カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/14 07:42
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、不動産を売ろうとされる方が最初に必ずぶつかる分かれ道、「仲介で売るのか、買取で売るのか」というお話をします。
最近、テレビでもチラシでも、「最短3日で現金化」「即金買取」という言葉をよく見ます。
便利そうに見えますね。けれど、ここで一歩立ち止まってください。
これは断言できます。買取と仲介は、まったく別の取引です。同じ家を売るのに、手取り額が500万円、1,000万円違うことがあります。
結論から申し上げます
基本は「仲介」です。買取はあくまで例外的な選択肢です。
なぜなら、買取は仲介よりも、ほぼ間違いなく安くなるからです。
相場、スピード、手間。
この3つのバランスで選ぶことになりますが、私の経験では9割の方は仲介を選んだほうが手取りが多くなります。
ただし、残り1割の方には、買取が正解の場合があります。ここを見極めるのが、本来の不動産屋の仕事です。「とりあえず買取で」と言う業者にも、「絶対に仲介で」と言う業者にも、騙されないでください。
1. そもそも「仲介」と「買取」は何が違うのか
まず、ここを正確にお伝えしておきます。
仲介は、不動産屋が買い手を探してくる仕事です。買い手は一般の方、つまり「自分が住むためにあなたの家を買いたい」と思っているご家族です。
不動産屋は仲介手数料(売却価格の約3%+6万円+消費税)を受け取って、契約を成立させるのが仕事です。
買取は、不動産屋自身、あるいは買取専門の業者が、あなたから直接買い取る取引です。買い手は、業者そのものです。
買い取った後、業者はリフォームをして、別の買い手に転売して利益を出します。
ここが一番大事です。業者は転売して利益を出す前提で買うので、必ず「安く買う」必要があります。これが「買取は仲介より安くなる」最大の理由です。
2. 買取は相場の6〜7割。これはほぼ法則です
業界の本音で申し上げます。買取価格は、ほとんどの場合、市場相場の60〜70%です。一般的な売却価格が3,000万円の家なら、買取だと1,800万円から2,100万円になります。
「えっ、そんなに違うんですか」と驚かれる方が多いのですが、本当です。なぜそうなるか。買取業者の頭の中はこうです。
- 相場3,000万円の家を、1,800万円で買う
- リフォームに300万円かける
- 総コスト2,100万円
- 転売価格2,800万円で売り出す
- 利益700万円
こういう計算が成り立たないと、業者は買いません。これは業者を悪く言っているのではなく、商売としてそうなる、という話です。お肉屋さんが原価より高く売るのと同じです。
だから「即金で買い取ります」と言われたら、必ず「相場の2〜3割引で売っている」と思ってください。
3. 「すぐ売れる」のはどっちか
スピードについてもはっきり申し上げます。買取は、たしかに早いです。査定から1〜2週間、早ければ3日で現金化できます。これは事実です。
一方、仲介はだいたい3〜6ヶ月です。買い手を探して、内覧を受けて、価格交渉をして、契約をして、住宅ローンの審査を待って、決済。この流れに3ヶ月から半年かかります。
ですから、こういう方には買取が向きます。
- 相続税の納付期限が迫っている
- 転勤や離婚で来月までに現金が必要
- 築年数が古すぎる、または事故物件で買い手が絶対つかない
- 近隣にどうしても知られたくない事情がある
逆に、「とくに急がない」「半年は待てる」という方は、間違いなく仲介です。500万円、1,000万円の差が、たった3ヶ月の我慢で取り戻せます。
4. 業界の裏側をお話しします
ここからは50年見てきた裏側の話です。不動産会社の中には、「査定」と称して呼んで、最初から買取に持ち込もうとするところがあります。
手口はこうです。まず仲介として査定を出します。「3,000万円で売れそうです」と言って媒介契約を結ぶ。そして2週間、3週間と「反応がありません」「問い合わせが少ないです」と続けます。
そのうちに、こう切り出してきます。
「実はうちの関連会社が、2,000万円なら今すぐ買い取れると言っています」
「もう少し下げて売り出すよりも、確実な買取で手を打ちませんか」
これは50年で何度も見てきました。業界では「買取転がし」と呼ぶ手法です。最初から買取目的で預かっていて、媒介契約は時間を稼ぐための入り口だったのです。
売主さんは、3週間引っ張られて精神的に疲れています。「2,000万円で確実」と言われると、つい首を縦に振ってしまいます。そして業者は、リフォームして2,800万円で他の買い手に転売します。差額の800万円が業者の取り分です。
はっきり申し上げます。最初から「買取専門会社」を名乗っているところは、まだ正直です。お互い前提が分かっていますから。
危ないのは「仲介もやります、買取もやります、どっちでもいいですよ」と言ってくる会社です。ここはお客さんを買取に誘導することで利益を出している可能性が高い。注意してください。
5. 仲介にもデメリットはあります
