カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/25 08:03
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、リフォームに補助金を使う前に知っておいていただきたいこと、つまり「制度の探し方」と「期待しすぎてはいけない理由」についてお話しします。
前回、住みながら少しずつ直すお話の中で、「補助金は年度ごとに内容が変わる」と少しだけ触れました。
すると、何人かの方からこう聞かれました。
「あきちゃん、うちの古い家にも補助金って出るんですか。いくらぐらいもらえるんですか」
出ることはあります。
けれど、補助金の話を聞いて目の色が変わった方ほど、あとで「こんなはずじゃなかった」とおっしゃるのを、私は何度も見てきました。
今日はそのあたりを、正直にお話しします。
結論から申し上げます
補助金は「おまけ」だと思ってください。
先に決めるのは、どこを直すかと、誰に頼むかです。そのうえで、使える制度があれば使う。この順番を逆にしてはいけません。
そしてもう一つ。補助金は、ほとんどが「工事の契約や着工の前」に申請しないと出ません。
これは断言できます。補助金で損をする方は、補助金をもらえなかった方ではありません。補助金を当てにして、工事の中身と業者選びを間違えた方です。
1. 補助金は「工事の前」に申し込まないと出ない
これを知らずに損をする方が、本当に多いのです。
国の制度も、神戸市の制度も、介護保険の住宅改修も、原則は「先に申請、あとで工事」です。
工事が終わってから「そういえば補助金が出るらしい」と聞いて窓口へ行っても、たいていは「もう対象外です」と言われます。
見積りを取った段階で、一度立ち止まってください。契約書に判を押すのは、その後です。
2. 予算がなくなれば、年度の途中でも締め切られる
補助金は国や市の予算で出ています。
その年の予算を使い切れば、締め切り日より前でも受付が終わります。
人気のある省エネの補助金などは、秋口には終わってしまう年もあります。
「来月やろう」と思っているうちに終わっていた、ということは珍しくありません。
3. 登録した業者でないと使えない制度が多い
国の省エネ関係の補助金は、あらかじめ登録した事業者が申請する仕組みのものがほとんどです。
つまり、長年お付き合いのある近所の大工さんが登録していなければ、その方に頼むと補助金は使えません。
補助金を取るか、信頼できる職人さんを取るか。ここで迷われる方は多いです。
4. 補助金の出る工事と、あなたの家に必要な工事は同じとは限らない
補助金が出やすいのは、窓の断熱、給湯器、耐震、手すりや段差の解消といった工事です。
けれど、あなたの家で今いちばん直さないといけないのは、屋根の雨漏りかもしれません。シロアリで傷んだ土台かもしれません。
補助金が出るからといって窓を先にやり、肝心の雨漏りを後回しにする。これは順番が逆です。
5. お金が入るのは、工事が終わって支払ったあと
補助金は、工事の前にもらえるお金ではありません。
いったん工事代金を全額払い、完了の報告をして、審査が通ってから振り込まれます。
制度によっては、振込まで数か月かかります。
手元のお金で一度全部払える計画でなければ、補助金を使ったリフォームはしんどくなります。
では、制度はどうやって探すのか
ここからは、探し方のお話です。
私がお客様にいつもお勧めしている順番は、次のとおりです。
- 神戸市の住まいの相談窓口「すまいるネット」に電話で聞く
- 住宅リフォームの支援制度をまとめて検索できる国のサイトで、神戸市の制度を調べる
- 要介護・要支援の認定を受けているご家族がいれば、ケアマネジャーさんに相談する
- 工事を頼む業者に「この工事で使える制度はありますか」と聞く
最後の業者への確認は、必ず自分で調べたあとにしてください。理由は後でお話しします。
北区の古い家でよく当てはまるのは、次のあたりです。
昭和56年5月以前に建てられた家なら、耐震診断や耐震改修の補助の対象になることがあります。北区の藤原台や鈴蘭台、北鈴蘭台あたりには、この年代の家がたくさん残っています。
ご家族に要介護・要支援の認定を受けた方がいれば、介護保険の住宅改修が使えます。手すりや段差の解消などで、工事費20万円までが対象です。自己負担が1割の方なら、戻ってくるのは最大で18万円です。
窓の断熱や高効率の給湯器は、国の省エネの補助金の対象になることが多いです。ただし名前も金額も毎年のように変わりますので、その年の内容を必ず確認してください。
それから、補助金とは別に、耐震や省エネ、バリアフリーの工事をすると、固定資産税が減ったり、所得税が戻ったりする制度もあります。こちらは工事の後に申告が要ります。固定資産税のほうは、工事が終わってから3か月以内に申告しないといけないものが多いので、忘れないでください。
実際にあった話
ここからは、私が見てきた実例をお話しします。
鈴蘭台に築45年の戸建てを持つAさんご夫婦(ご主人72歳、奥様69歳)のお話です。
ある日、訪問の業者さんが来て「窓の断熱に国の補助金が最大100万円以上出ます。今月中なら間に合います」と言われたそうです。
