カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/02 07:11
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は「旗竿地(はたざおち)」の話をします。細い路地の奥に敷地が広がっている、あの形の土地です。
ご覧になったことがあると思います。道路から幅2mほどの細い通路がずっと奥まで伸びていて、その先にポツンと家が建っている。上から見ると旗竿(はたざお)のような形をしているので、業界ではそう呼んでいます。
北区にはこの形の土地が本当に多い。鈴蘭台も、藤原台も、有馬口も、唐櫃も、山を削って造成した土地ですから、道路に面した部分を全部の家に均等に配ることができなかったんです。
この旗竿地を見て、お客様は必ずこうおっしゃいます。
「安いですね。でも、大丈夫なんでしょうか」
この質問に、私は50年間答え続けてきました。今日はその答えを、全部書きます。
結論から申し上げます
北区の旗竿地は、買ってよいものと、絶対に買ってはいけないものが、はっきり分かれます。判断は3つだけです。
路地の幅、再建築の可否、駐車の可否
この3つが全部クリアできる旗竿地なら、買っていいです。むしろ「お買い得」です。逆に、1つでも欠けている旗竿地は、いくら安くても手を出さないでください。
はっきり申し上げます。旗竿地で失敗する人は、この3つを不動産屋に聞かずに、値段だけ見て決めています。
1. 路地の幅は「2m」ではなく「2.5m」で見てください
建築基準法では、建物を建てる土地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない、と決まっています。これを接道義務といいます。
旗竿地の路地部分がちょうど2mしかない物件、これが北区にはゴロゴロあります。法律上はセーフです。家は建ちます。
ですが、2mというのは「人が通れる」幅であって、「暮らせる」幅ではありません。2mの路地で何が起きるか、具体的に申し上げます。
まず、工事車両が入りません。生コン車もクレーン車も入れませんから、家を建てるとき、建て替えるとき、外壁を塗り替えるときに、全部「手作業」の割増料金がかかります。
私が見てきた実例で言えば、路地が2mの旗竿地で解体工事をしたお宅は、普通の土地なら120万円で済む木造解体が、195万円かかりました。差額は「75万円」です。重機が入らないので、手壊しで出した廃材を一輪車で道路まで運ぶ人件費です。
次に、引っ越しです。大型のソファも冷蔵庫も、2mの路地に軽トラを入れられないと、道路から手で運びます。引っ越し業者は追加料金を取ります。
そして、水道です。ここが一番怖い。路地の下に水道管と下水管が通っているわけですが、その管が古い場合、掘り返して入れ替える工事が必要になります。路地が長ければ長いほど高くなる。25mの路地で、水道の引き直しに「80万円」かかったお宅を、私は実際に見ています。
ですから私は、路地の幅は「2.5m以上」を基準にしてくださいと申し上げています。2.5mあれば軽トラは入ります。3mあれば普通車が通れます。
2mちょうどの旗竿地は、法律的には建てられるけれど、生活的には割高な土地です。これは覚えておいてください。
2. 「再建築ができるか」は必ず紙で確認してください
旗竿地の一番の落とし穴は、ここです。路地部分の権利関係が、物件によってバラバラなんです。パターンは3つあります。
- 路地部分が単独所有(自分の土地)
- 路地部分が隣と共有(持分2分の1など)
- 路地部分が他人の土地で、通行だけ許してもらっている
1番なら問題ありません。2番も、ふつうは建てられます。
問題は3番です。他人の土地を通っているだけの旗竿地は、再建築できない可能性があります。つまり、今建っている家は住めるけれど、建て替えはできない。これを「再建築不可」といいます。
再建築不可の家がどうなるか、はっきり申し上げます。
住宅ローンが通りません。銀行は担保として評価しませんから、買う人は現金を用意するしかない。買える人が激減します。結果、いざ売ろうとしたときに、相場の半分でも売れません。再建築不可の物件が「格安」で出ているのには、必ず理由があるんです。
