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井戸・浄化槽・プロパンの家を買うとき
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/09/08 07:21

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、北区や三田、西宮北部で家探しをしていると必ずぶつかる「井戸・浄化槽・プロパンガス」の家についてお話しします。

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物件資料の設備欄に、小さな文字でこう書いてあるやつです。

「給排水:井戸/浄化槽」「ガス:プロパン」

この3行を、何も感じずに読み飛ばしてしまう方が、本当に多いんです。

けれどこの3行こそが、買ったあとの暮らしと財布に、じわじわ効いてきます。


結論から申し上げます


上下水道が来ていない家は、その分だけ安く売られています。ただし、安くなっている金額よりも、あとから出ていくお金のほうが大きいことがあります。

これは断言できます。井戸・浄化槽・プロパンの家は「買ってはいけない家」ではありません。けれど「安いから買う家」でもありません。

見るべきは値引き幅ではなく、設備の年式と、あと何年使えるかです。


1. 上下水道の有無で、値段はいくら違うのか


50年やってきて分かったことがあります。北区の郊外部、淡河や大沢、八多のあたりで同じような築年数・同じような広さの家を並べると、上水道と下水道が入っている家と、井戸と浄化槽の家では、だいたい200万円から400万円くらいの差が付きます。

土地だけの場合はもっとはっきり出ます。同じ100坪でも、前面道路に上下水道の本管が入っているかどうかで、坪単価が3割変わることも珍しくありません。

なぜかというと、単純な話で、買う人の数が違うからです。

上下水道の家は、若いご夫婦も、都会から移り住む方も、誰でも買えます。井戸と浄化槽の家は「それでも構わない」という方しか買えません。

買い手が少ないということは、あなたが将来売るときも、同じように苦労するということです。ここは覚えておいてください。


2. 浄化槽が一番お金と手間がかかります


はっきり申し上げます。井戸・浄化槽・プロパンの中で、いちばん厄介なのは浄化槽です。

浄化槽は「置いてあれば終わり」の設備ではありません。法律で、保守点検を年に3回から4回、清掃を年に1回、それとは別に法定検査を年に1回受けることが決まっています。

一般的な5人槽で、この維持費が年に4万円から6万円かかります。上下水道の家なら下水道使用料を払いますが、それとは別に、この点検代がまるまる乗ってくると考えてください。

それから、寿命があります。

浄化槽の本体は20年から30年でだめになります。入れ替えとなると、撤去と設置と配管のやり直しで80万円から120万円。これは高いほうの話ではなく、ごく普通の金額です。

もうひとつ、古い家で気をつけていただきたいものがあります。「単独処理浄化槽」というものです。

これはトイレの汚水しか処理しません。台所やお風呂の水は、処理されないまま側溝に流れます。平成13年の4月から新設は禁止されていますが、それ以前の家には今も残っています。

物件資料には、ただ「浄化槽」としか書いていないことがあります。単独なのか合併なのか、必ず聞いてください。


3. 井戸は「水道代がタダ」ではありません


井戸の家を見に行くと、売主さんはたいてい「水道代いりませんよ」とおっしゃいます。気持ちは分かります。実際、毎月の請求は来ません。

けれど、タダではないんです。

まず、水をくみ上げるポンプは電気で動いています。電気代がかかります。そしてポンプには寿命があって、10年前後で壊れます。交換はだいたい15万円から25万円です。

次に、水質です。飲み水として使うなら、保健所や検査機関に水質検査を出すことになります。1回1万円から2万円ほど。しかも井戸の水は、ずっと同じ水質でいてくれるとは限りません。上流で何かあれば変わります。

そして一番怖いのが、渇水です。夏に雨が少ない年、井戸の水位が下がって出が悪くなる。これは実際に起きます。

井戸をやめて上水道を引く場合、道路に本管が来ていれば加入金と工事で50万円から100万円。本管が家の前まで来ていなければ、延長の負担が乗って、もっと大きな金額になります。


4. プロパンガスの差額は、小さいようで大きい


プロパンガスは都市ガスに比べて、同じだけ使ってもおおむね1.5倍から2倍の請求になります。

ご家族4人で、お風呂も炊事も普通に使って、冬場だと月に1万5千円から2万円。都市ガスなら8千円から1万円で収まるところです。

月に7千円の差だとしましょう。年間で8万4千円。30年住めば250万円です。

物件が200万円安かったとして、その差はガス代だけで消えます。これが私が「安さの中身を見てください」と申し上げる理由です。

それから、業界の話をひとつ。

プロパンは販売店ごとに料金が自由に決められます。同じ地域でも、会社によって基本料金も従量単価もまるで違う。ところが売主さんも仲介業者も、そこまで説明しません。「プロパンです」で終わりです。

