カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/05/20 07:01
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、新聞の折り込みや郵便受けに入ってくる、あの不動産チラシの話をします。「なぜチラシの価格は信用できないのか」というテーマです。
私のところに相談に来られる方の多くが、こうおっしゃいます。「先生、チラシでこんな値段の家がありましたよ」「うちの近くで2,000万円の戸建てが出てます」と。
私はそのチラシを受け取って、にこっと笑って、こう言います。「それ、今もう無いと思いますよ」と。
ここで一歩、立ち止まってください。なぜ、いつも私が「無いと思いますよ」と言えるのか。それは、チラシの仕組みを50年間、内側から見てきたからです。
結論から申し上げます
チラシに載っている価格は、「その家の本当の値段」ではありません。「あなたに電話をかけさせるための値段」です。
これは断言できます。チラシの本当の目的は、家を売ることではなく、問い合わせを取ることなのです。
50年やってきて分かったことがあります。この仕組みを知らずにチラシを見ると、まず損をします。逆に、この仕組みを知っていれば、チラシは「業者の本性を見抜く道具」に変わります。
今日は、チラシの値段がなぜ信じられないのか、その理由を四つにしぼって、正直にお話しします。
1. 釣り広告は、わざと安く見せています
まず、これが一番大きな話です。
業界の言葉で「釣り広告」「おとり広告」というものがあります。本当はもう売れている、あるいは最初から存在しない物件を、相場より安い値段で載せておくのです。
なぜそんなことをするのか。理由は単純です。電話をかけさせるためです。
「藤原台南町・3LDK・2,180万円」と書いてあれば、近所の人はびっくりします。「そんなに安いの」と。そして電話をします。
電話を取った担当者は、申し訳なさそうな声で、こう言うのです。「あ、すみません、その物件、つい先ほどお申し込みが入ってしまいまして」と。
そして、続けてこう言います。「ですが、その代わりと言ってはなんですが、もっと条件のいい物件がございまして」と。
これが、釣り広告の正体です。安い値段を撒き餌にして、別の物件にスライドさせる。本当に「2,180万円のマンション」を売る気はなかったのです。
今は宅建業法でおとり広告は禁止されていますが、現実にはなくなっていません。「広告を出したあとに売れたんですよ」と言われたら、こちらは確かめようがないからです。
2. もう売れた物件を、わざと載せ続けます
これも、よくある話です。
ある業者が、ある中古マンションを「2,480万円」で広告に出します。本当はもう契約済みです。なのに、3週間、4週間、ずっとチラシに載せ続ける。
なぜか。これも、問い合わせ集めのためです。
「2,480万円なら、私の予算でも届くかも」と思った人が電話をします。その瞬間、業者の勝ちです。
「申し訳ありません、それは決まってしまいました。ですが、お客様のご希望に近い物件、ほかにもありますよ。一度ご来店いただけませんか」となる。
来店してしまえば、もう向こうのペースです。担当者は、本当はもっと高い物件、あるいは利益率の高い物件を、あの手この手で勧めてきます。
「2,480万円のチラシ」は、あなたを店に呼び込むためだけに、印刷されていたわけです。
3. 「価格応相談」「未公開物件」のからくり
チラシを見ていると、こういう言葉が並んでいます。
- 価格応相談
- 価格は売主にお問い合わせください
- 未公開物件
- 会員限定情報
- 当社専属物件
きれいに聞こえる言葉ですが、これも50年見てきた目から言わせてもらうと、たいていは問い合わせを取るための工夫です。
「未公開物件」と書いてあると、人は「自分だけが教えてもらえる、お得な情報」と感じます。けれど、本当に未公開なら、そもそもチラシに載りません。ばらまかれた時点で、もう公開されているのです。
「価格応相談」も同じです。値段を伏せれば、興味を持った人は必ず聞きに来ます。電話番号を聞き出すための、いい仕掛けなのです。
はっきり申し上げます。値段を堂々と書けない物件は、何かしら裏があると思ってください。相場より高すぎるか、訳ありか、あるいは本当には存在しないか。
4. 表示価格と、実際に売れる価格はそもそも違います
これは買う側だけでなく、売る側にも関わる大事な話です。
不動産には、三つの値段があります。
- 査定価格(業者が出す予想)
- 売出価格(実際にチラシや広告に載る値段)
- 成約価格(最終的に売買された値段)
この三つは、たいてい同じになりません。
たとえば、相場2,500万円の家を、業者の査定では2,600万円と出ることがあります。売主に喜んでもらうためです。
それを、売出価格として2,800万円でチラシに載せる。広告を派手にするためです。
最後に、実際に売れる値段は2,400万円。これが成約価格です。
