カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/09 06:41
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が50年この仕事をやってきた中で、いちばん腹立たしく見てきたテーマについてお話しします。不動産屋の「営業トーク」です。ご相談に来られた方が、必ずおっしゃるのです。「あきちゃん、こう言われたんですが、本当ですか」と。
はっきり申し上げます。不動産屋の営業トークの8割は、お客様のためではなく、自分の今月の数字のために言っています。
50年やってきて分かったことがあります。営業トークというのは、業界の中で「型」が決まっているのです。同じセリフを、皆が同じ場面で使う。だからこちら側がパターンを知っておけば、見抜けます。
結論から申し上げます
これは断言できます。
これから申し上げる「7つの営業フレーズ」を聞いたら、その場で即決してはいけません。一度持ち帰って、ご家族と冷静に考えてください。
危険な7つはこれです。
- 「今が売り時です」
- 「弊社なら他社より高く売れます」
- 「ちょうど今、興味を持っている買主様がいまして」
- 「専任媒介がいちばんお得ですよ」
- 「市場の反応が悪いので、少し値下げを」
- 「最悪、弊社で買い取りますので」
- 「この物件はお買い得です、すぐに決まりますよ」
順番に、それぞれの「裏」を申し上げます。
1. 「今が売り時です」の裏
このセリフを、根拠なく使う営業マンは要注意です。「なぜ今が売り時なのか」を3つ以上の数字で説明できないなら、信じてはいけません。
本当に「今が売り時」かどうかは、市況だけでなく、お客様ご自身の年齢、家族構成、ローン残債、税制の節目、住み替え先の有無、これら全部を見て初めて判断できます。
「今が売り時です」と即答する営業マンは、あなたの状況を1ミリも見ていません。ただ媒介契約を取りたいだけです。
媒介契約を取れれば、3か月から6か月、その物件を独占的に扱えます。彼らにとっては「とりあえず預かれば勝ち」なのです。
2. 「弊社なら他社より高く売れます」の裏
これがいちばん危険なフレーズです。
業界では「高預かり」と呼ばれる手口です。査定書に、市場価格より明らかに高い金額を書いてくる業者がいます。本当は3,000万円でしか売れない物件に、3,500万円という査定を出すのです。
売主は当然、高い査定を出した会社のほうが「頼りになりそう」と感じます。それが狙いです。
でも3,500万円で出して売れるはずがない。3か月後に「市場の反応が悪いので3,200万円に下げましょう」、6か月後に「3,000万円に下げましょう」、9か月後に「2,800万円に下げましょう」と、段階的に下げられます。
私のお客様で、Cさんご夫婦(65歳と63歳)がおられました。神戸市北区鈴蘭台の戸建てで、3社に査定を依頼されました。
A社「2,600万円」、B社「2,650万円」、C社「3,200万円」。
C社だけが突出して高い。ご夫婦は「やっぱりC社にお願いしたほうが得そうね」とおっしゃって、C社と専任媒介を結ばれました。
結果はどうなったか。9か月かかって、最終的に「2,400万円」で成約。当初A社・B社が出していた査定額より200万円から250万円安く売る羽目になりました。
なぜか。「9か月も売れ残った物件」というレッテルが付いてしまったからです。買主は「これだけ長く売れていない物件は、何か問題があるはずだ」と疑います。だから値切り倒されます。
査定金額が周りより極端に高い業者は、信じてはいけません。これは50年やってきて、断言できます。
3. 「ちょうど今、興味を持っている買主様がいまして」の裏
これは「あて馬」と呼ばれる作戦です。
媒介契約を取りたい段階、あるいは契約直後に、「ちょうど良いタイミングで、買主候補がいまして」と言ってくる業者がいます。
本当にいる場合もあります。ですが、私の見立てでは9割は嘘です。「お客様の物件をぜひうちで」と思わせるための、心理的な仕掛けです。
見抜き方は簡単です。「その買主様は、どのくらいの価格帯をお探しですか」「ご家族構成は」「いつまでに住み替えご希望ですか」と具体的に聞いてください。
具体的な答えが返ってこない、もしくは曖昧にぼかされたら、いません。
