カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/08/28 06:38
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、私が50年この仕事をやってきた中ではっきり見えてきたバス便の家を買う前に必ず確認することについてお話しします。
神戸市北区は、バスに乗らないと駅に出られない場所がたくさんあります。唐櫃も、大池の奥も、有野台も、藤原台の一部も、そして淡河や大沢はもっとです。
「駅から徒歩圏がいいに決まっている」
そう思って読み始めた方も多いと思います。でも私は、バス便の家を全部ダメだとは申しません。バス便でも幸せに20年住んで、ちゃんと売れていったご家族を何組も見てきました。
問題は、バス便を「調べずに」買う人が多すぎることです。
結論から申し上げます
バス便の家は、今の便利さで買ってはいけません。10年後、20年後の本数で買ってください。
確認するのは3つだけです。
- 昼間と日曜の本数
- 終バスの時刻
- 過去10年で何便減ったか
この3つを調べずにバス便の家を買った人が、5年後に「こんなはずじゃなかった」と私のところへ相談に来られます。これは断言できます。逆に、この3つを調べて納得して買った方は、まず後悔されません。
以下、ひとつずつお話しします。
1. 「バス10分」の10分に、待ち時間は入っていません
物件のチラシに「〇〇駅 バス10分 バス停より徒歩5分」と書いてあります。合計15分。駅徒歩15分の家と同じような気がしてしまう。
違います。
バスの所要時間は、時刻表に書いてある「乗ってから降りるまで」の分数です。バス停で待つ時間は一切入っていません。
1時間に4本あるバス停なら、平均の待ち時間は7分半です。1時間に2本なら15分です。1時間に1本なら、下手をすると30分立って待つことになります。
つまり「バス10分・徒歩5分」の家は、実際には駅から25分から45分かかる家だということです。
それだけではありません。
バスは道路を走ります。朝の渋滞、雨の日、事故、雪。北区は坂と山です。冬に一度雪が降れば、バスは平気で20分遅れます。
私はこれを50年見てきました。「バス10分」の10分が10分だった日のほうが少ないのです。
2. 見るべきは平日の朝ではなく、日曜の昼と平日の夜です
ここが一番大事です。よく聞いてください。
内見に行くのは、たいてい土日の昼間です。そして時刻表を見るときも、なんとなく朝の欄を見て「7時台に5本もある、便利だな」と安心してしまう。
朝の本数は、あてになりません。
バス会社は通勤通学の時間帯にだけ便を集中させます。7時台に5本あるバス停でも、10時台は1本、13時台は1本、20時台は1本、ということがざらにあります。
考えてみてください。あなたの家族が実際にバスを使う場面はどこですか。
- 奥さんが平日の昼間に買い物に出る
- お子さんが土曜日に塾へ行く
- あなたが金曜の夜に飲んで帰ってくる
- 親御さんが平日の午後に病院へ行く
朝の通勤ラッシュ以外の時間のほうが、圧倒的に多いのです。
だから時刻表は、この4つの欄だけ見てください。
- 平日の11時台から14時台
- 平日の21時台以降
- 土曜の昼間
- 日曜・祝日の昼間
私が北区のある団地のバス停を実際に調べたときは、平日朝7時台が6本あるのに、日曜の13時台は1本でした。しかも12時台はゼロ。1時間半に1本の計算です。
それでも住めます。住めますが、それを「知って」買うのと「知らずに」買うのとでは、5年後の気持ちがまったく違います。
3. 終バスの時刻は、家族の生活を決めます
次は終バスです。これを見ない人が、本当に多い。
北区の団地のバス停は、終バスが21時台で終わるところが珍しくありません。22時台まであれば、まだいいほうです。
終バスが21時40分の家に住むと、どうなるか。
三宮で飲み会があったら、20時半には店を出ないといけません。乗り遅れたら、駅からタクシーです。神鉄の駅からその団地まで、タクシーで1,500円から2,500円かかります。
月に4回タクシーを使えば、年間で10万円前後です。10年で100万円。これは家の値段には出てきませんが、確実に出ていくお金です。
お子さんが高校生になったときはもっと切実です。
部活で遅くなる。塾が21時に終わる。そのたびに、あなたか奥さんが駅まで車で迎えに行くことになります。私のお客さんで、高校3年間、ほぼ毎晩駅まで迎えに行かれたお父さんがいました。「あれで3年分の夜が消えた」と笑っておられましたが、笑い話ではありません。
