カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/09/15 06:48
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、北区で本当によくいただくご相談、築40年の家を「直すか、壊すか」についてお話しします。
北区の住宅地の多くは、昭和50年代から60年代にかけて一気に建ちました。鈴蘭台、北鈴蘭台、山の街、有野台、藤原台の古い区画。あのころ30代で家を建てた方が、いま70代です。家も一緒に40年を迎えています。
「屋根屋さんに、もう葺き替えな駄目やと言われました」
「息子が、どうせなら建て替えたらと言うんです」
「リフォーム会社と住宅会社で、言うことが真逆なんです」
こういうご相談が、毎月のように来ます。今日は、費用対効果で判断するための具体的な物差しを申し上げます。
結論から申し上げます
築40年の家は、壊すより直した方が得になることの方が多いです。
ただし、次の3つのどれかに当てはまったら、話は変わります。
- 基礎や柱など、構造に大きな傷みがある
- 直す費用が、建て替え費用の6割を超える
- その家に、あと25年以上住むつもりがある
この3つに当てはまらないなら、まず「直す」で考えてください。
そしてもうひとつ。売るつもりの家なら、自分で壊す前に必ず相談してください。
はっきり申し上げます。北区では、慌てて壊して損をした方を、私は何人も見てきました。
1. まず、築40年という年がどういう年か
2026年から40年さかのぼると、昭和61年、1986年です。
ここが大事なところで、昭和56年6月に建築基準法の耐震基準が大きく変わっています。いわゆる新耐震基準です。築40年の家は、ぎりぎりこの新耐震で建てられています。
つまり、「築40年だから地震で潰れる」とひとくくりにはできません。昭和56年5月以前の旧耐震の家とは、そもそもの前提が違います。
ただし、木造住宅の場合は平成12年にもう一度基準が見直されていて、柱の抜けを防ぐ金物や、壁の配置のバランスが厳しくなりました。築40年の家はその前ですから、今の基準から見ると弱いところはあります。
阪神淡路大震災を北区で経験した家も多い。見た目は何ともなくても、あのときに少し傾いた家、基礎にひびが入った家は珍しくありません。
ですから、まずは耐震診断を受けてください。神戸市にも耐震診断や改修の補助制度があります。条件や金額は年度で変わりますので、区役所か市の窓口で確認してから進めてください。
2. 直すと、いくらかかるのか
北区の築40年、延床30坪くらいの木造2階建てで、私が実際に見てきた金額の幅を申し上げます。
- 屋根の葺き替え:150万円から250万円
- 外壁の塗装や張り替え:100万円から200万円
- キッチン、お風呂、トイレ、洗面の水回り一式:300万円から450万円
- 床下の給水管と排水管のやり替え:50万円から120万円
- 耐震補強:100万円から250万円
北区は冬に冷えますし、山の風も強いので、瓦のずれや下地の傷みが平地より進んでいることが多いです。
全部やれば700万円から1,200万円。間取りまで変える全面改装になると1,500万円から2,000万円です。
一方、壊して建て替える場合。
解体費が、北区の30坪の木造で150万円から220万円。北区は道が狭くて坂が多いので、大きな重機が入らない現場だと手壊しの分だけ上がります。
建物本体が、今の建築費で坪80万円から100万円として2,400万円から3,000万円。これに設計費、登記、仮住まい、引っ越し2回分が乗って、ざっと3,000万円から3,500万円です。
数字だけ並べると、直す方が安いのは当たり前です。問題は、直したあと何年もつか、なんです。
3. 判断の物差しは「1年あたりいくらか」
50年やってきて分かったことがあります。直すか壊すかで迷っている方は、たいてい総額だけを見ています。見るべきは、1年あたりの金額です。
たとえば、500万円かけて直して、あと15年住む。これなら1年あたり約33万円、月にすると2万8千円くらいです。
3,200万円で建て替えて、あと15年しか住まない。これは1年あたり約213万円です。
同じ3,200万円でも、30歳の息子さん一家がこの先40年住むなら、1年あたり80万円になります。
ですから、私はご相談を受けたら最初に必ずこう聞きます。
「この家に、あと何年、どなたが住まれますか」
70代のご夫婦がお二人で住む。15年から20年。それなら、直すです。
