カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/20 07:23
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は「北区の中古マンションって、買ってもいいんでしょうか」というご質問にお答えします。ここ数年、本当によく聞かれるようになりました。私が見ているのは、間取りでも眺望でもありません。管理費、修繕積立金、総戸数。この3つです。
戸建てを探していたご夫婦が、途中でマンションに目を移される。お子さんが独立されて「もう戸建ては広すぎる」とおっしゃるご夫婦が、駅の近くのマンションを見に行かれる。親御さんの介護を考えて、実家を売ってマンションに移りたいという方もおられます。
そのたびに、私の携帯が鳴ります。
「あきちゃん、このマンション、どう思う?」
今日は、その電話で私がいつもお答えしていることを、そのまま書きます。
結論から申し上げます
北区の中古マンションには、買っていいものと、絶対に手を出してはいけないものが、はっきり分かれます。そして、その見分け方は、間取りでも眺望でも、駅からの距離でもありません。
管理費。修繕積立金。総戸数。この3つの数字を見れば、8割方わかります。これは断言できます。
私は50年やってきて、北区のマンションを数え切れないほど仲介してきました。そして「売りたいのに売れない」という相談も、同じだけ受けてきました。売れずに困る物件には、必ず共通点があります。それは築年数ではありません。管理の中身です。
築40年でもスッと売れるマンションがあります。築20年なのに1年半売れ残るマンションもあります。その差が、この3つの数字に出ます。
1. 総戸数は「50戸」がひとつの分かれ目
まず総戸数です。なぜ戸数を見るのか。マンションの修繕費は、戸数で割り算されるからです。
外壁を塗り直す。屋上の防水をやり直す。給水管を入れ替える。エレベーターを更新する。これらは戸数が20戸でも200戸でも、かかる金額はそこまで変わりません。エレベーター1基の更新に1,500万円かかるとして、200戸のマンションなら1戸あたり7万5千円です。20戸のマンションなら1戸あたり75万円です。
10倍違います。
北区には、昭和50年代から60年代に建った小規模なマンションがたくさんあります。総戸数18戸、24戸、30戸。こういう物件は価格が安いので目に留まりやすい。けれど、修繕のときに一気にきます。
私の感覚で申し上げると、総戸数50戸がひとつの分かれ目です。50戸を超えていれば、管理会社もそれなりに手をかけますし、修繕積立金も回ります。30戸を切ると、途端に厳しくなる。20戸を切ったマンションは、正直に申し上げて、相当慎重に見たほうがいいです。
もちろん、小規模でも管理がしっかりしているマンションはあります。ただ、それは「たまたま理事長さんが優秀だった」というケースが多い。その方が引っ越されたら、翌年から崩れます。
2. 修繕積立金が「安い」のは、いいことではありません
次が修繕積立金です。ここで多くの方が、真逆の勘違いをされます。
「あきちゃん、このマンション、修繕積立金が月3,000円なんです。安くて助かります」
はっきり申し上げます。それは助かっているのではありません。先送りされているだけです。
修繕積立金というのは、10年後、20年後に必要になるお金を、今から少しずつ積んでおくものです。今が安いということは、将来必要な金額に足りていないということです。足りなければ、どうなるか。
- 値上げ。月3,000円が、ある日の総会で月12,000円になる
- 一時金。「1戸あたり80万円をお納めください」という通知が来る
- 工事をやらない。外壁も屋上もそのまま10年放置される
いちばん怖いのは3つめです。お金がないから直さない。10年経つと、見た目でわかるようになります。そうなったマンションは、もう売れません。
目安を申し上げると、1平米あたり月200円前後は欲しいところです。70平米のお部屋なら、月14,000円前後。これを聞いて「高い」と思われた方、その感覚が危ないんです。
