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越境したブロック塀と樹木は売る前に片付ける
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/09/12 08:44

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、家や土地を売る前に必ず片付けておいてほしい「越境」の話をします。越境というのは、塀や木や屋根や配管が、お隣との境界線をまたいではみ出している状態のことです。

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「うちは大丈夫」と思われた方。一度、外に出て塀の足元を見てみてください。

50年この仕事をやってきて、越境が一つもない古い家というのは、正直なところ、あまり見たことがありません。

特に神戸市北区は、昭和40年代から50年代にかけて造成された住宅地が多い土地です。あの頃に積んだブロック塀が、そのまま残っているお宅がたくさんあります。

そして、その塀のそばに植えた木が、50年かけて大きくなっているのです。


結論から申し上げます


越境しているブロック塀と樹木は、家を売りに出す前に片付けてください。売りに出してから片付けるのでは、遅いのです。

理由は単純です。売りに出した後に越境が見つかると、それは「交渉の材料」になります。売りに出す前に片付けておけば、それはただの「済んだ話」で終わります。

同じ越境でも、見つかるタイミングが違うだけで、手取りが200万円変わることがあります。

これは断言できます。


1. 買主は「自分が揉めることになる」と思います


買主の立場になってみてください。内覧に来ました。家は気に入りました。ところが仲介の担当者が「あ、この塀は少しお隣にはみ出していますね」と言う。

その瞬間、買主の頭の中に浮かぶのは何か。「知らない人同士で、これから揉めるのか」ということです。

家が気に入っていても、この一点で引く方は本当に多いです。

はっきり申し上げます。買主が一番嫌うのは、お金の問題ではありません。「面倒くさい人間関係を、買った瞬間から引き継ぐこと」です。塀の越境は、その代表格なのです。


2. 銀行が担保評価で引っかかります


これは意外と知られていません。住宅ローンを使う買主の場合、銀行は物件を担保として評価します。

そのときに、越境の状態が放置されていて、しかも解決の見込みが書面で示されていないと、審査で保留になることがあります。

必ず否決されるわけではありません。けれど「越境の覚書を取ってください」「解消してから実行します」と条件が付くことは、珍しくないのです。

ここで何が起きるか。引き渡しの日が決まっているのに、覚書がまとまらない。お隣が「今は忙しい」と言う。買主の転居予定がずれる。

決済が1か月延びて、買主が「もう別の物件にします」と言って、契約が白紙になったことがあります。


3. 引き渡した後も、売主の責任が残ります


売ってしまえば終わり、ではありません。越境の事実を知っていながら伝えずに売って、引き渡しの後に買主とお隣がトラブルになった場合。買主から売主へ「聞いていない」と言われる可能性があります。

古い家を売るときは「契約不適合責任を免責する」という条件を付けることが多いのですが、売主が知っていて黙っていたことについては、免責が効かないのです。

70代、80代で家を売って、施設に入られた後に、こういう話が回ってくる。これは本当に気の毒です。売った後の安心まで含めて、売る準備なのです。


4. 値引きの材料に使われます


これが一番、現金に直結します。買主側の仲介業者は、値引きの理由を探しています。仕事ですから当然です。そこに越境という材料があれば、必ず使います。

「越境の解消費用がいくらかかるか分からないので、その分を見てください」と言われる。言われた側は、根拠がないから反論できない。

そして、実際の工事費が80万円でも、値引きは150万円、200万円になる。

50年やってきて分かったことがあります。先に自分で片付けた人は、その分を値段に上乗せできます。後から指摘された人は、かかった費用の倍を引かれます。

同じ越境、同じ工事、違うのは順番だけです。


5. 隣の方も、年を取ります


これは、私が一番申し上げたいことです。越境の話は、結局のところ人と人の話です。

お隣と長年のお付き合いがあって、顔を見れば話ができる関係なら、覚書は1か月でまとまります。

ところが、その方が亡くなって、遠方のお子さんが相続されたらどうなるか。お子さんは、あなたのことを知りません。塀の経緯も知りません。

「なぜうちが判子を押さなければいけないのか」となって、半年経っても進まない。

越境の解決は、話ができる人がいるうちにやる。これが50年見てきた結論です。


実際にあった話です


藤原台のCさん、74歳の男性です。昭和53年に建てた家で、奥様を亡くされて、大阪の息子さんの近くに引っ越すことになりました。

査定は2,480万円。周辺の相場から見て、妥当な値段でした。

私は最初にお伝えしました。「東側のブロック塀、20センチほどお隣に入っています。それと、庭の金木犀が向こうの屋根に枝を出しています。売る前に片付けましょう」と。

Cさんの返事は「40年何も言われていないから、大丈夫」でした。

売り出して2か月目に、買主が付きました。40代のご夫婦です。ところが、買主側の業者が現地で塀を見て、すぐに指摘しました。そこから、こうなりました。

  • お隣に覚書をお願いに行ったが、その方は3年前に亡くなっていた
  • 相続したのは兵庫県外に住む娘さんで、面識がない
  • 連絡は取れたが「塀の中身を見ないと判断できない」と言われた
  • 枝の越境についても、切るなら立ち会いたいと言われた
  • 2か月やりとりして、買主が待ちきれずに離れた

