カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/17 13:29
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、中古の一戸建てを買おうとしておられる方に、一つだけお願いがあってこの記事を書いています。買う前に、屋根と外壁だけは見てください。
中古住宅の内見で、皆さんが熱心に見られるのはキッチンとお風呂と日当たりです。
収納の数を数え、窓から景色を眺め、冷蔵庫がどこに置けるかを測られる。それはそれで大事なことです。
けれど、玄関を出てから振り返って、屋根を見上げる方はほとんどおられません。外壁を手でさわってみる方は、もっとおられません。
そして、家を買ったあとに一番大きなお金が出ていくのは、たいていその二つなのです。
結論から申し上げます
屋根と外壁は、築10年を過ぎたら「いつか直す場所」ではなく「いつ直すかが決まっている場所」です。
30坪ほどの一般的な二階建てで、屋根と外壁にかかるお金は、30年でざっと400万円から500万円。
一回あたりで言えば、100万円から250万円の出費が、10年から15年ごとにやってきます。
ですから中古住宅を買うときは、こう考えてください。
「この家の屋根と外壁は、前回いつ、何をしたのか」
「次にお金が要るのは、買ってから何年後で、いくらなのか」
この二つが分からないまま買うのは、車検の時期も分からないまま中古車を買うのと同じです。
いえ、金額の桁が一つ違いますから、もっと怖い話です。
1. 外壁の修繕時期と、おおよその費用
まず外壁です。北区の戸建ての外壁は、大きく分けて二種類です。
一つは「サイディング」と呼ばれる板を張ったもの。築30年くらいまでの家は、ほとんどがこれです。
もう一つは「モルタル」と呼ばれる、セメントを塗り固めたもの。古い家に多く見られます。
サイディングの家で一番先に傷むのは、板そのものではありません。板と板のつなぎ目に詰めてある、ゴムのような目地材です。
これが10年から15年で硬くなり、ひびが入り、痩せて隙間ができます。そこから雨水が板の裏に回ります。
目地の打ち替えは、塗装と一緒にやって20万円から40万円ほど。
外壁の塗り替えは、30坪ほどの家で足場代込み90万円から130万円が目安です。塗り替えの時期は、使った塗料にもよりますが、おおむね10年から15年ごと。
これを放っておくとどうなるか。板が水を吸って反り返り、塗装では済まなくなります。
板の張り替えや、上から新しい板を重ねる工事になると、150万円から250万円。塗り替えを一回ケチったために、100万円以上高くつくわけです。
モルタルの家は、ひび割れに注意してください。
髪の毛くらいの細いひびなら、塗装のときに埋めれば済みます。ところが、名刺の角がすっと入るくらいの幅のひびは、下の構造にまで水が回っている可能性があります。
2. 屋根の修繕時期と、おおよその費用
次に屋根です。北区の住宅地で多いのは、三種類です。
- スレート屋根(薄い板状の屋根材。平成の建売住宅の多くがこれ)
- 日本瓦(昔ながらの焼き物の瓦)
- 金属屋根(最近の家や、葺き替えた家に多い)
スレート屋根は、10年から15年ごとに塗装が必要です。費用は足場別で40万円から70万円ほど。
そして築25年から30年あたりで、塗装では追いつかなくなります。
そのときは、今の屋根の上に金属屋根をかぶせる工事で100万円から150万円、全部はがして新しくする葺き替えなら150万円から250万円です。
日本瓦は、瓦そのものは50年以上もちます。
ただし、屋根のてっぺんの棟という部分を固めている白い漆喰が、15年から20年で崩れてきます。詰め直しで20万円から50万円。
瓦の下に敷いてある防水の下地は、20年から30年が寿命です。ここがだめになると、瓦を一度全部おろして敷き直すことになり、150万円は見ておいてください。
ここで一つ、はっきり申し上げます。
屋根で一番高くつくのは、屋根の工事ではありません。雨漏りしてからの工事です。
雨漏りは、天井のシミになって見えたときには、もう屋根の下地の板が腐っていることが多い。
そうなると、屋根の工事に加えて、下地の板、天井、壁紙、場合によっては柱の補修まで乗ってきます。
屋根だけなら120万円で済んだ家が、雨漏りのあとでは250万円、300万円になるのを、私は何度も見てきました。
3. どの工事も、まず足場代がかかります