終バスの時刻は、必ずバス停の現物で確認してください。ネットの時刻表は、臨時ダイヤや改正が反映されていないことがあります。
ついでに「始発」も見てください。早朝に空港や新幹線を使う仕事の方は、始発が6時半だと詰みます。
4. 減便リスクは、時刻表の「過去」を見れば分かります
ここが今日いちばんお伝えしたい話です。
バス便で怖いのは、今の本数ではありません。これから減ることです。
はっきり申し上げます。北区の路線バスは、この10年でかなり減りました。そしてこれからも減ります。
理由は3つです。
ひとつ、運転士が足りていません。全国どこのバス会社も同じです。募集をかけても人が来ない。人がいなければ、便を減らすしかありません。
ふたつ、団地が高齢化しています。バスに乗って通勤していた世代が、次々と車の免許も返して家に居るようになる。乗客が減れば、赤字路線から順に切られます。
みっつ、若い世代が車社会です。夫婦で2台持っている家庭が北区には多い。バスに乗らないから、また減る。
では、どう調べるか。3つの方法があります。
ひとつ目。バス停の掲示を見てください。「〇年〇月〇日ダイヤ改正」という紙が貼ってあります。改正が頻繁にある路線は、動いている路線です。
ふたつ目。バス会社のサイトの「ダイヤ改正のお知らせ」というページがあります。過去のお知らせを2、3年分さかのぼって読んでください。「減便」「経路変更」「土日運休」という言葉が並んでいたら、要注意です。
みっつ目。これが一番確実です。バス会社に電話して聞いてください。「この系統は今後も維持されますか」と。はっきりした答えは返ってきませんが、担当者の言葉の濁し方でだいたい分かります。「今のところ予定はございません」と言われたら、まあ普通です。「そのご質問は多いんですよ」と言われたら、黄色信号です。
もうひとつ、地形も見てください。
そのバス路線の途中に、大きな団地がいくつあるか。団地が2つ3つぶら下がっている路線は、簡単には切られません。逆に、あなたの家のある一帯だけのために走っている枝線は、真っ先に減ります。
これは50年やってきて分かったことです。バス路線は、乗る人の数で決まります。感情では決まりません。
5. 実例をふたつ、お話しします
Aさん(当時42歳)は、北区の団地の中古戸建を2,180万円で買われました。神鉄の駅からバスで12分、バス停から徒歩3分。土地50坪、築22年。同じ広さで駅徒歩12分の物件が2,700万円でしたから、500万円以上安かったわけです。
内見は日曜の午後でした。ご主人は車で来られました。バスには一度も乗っていません。
住み始めて分かったことがあります。
平日の日中は1時間に1本。奥さんは免許をお持ちでなかったので、買い物のたびに1時間に1本のバスに合わせて動くことになりました。バスを1本逃すと、スーパーの前で1時間待つ。
そして5年目に、日中の便が1時間に1本から2時間に1本へ減りました。同時に土曜の便も削られました。
Aさんは軽自動車を買われました。奥さんは40代半ばで教習所に通われました。教習所代とあわせて、初期費用だけで120万円以上。維持費は年間で30万円ほどかかります。
「500万円安く買ったつもりが、10年で追いつかれた」
Aさんはそうおっしゃいました。安かったのではなく、その分の不便がお金に換算されていただけなのです。
もうひと組、Bさんご夫婦(当時38歳と36歳)の話をします。
Bさんも同じようにバス便の物件を検討されました。ただしこの方は徹底的に調べられました。
- 平日の昼、日曜の昼、平日の夜、全部の時刻表を写真に撮る
- 終バス(21時55分でした)を確認
- バス会社の過去3年のダイヤ改正を全部読む
- 平日の火曜と日曜の2回、実際に駅からバスに乗って現地へ行く
- 雨の日にもう一度乗る
その上で、Bさんはこうおっしゃいました。
「昼間が1時間に2本あるなら大丈夫。終バスも22時前ならなんとかなる。ただし車は2台持ちにします。その前提で予算を組みます」
Bさんは2,350万円でその家を買われ、駐車場2台分が取れる区画を選ばれました。そして13年住んで、去年、2,050万円で売られました。13年で300万円しか下がっていません。
なぜ売れたか。次に買った方も、同じようにバス便を承知の上で「駐車場2台」を評価してくださったからです。
調べて買った家は、売るときも説明ができます。これが大きいのです。
6. 不動産屋がバス便物件で言わないこと
ここからは業界の裏側です。正直に申し上げます。
