カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/16 08:50
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、不動産会社選びで失敗する人の特徴についてお話しします。
これまで何人もの方から「どこに頼んだらいいか分からない」という相談を受けてきました。
そして、それよりもっと多いのが「あの会社に頼んで失敗した」という、後からの相談です。
家を売るというのは、多くの方にとって人生で一度か二度のことです。だからこそ、最初の会社選びでつまずくと、取り返しがつかなくなる。
ここで一歩立ち止まって、私の話を聞いてください。
結論から申し上げます
不動産会社選びで失敗する人は、自分で会社を選んでいるつもりで、実は会社のほうに選ばされています。
査定額の高さ、大手の看板、営業マンの愛想の良さ。この三つで会社を決めた人は、ほぼ間違いなく後悔します。
これは断言できます。50年見てきて、例外はほとんどありませんでした。
1. 査定額がいちばん高い会社を選んでしまう
複数の会社に査定を頼むと、必ず金額に差が出ます。
「3,000万円」と言う会社もあれば、「3,500万円」と言う会社もある。すると人は、ほとんどの場合いちばん高い数字を出した会社に頼みたくなります。
気持ちはよく分かります。誰だって、自分の家は高く売りたい。
でも、ここに最初の落とし穴があります。
査定額というのは「売れる値段」ではありません。多くの場合、それは「その会社が、あなたと契約したいから出してきた数字」なのです。
高い数字を見せられて嬉しくない人はいません。業者はそれを分かっていて、わざと高く出してきます。
2. 大手の看板で安心してしまう
「大きい会社なら間違いない」。そう思って、テレビでよく名前を聞く会社に頼む方がいます。
大手が悪い、という話ではありません。
ただ、大手の看板が売っているのは「安心感」であって、「あなたの家が高く早く売れること」ではありません。
実際、担当になったのが入って二年目の若い方で、神戸市北区のことを何も知らなかった、ということは普通にあります。藤原台と鈴蘭台の違いも、坂の上と下で値段がどう変わるかも、肌で分かっていないのです。
3. 営業マンの人の良さで決めてしまう
「あの担当の方、感じが良かったから」。これで決める方が、本当に多い。
はっきり申し上げます。愛想がいいことと、仕事ができることは、まったく別のものです。
むしろ、契約を取るのが上手な営業マンほど、最初の印象は良い。当たり前です。それが彼らの仕事ですから。
4. 一社しか会わずに、その場で決めてしまう
最初に来てもらった会社に、そのまま頼んでしまう。比べることをしない。これも失敗のもとです。
比べる相手がいなければ、その会社が良いのか悪いのかも分かりません。査定額が妥当なのかどうかも、判断のしようがないのです。
藤原台のBさんご夫婦の話
具体的な話をします。
神戸市北区の藤原台に、Bさんというご夫婦がいらっしゃいました。ご主人が72歳、奥様が69歳。
お子さんがみな独立して、夫婦二人には家が広すぎるということで、築28年の戸建てを売って、駅の近いマンションへ住み替えるお考えでした。
Bさんは、きちんと三社に査定を頼みました。ここまでは良かったのです。
一社目は「2,800万円」、二社目は「2,900万円」、そして三社目が「3,400万円でいけますよ」と言いました。
Bさんは、迷わず三社目に頼みました。営業マンも若くて感じが良く、「藤原台は人気ですから、すぐ売れます」と笑顔で言ったそうです。専任媒介契約というものを結びました。
ところが、三か月経っても問い合わせが一件も来ない。半年経っても売れない。
営業マンに聞くと「もう少し様子を見ましょう」「今は時期が悪いんです」と言うばかり。
結局、最初の値段から下げて、下げて、下げて、Bさんの家が売れたのは「2,550万円」でした。
一社目、二社目が最初に言っていた金額より、はるかに安い。
しかも、その一年近くのあいだ、Bさんは固定資産税を払い続けました。住み替え先に考えていたマンションも、一度逃しています。
Bさんは後で私のところに来て、こうおっしゃいました。「最初の3,400万円なんて、はじめから売れる値段じゃなかったんですね」
その通りなんです。
なぜ三社目は3,400万円と言ったのか
ここで、業界の裏側をはっきり申し上げます。
なぜ三社目だけが3,400万円という数字を出したのか。答えは単純です。Bさんと契約したかったからです。
不動産業界には「高預かり」という言葉があります。
実際には売れない高い値段で査定を出して、まず媒介契約を取ってしまう。契約さえ取れば、その物件は自分の会社の商品になる。あとは時間をかけて、じわじわと値段を下げさせていけばいい。
下げるのはお客さんの財布で、業者は何も損をしません。
それから「囲い込み」という問題もあります。
専任媒介で物件を預かった会社が、他社からの「買いたいお客さんがいます」という連絡を、わざと断ってしまうことがある。
なぜか。自分の会社で買い手も見つければ、売主と買主の両方から仲介手数料がもらえるからです。これを「両手取引」と言います。
会社にとっては、両手のほうが儲かる。けれど売主にとっては、買い手の幅がせまくなって、売れるのが遅くなるだけです。
つまり、高い査定を出す会社は、あなたの家を高く売りたいのではなく、あなたと契約したいだけ、ということが珍しくないのです。
地元の会社なら安心、とも言い切れません
ここで、私自身の立場についても正直に申し上げておきます。
「じゃあ、地元の小さい不動産屋に頼めばいいんだな」と思われたかもしれません。でも、それも単純な話ではありません。
地元の会社にも、デメリットはあります。
- ネット広告にあまり力を入れていない会社だと、買い手に情報が届く範囲がせまいことがある
- 担当者が高齢で、最近の制度や手続きに疎いことがある
- 扱う件数が少なく、相場感が古いままのことがある
大手だから悪い、地元だから良い、という単純な話ではないのです。
私が申し上げたいのは、ただ一つ。看板の大きさや会社の規模で決めるな、ということです。
まとめ
50年やってきて分かったことがあります。良い不動産会社かどうかは、こちらが質問をすれば見えてきます。看板や雰囲気ではなく、質問の答え方で分かるのです。
査定に来た担当者に、こう聞いてみてください。
- その査定額の根拠は何ですか
- 近所で最近売れた家は、いくらでしたか
- もし三か月で売れなかったら、どうしますか
- この家の売りにくいところは、どこですか
良い会社の担当者は、これに具体的に答えます。近所の取引事例をきちんと出し、売れなかったときの作戦を語り、そして「この家のここは、正直マイナスです」とデメリットまできちんと言います。
逆に、査定額の根拠をはっきり言えない。デメリットを一つも口にしない。そして媒介契約だけはやたらと急がせる。こういう担当者は、危ない。これは覚えておいてください。
不動産会社選びで失敗する人は、いい数字といい笑顔で選びます。失敗しない人は、答えの中身で選びます。
最後に、これだけは申し上げたい
家を売るというのは、会社選びの段階で、もう半分以上は勝負がついています。
高い査定額を見せられて舞い上がってしまう前に、感じのいい営業マンに気を許してしまう前に、どうか一度立ち止まってください。
もし今、どこに頼んだらいいか迷っておられるなら、契約書にハンコを押す前に、一度だけでも相談に来てください。
私は「うちで売ってください」とは申しません。あなたが損をしないために、どこを見て会社を選べばいいか、その話をします。それだけでも、Bさんのような遠回りは、きっと避けられます。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