正直に申し上げます。仲介がいいことばかりではありません。私は売主さんの味方ですが、仲介の弱点も隠さずお伝えします。
- 時間がかかる。3〜6ヶ月は普通です
- 不特定多数の方に内覧されます。土足で家中を見られます
- 価格交渉が入ります。3,000万円で出して、2,800万円に下がることはよくあります
- 住宅ローン特約で、契約後にキャンセルになることもあります
- 近隣に「売り出し中」と知られます。チラシも入りますし、ネットにも載ります
- 仲介手数料が必要です。3,000万円の家なら約100万円
これらが嫌だ、耐えられない、という方には、買取という選択肢が出てきます。ですから一概に「仲介がいい」「買取が悪い」とは言えないのです。
実例:藤原台のAさんの話
藤原台にお住まいだった、Aさんのお話をします。当時72歳の男性で、奥様を亡くされて、お一人暮らしになられた方でした。築35年、土地55坪のご自宅を売って、息子さんご家族の近くの大阪に移りたいというご相談でした。
Aさんは最初、駅前のチラシで見た「即金買取専門会社」にお願いされました。査定金額は1,750万円でした。
「これで決めようと思うんですが、あきちゃんどう思いますか」とご相談に来られました。私は正直に申し上げました。
「Aさんのお家は、藤原台のいいエリアで、土地も広い。仲介で出せば、2,600万円から2,800万円は固いと思います。築35年は確かに古いですが、買主さんが自分でリフォームする前提で買う方は珍しくありません」
Aさんは、半年待つことを決められました。媒介契約を結んで、2,700万円で売り出しました。3ヶ月で買い手がついて、最終的に2,580万円で成約しました。
買取業者の1,750万円との差額は830万円です。
Aさんは「あの時、あきちゃんに相談しなかったら、830万円損していたんですね」とおっしゃいました。それは私の手柄ではありません。仲介と買取の仕組みを知っていれば、誰でも分かる話なのです。
実例:三田のCさんの話
もう一つ、逆のケースもお話しします。三田にお住まいだった、Cさん。当時58歳の女性。ご両親から相続された築50年の戸建てを売却したいというご相談でした。
立地は駅から徒歩25分、バス停からも遠い。建物は老朽化が激しく、雨漏りも床の傾きもあった。相続から3年が迫っていて、特例の期限もありました。
私は仲介で査定しました。1,200万円。ただし、この物件は「買い手が現れるまで1年以上かかる可能性が高い」と正直に申し上げました。更地にすれば売りやすくなりますが、解体費に200万円かかります。
別の買取業者の査定は950万円でした。差は250万円ですが、買取なら3週間で現金化できます。相続税の納付、特例期限、Cさんが体調を崩されていたこと。これらを総合して、私は「Cさんの場合は買取のほうがいい」と申し上げました。
Cさんは950万円で買取に応じられました。仲介で粘っていたら、たしかに1,200万円になったかもしれません。けれど、その間に体調を崩されていたかもしれない。特例期限を逃して、500万円の控除が消えていたかもしれない。買取が正解の場合も、確かにあるのです。
6. どっちを選ぶか、判断の物差し
50年やってきて分かったことがあります。判断は、この3つの物差しで決まります。
- 時間に余裕があるか。半年待てるなら仲介。今月中ならほぼ買取しかない
- 家の状態と立地。普通の家、普通の立地なら仲介で買い手がつく。立地が極端に悪い、または建物がボロボロなら買取も視野に
- 売主さんのご事情。健康、相続期限、近隣事情、こういう要素で買取が正解の場合もある
この3つを総合して、初めて「あなたの場合はどちらか」が決まります。「みんな仲介がいい」「みんな買取がいい」という答えはありません。
まとめ
はっきり申し上げます。買取は仲介より、ほぼ間違いなく安いです。500万円、1,000万円という差は普通に出ます。
けれど、買取が悪いわけではありません。時間がない方、特殊な事情がある方、買い手のつかない物件、こういう場合には買取が救いになります。
危ないのは、本当は仲介で売れるのに、業者の都合で買取に誘導される場合です。「2週間で反応がありません、買取にしませんか」と言ってきたら、必ず一度立ち止まって、別の不動産屋にも相談してください。
これは覚えておいてください。一度買取で売ったら、もう取り返せません。50年やってきて分かったのは、後悔されるのは、ほとんどが「急いで買取で売ってしまった」方なのです。
最後に、これだけは申し上げたい
ご自宅、相続されたご実家、空き家になっているご親族のお家。仲介がいいのか、買取がいいのか、迷われたら、まず一度ご相談ください。
私はその場で「仲介ならいくら、買取ならいくら、あなたの場合はどっちが向いている」と、両方お話しします。ときには、「今は売らずに賃貸で持っておいたほうがいい」と申し上げることもあります。
売主さんの事情を聞かずに「とりあえず買取です」と言う業者からは、距離を取ってください。判断する前に、必ず別の意見を聞いてください。それだけで、何百万円も変わります。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


