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イオンモール神戸北ができて何が変わったか
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/08/26 06:53

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、北区の一番北の端、上津台にあるイオンモール神戸北ができて、周りの住宅や土地に何が起きたのかをお話しします。

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あそこができたのは2008年10月です。その前の年、2007年7月には隣に神戸三田プレミアム・アウトレットができていました。中国自動車道の神戸三田インターを降りてすぐ。あの一帯が、たった2年で景色ごと変わりました。

「イオンができて、あの辺は便利になったんでしょう」

「じゃあ土地の値段も上がったんですか」

この18年、何百回と聞かれた質問です。今日はその答えを、正直に申し上げます。


結論から申し上げます


イオンモール神戸北ができて上がったのは、地価ではありません。

上がったのは「暮らしやすさの評判」です。

地価が本当に上がったのは、ごく限られた場所だけでした。そして、恩恵をほとんど受けなかったエリアのほうが、実は多いのです。

これは断言できます。大型商業施設は、家の値段を底上げする魔法の杖ではありません。


1. 上がったのは地価ではなく、暮らしの評判でした


2008年より前、上津台や大池、道場のあたりを紹介すると、お客さんの顔が曇りました。

「買い物はどうするんですか」

これが一番の壁でした。当時は車で三田の街まで出るか、岡場まで下りるか。日用品ひとつ買うのに一仕事だったのです。

イオンができて、その壁が消えました。営業に行っても「買い物、困りませんか」と聞かれなくなった。これは大きな変化です。

ただ、それは「売れなくはなくなった」という変化であって、「高く売れるようになった」という変化ではありませんでした。

ここで一歩立ち止まってください。便利になることと、資産価値が上がることは、別の話です。


2. 恩恵を受けた場所と、受けなかった場所がはっきり分かれました


50年やってきて分かったことがあります。商業施設の効果は、驚くほど狭い範囲にしか及びません。

私の実感で申し上げると、こうです。

  • 車で5分以内、信号を10個も待たずに着く場所
  • 坂を下って上がり直す必要のない、同じ高さにある場所
  • インターに近く、大阪や三田へも出やすい場所

このどれかに当てはまる場所は、確かに引き合いが増えました。上津台や、鹿の子台の一部です。

一方で、直線距離では近いのに、間に山と坂を挟む場所。ここは何も変わりませんでした。地図の上では3キロでも、車で20分かかるなら、それは「近く」ではないのです。

北区の土地を見るときは、距離ではなく高低差と道を見てください。これは覚えておいてください。


3. 「イオンが近い」は買う理由にはなっても、売る理由にはなりにくい


不動産には、買うときに効く材料と、売るときに効く材料があります。

「イオンが近い」は、買うときに背中を押す材料です。ご主人が悩んでいても、奥さんが「これなら暮らせるわね」と言ってくれる。契約が決まりやすくなる。

けれど、売るときにはほとんど値段になりません。なぜなら、そのエリアで売りに出ている家は、全部イオンが近いからです。全員が同じ条件を持っているものは、差にならないのです。

差になるのは何か。道路付け、日当たり、土地の形、建物の傷み具合。結局、昔から変わらないものです。


4. 実例。上津台のAさんが8年住んで売ったときの話


Aさんは、当時50歳の会社員のご主人と、48歳の奥さんのご夫婦でした。

2014年、上津台の中古住宅を2,780万円で買われました。築12年、土地は約180平米、建物は延べ110平米ほど。イオンまで車で5分、アウトレットも歩いて行ける距離です。

「モールがあるから子どもが退屈しない」

これが決め手でした。実際、お子さんが小学生のあいだは本当に良かったそうです。休日はモールで映画を見て、フードコートでご飯を食べて帰る。車を出す必要すらない。

ところが8年経った2022年、ご主人の転勤が決まりました。売却のご相談です。

査定に伺って、私は「2,450万円あたりが現実的です」と申し上げました。Aさんは驚かれました。

「イオンもアウトレットもあって、あれだけ便利になったのに、下がるんですか」

正直に申し上げました。買われた2014年の時点で、すでにイオンの分は価格に織り込まれていました。8年で建物は築20年になり、そのぶんは確実に減っています。土地の値段はほぼ横ばい。差し引きすると、そうなるのです。

結果、半年かかって2,380万円でまとまりました。買ったときから400万円下がっています。

ここで大事なのは、Aさんが損をしたわけではないということです。8年間、家賃を払わずに済んで、400万円。年間50万円、月4万円ちょっとです。北区で3LDKを借りればもっとかかります。

けれど「イオンができたから資産価値が上がるはず」と思い込んでいたら、この結果は納得できません。最初の期待値が間違っているのです。


5. 業界の裏側。「イオンまで車で5分」という営業トーク


はっきり申し上げます。私たち業界には、大型商業施設を売り文句に使う癖があります。

チラシに大きく「イオンモール神戸北まで車で5分」と書く。現地案内のときも、わざわざモールの前を通ってから物件に向かう。お客さんの気持ちが上向いたところで玄関を開ける。

