カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/08/14 11:46
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、唐櫃と有馬口のあたりのお話をします。このエリアは、北区の中でも一番、評価が人によって割れる場所です。
「不便でしょう」とおっしゃる方がいます。「あそこは車があれば最高ですよ」とおっしゃる方もいます。
どちらも正しいのです。だから困るのです。
同じ家を見て、片方の方は「安い」と言い、もう片方の方は「これでこの値段は高い」と言う。私は50年、それを何度も見てきました。
今日は、このエリアの強みと弱みを、両方とも隠さずに書きます。そのうえで、どういうご家庭に向いていて、どういうご家庭には向かないのかを、はっきり申し上げます。
結論から申し上げます
唐櫃・有馬口エリアは、車が生活の中心にあるご家庭にとっては、北区でもかなり良い場所です。そして、車を持たない、あるいはいずれ手放す予定のご家庭にとっては、北区の中でも特に厳しい場所です。
はっきり申し上げます。
このエリアの価値は、駅までの距離では決まりません。高速道路のインターまでの距離で決まっています。
これは断言できます。
唐櫃・有馬口で家を買って後悔される方は、ほぼ例外なく「電車で通う生活」を前提にされた方です。逆に、ここを選んで20年、30年と満足しておられる方は、最初から車で動くと決めておられた方です。
ですから今日、私が一番申し上げたいのはこれです。このエリアは、良い悪いではなく、合う合わないで判断してください。
1. まず、唐櫃と有馬口がどういう場所か整理します
地名から整理します。混同されている方が本当に多いのです。
有馬口駅は、神戸電鉄有馬線の駅です。ここで有馬温泉へ向かう線が分かれます。だから「有馬口」という名前です。
ただし、有馬口駅の周りに温泉街があるわけではありません。ここから有馬温泉までは、さらに電車で2駅、車なら10分ほどかかります。
唐櫃台駅は、有馬口駅のひとつ手前、三宮寄りの駅です。住宅地としてまとまっているのは、この唐櫃台駅の周りです。上唐櫃、下唐櫃、唐櫃台といった住所のあたりですね。
ここで一歩立ち止まってください。このエリアを見に来られるとき、「有馬口駅」で降りて周りを見て「何もないな」と判断される方がおられます。
それは、見る場所を間違えておられます。住宅地として見るなら、唐櫃台駅の周りと、そこから坂を上がった一帯を見てください。
もうひとつ大事なことを申し上げます。このエリアは、六甲山の北側の斜面に開かれた街です。平地に作った街ではありません。山の斜面を段々に造成して、そこに家を並べた街です。
これがこのエリアの、良いところも悪いところも、全部作っています。眺めが良いのも、坂が厳しいのも、同じ理由です。
50年やってきて分かったことがあります。街の長所と短所は、たいてい同じ場所から出てきます。長所だけを取ることはできません。
2. 最大の強みは、高速のインターです
このエリアの本当の価値は、ここです。不動産の広告には、あまり大きく書かれません。
唐櫃には、阪神高速の北神戸線のインターがあります。六甲北有料道路もここでつながっています。そして中国自動車道の西宮北インターも、車で10分ほどの距離です。
これが何を意味するか、具体的に申し上げます。
- 大阪方面へ、家を出てから10分以内に高速に乗れる
- 姫路方面も、中国道に乗ればすぐ
- 新神戸トンネルを使えば、三宮まで車で20分台という日もある
北区の他のエリアと比べてみてください。鈴蘭台から高速に乗ろうと思うと、一般道をかなり走ることになります。藤原台や岡場からでも、インターまで少し走ります。
唐櫃は、インターがすぐそこにあります。この差は、毎日使う方にはとてつもなく大きい。
私が扱った中で、このエリアを選ばれた方の職業を思い返しますと、はっきり傾向があります。
- 大阪に営業で通われる方
- 現場を回る職人さんや工務店の方
- ご夫婦で車を2台使われる共働きのご家庭
- 週末に必ず遠出をされる方
こういう方には、唐櫃・有馬口は本当に良い場所です。私は正直にそう思います。
それともうひとつ。有馬温泉が近いということです。これは値段には出にくいのですが、暮らしの満足度には確実に効きます。