自由に決められるということは、あとから上げることもできるということです。ここは知っておいてください。


5. 実例:淡河のAさんご夫婦が、契約の直前で気づいたこと


3年ほど前、淡河の中古住宅を検討されていたAさんご夫婦の話をします。ご主人が52歳、奥様が49歳。神戸市内のマンションから移り住みたいということでした。

築28年、木造2階建て、土地130坪。価格は980万円。同じような広さで上下水道の入っている物件が1,380万円でしたから、400万円安い。ご夫婦は「これは掘り出し物だ」とおっしゃっていました。

私が資料を見て、まず確認したのが3つです。

  • 浄化槽が単独か合併か
  • 浄化槽の設置年
  • 井戸ポンプの交換履歴

売主側の業者さんに聞いたら、返ってきた答えはこうでした。

「浄化槽は……たしか合併だったと思います」「設置年は分かりません」

分からないでは済みませんから、私が現地で蓋を開けて確認しました。単独処理浄化槽でした。平成9年の設置。28年もの。

つまり、買ったらすぐに合併浄化槽へ入れ替えが必要でした。見積もりを取って、105万円。

井戸のポンプも調べました。前回交換が15年前。いつ壊れてもおかしくない。20万円。給湯器も18年もので、これも10万円から15万円。

合計で140万円ほどが、引き渡し後すぐに必要になる計算でした。400万円安いはずが、実際は260万円分の安さしかなかったわけです。そのうえ毎月のプロパン代が都市ガスより7千円高い。

Aさんご夫婦は、それでもこの家を買われました。ただし、この140万円を根拠に価格交渉をして、880万円まで下げてもらってからです。

大事なのは「買わなかったこと」ではありません。「知ったうえで買った」ことです。


6. 業界の裏側。「浄化槽あり」の4文字で済ませる理由


ここは正直に申し上げます。

物件広告の設備欄に「浄化槽」とだけ書いてあるのは、書く欄が狭いからではありません。書かないほうが売りやすいからです。

単独か合併か。設置は何年か。あと何年もつのか。これを全部書いたら、買主は必ずひるみます。だから書かない。聞かれなければ言わない。

聞かれても「たしか合併だったと思います」で流す。売主さんも本当に知らないことが多いので、業者も突っ込んで確認しない。それで契約まで行ってしまいます。

それから、プロパンの「無償配管」という仕組みがあります。

ガス会社が給湯器や配管の費用を立て替えて、その分をガス料金に上乗せして回収するやり方です。だから料金が高い。そして、ガス会社を変えようとすると「残っている設備代を払ってください」と言われます。

契約書の奥にひっそり書いてあることがありますが、まず説明されません。プロパンの家を買うときは、無償貸与の契約が残っていないかを必ず確認してください。


7. デメリットばかりではありません。私が勧める場合


ここまで散々マイナスを申し上げましたが、私はこういう家を全否定するつもりはありません。実際、うまくいっている方もたくさんいらっしゃいます。

こういう条件が揃うなら、私は「買っていいですよ」と申し上げます。

  • 合併処理浄化槽で、設置から10年以内
  • 井戸ではなく上水道が来ている、または井戸の水質検査が直近に取れている
  • 土地が広く、その広さに価値を感じている
  • 30年住むつもりで、途中で売る前提がない

つまり、設備の残り寿命がまだ長くて、暮らし方がその土地と合っている場合です。

逆に「安いから」だけで選ぶ、10年から15年で住み替えるかもしれない、という方には、私はお勧めしません。売るときにまた同じ苦労をすることになるからです。


まとめ


もう一度、結論を申し上げます。

井戸・浄化槽・プロパンの家は、悪い家ではありません。ただし、安さの理由が必ずあります。その理由を、契約前に数字で把握してください。

確認することは、これだけです。

  • 浄化槽は単独か合併か、設置は何年か
  • 井戸ポンプの交換時期と、水質検査の結果
  • プロパン会社の名前と、無償貸与契約の有無
  • 上下水道の本管が前面道路まで来ているか

この4つを聞くだけで、買ったあとに出ていくお金がだいたい見えます。

そして、その金額を持って値段の話をしてください。売主さんに遠慮する必要はありません。事実を根拠にした交渉は、まっとうな交渉です。


最後に、これだけは申し上げたい


私は50年、この北区で不動産をやってきました。

井戸と浄化槽の家で幸せに暮らしておられる方も、逆に「こんなにお金がかかるとは思わなかった」と後悔された方も、両方見てきました。

違いは、家の良し悪しではありませんでした。買う前に知っていたかどうか、それだけです。

物件資料を見て「浄化槽って書いてあるけど、これどうなんだろう」と思われたら、契約する前に一度お声がけください。

私は現地で蓋を開けて、年式を見て、あと何年もつかを申し上げます。買ってはいけない場合は、はっきりそう申し上げます。

それでお客様が別の家を選ばれても、それでいいんです。損をさせないことが、私の仕事ですから。


センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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