私も含めて、不動産屋はバス便物件を売るとき、こういう言い方をします。
「バス10分ですから、駅徒歩15分と変わりませんよ」
嘘ではありません。嘘ではないけれど、待ち時間を意図的に外しています。
「朝は本数が多いので通勤は問題ありません」
これも嘘ではありません。でも聞かれていないから、日中と日曜の話をしないだけです。
「将来はイオンモールもできましたし、この辺りは伸びますよ」
商業施設と路線バスの本数には、直接の関係はありません。
もうひとつ、業界の内側の話をします。
バス便の物件は、駅近の物件に比べて売れるまでに時間がかかります。だから営業は焦ります。焦ると、いいところだけを並べます。悪いところを言って断られたら、また3か月かかるからです。
そして「値段が安い」ことを最大の武器にします。「駅前だと2,700万、ここなら2,180万です」と。安さで判断を急がせるのは、不動産屋の常套手段です。
安いのには理由があります。その理由をきちんと聞かずに「安いから」で買うと、Aさんのようになります。
もっと言いますと、査定のときもそうです。
バス便の家を売るとき、業者によって査定額が300万円くらい平気で違います。バス便は評価しにくいからです。高い査定を出してくる業者は、まず預かってから、あとで値下げを持ちかけてきます。これは本当によくある話です。
7. それでも私がバス便を全否定しない理由と、デメリット
ここまで厳しい話をしてきましたが、私はバス便の家を否定していません。
50年見てきて、バス便でよかったという家族もたくさんいらっしゃいます。
理由はこうです。
- 同じ予算で、土地が10坪から20坪広く買える
- 駐車場が2台、3台取れる
- 静かで、子育ての環境としては駅前より優れていることが多い
- 固定資産税が駅近より安いことがある(年12万円が9万円になったケースがありました)
車を2台持てる家庭で、しかも夫婦とも運転される。そういうご家庭なら、バス便はむしろ合理的な選択です。
ただし、デメリットははっきり申し上げます。
ひとつ。売るときに時間がかかります。駅徒歩圏の家が3か月で売れるとしたら、バス便は6か月から1年見てください。買い手の母数が単純に少ないのです。
ふたつ。将来、あなたが運転できなくなったときが本番です。70代後半で免許を返納したら、1時間に1本のバスが生活の全部になります。私は77歳です。この話は他人事ではありません。
みっつ。減便は止められません。あなたが何をしても、乗客が減れば便は減ります。ここだけはコントロールできないリスクです。
よっつ。お子さんが高校・大学と進むと、送り迎えの負担が一気に増えます。3年から6年、それが続きます。
これを全部飲み込んだ上で、それでも土地の広さと静かさを取る。そう決めた方は、バス便で幸せになれます。飲み込まずに値段だけで決めた方は、5年後に後悔されます。差はそこだけです。
まとめ
もう一度申し上げます。
バス便の家は、今の便利さではなく、10年後の本数で買ってください。
確認するのは3つです。
- 昼間と日曜の本数(朝の本数は見なくていい)
- 終バスと始発の時刻
- バス会社の過去3年のダイヤ改正の中身
そして必ず、平日の昼と日曜に、実際に自分でバスに乗ってください。1回では足りません。最低2回、できれば雨の日にも乗ってください。
物件は何度でも見に行けます。契約してからでは、一度も乗れません。
最後にもうひとつ。
バス便の家は「悪い家」ではありません。「調べないと危ない家」です。この違いをどうか間違えないでください。
車を2台持てて、静かな環境で広い土地に住みたい。そう考える方にとって、北区のバス便は今でも十分に良い選択肢です。
最後に、これだけは申し上げたい
バス便の物件を検討されていて、時刻表の見方が分からない、この路線が将来どうなるか不安だ、という方は、遠慮なくご相談ください。
私は北区で50年やっております。どの団地のどの系統が細くなってきているか、どの路線がしぶといか、体で覚えております。それはネットには載っていません。
物件を私のところで買っていただかなくても構いません。バス停の時刻表の写真を持ってきていただければ、正直なところを申し上げます。「これはやめておきなさい」と申し上げることもあります。
50年やってきて分かったことがあります。家で失敗する人は、値段の差を見ています。家で成功する人は、20年分の生活を見ています。
その20年を、一緒に考えさせてください。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