息子さん家族が戻ってきて、二世帯で長く住む。それなら、建て替えを真剣に考える価値があります。
誰も住まない。いずれ売る。それなら、直しても壊してもいけません。まずそのままの状態で相場を見るのが先です。
4. 壊してはいけない家があります
これは覚えておいてください。北区には、壊したら二度と同じ家が建たない土地があります。
- 前の道路の幅が4mない
- 敷地が道路に2m以上接していない
- 古い擁壁の上に建っている
- 市街化調整区域の中にある
こういう土地は、建て替えのときに今の法律が全部かかってきます。
道が狭ければ、敷地を後ろに下げなければいけない。これを「セットバック」と言います。30坪あった土地が、実際に建てられるのは26坪、ということが起こります。
接道が足りなければ、そもそも建築の許可が下りない。いわゆる「再建築不可」です。
そして北区で一番多いのが、擁壁の問題です。昭和の造成地の古い石積みや空積みの擁壁は、今の基準を満たしていないことが多い。建て替えで建築確認を出すと、擁壁のやり替えを求められることがあります。これが数百万円かかります。
こういう土地の家は、壊した瞬間に価値が大きく下がります。直して使い続けるしかない家も、世の中にはあるんです。
5. 鈴蘭台のBさんと、有野のCさんご夫婦の話
鈴蘭台のBさん
Bさんは71歳の女性です。3年前にご主人を亡くされて、築41年の家にお一人で住まれていました。息子さんは大阪にお住まいです。
雨漏りがして屋根屋さんを呼んだところ、リフォーム会社を紹介されて、出てきた見積もりが全面改装で1,280万円。お風呂もキッチンも間取りも全部やり直す内容でした。
一方で、息子さんが住宅展示場で話を聞いてきて、「平屋に建て替えたら3,100万円やって」。Bさんが困り果てて、私のところに来られました。
家を見せていただくと、基礎にひびはなく、床下も乾いていて、シロアリの跡もない。傷んでいたのは屋根と水回りだけでした。
Bさんに「あと何年、ここに住まれますか」と伺うと、「足が動くうちは、ここにおりたい。15年くらいでしょうか」。
そこで、屋根の葺き替え、お風呂とトイレの交換、廊下と階段の手すり、玄関の段差解消。これだけに絞りました。最終的に468万円。神戸市の耐震診断も受けて、補強が必要な壁だけ手を入れました。
1,280万円との差は812万円です。Bさんはその分を、老後の施設費用に取っておかれました。
「全部きれいにせなあかんと思い込んでました」と、Bさんはおっしゃいました。
有野のCさんご夫婦
Cさんご夫婦は、ご主人が58歳、奥様が55歳。有野にある奥様のご実家、築43年の家を相続されました。住む予定はなく、売ることに決めておられました。
ある業者さんから「古家があると売れにくいから、更地にしましょう」と言われて、解体されたんです。費用は186万円。更地にしてから、私のところに相談に来られました。
ところが調べてみると、この土地は昔の空積みの擁壁の上にありました。新しく家を建てるには、擁壁のやり替えが必要になる可能性が高い。見積もりを取ると620万円でした。
買主さんはそれを見て、値段を下げてほしいと言います。家があった頃なら、「今の家をそのまま直して住む」という買い方もできたのに、更地になったことでその道がなくなってしまった。
さらに、家を壊すと土地の固定資産税の軽減がなくなります。Cさんの場合、年に3万4千円だった土地の固定資産税と都市計画税が、翌年から11万円を超えました。
結局、売れるまでに1年8か月。売値は当初の見込みから350万円下がりました。解体費と、上がった税金と、値下がり分。合わせると、Cさんご夫婦は壊したことで600万円近く損をされた計算になります。
これは断言できます。売るつもりの家は、自分の判断で先に壊さないでください。
6. 業界の裏側を申し上げます
直すか壊すかの相談で、なぜ答えが人によって真逆になるのか。理由は簡単です。
相談した相手の商売で、答えが決まっています
リフォーム会社は、直す提案をします。住宅会社は、建て替えの提案をします。解体業者は、壊しましょうと言います。買取業者は、「この家は価値ゼロです、解体費を引いておきます」と言います。
誰も嘘をついているわけではありません。ただ、自分の売り物に合わせた答えを出しているだけです。ですから、ひとつの会社の話だけで決めないでください。
「全部やらないと意味がない」は、たいてい営業トークです
リフォームの見積もりは、項目を足していくほど会社の利益が増えます。「どうせ足場を組むなら外壁も」「どうせ床を剥がすなら断熱も」「どうせなら間取りも」。
