カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/13 06:15
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は「地盤改良」の話をします。土地を買って家を建てようとすると、契約のあとで「地盤調査の結果、改良が必要です」と言われることがあります。
そのときに出てくる金額が、80万円だったり、150万円だったり、ときには300万円だったりする。
なぜそんなに幅があるのか。自分の土地はどちらになりそうなのか。売るときに、それはいくら効いてくるのか。
50年この仕事をやってきて、北区の土地を何百件と見てきた者として、正直なところを申し上げます。
結論から申し上げます
地盤改良が必要になるかどうか、そしていくらかかるかは、その土地が「いつ造成されたか」と「もともとどんな地形だったか」で、かなりの精度で読めます。
そして北区の場合、必要になったときの中心的な金額は、80万円から150万円です。浅いところで済めば30万円から60万円。支持層が深い土地や、傾斜地で条件が悪い土地では、200万円を超えることがあります。
これは断言できます。この金額は「運」ではなく「地形」で決まっています。
1. まず、何にいくらかかるのかを整理します
地盤改良の前に、必ず地盤調査をします。木造2階建てなら、建物の四隅と真ん中の5か所を測る簡易な調査で、費用は5万円から10万円ほど。半日で終わります。
その結果、改良が要らないと出れば、そこで終わりです。
改良が必要となった場合、やり方は大きく三つです。
- 浅い層だけが弱い場合は、地面を2メートルほど掘り返して固める。20万円から60万円ほど
- 2メートルから8メートルまで弱い層が続く場合は、地中にセメントの柱を作る。50万円から120万円ほど(北区で一番多い)
- 固い層が8メートルより深い場合は、鋼の杭を打つ。100万円から200万円、条件が悪ければそれ以上
ここに設計料と保証料が数万円乗ります。
はっきり申し上げます。建物の見積もりに「地盤改良費」が入っていないことは、珍しくありません。入っていないということは、ゼロだという意味ではなく、「まだ分からないので、後で請求します」という意味です。
2. 北区は、造成された年代でおおよそ読めます
神戸市北区の住宅地は、大きく三つの時期に分かれます。
- 昭和40年代から50年代の造成地(鈴蘭台や山の街の周辺に多い、いちばん古い層)
- 昭和末から平成のはじめの造成地(藤原台や岡場のあたりが代表)
- 平成の中ごろ以降の小規模分譲(旧家の敷地割り、畑を宅地にしたもの)
なぜ年代が関係するのか。理由は法律です。
平成12年に品確法という法律ができて、住宅に10年の保証が義務づけられました。さらに平成21年に、その保証の裏付けとなる保険や供託の法律が動き出しました。この保険を使うために、地盤調査をして必要なら改良する、というのが事実上の標準になったのです。
つまり、平成20年前後より後に建った家の下は、必要なら改良されている可能性が高い。それより前の家の下は、何もされていない可能性が高いということです。
50年やってきて分かったことがあります。古い家を壊して建て替えるときに「今まで何十年も建っていたのだから大丈夫だろう」と言う方がおられますが、これは通りません。建っていたことと、今の基準で保険が下りることは、別の話なのです。
3. 切土か、盛土か。これがいちばん効きます
同じ造成地の中でも、値段は隣同士で変わります。山を削って平らにした部分と、谷を埋めて平らにした部分があるからです。
削った側、いわゆる切土は、もとの地山がそのまま残っているので、比較的しっかりしています。埋めた側、いわゆる盛土は、人が運んできた土です。締め固めてあっても、削った側より弱い。
そして厄介なことに、造成から40年経って表面が同じ顔をしていると、素人目には見分けがつきません。
見分ける手がかりはあります。
- 擁壁の位置と高さ(片側だけ高い擁壁があるなら、そちらが埋めた側であることが多い)
- 道路の勾配(もとの谷筋は、道路が緩く下がる方向に残っていることが多い)
- 古い住宅地図や航空写真(造成前の地形が分かる)
- ご近所の建て替え(同じ区画で改良をしたかどうか、聞けば教えてくださることがある)
それから、田んぼやため池を埋めた土地です。北区には、ため池を埋めて宅地にしたところが実際にあります。こういう土地は支持層が深く、鋼の杭になりやすい。200万円前後を見ておいたほうがいい土地です。
4. 売るときに、地盤は値段を動かします
ここからは、売る側の話です。古家付きで売って、買主が建て替える前提の場合、買主は必ず地盤調査をします。そして改良が必要と出れば、その費用は買主の負担です。
すると何が起きるか。買主側の業者は「地盤改良に150万円かかりそうなので、その分を引いてください」と言ってきます。
このとき、売主に判断材料がないと、言い値で引かれます。実際の改良費が90万円でも、150万円引かれる。これが現実です。
では、どうすればいいか。売主の側で、先に地盤調査だけしておくという手があります。5万円から10万円で、支持層の深さと、必要な工法の見当がつきます。
数字を持っている人と、持っていない人とでは、交渉の立場がまったく違います。
5. 買うときは「別途工事費」の欄を必ず見てください
建物の見積書には、本体工事費と別途工事費という欄があります。地盤改良費は、たいてい別途工事費のほうに入ります。そして、契約の段階では金額が空欄か、「50万円(仮)」といった仮置きの数字になっています。