屋根と外壁の話で、必ず覚えておいていただきたいことがあります。足場代です。
二階建ての家の屋根や外壁を触るには、家のまわりに足場を組まなければなりません。これが30坪ほどの家で15万円から25万円。
足場を組んだだけで、まだ何も直していない段階の金額です。
ですから、屋根と外壁は一緒に直すのが一番得です。外壁を塗った3年後に屋根を直すことになれば、足場代をもう一回払うことになります。
これは、中古住宅を買うときにとても大事な見方になります。
「外壁は最近塗ってあるのに、屋根は新築のまま」
こういう家は、ぱっと見はきれいですが、近いうちに屋根だけのためにもう一度足場を組むことになります。
4. 素人でもできる、屋根と外壁の見方
では、内見のときに何を見ればいいのか。専門家でなくても分かることは、意外とたくさんあります。
外壁は、手でさわってください。
- 壁を指でこすって、手に白い粉がつかないか(つけば塗装が寿命の合図)
- 北側の壁に緑色のコケや黒いカビが広がっていないか
- 目地にひびや隙間がないか
- 窓の下から、雨だれの黒い筋が垂れていないか
屋根は、少し離れて、坂の上から見てください。
北区は坂の多い街です。これは普段は不便なことですが、屋根を見るにはありがたい。一本上の道から見下ろせば、たいていの家の屋根が見えます。スマートフォンのカメラで拡大すれば、かなり細かいところまで分かります。
- 屋根の色が白っぽく色あせていないか
- 屋根材が割れたり、欠けたり、ずれたりしていないか
- てっぺんの金属の板が浮いていないか、釘が飛び出していないか
- 雨どいが曲がったり、外れかけたりしていないか
家の中では、二階の天井と、押入れの天井の隅を見てください。シミの跡があれば、過去に雨漏りがあった可能性があります。
そして最後に、必ずこれを売主さんか業者さんに聞いてください。
「屋根と外壁は、前回いつ、何をされましたか。そのときの見積書か領収書はありますか」
書類が出てくる家は、大事にされてきた家です。
「さあ、分かりません」という家は、新築から一度も手が入っていないと思って計算しておくほうが安全です。
5. 実際にあった話
去年の春、有野台で家を探しておられたEさんご夫婦のお話です。ご主人が41歳、奥さんが39歳。小学生のお子さんが二人おられました。
見つけられたのは、築27年、土地50坪ほどの二階建て。1,680万円でした。
外壁は3年前に塗り替えたばかりで、薄いベージュ色がとてもきれいでした。ご夫婦は、内見の帰りの車の中でもう「ここにしよう」という顔をしておられました。
私は、一本上の道まで歩いて、その家の屋根を見下ろしました。
スレート屋根が、全体に白っぽく色あせていました。ところどころ欠けていて、てっぺんの金属の板の釘が何本か浮いていました。
業者さんに聞くと、「屋根は新築のときのままです」とのことでした。外壁を塗ったときに、屋根まではお金をかけなかったのです。
屋根屋さんに見てもらうと、塗装ではもう無理で、金属屋根をかぶせる工事が必要だと言われました。
見積もりは、足場代を含めて150万円。外壁と一緒にやっていれば、足場代の20万円は要らなかった工事です。
私はEさんにこう申し上げました。
「この家は、買ってすぐに150万円かかる家です。その前提で値段の話をしましょう」
屋根屋さんの見積書を添えて交渉した結果、1,560万円まで下がりました。120万円の値引きです。
Eさんは引き渡しの翌月に屋根の工事をされて、今は安心して住んでおられます。
もう一人、思い出す方がおられます。
北鈴蘭台の築30年の家を、1,280万円で買われたFさん、52歳の男性です。Fさんは他の会社を通じて買われて、屋根のことは誰からも何も言われなかったそうです。
住み始めて2年目の秋、台風のあとで二階の天井から水が落ちてきました。
てっぺんの金属の板が風で飛ばされ、そこから雨が入っていたのです。調べてみると、屋根の下地の板まで腐っていました。
屋根の葺き替え、下地の板の交換、天井と壁紙の張り替え。合わせて230万円。
火災保険の風災で出たのは40万円ほどでした。長年の傷みが原因の部分は、保険では出ないのです。
Fさんは私のところに相談に来られて、こうおっしゃいました。
「買うときに、誰か一言でも屋根のことを言ってくれていたら」
6. 業界の裏側を、正直に申し上げます
これは、あまり表では言われない話です。
一つ目。売る前に、外壁だけ塗る家があります。
外壁は、内見に来た人の目に入ります。屋根は入りません。ですから売主さんや買取業者が、売る直前に外壁だけ塗り替えて、「外壁塗装済み」と広告に書く。