車で10分ほどで、日本有数の温泉地に行けます。日帰りの施設もあります。冬に、思い立って夕方に温泉に行ける生活というのは、他所ではなかなかできません。
こういうことは、査定書には一行も書けません。けれど、20年住まれた方は必ずこの話をされます。
3. 電車の話は、正直に申し上げます
ここからは弱みの話に入ります。まず電車です。
唐櫃台駅から谷上駅までは、神戸電鉄で10分ほどです。谷上駅で神戸市営地下鉄の北神線に乗り換えると、三宮まで10分ほどで着きます。
ですから、時間だけを見れば、唐櫃台から三宮まで乗り換え1回で30分前後です。これは、数字だけ見れば悪くありません。
はっきり申し上げます。問題は時間ではありません。本数と、駅までの道です。
神戸電鉄の有馬線は、谷上から先、本数が減ります。特に日中と夜は、待ち時間が出ます。1本逃したときの待ち時間が、市街地の路線とはまったく違います。
それから運賃です。北神線は、以前の北神急行だった頃に比べれば、神戸市営になってから運賃がずいぶん下がりました。これは本当に大きな改善でした。
ただし、それでも神戸電鉄と乗り継ぐと、三宮まで片道はそれなりの金額になります。毎日となると、家計に乗ってきます。
そして、一番効いてくるのがここです。唐櫃台駅から平坦に歩ける家は、そう多くありません。多くのお宅は、駅から坂を上がった場所にあります。
広告に「徒歩12分」と書いてあっても、それは坂を計算していません。私が実際に歩くと、16分から18分かかることが普通にあります。しかも帰りが上りです。
ここは正直に申し上げます。このエリアで「駅から歩いて毎日電車通勤」を前提にされるなら、駅から平坦に歩ける限られた区画だけを見てください。そこを外すと、3年で嫌になります。私は実際に、そういう方を何人も見てきました。
4. 坂とバス便が、値段を作っています
このエリアの値段は、駅名では決まりません。同じ唐櫃の中で、はっきり上下します。数字を申し上げます。細かい条件で変わりますので、私の実感としてお聞きください。
唐櫃台駅から徒歩10分以内、ほぼ平坦、駐車2台、築25年前後の一戸建て。これで「1,400万円から1,700万円」あたりです。
同じ唐櫃でも、坂を上がった上のほう、駅から徒歩20分近く、あるいはバス便になる場所。同じ築年数、同じ広さでも「850万円から1,150万円」あたりまで落ちます。
驚かれる方が多いのですが、これが現実です。同じ町名の中で、坂の上か下かだけで、500万円以上変わります。
なぜここまで差が出るのか。理由は3つです。
ひとつ目。買い手の数が違います。
坂の上の家を買える人は、車を運転できて、なおかつ坂の上の生活を受け入れられる人だけです。入口が狭いのです。
ふたつ目。維持費が違います。
斜面地の家には、たいてい擁壁があります。石積みやコンクリートで、敷地を支えている壁のことです。これが古くなると、直すのに数百万円かかることがあります。買主さんは、それを分かっているから値段を下げます。
三つ目。冬です。
このエリアは標高があります。三宮が雨の日に、こちらは雪ということが、毎年のようにあります。坂の上の急な道が凍ると、車が上がれません。私は実際に、朝、家から出られなかったという話を何度も聞いています。
これは覚えておいてください。北区で家を選ぶとき、坂は「見た目の問題」ではありません。値段の問題であり、冬の生活の問題であり、10年後に売れるかどうかの問題です。
5. 実際にあった3つの話
ここからは実例です。細かいところは変えていますが、金額と流れはそのままです。
まずGさんご夫婦です。当時、ご主人が41歳、奥様が39歳。お子さんが2人。ご主人は大阪の会社で、営業で車を使うお仕事でした。
Gさんが最初に見ておられたのは、谷上駅の近くの物件でした。駅から徒歩8分、築22年、3,050万円。
私はこう申し上げました。「ご主人は、毎日どうやって会社に行かれますか」と。
ご主人は、社用車で朝6時半に家を出て、大阪へ向かうとのことでした。電車はほとんど使わないと。
そのとき私は、唐櫃台のほうをお見せしました。駅から徒歩11分、ほぼ平坦、駐車2台、敷地45坪、築24年で「1,620万円」でした。
谷上の物件との差は、1,400万円以上です。そしてご主人の通勤時間は、唐櫃のほうがむしろ10分短くなりました。インターが近いからです。
Gさんはこちらを選ばれました。浮いた分で、水回りを全部入れ替えて、外壁も塗り直されました。それでも大きく余りました。