ひとつひとつは筋が通っているように聞こえます。でも、あと15年住む家に、40年もつ工事をする必要はありません。
無料の屋根点検は、まず疑ってください
北区は古い住宅地が多いので、訪問の屋根点検が本当によく回ってきます。「近くで工事をしていたら、お宅の瓦がずれているのが見えまして」。この話から始まって、屋根に上がって写真を撮って、傷んでいると言う。中には、自分でずらして写真を撮る業者もいます。
屋根の工事は、ご自分で探した地元の業者に、別で見てもらってから決めてください。
「更地の方が売れやすい」は、半分だけ本当です
更地の方が、見た目がすっきりして買主さんの目に留まりやすいのは確かです。ただ、北区の古い住宅地では、「中古の家を安く買って、自分で直して住みたい」という若いご家族も増えています。更地にすると、その買主さんを全部逃がします。
壊すかどうかを決める前に、擁壁と接道と境界を調べる。これをやらずに「とりあえず更地に」と勧める業者は、正直に言って、土地のことをよく分かっていないか、解体の紹介料が目当てか、どちらかです。
7. デメリットもきちんと申し上げます
直すにも、壊すにも、マイナス面があります。
直すことのデメリット
見えないところは、直せないことがあります。壁の中の柱の傷み、床下の配管、断熱材が入っていないこと。表面をきれいにしても、冬の寒さや結露は残ります。北区の冬は、市街地より2度も3度も低い。この寒さを我慢できるかどうかは、実際に住む方の体の問題です。
直しても、築年数は40年のままです。将来売るとき、500万円かけた分がそのまま値段に乗るわけではありません。買主さんから見れば、やはり「築40年の家」です。
リフォームのローンは、住宅ローンより金利が高く、借りられる期間も短いことが多い。70代の方だと、そもそも組めないこともあります。
壊すことのデメリット
お金がかかります。建築費はこの5年で2割から3割上がりました。昔の感覚の「建て替えなら2,000万円」は、もう通用しません。
先ほど申し上げたとおり、建て替えのときに今の法律がかかって、同じ大きさの家が建たないことがあります。
家を壊すと、土地の固定資産税の軽減がなくなります。建て替えの工事中は住宅があるものとして扱われることが多いですが、壊したまま何年も置いておくと、税金は3倍から4倍になります。
そして、住み慣れた家がなくなるという気持ちの問題です。70代、80代の方が仮住まいを経験して、そのあと体調を崩される。これは本当に多いんです。数字には出てきませんが、私は一番大きなデメリットだと思っています。
もうひとつ、相続の特例について
亡くなった親の家を売るときに、条件を満たせば譲渡所得から3,000万円を差し引ける「空き家の特例」があります。
ただしこの特例は、昭和56年5月31日以前に建てられた家が対象です。築40年の家は、原則として対象外です。「3,000万円控除があるから壊して売れば得」と言われても、まず建築年を確認してください。
まとめ
今日申し上げたことを、もう一度整理します。
- 築40年の家は、壊すより直した方が得になることの方が多い
- 構造の傷み、直す費用が建て替えの6割超、あと25年以上住む。どれかに当てはまれば建て替えを考える
- 総額ではなく、1年あたりいくらかで比べる
- 接道、擁壁、市街化調整区域。壊したら同じ家が建たない土地がある
- 相談した相手の商売で答えが変わる
- 売るつもりの家は、自分の判断で先に壊さない
50年やってきて分かったことがあります。家で損をする方は、判断を間違えたのではありません。判断する前に、誰かの答えを聞いてしまったんです。
直すか壊すか。その前に、あと何年、誰が住むのか。そこから考えれば、答えは自然に出てきます。
最後に、これだけは申し上げたい
リフォームの契約書にも、解体の契約書にも、ハンコを押す前に一度私に家を見せてください。
基礎と床下と屋根の状態、土地の接道と擁壁、それから今のままで売ったらいくらになるか。この3つが分かれば、直すか壊すか売るかは、だいたい見当がつきます。
私はリフォームも解体もいたしません。ですから、どちらを勧めても私の得にはなりません。そのぶん、正直に申し上げられます。
費用はいただきません。「うちの家、どうしたらええやろ」と、それだけ聞いていただければ結構です。
北区の古い住宅地は、私が50年歩いてきた町です。どうぞ気軽にお声がけください。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