ここで一歩立ち止まってください。
チラシやネットの物件情報には、「再建築不可」とはっきり書いてある物件もあれば、書いていない物件もあります。「要相談」「現況渡し」としか書いていない物件は、必ず疑ってください。
確認する方法は簡単です。不動産屋に「再建築の可否を、役所で確認した書面をください」と言えばいい。まともな業者なら、建築指導課で調べた内容を出してきます。出せない業者は、調べていないか、都合が悪いかのどちらかです。
3. 車が停められない旗竿地は、北区では売れません
これは断言できます。神戸市北区は、車がないと生活が成り立たない場所が多い地域です。三宮まで電車で30分といっても、駅まで坂を15分歩く家であれば、日常の買い物は車です。
旗竿地で車の話をするとき、見るべきポイントは2つあります。
ひとつは、路地に車を停めるのか、奥の敷地に停めるのかです。路地部分に縦列で停めるタイプの旗竿地は、車が2台になると詰みます。奥の車を出すのに手前の車をどかさないといけない。お子さんが免許を取る年齢になったとき、これが毎朝の喧嘩の種になります。
もうひとつは、路地の出入り口の道路幅です。路地が2.5mあっても、その路地が出ている前面道路が4mしかなく、しかも坂道でカーブしていたら、車の切り返しができません。
実際に現地で、自分の車で入れてみてください。これは絶対にやってください。晴れた昼間に一度、そして可能なら雨の日にもう一度です。
北区の坂道でバックを切り返すのは、想像よりずっと難しいです。50年やってきて分かったことがあります。「なんとかなるでしょう」と言って買った人は、3年後に「やっぱり停められない」と言って相談に来られます。
4. 藤原台のCさんご夫婦の話
3年ほど前のことです。Cさんご夫婦(ご主人42歳・奥様39歳・お子さん2人)が、藤原台で家を探しておられました。ご予算は3,000万円まで。
ご覧になった物件が2つありました。
ひとつは、整形地の中古住宅。築22年、土地45坪、価格3,080万円。道路にきちんと面していて、駐車2台。
もうひとつは、旗竿地の中古住宅。築25年、土地52坪(うち路地部分が10坪)、価格2,180万円。
差額は900万円です。しかも旗竿地のほうが土地は7坪広い。奥様は完全に旗竿地に傾いておられました。
私は現地に一緒に行きました。そして、路地を測りました。
幅は2.4mありました。長さは18m。前面道路は5.5mで、平坦。路地部分はCさんが単独で所有できる形。奥の敷地に軽自動車と普通車が並列で2台入る。水道管は15年前に引き直し済み。
私は「これは買っていい旗竿地です」と申し上げました。
Cさんご夫婦はその旗竿地を買われました。浮いた900万円のうち、350万円を水回りとサッシの断熱改修に回されて、残りは繰り上げ返済用に取っておられます。今も快適に住んでおられます。
ですが、私はもう一軒、同じ時期に別のご相談を受けています。
こちらはDさん(当時51歳)。ご自分でネットで見つけた岡場の旗竿地の中古住宅を、私のところには相談なしに買われました。価格は1,480万円。安かったからです。
路地の幅は1.9mでした。
法律上の2mに、10cm足りなかったんです。前の所有者の時代に、隣家がブロック塀を建て替えたときに数センチずつ寄ってきていた。登記の図面では2mあることになっていたのに、実測すると足りていなかった。
結果として、この物件は再建築ができません。Dさんは今、その家に住んでおられますが、建て替えができない以上、将来お子さんに残しても売れない。
「あきちゃんさん、契約の前に見てもらえばよかった」
そう言われました。私も同じことを思いました。10cmで、資産価値の全部が変わったんです。
5. 業界の裏側を申し上げます
旗竿地について、業者側がやっていることを正直に書きます。
ひとつめ。坪単価のマジックです。
旗竿地の広告は、路地部分を含めた総面積で坪単価を出します。さっきのCさんの物件で言えば、52坪で2,180万円ですから、坪あたり約42万円。安く見えます。
けれど路地の10坪は、家も建たない、庭にもならない、ただの通路です。実際に使える土地は42坪。そこで割り直すと坪あたり約52万円になります。
