カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/08/27 07:30
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が50年この仕事をやってきた中で何度も相談を受けてきた幹線道路沿いの土地をどう見るかについてお話しします。
国道176号沿い、有馬街道沿い、県道沿い。それから神戸三田インターや西宮北インターの周辺。北区にはこういう土地がたくさんあります。
「車の出入りが楽そう」「大きな道に面していて資産価値が高そう」「インターが近いから便利」。そう思って買おうとされる方が、毎年必ずいらっしゃいます。
そして、そのうちの何人かは、10年後、20年後に私のところへ相談に来られます。「売れないんです」と。
結論から申し上げます
幹線道路沿いの土地は、「住宅の土地」と「商売の土地」という、まったく別の土地が同じ場所に重なっています。
この二つを混ぜて考えた瞬間に、人は失敗します。
住むために買うなら、幹線道路沿いは基本的に避けてください。買うなら、そこから一本入った道の土地です。
商売のために買うなら、幹線道路沿いは大いに価値があります。ただし、その値段のつき方は住宅地とはまったく違う理屈で動きます。
「大きい道に面しているから高く売れるはず」という考え方が、一番損をします。
1. 住宅として見ると、幹線道路沿いは減点から始まる
これは断言できます。
住宅を探しているお客さんに幹線道路沿いの物件をご案内すると、車を降りた瞬間に顔つきが変わる方がいます。
音です。
大型トラックが通ると、話し声が一瞬かき消されます。夜中の2時、3時でも走っています。国道176号の道場町のあたりなど、深夜のほうがトラックが多い時間帯すらあります。
そして振動です。基礎のしっかりした家でも、大型車が通ると足の裏にわずかに伝わってきます。慣れる方もいらっしゃいますが、慣れない方もいらっしゃいます。
さらに粉じんです。幹線道路沿いのお宅は、窓のサッシのレールが黒くなります。洗濯物を外に干すのを諦めて、部屋干し用の乾燥機を後から付けた方を何人も知っています。
もう一つ、意外と見落とされるのが「出入り」です。
大きい道に面していると出入りが楽そうに思えますよね。ところが実際は逆のことが起きます。
交通量が多いので、朝の時間帯は車庫から出るのに1分、2分待つことがあります。中央分離帯があれば右折で出られませんから、目的地と逆方向に700m走ってUターンする、という毎日になります。
小さいお子さんがいるご家庭は、玄関を開けたらすぐ車が走っている、という環境をまず嫌がられます。
つまり、住宅を買う人の目線では、幹線道路沿いというのは「便利さ」ではなく「減点」からスタートするということです。
2. 商売の土地として見ると、まったく別の値段になる
一方で、幹線道路沿いには住宅地にはない強みがあります。
看板が見えることと、車が入れることです。
コンビニ、ドラッグストア、コインランドリー、中古車屋、運送会社の車庫、資材置き場。こういった使い方をしたい人にとって、幹線道路沿いは代わりがききません。
ただし、ここに落とし穴があります。
商売の土地としての値段は、「その業種がその場所に出したいと思っているタイミング」でしか成立しないのです。
住宅の土地は、いつでも一定の人数が探しています。北区の住宅地なら、月に何組かは必ず探している人がいます。
ところが事業用地は違います。ドラッグストアが北区で新規出店を進めている年には引き合いがありますが、出店計画が止まっている年には、まったく声がかかりません。
50年やってきて分かったことがあります。事業用地の値段というのは、平均値ではなく「当たり年に当たった人だけが手にする値段」なのです。
そして、当たり年がいつ来るかは誰にも分かりません。3年後かもしれないし、15年後かもしれない。売り急いでいる方にとって、これは非常に危険な性質です。
3. 「インターが近い」は、距離ではなく導線で決まる
神戸三田インター、西宮北インター。この周辺の土地を「インターまで車で5分」という理由で買おうとされる方がいます。
はっきり申し上げます。距離だけ見ても意味がありません。
私が見てきた中で、実際に価値が出るのは次の条件が揃ったときです。
- インターに向かうときに右折で出なくて済む
- 中央分離帯や信号で分断されていない
- その道が「インターに向かう車が実際に流れている道」である
- 渋滞の列の中ではなく、列の手前か抜けた先にある
たとえばCさん、45歳の会社員の方です。