これは、良い判断だったと思っています。ご主人が車で動く生活だと最初から決まっていたから、電車の弱みが最後まで効かなかったのです。
次はHさんです。当時35歳のご夫婦、お子さんはまだおられませんでした。
Hさんが買われたのは、唐櫃の坂を上がった一帯の家でした。駅から徒歩19分、途中に急な坂と階段。築28年、敷地60坪、庭付き、眺めが素晴らしい家です。値段は「980万円」でした。
ご夫婦は、その眺めに一目惚れされました。「こんな景色の家が1,000万円で買えるんですね」と、本当に嬉しそうでした。
私は、売り込みませんでした。そのかわり、こう申し上げました。
「奥様、朝の8時にもう一度、ここまで歩いて上がってきていただけませんか。それと、雨の日にもう一度」と。
ご夫婦は、実際にそうされました。そのうえで、買うと決められました。ご主人は「毎日ジムに行くと思えばいい」と笑っておられました。
ここまでは良い話です。ここからが本題です。
11年後、ご主人が横浜に転勤になりました。お子さんが2人になっておられました。売却のご相談を受けて、私が申し上げた金額は「620万円から750万円」でした。
Hさんは、絶句されました。980万円で買って、11年住んで、620万円ですか、と。
はっきり申し上げました。「この家の値段を下げているのは、築年数ではありません。あの坂です。あの坂は11年前から一度も変わっていませんし、これから先も変わりません」と。
結局「690万円」で売れました。ただし、時間は10か月かかりました。
ここで私が申し上げたいのは、Hさんが失敗したということではありません。11年、あの眺めの家で暮らされた価値は、確かにありました。同じ11年を賃貸で払っていれば、1,300万円は出ていっています。
申し上げたいのはこれです。坂の上の家は、買うときに安いのではありません。売るときにも安いのです。安く買えたという喜びは、売るときに同じ形で返ってきます。それを分かって買うのなら、何も問題はありません。
最後にIさんです。当時74歳の女性、お一人暮らしでした。唐櫃の坂の上、駅から徒歩22分、築45年の一戸建てにお住まいでした。ご主人を亡くされて、車の運転もやめられたところでした。
Iさんの生活は、こうなっていました。
- 買い物は、週2回のバスで岡場まで
- 病院も、バスで岡場か有馬口まで
- バス停までは、家から下り坂で7分、帰りは上り坂で12分
はっきり申し上げます。これは、お一人で続けられる生活ではありませんでした。
Iさんの家は「740万円」で売れました。購入されたのは、岡場駅の近くの中古マンションで「1,180万円」でした。差額の440万円は、ご預金から出されました。これは正直に書きますが、この住み替えでIさんの資産は減っています。
それでも、私はこの住み替えをお勧めしました。なぜなら、もう5年待てば、あの家は600万円を切っていた可能性が高いからです。そのうえで、5年分の不便な生活を我慢することになります。
これは断言できます。坂の上の家に住んでおられる方が、売るかどうか迷われるなら、体が動くうちに決めてください。売れなくなってから相談に来られても、私にできることは、ほとんどありません。
6. 業界の裏側を、隠さず書きます
このエリアの売買には、業界のよくないやり方が何個も絡みます。全部書きます。
ひとつ目。「有馬エリア」という言い方です。
唐櫃や有馬口の物件が、「有馬エリアの物件」として広告に出ることがあります。有馬という言葉には、温泉地の響きがあります。良いイメージがつきます。
嘘ではありません。行政区分としても近いですし、有馬口という駅名も実在します。だから始末が悪いのです。
物件を見に行かれる前に、必ず「最寄り駅はどこで、駅から歩いて何分ですか」と確認してください。「有馬エリアです」という答えが返ってきたら、もう一度「駅名を教えてください」と聞き直してください。
ふたつ目。眺めを売る営業です。
これははっきり申し上げます。坂の上の物件を案内するとき、業者は必ず眺めのいい時間帯に、いい天気の日に連れて行きます。夕方の景色を見せます。窓を開けて「静かでしょう」と言います。そして、坂は車で上がります。歩かせません。
私は、坂の上の物件をご案内するときは、必ず一度、駅から歩いていただきます。雨の日にもう一度来ていただくこともあります。