見積りは内窓8か所と玄関ドアの交換で280万円。補助金で100万円近く戻るなら、と契約寸前まで行っておられました。
心配になった娘さんが、私のところへ見積りを持ってこられました。
中身を見ると、補助金の額は窓の大きさと性能と数で決まる仕組みで、Aさんの家の窓で計算すると、出るのはせいぜい40万円前後でした。「最大100万円」は、あくまで大きな家で全部の窓を替えた場合の上限の話です。
念のため、補助金の登録をしている別の工務店さんに同じ工事の見積りを取ってもらいました。170万円でした。
補助金が38万円出たとしても、最初の業者だと実際の負担は242万円。別の工務店なら132万円です。
はっきり申し上げます。この場合、補助金の話が出たことで、Aさんは100万円以上損をするところでした。
もうひとつ。藤原台のBさん(66歳)のお話です。
お母様(91歳)が要介護2の認定を受けておられて、廊下とお風呂に手すりを付けることになりました。
知り合いの工務店さんに頼んで、すぐに工事をしてもらいました。費用は19万円です。
工事が終わってから、ケアマネジャーさんに「介護保険の住宅改修は使いましたか」と聞かれて、初めて制度を知ったそうです。
事前の申請がなかったので、対象外でした。もし先に申請していれば、Bさんの負担は1割の1万9千円で済んでいたはずです。
17万円以上の差です。Bさんは「知らなかった自分が悪い」とおっしゃっていましたが、私はこの話を聞くたびに悔しくなります。
うまくいった方もおられます。
北鈴蘭台の昭和51年築の家に住むCさん(70歳)は、まず神戸市の耐震診断を受けられました。診断の結果、耐震改修が必要と分かり、補助を使って工事をされました。
工事費は約190万円、補助が出て実際の負担は100万円ほどでした。
Cさんがうまくいったのは、補助金を探したからではありません。「この家に長く住むなら、まず地震に耐えられるようにしたい」と、先に工事の目的を決めておられたからです。補助金は、その後から付いてきたものです。
業界の裏側
ここからは、少し耳の痛い話をします。
補助金は、一部の業者にとって一番の営業の道具になっています。
- 「補助金が使えます」
- 「国がお金を出してくれます」
- 「今月中に契約しないと予算がなくなります」
こういう言葉で急がせる業者がいます。
そして、補助金が出る分だけ見積りを高くしておく。お客様は「補助金が出たから得をした」と思っておられますが、実際には補助金がそのまま業者の利益になっている、ということがあるのです。
申請の「代行手数料」を別に5万円、10万円と取るところもあります。
これは私ども不動産屋の世界にも無関係ではありません。
古い家を売るときに「補助金を使えば安くリフォームできますよ」と言って、買主さんの背中を押す営業があります。
けれど、補助金の条件はその年によって変わりますし、買ったあとに必ず使えるとは限りません。
補助金を当てにして家の予算を組むのは、とても危ないことです。私は、買主さんには「補助金はないものとして、予算を組んでください」とお伝えしています。
50年やってきて分かったことがあります。
「補助金」「無料」「今だけ」という言葉が出たときほど、人は計算をやめてしまいます。そこが一番危ないのです。
補助金を使うことのデメリット
補助金を使うことを、私は否定しません。使えるものは使ったほうがいいです。
ただ、マイナス面も正直にお伝えしておきます。
まず、手間と時間がかかります。申請書、工事前後の写真、製品の証明書など、書類がたくさん要ります。申請から工事の許可が出るまでに、1か月から2か月待つこともあります。雨漏りのように急ぐ工事には向きません。
次に、業者が限られます。先ほど申し上げたとおり、登録した業者でないと使えない制度が多いので、なじみの職人さんに頼めないことがあります。
それから、補助の条件に合わせるために、性能の高い値段の高い製品を選ぶことになり、かえって工事の総額が上がることがあります。
最後に、慎重になりすぎるのも考えものです。調べているうちに受付が終わってしまい、結局もらえなかった、という方も実際におられます。
「期待しすぎない」と「ためらいすぎない」の間で、ちょうどいいところを探す。これがなかなか難しいのです。
まとめ
もう一度申し上げます。
補助金は「おまけ」です。
どこを直すかを先に決める。信頼できる業者を先に選ぶ。そのうえで、使える制度を自分で調べて、契約の前に申請する。
この順番さえ守れば、補助金はちゃんと味方になってくれます。
逆に、補助金の話から工事が始まったときは、一度手を止めてください。
最後に、これだけは申し上げたい
リフォームの見積りを前にして「これ、補助金は使えるんやろか」「この金額、高いんやろか」と迷ったときは、どうぞお気軽に声をかけてください。
私は工事の業者ではありませんので、工事を売り込むことはありません。
北区で50年、いろいろな家とそこに住む方を見てきた立場から、その工事と見積りが本当にあなたの家に合っているかどうか、一緒に考えさせていただきます。
家を売るか、直して住み続けるか、まだ決めておられない段階のご相談でもかまいません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