チラシに載っている「2,800万円」は、誰の値段でもない、ただの「広告用の値段」です。それを信じて「相場は2,800万円なんだ」と思い込むと、判断が完全に狂います。
業界の裏側を少し明かします
ここからは、聞きたくないかもしれない話です。けれど、知っておかないと損をしますから、はっきり書きます。
不動産屋にとって、いちばん大事な仕事は「物件を売ること」ではありません。「お客さんのリストを作ること」です。
なぜか。一度問い合わせて来た人は、その瞬間に「家を買いたい人」「家を売りたい人」のリストに入ります。あとは、半年でも一年でも、追いかければいい。
だから、チラシの値段は、本当はどうでもいいのです。電話さえもらえれば、値段の話は後でいくらでも調整できる。むしろ、最初に出した安い値段で売れてしまっては、業者としては困るのです。手数料が少ないからです。
もう一つ、お話しします。チラシを撒く費用は、誰が払っているか。たいていは売主です。「広告料」「販促費」という名前で、媒介契約の中で売主に負担を求める業者があります。
つまり、あなたの家を派手に広告するふりをして、その費用はあなたが払い、しかも問い合わせを集めるだけ集めて、別の物件に流す。こういうことが、現実に起きています。
実際にあった話を一つ
藤原台に住むBさんご夫婦(59歳・会社員のご主人と58歳の奥様)の話です。
ご夫婦は、定年後に山の手の戸建てを売って、駅前のマンションに住み替えたいと考えていました。
ある日、ポストに入っていたチラシに、こうありました。「藤原台中町・3LDK・2,280万円・駅徒歩7分」。
Bさんご夫婦は、すぐに電話されました。返事はこうでした。「申し訳ありません、それは昨日決まってしまいまして」と。続けて、「ご希望に近い物件がございます。一度ご来店いただけませんか」と言われた。
来店すると、出てきた物件は「2,980万円」「3,250万円」のものばかり。「あの2,280万円のような物件は、もう出てきません」と繰り返し言われた。
Bさんは、私のところに相談に来られて、こうおっしゃいました。「あの2,280万円の物件、本当にあったんでしょうか」と。
私は正直にお答えしました。「あったかもしれないし、最初から無かったかもしれない。けれどはっきりしているのは、その業者はあなたに最初の値段で家を売る気はなかった、ということです」と。
結局、Bさんは別ルートで2,450万円のマンションを見つけ、無事に住み替えを終えました。けれどあのとき、もしチラシの値段を信じて、急いで来店していたら、3,000万円の物件を「これしかない」と思って買わされていたかもしれません。
デメリットも正直に書きます
ここまで「チラシは信用できない」と申し上げてきましたが、チラシそのものが悪だとは申しません。
きちんと値段を出している良心的な業者もあります。地元の物件を本気で売ろうとして、丁寧なチラシを撒く業者もあります。
けれど、こちらが素人だと、見分けがつきません。だからこそ、「値段だけで動かない」という心構えが必要なのです。
それと、もう一つ正直に申し上げます。私たち地元の業者は、派手な全国チラシのような広告は撒けません。費用が違いすぎますから。だから、こういう情報発信や、口コミでつながっていくしか道がない。これは、私たち地元業者の弱みでもあります。
ですから、ぜひ覚えておいてください。チラシが派手で値段が魅力的なほど、その裏には誰かが払った広告費と、誰かを電話に出させたい狙いがある、ということを。
まとめます
もう一度、結論を繰り返します。
チラシの値段は、その家の値段ではありません。あなたに電話をかけさせるための値段です。
50年やってきて分かったことがあります。チラシを見て心が動いたときこそ、深呼吸が必要です。
電話をかける前に、こう自分に問いかけてください。
- この値段、本当に売る気のある値段だろうか
- 電話したあと、別の物件を勧められないだろうか
- この業者は、地元のことを本当に知っているだろうか
この三つを思い出すだけで、損をする確率はぐっと下がります。
最後に、これだけは申し上げたい
私は、派手なチラシは撒きません。撒けません。50年、神戸市北区・西宮北部・三田の地元で、相続や売却、住み替えのご相談に、一軒ずつ向き合ってきました。
チラシの値段で迷ったとき、業者の言い分が信じられないとき、契約の前にもう一度立ち止まりたいとき、どうぞ気軽にお声がけください。値段の話ではなく、まずあなたの状況をうかがいます。そのうえで、本当にその値段が妥当か、その業者が信用できるか、損のない方向を一緒に考えます。
お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも、構いません。50年の現場が、あなたの判断のお手伝いになるなら、私にとってこれほど嬉しいことはありません。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


