カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2026/07/25 07:11
こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。
今日は、いつもと少し趣を変えてお話しします。「家を売る」と一口に言いますが、私が実際に一軒の売却で最初から最後まで何をやっているのか、その中身を全部お見せしたことは、実はあまりありません。
チラシを作って、内覧をして、契約をして、はい終わり。そう思っている方が多いのですが、現場はまったく違います。
今日お話しするのは、神戸市北区にお住まいだったBさんご夫婦(ご主人72歳・奥様69歳)の実家を売ったときの、私の作業の全記録です。査定の電話をいただいてから、鍵をお渡しして引き渡すまで、私が何をやったか。順番に、包み隠さず公開します。
長くなりますが、これを読んでおくと「今、自分の担当者が何をやっているのか」「何をやっていないのか」が分かるようになります。これは、あなたの財産を守るうえで、とても大事なことです。
結論から申し上げます
家がきちんと売れるかどうかは、売り出す前の段取りで、もう八割が決まっています。
査定、掃除、書類集め、価格の決め方、写真、売り出しのタイミング。この地味な準備をどれだけ丁寧にやったかで、最後に手元に残るお金が「200万円」変わることも珍しくありません。派手な広告よりも、この地味な下ごしらえのほうが、はるかに効きます。
50年やってきて分かったことがあります。売却で得をする人は、売り出す前を大事にしています。損をする人は、売り出してからあわてています。
1. まず私がやったのは「現地に3回行くこと」
Bさんから最初の電話をいただいたのは、去年の春でした。「親の家を売りたいんですが、いくらになりますか」
このとき、電話口だけで「だいたい2,500万円くらいですね」と答える不動産屋がいます。はっきり申し上げます。それは、まともな査定ではありません。
私はまず、現地に行きました。それも1回ではなく、3回行っています。
- 1回目は昼間。日当たり、道路の広さ、車の通り、隣家との距離を見る
- 2回目は夕方。人通り、下校時間、駅までの人の流れ、街灯の位置を見る
- 3回目は雨の日。水はけ、道路の水たまり、家に回った湿気を見る
雨のときにしか分からないことがあります。Bさんの家は、雨の日に裏の擁壁から少し水がしみていました。これを事前につかんでいたから、あとで買主さんに正直に説明でき、契約が最後まで揉めませんでした。
現地に何度も足を運ぶ。これは断言できます。ここを省く不動産屋には、大事な家を任せてはいけません。
2. 次にやったのは「掃除と片付けの段取り」
Bさんの実家は、お母様が亡くなってから2年、誰も住んでいませんでした。家具も仏壇も、押し入れの布団もそのまま。台所には食器が残り、庭は草が伸びていました。
この状態のまま写真を撮って売り出す不動産屋がいます。私はやりません。
人が住まなくなった家は、驚くほど早く傷みます。空気が動かないので湿気がこもり、畳にカビが出て、木が反ってきます。放っておくほど、家の値打ちは下がっていきます。
私はBさんに、こうお願いしました。「全部きれいにしなくていいです。玄関と、南の部屋と、水回りだけ、私と一緒に片付けましょう」
家財を全部業者に頼むと「30万円」の見積もりでした。ここで正直な話をします。まだ使える家具や仏壇の魂抜きだけを手配し、残りはBさんご夫婦と私で3日かけて片付けました。おかげで処分費は「12万円」で済みました。
家をきれいにするのは、高く見せるためではありません。買う人に「大事にされてきた家だ」と感じてもらうためです。人は、そういう家を選びます。
3. 書類集めは、売り出しより先にやる
ここは地味ですが、抜けると後で大変なことになる部分です。私がBさんの売却で集めた書類を、全部並べます。
- 権利証(登記識別情報)
- 固定資産税の納税通知書
- 建物の図面と間取り図
- 境界を示す測量図
- 過去のリフォームの記録
このうち、Bさんの家は測量図が古く、隣との境界がはっきりしていませんでした。境界があいまいなまま売ると、あとで買主と隣の家がもめます。最悪、契約そのものが飛びます。
私はすぐに土地家屋調査士さんに連絡し、隣の家3軒に頭を下げて、境界の確認に立ち会ってもらいました。費用は「18万円」かかりましたが、これをやっておいたから、契約のときに買主さんが安心してハンコを押せました。
