月かからずに決まりました。買われたのは、三宮に勤める30代のご夫婦でした。
同じ神戸電鉄沿線で、同じ2年の間に、片や780万円、片や2,380万円。これが「駅ごとに分かれる」ということです。
6. ここからは業界の裏の話をします
ここまでお読みになった方に、業界の内側の話を申し上げます。
ひとつ目。「神鉄沿線は将来性がありますよ」と、沿線をひとくくりにして言う営業がいます。これは、買っていただきたいときに使う言葉です。売却の相談に来られた同じお客様に、同じ営業が「神鉄沿線は厳しくて」と言うことがあります。
同じ会社の、同じ人間が、立場によって言うことを変える。私はこれを何度も見てきました。
判断してください。「沿線」で語る人の話は、半分は営業です。駅名と、駅からの距離と、坂の有無を口に出す人の話だけ聞いてください。
ふたつ目。廃線の話で煽る業者がいます。「粟生線、廃止の話が出ていますよ。今のうちに売らないと価値がゼロになります」。そう言って、自社の買取に持ち込む。買取価格は市場の6割から7割です。
申し上げたとおり、廃止は決まっていません。決まっていないことを「決まりそうです」と言って、安く買う。これは、はっきり申し上げてよくないやり方です。もし言われたら、その場で契約しないでください。一晩置いてください。
3つ目。査定書のからくりです。「〇〇駅エリアの平均成約価格は2,100万円です」。こういう資料を出してくる。もっともらしく見えます。
でもその平均には、駅前のマンションも、バスで15分の家も、全部入っています。神鉄沿線でその平均を使うのは、ほとんど意味がありません。平均ではなく、あなたの家と同じ条件で去年いくらで売れたかを出させてください。出せない会社は、調べていないだけです。
4つ目。「囲い込み」です。これは以前もお話ししましたが、神鉄沿線では特に効きます。もともと買い手の数が限られている地域で、他社に物件を紹介させないと、単純に買い手が減ります。
売主と買主の両方から手数料を取りたいがために、他社からの問い合わせに「商談中です」と答える。これで3か月動かなくなった物件を、私は実際に知っています。
対策は簡単です。契約後に届く「販売活動報告書」で、問い合わせ件数と紹介件数を毎回確認してください。数字を出し渋る会社は、疑ってください。
7. デメリットも正直に申し上げます
ここまで運賃値下げの話をしましたので、良いことばかりに聞こえたかもしれません。そうではありません。
まず、北神線が安くなっても、神戸電鉄そのものの運賃は決して安くありません。谷上から三宮が280円になっても、家から谷上までの神鉄の運賃は残ります。三田から三宮の810円というのは、他の街と比べて、まだ高い部類です。
次に、若い世代が電車を使いません。北区は車社会です。私が見ている限り、30代、40代のご家族は、電車の話より「駐車場が2台停められるか」を気にされます。運賃が半分になったことが、どこまで効くのか。私は効くと思っていますが、断言まではできません。
3つ目。私自身の見立てとして申し上げますが、北区全体の人口は減っています。運賃が下がっても、住む人が減れば、家の値段は下がります。
私が「谷上以北の駅前は悲観していない」と申し上げたのは、「上がる」という意味ではありません。「下がり方が緩やかで済む」という意味です。ここを勘違いされると困ります。神鉄沿線の家が、これから値上がりして儲かる、という話ではまったくありません。
4つ目。バス便の家は、電車の話以前の問題です。バスの本数が減れば、駅がいくら便利になっても関係ありません。
まとめ
もう一度、結論を繰り返します。神戸電鉄沿線の家は、これから「沿線」ではなく「駅ごと」「駅からの距離ごと」に分かれます。
谷上から北の三田線側で、駅から歩ける家。ここは、運賃が半分になった追い風があります。下がり方は緩やかです。
粟生線側と、どの駅でもバス便の家。ここは、利用者が半分に減った現実があります。厳しくなります。
そして、どちらの側であっても、同じ町内で一斉に高齢化が進んでいます。売るときは、順番が値段を決めます。
ご自身の家がどちらなのか、判断する材料は3つです。
- 最寄り駅は三田線側か粟生線側か
- 駅まで歩けるか、バスか
- 駅からの道は登りか下りか
この3つで、だいたい分かります。難しい話ではありません。
最後に、これだけは申し上げたい
私は77歳です。この北区で50年、不動産の仕事をしてきました。正直に申し上げると、私が始めた頃の北区と、今の北区は違います。あの頃は、造れば売れました。今は違います。
それでも、私はこの街の家を「価値がない」とは思っていません。大事なのは、自分の家がどういう場所にあるのかを、正確に知ることです。知っていれば、打つ手はあります。売る順番も、価格の付け方も、いつ動くかも変えられます。知らないまま5年待った方だけが、損をします。
ご自宅がどちら側なのか分からない、いくらで売れるのか知っておきたい、まだ売る気はないけれど話だけ聞きたい。どれでも構いません。
査定は無料です。売らない前提のご相談も、いつでもお受けしています。私は駅から歩いて伺います。坂も、道も、この目で見てからお話しします。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