これは詐欺ではありません。業界の慣習です。ですが、買う側がこの計算をしないと、「割安に見えるだけの土地」を割高で掴むことになります。
ふたつめ。「再建築不可」を書かない業者がいます。
法律上は重要事項説明で必ず説明することになっています。ですが、それは契約の直前です。広告の段階では書かないところがある。「価格の理由」を聞かれるまで自分からは言わない。
こういう業者は、お客様が値段に惚れ込んで、気持ちが固まってから説明します。人間、その段階まで来ると「まあ、いいか」となってしまうんです。これを狙っています。
みっつめ。旗竿地の売却を頼まれたときの、値下げ誘導です。
旗竿地は整形地より買い手が少ない。ですから預かった業者は、売れないと分かるとすぐ「旗竿ですから、もう200万円下げましょう」と言ってきます。
本当に必要な値下げなら仕方ありません。ですが、路地が2.5mあって、再建築もできて、車も停まる旗竿地なら、待てば必ず買い手はつきます。「旗竿地だから安く」ではなく、「この旗竿地はここが良い」と説明できる業者に頼んでください。
はっきり申し上げます。旗竿地は、業者の腕がそのまま値段に出る土地です。
6. デメリットも正直に書きます
ここまで「条件を満たせば買っていい」と申し上げましたが、良いことばかりではありません。マイナス面を隠さずに書きます。
日当たりと風通しは、整形地に負けます。奥まった土地ですから、三方を隣家に囲まれます。1階の日当たりは期待しないでください。設計で2階リビングにする、天窓を入れるといった工夫が要ります。その分、建築費は上がります。
外構と設備の維持費が高くつきます。路地部分にも舗装が必要ですし、街灯がないので夜は真っ暗になります。外灯を付ければ電気代がかかる。路地の草も自分で刈らないといけません。
隣家との距離が近い分、トラブルが起きやすいです。私が扱った件では、隣の木の枝が路地に張り出してきて、車の屋根に傷が付いたという相談がありました。法律的には切ってもらえますが、毎日顔を合わせる相手ですから、言いにくい。
そして、売却には時間がかかります。整形地なら2か月で決まる条件でも、旗竿地は4か月から半年みておいてください。買い手の母数が少ないんです。安く売れば早く決まりますが、それは損をするということです。
この4つを飲み込めるかどうかです。飲み込めるなら、900万円の差額は大きな武器になります。飲み込めないなら、無理をして旗竿地を選ぶ必要はありません。
まとめ
北区の旗竿地は、買ってよいのか。私の答えは「3つの条件を満たすものだけ、買ってよい」です。
- 路地の幅は2.5m以上あるか。2mちょうどは避ける
- 再建築ができるか。役所で確認した書面をもらう
- 車が停められるか。自分の車で実際に入れてみる
この3つがそろえば、旗竿地は安く広い土地を手に入れる、とても賢い選択です。北区で予算が届かないと諦めておられる方に、私は旗竿地を勧めることがあります。
ですが1つでも欠けていたら、いくら安くても買わないでください。10cm足りないだけで、資産が資産でなくなります。
50年やってきて分かったことがあります。旗竿地で得をした人は、契約の前に路地を測っています。旗竿地で損をした人は、契約の後に測っています。
最後に、これだけは申し上げたい
旗竿地の良し悪しは、写真では分かりません。図面でも分かりません。
現地に立って、メジャーで路地を測って、車で入ってみて、役所で再建築の可否を調べて、初めて分かります。
これは、買う側だけの話ではありません。今、旗竿地をお持ちで「うちは旗竿だから安くしか売れないだろう」と思い込んでおられる方も同じです。条件がそろっているなら、それは安売りする必要のない土地です。
気になる旗竿地があるなら、契約の前に一度、私に見せてください。買うほうでも、売るほうでも構いません。「この物件、どう思いますか」の一言で結構です。私は50年、北区の土地を見てきました。路地に立てば、だいたいのことは分かります。
10cmの話を、後から聞くことにならないように。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