ここで業界の裏を申し上げます。境界があいまいなのを知っていながら、黙って売り出す不動産屋がいます。売った後に問題が出ても「それは売主と買主の話ですから」と逃げるためです。
書類は、売り出す前に全部そろえる。これをやらない不動産屋は、あなたのためではなく、自分が楽をするために動いています。
4. 価格の決め方を、全部見せます
さて、いよいよ値段です。Bさんの家は、近所の似た家が「2,700万円」で売りに出ていました。だからBさんは「うちも2,700万円で」とおっしゃいました。
私は、こう申し上げました。「そのお隣は、半年売れずに残っています。同じ値段をつけたら、うちも同じように売れ残ります」
ここが大事なところです。チラシに出ている値段は「売りたい値段」であって、「売れる値段」ではありません。売れずに残っている家の値段を参考にしてはいけません。
私が見たのは、この半年で実際に「売れた」家の値段です。北区で似た広さ、似た築年数の家が、いくらで成約したか。全部調べると、現実に売れているのは「2,450万円」から「2,550万円」の間でした。
私はBさんに「2,580万円で売り出して、2,480万円あたりで着地する作戦でいきましょう」とお話ししました。
ここで業界の裏をもう一つ。契約が欲しいために、わざと高い値段で「売れますよ」と言って預かる不動産屋がいます。これを「高預かり」と言います。高く預かって、売れないと何度も値下げさせ、結局は相場より安く売らせる。よくある手口です。
最初から現実的な値段をつけたBさんの家は、売り出して3週間で「2,480万円」の買主が見つかりました。ほぼ狙いどおりでした。
5. 写真と売り出しのタイミングは、私が全部やる
価格が決まったら、次は見せ方です。写真は業者任せにせず、私が晴れた日の午前中に行って、南の部屋に光が一番きれいに差す時間を狙って撮りました。暗い写真の家は、それだけで問い合わせが半分に減ります。これは本当です。
そして、売り出すタイミング。Bさんの家は、私はあえて2月の終わりに売り出しました。3月から4月にかけて、転勤や入学で家を探す人が一番多いからです。買う人が多い時期に売り出せば、それだけ競争が起きて、値段が下がりにくくなります。
真夏や年末に売り出すと、見に来る人が減ります。同じ家でも、売る時期を間違えるだけで「100万円」損することがあります。タイミングを計るのも、不動産屋の仕事です。
6. 正直に申し上げる、デメリットの話
ここまで、私がやったことを並べてきました。でも、正直に申し上げます。こうやって手間をかけて丁寧に売ると、時間がかかります。Bさんの売却は、最初の電話から引き渡しまで、およそ5か月かかりました。
「すぐ現金がほしい」という方には、この売り方は向きません。そういう方は買取という手もありますが、買取だと相場より「2割から3割」安くなります。Bさんの家なら、500万円以上安くなる計算です。
それから、掃除も書類集めも、売主であるBさんご夫婦にも動いていただきました。全部を不動産屋に丸投げして楽をしたい、という方には、少ししんどい売り方かもしれません。
ただ、私はいつもこう申し上げます。「面倒なことを、売り出す前にやるか、売った後に泣くか。どちらかです」手間を惜しんで後で泣く人を、私は50年で何人も見てきました。
まとめ
今日は、Bさんの実家を売るまでに私がやったことを、全部お見せしました。もう一度、順番だけ並べます。
- 現地に3回行く
- 掃除と片付けの段取りをする
- 書類を売り出す前にそろえる
- 売れた値段を調べて現実的な価格をつける
- 写真とタイミングにこだわる
- デメリットも正直に話す
派手なことは、一つもありません。でも、この地味な段取りをやったからこそ、Bさんの家は3週間で売れて、狙いどおりの値段で着地しました。
結論をもう一度申し上げます。売却は、売り出す前に八割が決まります。
最後に、これだけは申し上げたい
もしあなたが今、家の売却を考えているなら、担当者にこう聞いてみてください。「現地に何回来てくれますか」「書類は売り出す前にそろえてくれますか」「この半年で実際に売れた値段を見せてください」
これにきちんと答えられない担当者なら、任せないほうがいいです。私は、売るためではなく、あなたに損をさせないために動きます。査定の電話一本でも、遠慮なくおかけください。現地を見て、正直な話をさせていただきます。
センチュリー21・ハートピア
田中章雄