神戸三田インターから直線距離で1.8kmという土地を、「インターがすぐそこですよ」と勧められて購入されました。
住み始めてから分かったのは、朝の通勤時間帯、その土地からインターに乗るまでに実測で13分かかるということでした。
理由は単純で、その土地はインターへ流れ込む渋滞の列の「途中」にあったのです。しかも右折で出る必要がありました。
土地を見に行ったのは日曜日の昼過ぎ。道はガラガラでした。
土地を見るときは、必ず平日の朝7時半から8時半に、もう一度その場に立ってください。これは覚えておいてください。
4. 「将来道路が広がるから」を鵜呑みにしない
幹線道路沿いの土地を勧めるときに、必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。
「ここは都市計画道路が入っていますから、将来広がって価値が上がりますよ」
私はこの言葉を、50年で数え切れないほど聞きました。
都市計画道路というのは、行政が「将来ここに道路を通す、あるいは広げる」と決めた計画です。決定されてから20年、30年動いていない路線が、神戸市内にもいくつもあります。
そして、計画が決まっている土地には制限がかかります。建てられる建物の階数や構造に条件がつくことがある。将来の買収に備えて、しっかりした建物を建てにくくなるのです。
つまり「将来価値が上がるかもしれない」代わりに「今すぐ使いにくい」を引き受けることになります。
もちろん、実際に事業が動き出して用地買収が入れば、まとまったお金が入ることもあります。それは事実です。
ただ、それは「宝くじが当たるかもしれないから今日の生活を我慢する」のに近い話です。20年先か30年先か分からない話を、今の購入価格の根拠にしてはいけません。
5. 乗り入れと接道の話を、契約前に必ず確認する
これは技術的な話ですが、お金に直結しますので申し上げます。
幹線道路沿いの土地に車を入れようとすると、歩道の切り下げ工事が必要になることがあります。歩道の縁石を下げて、車が乗り上げられるようにする工事です。
この工事は勝手にはできません。道路管理者への申請が要り、場所によっては警察との協議も必要になります。
そして費用がかかります。幅や構造によりますが、30万円から80万円ほどかかるのが普通です。バス停の近く、横断歩道の近く、交差点の近くだと、そもそも許可が下りないこともあります。
もう一つ。幹線道路に面していても、その道路が「建築基準法上の道路」として認められる形で接していなければ家は建ちません。
歩道と土地の間に側溝や水路がある場合、法的にどう扱われるかで話がまったく変わります。
私が見た中で一番気の毒だったのは、契約を済ませてから「乗り入れの許可が下りません」と分かったケースです。手付金を放棄して解約された方がいらっしゃいました。
契約前に、必ず確認してください。
6. 実例:有馬街道沿いの実家を相続されたBさんの話
Bさん、71歳の女性です。お母様が亡くなられて、有馬街道沿いの実家を相続されました。
土地は78坪、建物は築43年の木造2階建て。道路に面した幅が広く、日当たりも悪くありませんでした。
Bさんは最初、別の会社に相談されました。そこで言われたのが「幹線道路沿いですから、事業用地としての可能性もあります。2,600万円でいけますよ」という話でした。
それで2,600万円で売りに出されました。
3か月経って、問い合わせは2件。内見はゼロでした。
半年で2,280万円に下げました。それでも動きません。8か月目に1,980万円。ここでようやく内見が2組入りましたが、どちらも「音が思ったより大きい」ということで見送りになりました。
1年が過ぎたころ、Bさんが私のところに来られました。
私が最初に申し上げたのは、「この土地を住宅を探している人に売るのは、たぶん無理です」ということでした。
この土地は、住宅としての条件は悪くなかった。日当たりも、広さも、形も悪くない。でも、住宅を探している人が最後の最後に必ず引っかかるのが音でした。
そこで方針を変えました。建物を解体して更地にし、住宅ではなく事業者に向けて情報を流したのです。
ここで運が味方しました。近くで営業していた運送会社が、車両の置き場を探しているという情報が入りました。
最終的に、その運送会社に1,860万円で成約しました。解体費用が約180万円かかりましたので、手取りはさらに減ります。
Bさんは「もっと早くこうしていれば」とおっしゃいました。
私が申し上げたのは、こうです。「最初の2,600万円という値段が、この土地を1年間止めていたんです」
幹線道路沿いの土地は、最初の値付けを間違えると、住宅の買い手にも事業者にも届かない、宙ぶらりんの1年を過ごすことになります。