本当にいる買主なら、営業マンは喜んで詳細を話します。なぜなら、売主に「この買主とぜひ商談を」と思わせれば、専任媒介を結びやすくなるからです。
4. 「専任媒介がいちばんお得ですよ」の裏
ここからは、もっと深い話になります。
媒介契約には3種類あります。
- 一般媒介、複数社に同時に頼める形
- 専任媒介、1社のみに頼むが、自分で見つけた買主とは直接契約OK
- 専属専任媒介、1社のみで、自分で見つけた買主も会社経由でしか契約NG
業者が必ず勧めてくるのは「専任」または「専属専任」です。
なぜか。これも本音を申し上げます。「囲い込み」がしやすいからです。
囲い込みというのは、自社で買主を見つければ、売主からも買主からも仲介手数料を取れる、いわゆる「両手取引」を狙う行為です。3,000万円の物件なら、片手だと約100万円、両手だと約200万円の手数料になります。
だから業者は、他社から「お客様を内見させてください」と問い合わせがあっても、「商談中です」「内見スケジュールが詰まっておりまして」と嘘をついて断ります。物件情報を自社内だけに留めて、自社の買主が現れるまで時間稼ぎをする。
その間、売主は「なかなか売れませんね」と言われ続けます。本当は他社経由でなら売れていたかもしれないのに、です。
専任媒介自体が悪いわけではありません。誠実な業者の専任媒介は、むしろ手厚く動いてくれます。問題は、その業者が「囲い込み」をしているかどうかです。
これを見抜くには、レインズ(不動産流通機構の物件情報サイト)への登録証明書を必ずもらってください。そして時々、別の業者に「この物件、まだ買えますか」と問い合わせてもらう、という荒療治もアリです。
5. 「市場の反応が悪いので、少し値下げを」の裏
媒介契約を結んでから3か月後、必ずと言っていいほど出てくるフレーズです。
ここで断言できます。「最初に高い査定を出した業者ほど、早めに値下げを切り出してきます」。
なぜか。さきほどの「高預かり」のカラクリと同じです。最初から「売れない金額」で出しているのです。
媒介契約を取った時点で、業者の中では「結局このくらいで売れるだろう」という現実的な金額が決まっています。あとは売主に「値下げを納得させる」プロセスを踏むだけです。
見抜き方は、最初の査定の段階で「価格根拠を3つ以上の取引事例で説明してください」と言うことです。
誠実な業者は、近隣の成約事例を3件、5件と具体的に提示してきます。その金額の上下5%以内で査定を出す業者なら、信用できます。
「弊社独自のノウハウで」「お客様限定で特別に高く」と曖昧な根拠で高い査定を出してくる業者は、9割が「高預かり」と思って間違いありません。
6. 「最悪、弊社で買い取りますので」の裏
これは、優しいセリフに聞こえます。「いざとなったら、うちが買い取りますから安心です」と。
優しさではありません。最悪のセリフです。
業者の買取価格は、市場価格の「6割から7割」です。
3,000万円で売れるはずの物件を、業者は2,000万円から2,100万円で買い取ります。そして自社で軽くリフォームをして、3,200万円で再販する。差額の900万円から1,000万円が、業者の利益です。
「最悪、弊社で買い取ります」と最初から言ってくる業者は、本気で市場で売る気がない可能性があります。
「市場で頑張ったけど売れなかった、しょうがないからうちで買い取ります」という形に持ち込みたいのです。最初から、そういう筋書きで動いている。
もちろん、本当に時間がない方、相続でとにかく早く現金化したい方には、買取は良い選択肢です。
でも、時間に余裕のある方が、最初から「買取」を提案されたら、警戒してください。市場で売れば、その業者の買取価格より30%から40%高く売れる可能性があります。
7. 「この物件はお買い得です、すぐに決まりますよ」の裏
ここまでは「売主」へのトークの話でした。最後は、「買主」側のお話です。
物件を買おうとしている方が、よく言われるフレーズがこれです。「この物件、お買い得ですよ。今日中にお返事いただかないと、他のお客様が決められそうです」。
これも、9割が嘘です。
不動産は、お返事が10秒早いか遅いかで決まる商品ではありません。本当に良い物件なら、ご家族で1晩じっくり考えていただいて、翌日のお返事で十分間に合います。