嘘ではありません。ただ、屋根のことは書いていないだけです。
二つ目。仲介の担当者は、屋根まで見ていないことがほとんどです。
重要事項説明で雨漏りについて触れるのは、たいてい売主さんが書いた「告知書」の内容です。
「現在、雨漏りはありません」と書いてあっても、それは「今、天井から水が落ちていない」という意味でしかありません。屋根が傷んでいるかどうかとは、別の話です。
しかも、個人の売主さんから古い家を買う場合、引き渡し後の不具合の責任は「3か月まで」や「一切負わない」という条件がよく付いています。
買ってから屋根の傷みに気づいても、売主さんには何も言えないことが多いのです。
三つ目。屋根と外壁の修理には、たちの悪い業者が集まってきます。
買ったばかりの家に、突然「近くで工事をしていたら、お宅の屋根が浮いているのが見えました」と訪ねてくる業者がいます。「火災保険を使えば、自己負担なしで直せますよ」と言う業者もいます。
保険が下りるかどうかを決めるのは保険会社で、業者ではありません。高い手数料を取られた上に、保険が下りなかったという相談を、私は何件も受けています。
屋根と外壁の工事は、飛び込みの業者ではなく、必ず二社か三社から見積もりを取ってください。
7. 屋根と外壁にこだわることの、マイナス面
ここまで書いておいて何ですが、屋根と外壁にこだわることにも、マイナス面はあります。正直に申し上げます。
一つは、気にしすぎると、良い家を逃すということです。
築20年を過ぎた家で、屋根も外壁も完璧な家は、まずありません。傷んでいることを理由に全部見送っていたら、いつまでたっても買えません。
大事なのは、傷んでいない家を探すことではなく、傷みの分を値段に織り込むことです。
二つ目は、見積もりの金額が業者によって大きく違うことです。
同じ屋根で、90万円と見積もる会社もあれば、180万円と見積もる会社もあります。一社だけの見積もりを根拠に値引きの交渉をしても、売主さんが納得されないことがあります。
三つ目は、買う前に屋根に上がって調べるのは、現実には難しいということです。
売主さんが許可されないこともありますし、急な屋根に人が上がるのは危険です。建物の専門家に調べてもらう住宅診断は5万円から10万円ほどかかり、それでも屋根は地上や窓からの目視までということが多い。
最近は小さな無人機で上空から撮ってくれるところもありますが、その分費用は上がります。
そして四つ目。これは売る側の話ですが、売る前に屋根と外壁を直しても、かけたお金ほどは値段に乗らないことが多いのです。
150万円かけて屋根を直した家が、150万円高く売れるとは限りません。ですから、売主さんが直さずに売りに出すのは、ある意味で当然のことでもあります。
まとめ
もう一度申し上げます。中古の一戸建てを買う前に、屋根と外壁だけは見てください。
- 外壁は10年から15年ごとに塗り替え。足場込み90万円から130万円
- スレート屋根は10年から15年ごとに塗装。築25年から30年でかぶせるか葺き替えて100万円から250万円
- 日本瓦は漆喰の詰め直しが15年から20年ごと。下地の敷き直しは20年から30年で150万円ほど
- どの工事にも、まず足場代が15万円から25万円
内見のときは、坂の上から屋根を見下ろし、外壁を手でこすり、二階の天井のシミを探してください。そして「前回いつ、何をしたか」を書類で確かめてください。
傷んでいても構いません。傷んでいる分を分かった上で、値段の話をすればいいのです。
分からないまま買うから、2年目の台風の夜に天井から水が落ちてくるのです。
最後に、これだけは申し上げたい
50年やってきて分かったことがあります。
家の値打ちを決めるのは、中のきれいさより、雨風を防ぐ外側の丈夫さです。
屋根と外壁がしっかりしている家は、中が古くても、住みながら少しずつ直していけます。屋根と外壁が傷んでいる家は、中がどれだけきれいでも、雨一つで台無しになります。
もし今、気になっている中古住宅があるなら、契約の前に一度ご相談ください。
私が一緒に見に行って、一本上の道から屋根を見下ろし、外壁をさわって、「この家はあと何年で、いくらかかるか」をお伝えします。そのうえで、値段の交渉に使える材料をそろえるお手伝いもいたします。
見送ったほうがいい家なら、そのときははっきりそう申し上げます。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