7. 業界の裏側を申し上げます
なぜ最初の会社は2,600万円という値段をつけたのか。
理由は単純です。媒介契約を取りたいからです。
これは業界では「高預かり」と呼ばれます。他社より高い査定額を出せば、売主さんは喜んで契約してくださいます。売れるかどうかは、契約を取った後の話です。
そして幹線道路沿いの土地には、高預かりに都合のいい魔法の言葉があります。
「事業用地としての可能性があります」
この一言があれば、住宅地の相場より2割、3割高い数字を書いても、査定書としては形になってしまうのです。
けれど、先ほど申し上げたとおり、事業用地の値段は「その業種が今、ここに出したがっているか」でしか決まりません。可能性があるという言葉は、値段の根拠にはならないのです。
もう一つ、買取業者の話をします。
幹線道路沿いの土地を、買取業者は喜んで買います。ただし買うときの値段は、住宅地としての相場から引いた金額です。
そして買った後、彼らは時間をかけて事業者を探します。1年でも2年でも待てるからです。そして事業用地として売り抜けます。
売主さんが「早く手放したい」と焦っているときに、この差額が生まれます。業者が悪いのではありません。時間を待てるかどうかの差が、そのまま値段の差になっているのです。
だからこそ、幹線道路沿いの土地は「時間に余裕があるうちに動く」ことが、何より効きます。
8. デメリットも正直に申し上げます
ここまで読まれて「では幹線道路沿いは買わないほうがいいのか」と思われたかもしれません。正直に、マイナス面を含めて申し上げます。
まず、幹線道路沿いの土地は路線価が高めにつくことがあります。相続税を計算するときの評価額です。
使いにくいのに評価だけ高い、という状態になり得るのです。騒音があるからといって、評価額が自動的に下がるわけではありません。減額を認めてもらうには、それなりの根拠が必要になります。
次に、住宅を建ててしまうと後戻りが難しくなります。
更地であれば、住宅にも事業用にも振れます。ところが家を建ててしまうと、その土地は「住宅が建っている土地」になります。事業者は建物を壊す費用を引いて値段を出しますから、建物があることがマイナスになるのです。Bさんの例でも、解体に180万円かかりました。
三つ目に、賃貸に出そうと思っても借り手が限られます。空き家になったときの逃げ道が少ないということです。
そして四つ目。これは私の実感ですが、幹線道路沿いの土地は、内見してもらうまでが本当に大変です。
インターネットの写真では音は伝わりません。けれど、多くの方は住所を見ただけで「あの道沿いか」と判断されます。北区に長く住んでいる方ほど、その道がどれくらいうるさいか知っているからです。
まとめ
もう一度、結論を申し上げます。
幹線道路沿いの土地は、「住宅の土地」と「商売の土地」が重なった場所です。
住むために買うなら、避けたほうがいい。買うなら、一本入った道です。値段が同じなら、迷わず一本入ってください。
商売のために買うなら、価値はあります。ただし値段は「業種が出店したいタイミング」でしか成立せず、そのタイミングは待てる人だけが手にできます。
売る側に回ったなら、最初の値付けを間違えないでください。「事業用地としての可能性」という言葉に乗って高い値段でスタートすると、住宅の買い手にも事業者にも届かない期間が、そのまま1年、2年と過ぎていきます。
そして、インターが近いかどうかは距離では判断しないでください。平日の朝、その土地に立って、実際に何分かかるか測ってください。
50年やってきて分かったことがあります。土地で損をする人は、その土地の「一番いいところ」を見て値段を決めています。土地で損をしない人は、その土地の「一番売りにくくなる理由」を先に見つけています。
最後に、これだけは申し上げたい
幹線道路沿いの土地をお持ちの方、あるいはこれから買おうとされている方。
その土地が住宅として売れる土地なのか、事業用として売れる土地なのか、この見極めだけは、絶対に誰かに相談してから決めてください。
そして相談する相手は、その道を実際に毎日走っている人間にしてください。地図と査定ソフトだけでは、あの音は分かりません。
私は北区で50年、あの道を走り続けてきました。どの時間帯にどれくらい流れるか、どこの交差点で右折が詰まるか、体で覚えています。
売る話でなくても構いません。「これ、どう見えますか」というご相談だけでも、遠慮なくお声がけください。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