それで気持ちが冷めるなら、その方には向いていなかったということです。冷めなかった方だけが、その家で幸せになれます。
三つ目。擁壁の説明をしない会社です。
斜面地の物件には、擁壁がついて回ります。古い擁壁の中には、今の基準に合っていないものもあります。
これがどういうことかと申しますと、いざ建て替えようとしたときに、擁壁を作り直さないと家が建てられないことがあるのです。その費用は、数百万円から、規模によってはもっとかかります。
聞かれれば答えます。しかし、聞かれなければ言わない会社があります。なぜか。買う気が鈍るからです。
ですから、必ずご自分から聞いてください。「この擁壁は、いつ作られたものですか」「建て替えるときに、擁壁のやり直しは必要になりますか」と。即答できない会社は、調べていないということです。
四つ目。高預かりです。
このエリアは、値段の幅が大きい場所です。坂の下の平坦な家が1,600万円で売れて、坂の上の同じ広さの家が900万円ということが、実際に起きます。
この幅を利用する会社があります。坂の上の家の売主さんに、坂の下の成約事例を見せて「このあたりはこの値段ですよ」と言うのです。
高い値段を付けた会社が、その値段で売ってくれるわけではありません。契約を取ってから、3か月ごとに値下げの相談をしてくるだけです。
査定書を出されたら、必ずこう聞いてください。「その根拠にした成約事例は、駅から徒歩何分で、坂はどのくらいの物件ですか」と。即答できない査定書は、根拠がないと思ってください。
7. デメリットも全部書きます
いい面ばかり書くと嘘になりますので、弱点を全部書きます。
- 坂です。平坦に歩ける区画は、思っておられるより狭い範囲です
- バス便のエリアが広く、歩けるかバスかで値段が倍近く違います
- 擁壁のある物件が多く、維持と建て替えに費用がかかることがあります
- 冬に雪と凍結があります。三宮の天気とは別だと思ってください
- 神戸電鉄有馬線の本数が、この区間は多くありません
- 歩いて行ける大型店がなく、買い物は車かバスが前提です
- 車を手放したあとの生活が、非常に厳しくなります
- 幹線道路が近いぶん、物件によっては音が気になります
そして、正直に申し上げておかなければならないことがあります。北区全体が、人口の減る局面に入っています。唐櫃・有馬口のエリアも例外ではありません。
坂の上の区画では、空き家が少しずつ増えています。ご近所で同時に数軒売りに出ることも、実際に起きています。
これは断言できます。このエリアで家を持つということは、値上がりを期待して持つということではありません。車で動く生活が自分に合っていて、その暮らしやすさに対して値段が安いから持つ。そういう買い方以外は、勧めません。
まとめ
唐櫃・有馬口エリアは、車が生活の中心にあるご家庭には、北区でもかなり良い場所です。高速のインターが近く、同じ予算なら谷上や藤原台よりずっと良い家が買えます。有馬温泉も近い。
そのかわり、坂とバス便という弱みが、はっきりあります。そして車を手放したあと、この弱みは一気に重くなります。
ですから、値段を最後に決めるのは駅名ではありません。平坦に歩けるか。家の前まで車が入るか。擁壁はどうなっているか。この3つです。
50年やってきて分かったことがあります。
このエリアで損をする人は、眺めと安さで決めます。このエリアで損をしない人は、朝の坂を、自分の足で一度上ってから決めます。
広告の徒歩12分は、歩いた12分ではありません。これだけは、覚えて帰ってください。
最後に、これだけは申し上げたい
もし今、唐櫃や有馬口のあたりで家をお探しなら、あるいはこのエリアに家をお持ちで売却を考えておられるなら、一度お聞かせください。
ご家族の人数、通勤先、お車の台数、そして10年後にどう暮らしておられるか。それをお聞きすれば、このエリアがあなたのご家庭に向いているかどうかは、はっきり申し上げられます。
向いていないと思えば、向いていないと申し上げます。そして、お持ちの家が坂の上で売りにくい条件にあるなら、その理由と、では今どうするのが一番損が少ないかを、隠さずお話しします。
私は売るために書いているのではありません。損をしていただかないために書いています。相談だけで結構です。売る売らない、買う買わないは、その後で決めていただければいいのです。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