北区の中古マンションで、修繕積立金が月3,000円台の物件を見かけたら、まず長期修繕計画書と、これまでの大規模修繕の履歴を見せてもらってください。「まだ一度も大規模修繕をやっていません、築35年です」という物件が、実際にあります。
3. 管理費は「高すぎる」ほうが売るときに効いてきます
3つめが管理費です。管理費は修繕積立金と違って、日々の管理のためのお金です。清掃、管理人さんの人件費、エレベーターの保守、共用部の電気代。
これは高すぎると、売るときに効いてきます。
買う人は、住宅ローンの返済額に管理費と修繕積立金を足して、毎月の負担を計算します。ローンが月8万円でも、管理費と積立金で月3万円かかれば、合計で月11万円です。同じ予算の戸建てなら月9万円で買えるとなったとき、買い手はどちらを選ぶか。
北区の場合、ここがなかなか難しいところです。バス便のマンションで、管理費が高くて、駐車場も1台分しか確保できない。となると、若いご家族は戸建てに流れます。
管理費の目安は、1平米あたり月150円から200円くらい。70平米で月10,000円から14,000円です。これを大きく超えるようなら、何にお金がかかっているのか、管理組合の収支報告書を見せてもらってください。
それと、もうひとつ見てほしい数字があります。管理費の滞納額です。「重要事項調査報告書」という書類に、そのマンション全体で管理費・積立金がいくら滞納されているかが書いてあります。ここが膨らんでいるマンションは、住んでおられる方の顔ぶれが変わりつつある、ということです。数字はうそをつきません。
4. 鈴蘭台の築38年、1,280万円のマンションの話
具体的な話をします。3年ほど前、Cさん(52歳・男性)から相談を受けました。奥様とお二人で、鈴蘭台の中古マンションを買おうとされていました。
3LDKの72平米で、価格は1,280万円。築38年。駅から徒歩9分。日当たりも良く、リフォーム済みで室内はきれいでした。Cさんは「これで1,280万円なら安い」と言われました。
私は資料を見せてもらいました。総戸数、28戸。管理費、月9,800円。修繕積立金、月4,200円。
私はCさんにこう申し上げました。「このマンション、大規模修繕をいつやったか、管理会社に聞いてください」と。
答えは、「築20年のときに一度。それ以降やっていない」でした。
築38年で、直近18年間、大規模修繕をしていない。28戸のマンションで、修繕積立金が月4,200円。積立金の残高を聞いたら、全体で約1,400万円しかありませんでした。28戸のマンションの外壁と屋上と給水管をやろうと思えば、ゆうに4,000万円はかかります。
これは、近いうちに一時金の話が出ます。1戸あたり80万円から100万円。あるいは、積立金が月4,200円から月15,000円に上がります。
Cさんは、この物件を見送られました。
その1年半後、同じマンションの別のお部屋が売りに出ているのを見つけました。価格は980万円まで下がっていました。理由を調べたら、総会で「修繕積立金を月15,000円に改定、加えて一時金1戸60万円」が決まっていました。
Cさんに電話でお伝えしたら、電話の向こうでしばらく黙っておられました。
5. 逆に、谷上の築42年で即決したご夫婦の話
逆の話もします。同じ年に、Dさんご夫婦(60代)が谷上の中古マンションを検討されました。
築42年。Cさんが見た物件より、4年古い。価格は1,450万円。Cさんの物件より高い。けれど、資料を見て私は「これは良いです」と申し上げました。
総戸数、96戸。管理費、月11,500円。修繕積立金、月13,800円。
積立金の残高が、全体で1億2,000万円ありました。大規模修繕は築15年、築27年、築39年と、きちんと3回やっていました。長期修繕計画書も、20年先まで作られていました。管理費の滞納は、ゼロ。
築42年でも、外壁はきれいでした。共用廊下の照明は全部LEDに替わっていて、駐輪場も整理されていました。管理人さんが週5日入っていました。
Dさんご夫婦は即決されました。そして去年、そのマンションの別のお部屋が売りに出たとき、2か月で買い手がつきました。築44年です。それでも売れるんです。