「今すぐ決めてください」と急かしてくる物件ほど、後で「あれ、こんなはずじゃなかった」となるケースを、私は何百件と見てきました。
旗竿地、再建築不可、接道に問題あり、地盤が弱い、近隣トラブルあり。こういう物件こそ、業者は「お早く決めて」と急かしてきます。なぜなら、冷静に考えれば誰も買わないからです。
私のお客様で、Dさん(38歳)という方がおられました。三田の中古戸建てを内見されて、その日のうちに「他のお客様が今夕、申込書を出される予定です」と急かされて、200万円の手付金を入れて契約寸前まで行かれました。
幸い、契約日の前日にうちにご相談に来られて、調査したところ、その物件は「接道2.7m」、つまり建築基準法の接道義務(2m以上)はクリアしていても、再建築時にセットバックが必要な物件でした。Dさんは契約を見送られ、手付金もキャンセル料なしで戻ってきました。
良い物件は、急がせません。これは50年やってきて、本当によく分かりました。
業界の裏側を、もう一段深くお話しします
ここから先は、若手の同業者にも嫌われる話です。
なぜ業者がこれほど営業トークを使うのか。理由はシンプルです。「成約しなければ、給料がほぼゼロ」だからです。
不動産業界の営業マンの多くは、固定給10万円から15万円、残りはすべて歩合給という会社が多いのです。3,000万円の物件を1件成約すれば、自分の手取りが30万円から50万円増えます。
だから、目の前のお客様を「今月の自分の数字」に変えたいのです。
これは個々の営業マンの善悪の問題ではありません。業界の構造の問題です。
ですから、お客様側が「この人は私のためを思って言っているのか、自分の数字のために言っているのか」を見極める目を持つしかないのです。
見極め方は1つです。「デメリットや不利な情報を、自分から先に話してくれるかどうか」です。
良い物件のメリットしか言わない業者、デメリットを聞いても「特にありません」と答える業者は、警戒してください。
良い業者は、必ず「ただ、この物件には〇〇というデメリットがあります」「ご状況だと、売却より賃貸のほうが有利になる可能性もあります」と、お客様に不利な情報も先に出してくれます。
デメリットも正直に申し上げます
「営業トークを疑え」という話をすると、お客様は逆方向に振れます。「不動産屋なんて誰も信じられない」と。
これも危険です。
不動産取引は、専門家の助けがないと、まず素人ではできません。法務局での登記、税理士との連携、瑕疵担保責任の調整、近隣との越境問題、これらすべてを1人でやろうとすれば、必ず大きな失敗をします。
私が申し上げたいのは、「業者を疑え」ではなく、「業者を見極めろ」ということです。
良い業者と悪い業者を見分ける目を持っていただければ、不動産取引は怖いものではありません。むしろ、人生で最大のお買い物・お売り物を、安心してお任せできます。
まとめ
もう一度、結論を申し上げます。危険な営業フレーズは7つあります。
- 「今が売り時です」
- 「弊社なら他社より高く売れます」
- 「ちょうど今、興味を持っている買主様がいまして」
- 「専任媒介がいちばんお得ですよ」
- 「市場の反応が悪いので、少し値下げを」
- 「最悪、弊社で買い取りますので」
- 「この物件はお買い得です、すぐに決まりますよ」
このどれかを言われたら、即決しない。一度持ち帰る。これだけ守っていただければ、大きな失敗はしません。
50年やってきて分かったことがあります。良い不動産屋というのは、「お客様の決断を急かさない」業者です。
最後に、これだけは申し上げたい
私は50年、神戸市北区・西宮北部・三田で不動産屋をやってきました。
その中で、お客様から「他社でこう言われたんですが、本当ですか」と相談を受けることが、本当に多いのです。
私は、聞かれた質問には、業界の裏側も含めて全部正直にお答えします。なぜなら、それがお客様にとっての一番の利益だと信じているからです。
「査定だけしてほしい」、「他社の営業トークが気になる」、「セカンドオピニオンが欲しい」、こういうご相談、すべて無料でお受けしています。
営業トークに迷われたとき、契約を急かされて不安なとき、まずは一度ご相談ください。冷静な目線で、ご状況を一緒に整理させていただきます。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