最終的に、Cさんは覚書と枝の伐採を済ませてから売り直しました。売れた値段は2,280万円です。200万円下がりました。

伐採と塀の一部やり直しに、別途68万円かかっています。最初に片付けていれば、68万円で済んだ話でした。

もう一件、逆の例を申し上げます。岡場のDさんご夫婦。ご主人72歳、奥様69歳です。このお宅も、南側の塀が10センチほど越境していました。

Dさんは売りに出す前に、お隣に菓子折りを持って行かれました。「今度家を売ることになりまして、この塀のことをはっきりさせておきたいのです」と、ご自分の言葉で説明されたそうです。

お隣は「わざわざありがとう」と言って、その場で覚書に応じてくださいました。かかった費用は、境界の確認と書面の作成で18万円。庭木の剪定が9万円。

査定は2,150万円でした。売れたのは2,150万円、満額です。

CさんとDさん、土地の広さも築年数もほとんど同じです。差がついたのは、越境を「いつ」片付けたかだけです。


業界の裏側を申し上げます


ここからは、私ども不動産屋の話です。「越境は覚書を交わせば大丈夫ですよ」と、軽く言う業者がいます。これは、半分は本当で、半分は嘘です。

覚書で済むのは、お隣が納得して判子を押してくれる場合だけです。そこにたどり着くまでが仕事なのに、そこを飛ばして「大丈夫」と言うのです。

なぜそう言うか。理由は簡単で、越境の話を最初にすると、売主に嫌がられて媒介契約を取り損ねるからです。「他社さんは何も言わなかったのに」と言われるのが怖い。

だから黙っておいて、買主が付いてから「実は」と切り出す。そのときには媒介契約は取れているので、業者は困りません。困るのは売主だけです。

もう一つ。重要事項説明書に、越境のことを一行だけ小さく書いて済ませる業者もいます。書いてあるから説明した、という形だけは整う。

けれど買主は、契約の日に何十枚も書類を読まされて、その一行の意味を分かっていないことがあります。後で揉めたときに、「書いてありましたよね」と業者は逃げられる。売主は逃げられません。

それから、測量士さんに丸投げして終わりにする業者も多いです。測量は境界を確定させる仕事です。お隣に頭を下げて覚書をお願いするのは、本来は仲介業者の仕事です。

そこをやらずに「測量会社から連絡が行きます」で済ませる。現場に行かない業者ほど、この逃げ方をします。


デメリットも正直に申し上げます


良いことばかり言うつもりはありません。越境を片付けるのには、お金と時間と、ある程度の気苦労がかかります。

まず費用です。覚書を作るだけなら、境界の確認を含めて15万円から30万円ほど。樹木の伐採や強い剪定は、大きさによりますが5万円から20万円。塀を作り直すとなると、長さ10メートルで70万円から120万円はかかります。

これは全部、売主の持ち出しです。売れる前に出ていくお金です。

時間もかかります。お隣と話をして、書面を作って、判子をいただくまで、早くて1か月、相続が絡むと3か月から半年です。「来月から売りたい」という方には、正直つらい日程です。

そして一番のリスクは、お隣との関係です。こちらから越境の話を持ち出したことで、逆に相手から「そちらの雨樋もうちに出ている」と返されることがあります。

長年黙っていた不満が、このタイミングで出てくるのです。私も現場で何度も見ています。

それから、古い塀を壊すときに気をつけていただきたいことがあります。高低差のある土地では、その塀がお隣の土を支えていることがあります。

うちの塀だからと勝手に壊すと、お隣の庭が崩れます。これは実際に起きた話で、修復に180万円かかりました。塀を触るときは、必ず先に業者と隣地の方の三者で確認してください。


まとめ


もう一度申し上げます。越境したブロック塀と樹木は、売る前に片付けてください。理由は5つでした。

  • 買主は人間関係の引き継ぎを嫌がる
  • 銀行の担保評価で条件が付く
  • 引き渡し後も売主の責任が残る
  • 値引きの材料に使われて、工事費の倍を引かれる
  • 話ができる隣人がいるうちにしか、まとまらない

かかる費用は、覚書と剪定なら20万円から40万円程度のことが多いです。それを惜しんで後回しにすると、200万円下がることがあります。

はっきり申し上げます。これは損得の計算としては、考えるまでもない話です。

そして費用の問題以上に大切なのは、買った方が気持ちよく住めるかどうかです。私は、売った後で買主とお隣が揉めるのが、一番いやです。

50年この仕事をやってきて、それだけは避けたいと思ってきました。


最後に、これだけは申し上げたい


「うちの塀は越境しているのかどうか、分からない」

そう思われた方は、まず見に行くところからで結構です。境界の杭を探して、塀の中心がどちらにあるか見る。木の枝がどこまで出ているか見る。それだけでも、かなり分かります。

ご自分で判断がつかないときは、遠慮なくご相談ください。私が現地を見て、これは片付けたほうがいい、これは覚書で十分、これは放っておいても値段に響かない、と正直に申し上げます。

売る予定がまだ先の方でも構いません。むしろ、先であるほど選択肢があります。お隣がお元気なうちに動く。これに勝る方法はありません。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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