50年やってきて分かったことがあります。マンションは、建物を買うのではありません。管理組合を買うんです。
6. 業界の裏側を申し上げます
ここからは、あまり言いたくない話をします。中古マンションの取引で、営業が黙っていることがあります。
ひとつめ。重要事項調査報告書を、契約直前まで取らない。
この書類は、管理会社に手数料を払って取り寄せます。3,000円から1万円くらいかかります。ここに、修繕積立金の残高、滞納額、値上げの予定、一時金の徴収予定、大規模修繕の計画、すべて書いてあります。
つまり、この書類を先に見せると、買う気がなくなるお客様がおられるんです。だから、契約が固まってから、重要事項説明の場でさらっと読み上げる。読み上げれば、法律上は説明したことになります。
はっきり申し上げます。この書類は、申込みの前に見せてもらってください。「契約前に重要事項調査報告書を見たい」と言えばいいだけです。断る業者がいたら、その業者は使わないほうがいい。
ふたつめ。「修繕積立金が安いので、ランニングコストが低いです」というセールストーク。
これはもう、売るための言い方です。さきほど申し上げたとおり、安い積立金は、後で必ず取り返されます。
みっつめ。管理組合の総会議事録を見せない。
直近3年分の総会議事録を読めば、そのマンションで今何が起きているか、だいたいわかります。修繕の議論、滞納者の話、管理会社の変更、住民同士のもめごと。こういうものは、議事録に残っています。これも「見せてください」と言えば、まともな会社なら取ってきます。
7. 北区の中古マンションのデメリットも、正直に申し上げます
いいところばかり言うつもりはありません。北区の中古マンションには、はっきりした弱点があります。
まず、出口が限られます。三宮や芦屋のマンションと違って、北区のマンションは投資で買う人がほとんどいません。買うのは、そこに住む人だけです。つまり、売るときの相手は「北区に住みたい人」だけになります。これは戸建てより狭い市場です。
次に、バス便の物件が厳しい。駅から徒歩圏のマンションは、まだいいです。けれど、バス15分というマンションは、中古市場でかなり苦戦します。車を使う生活ならマンションでなくてもいい、と考える方が多いからです。
それから、エレベーターのない5階建て。北区にはそれなりにあります。昭和50年代の建物です。40代で買って、70代になったときにどうなるか。これは本当に考えたほうがいい。私は実際に「階段が上がれなくなって売りに出した」という3階のお部屋を、何件も扱ってきました。
最後に、高台と坂です。北区は坂の町です。マンションそのものが高台にあって、そこまでの道がきつい、というケースがあります。見学は車で行かれると気づきません。一度、歩いて駅から往復してみてください。しかも、雨の日に。
まとめ
北区の中古マンションは、買っていいです。ただし、選べば、の話です。見るのは、この3つです。
- 総戸数が50戸以上あるか
- 修繕積立金が70平米で月13,000円前後、積まれているか
- 管理費が高すぎず、滞納がないか
そして、書類はこの3点を必ず先に取ってください。
- 重要事項調査報告書
- 長期修繕計画書
- 直近3年分の総会議事録
この3つを契約前に見せてもらえば、大きな失敗はほぼ避けられます。
築年数は、正直、二の次です。管理が良ければ築40年でも売れます。管理が悪ければ築20年でも売れません。
マンションは、建物ではなく管理組合を買う。これだけは、覚えて帰ってください。
最後に、これだけは申し上げたい
中古マンションの資料は、初めての方が見てもわかりにくいようにできています。私も駆け出しの頃は読み違えました。
もし今、気になっている物件があるなら、資料をお持ちください。管理費と修繕積立金と総戸数、そして議事録を一緒に見ます。10分あれば、「これは買っていい」か「やめたほうがいい」か、私の意見は申し上げられます。
買いなさい、とは言いません。私の仕事は、損をさせないことです。50年、北区でやってきました。この町のマンションのことなら、たいていのことは分かります。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