これは嘘ではありません。けれど、公平でもありません。

なぜなら、その5分は日曜の夕方には15分になるからです。上津台の周辺は、休日になると本当に混みます。アウトレットとモールの客が同じ道に集まるので、交差点ひとつ抜けるのに信号を3回待つこともある。

案内する営業マンは、たいてい平日の昼間に連れて行きます。空いている時間です。私は、気になる物件があれば日曜の午後4時にもう一度行ってみてくださいと、いつも申し上げています。

もう一つ。査定のときに「商業施設が近いので強気でいけます」と言ってくる業者には気をつけてください。

高い査定額を出して媒介契約を取り、あとからじわじわ値下げさせる。いわゆる「高預かり」です。イオンやアウトレットは、その理屈づけに使いやすいのです。「この立地なら」と言われると、売主さんは信じてしまいます。

3か月経って売れず、200万円下げましょうと言われる。さらに3か月経ってまた下げる。半年も市場に出ていた物件は、業界で言う「枯れた」状態になります。買主から「何か問題があるのでは」と見られてしまう。

最初から適正な値段で出していれば、3か月で売れたものが、1年かかって結局安く売れる。この形を、私は何十件も見てきました。


6. デメリットを正直に申し上げます


良い話ばかりでは公平ではないので、マイナス面を書きます。

一つ目は、車がないと成立しない生活だということです。

イオンが近いといっても、歩いて行ける距離に住んでいる方はごく一部です。ほとんどの方は車で行きます。お子さんが免許を取るまで、送り迎えは親の仕事になります。

そして、ご夫婦が70代、80代になったとき。免許を返納したらどうするか。ここまで考えて買われる方は、正直に言って少ないです。Aさんのご近所にも、ご主人が80歳を過ぎて運転をやめられ、結局三宮のマンションに移られた方がいます。買い物が便利なはずの場所で、買い物ができなくなったのです。

二つ目は、施設の将来です。

イオンモール神戸北はまだ元気ですが、全国では大型モールの閉店や縮小が現実に起きています。18年もった施設が、次の18年ももつ保証は誰にもできません。

もし閉まったら、「イオンが近いから」だけを理由に買った土地は、理由ごと失います。だから私は、モールを買う理由の一番目にしないでください、と申し上げるのです。

三つ目は、冬の寒さと坂です。

上津台や大池のあたりは、標高が高い。三宮より数度低いのが普通ですし、年に何度かは路面が凍ります。ノーマルタイヤで坂を上がれずに立ち往生している車を、私は何度も見ています。

イオンの明るさに気を取られて、この地形の話を忘れる方が多い。けれど暮らすというのは、365日のうち360日の話です。


7. では、どう考えて買えばいいのか


私がお客さんに申し上げているのは、順番の話です。

まず土地そのものを見てください。道路にきちんと接しているか。前面道路の幅はあるか。日は当たるか。雨が降ったときに水はどう流れるか。造成の擁壁は古くないか。

その次に、車で走ってみてください。平日の朝、通勤の時間。日曜の夕方。冬の朝。同じ場所が、全然違う顔をします。

イオンの話は、その全部を確認したあとの、最後の一押しです。順番を逆にすると、必ず後悔します。

実際、Bさんご夫婦がそうでした。ご主人38歳、奥さん36歳。2021年に鹿の子台で土地を探しておられました。

最初に見た区画は3,180万円。イオンにもアウトレットにも近くて、お二人は乗り気でした。けれど道路が狭く、擁壁が古い。私は「これは将来お金がかかります」と申し上げました。

結局、少し離れた別の区画を2,980万円で買われました。モールまでは車で3分ほど余計にかかります。けれど土地は平坦で、道路は6メートル、南側が開けている。

去年、たまたま近況を伺ったら「あのとき止めてもらってよかった」と言われました。最初の区画は、その後買われた方が擁壁の補修で相当かかったそうです。


まとめ


イオンモール神戸北ができて、北区の北部は確かに暮らしやすくなりました。これは事実です。

けれど、それが地価を押し上げたかというと、限定的です。恩恵は狭い範囲にしか及ばず、その範囲の中では全員が同じ条件なので、売るときの差にはなりません。

50年やってきて分かったことがあります。家の値段を決めるのは、その土地が持っているものです。周りに何ができたかではありません。

道、地形、日当たり、広さ、形。この5つは、モールができてもなくなっても変わりません。だから、まずここを見てください。

そしてもう一度申し上げます。「イオンが近いから」を買う理由の一番目にしないでください。二番目、三番目に置いておくのが、ちょうどいい距離感です。


最後に、これだけは申し上げたい


私はこの仕事を50年やってきましたが、儲けさせるためではなく、損をさせないために書いています。

上津台や大池、鹿の子台、道場のあたりで家や土地を売ろうか迷っておられる方。買おうか悩んでおられる方。

一度、値段のつく理由と、つかない理由を、正直にご説明させてください。売ってくださいとは申し上げません。話を聞いて、やめておこうという結論でも構いません。

そのときは、私も一緒に「やめておきましょう」と申し上げます。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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