ここで、はっきり申し上げます。仮置きの50万円は、営業の方が資金計画を通しやすくするために置いた数字であることが多いです。
実際に調査をして、柱状改良で110万円と出たとき、差額の60万円は買主が出すことになります。土地と建物で予算をぎりぎりまで使った方にとって、これは痛い60万円です。
実際にあった話です
鈴蘭台のEさん、67歳の男性です。親御さんから相続された昭和48年建築の家を、解体して売ることにされました。土地は48坪。査定は1,680万円でした。
Eさんは解体だけして更地にし、そのまま売りに出されました。買主が付いたのは3か月目。地元の30代のご夫婦で、そこに家を建てる計画でした。
ところが、買主側で地盤調査をしたところ、南側の3分の1が古い谷の埋め土で、そこだけ支持層が11メートルと深いことが分かったのです。
出てきた見積もりは、鋼管杭で198万円。買主は「この金額が出るなら、200万円引いてほしい」と言いました。
Eさんは断れませんでした。他に買い手がいなかったからです。売れた値段は1,480万円。査定から200万円下がりました。
もう一件、逆の例を申し上げます。藤原台のFさんご夫婦。ご主人71歳、奥様68歳です。やはり相続された土地を売ることになり、売り出す前に私のところへ来られました。
私は「先に地盤調査だけしておきましょう」と申し上げました。費用は7万円です。
結果は、柱状改良で足りる土地でした。見積もりを取ると88万円。Fさんは、この報告書を売り出しの資料に付けました。
買主から「地盤改良の分を引いてほしい」と言われたときに、「調査済みで88万円です」と紙で示せたのです。値引きは90万円で終わりました。査定1,850万円に対して、売れたのは1,760万円です。
EさんとFさん、土地の広さも造成年代もよく似ています。違ったのは、7万円の調査を先にやったかどうかだけです。
業界の裏側を申し上げます
三つ、申し上げておきます。
ひとつ目。地盤改良の工事は、住宅会社が自分で直接やることは少なく、専門業者に出します。そのときに、住宅会社の取り分が乗ります。ここが2割から3割になっていることがあります。
同じ工事を別のところで見積もると、110万円が80万円になる。これは実際にある話です。
ふたつ目。判定には、幅があります。同じ調査の数字を見て、「改良が必要」と読む会社と、「基礎を厚くすれば不要」と読む会社があります。
工事で利益が出る立場の会社が判定していれば、どちらに寄るかは、ご想像のとおりです。私は、調査と判定をする会社と、工事をする会社は、分けたほうがいいと思っています。
三つ目。仲介のほうの話です。古家付きの土地を売るときに、地盤のことを一切言わない業者がいます。黙っていたほうが、売主に嫌な顔をされずに媒介契約が取れるからです。
そして買主が地盤調査をして問題が出たら、「相場のことですから」と言って売主に値引きを飲ませる。売主は何も知らされないまま、200万円を失います。現場を見ない業者ほど、この流れになります。
デメリットも正直に申し上げます
良い話ばかりではありません。まず、地盤改良をしても、土地の値段は上がりません。家を建てるために必要な費用であって、土地の価値に乗るものではないのです。150万円かけて改良した土地が、150万円高く売れるということは、まずありません。
次に、これは意外と知られていませんが、地中に入れたセメントの柱や鋼の杭は、将来その土地を売るときに「地中障害物」になることがあります。
次の買主が違う配置で建てたい場合、撤去が必要になる。撤去の費用は、本数と深さによりますが、100万円を超えることがあります。入れるときに考えることは少ないのですが、20年、30年先には効いてきます。
それから、売主が先に地盤調査をした場合のリスクも申し上げます。悪い結果が出れば、それは重要な事実として買主に伝えなければなりません。「調べなければ知らずに済んだ」という考え方も、世の中にはあります。
ただ私は、後で揉めて裁判になった例をいくつも見てきました。先に分かっていたほうが、結果として手取りは残ります。これは、私の経験からの意見です。
最後にひとつ。地盤調査の数字は、測った5か所の話です。敷地の中で地層が傾いている土地では、測っていない場所が弱いことがあります。どんな調査も万能ではない、ということは正直に申し上げておきます。
まとめ
もう一度申し上げます。地盤改良の費用は、土地の造成年代と、もとの地形で、かなり読めます。
- 昭和40年代から50年代の古い造成地は、改良されていないことが多い
- 切土の側は比較的しっかりしている。谷を埋めた盛土の側は弱い
- 田んぼやため池を埋めた土地は、支持層が深く200万円前後を見る
- 北区で必要になったときの中心は80万円から150万円
- 売るときは、7万円の調査が100万円の値引きを止めることがある
はっきり申し上げます。地盤は、家を建てる人の問題であって、売る人には関係ないと思われがちです。けれど値引きという形で、必ず売主のところへ請求書が回ってきます。
最後に、これだけは申し上げたい
「うちの土地は、盛土か切土か分からない」
そう思われた方は、それが普通です。分からないのが当たり前です。
ご相談いただければ、私が現地を見ます。擁壁の位置、道路の勾配、昔の地形、近所の建て替えの経緯。この4つを合わせると、かなりのことが分かります。
そのうえで、調査をしたほうがいい土地か、しなくても心配のない土地かを、正直に申し上げます。
売る予定がまだ先の方でも構いません。50年この土地を見てきた者として、分かることはすべてお伝えします。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


