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50年で見た「一番トラブルになった契約」
カテゴリ:あきちゃんの不動産お役立ち情報  / 投稿日付:2026/05/25 05:49

こんにちは。神戸市北区で50年、不動産屋をやっております田中章雄、通称あきちゃんです。

今日は、私が50年この仕事をやってきた中で、忘れられない「一番トラブルになった契約」の話をします。胸の痛む話ですが、これを知っておくだけで、あなたは同じ目に遭わずに済みます。

50年

家や土地の売買というのは、契約書にサインをして、お金が動いて、鍵を渡せば終わり。多くの方は、そう思っておられます。けれど、本当の勝負は、契約が終わった「後」に始まることがあるのです。

ここで一歩、立ち止まってください。私が50年で見てきた大きなトラブルは、そのほとんどが、契約のときには誰も気づいていませんでした。買主も、売主も、仲介の担当者でさえも。だからこそ、後になって、取り返しのつかない揉め事になるのです。


結論から申し上げます


不動産のトラブルの9割は、契約書にサインする「前」に、もう決まっています。

これは断言できます。後で揉めるかどうかは、運でも、相手が悪い人だったかどうかでもありません。サインする前に、「知っていることを正直に出したか」、そして「知らないことを、知らないと書面に残したか」。たったそれだけで決まります。

50年やってきて分かったことがあります。一番揉める契約は、悪人が起こすのではありません。「まあ、これくらいは言わなくていいだろう」という、ごく普通の、善良な人の小さな油断から起きるのです。

今日はまず、なぜ契約がトラブルになるのか、その理由を四つお話しします。そのうえで、私が50年で一番揉めた、今でも忘れられない契約の話をします。


1. 「言わなくていいだろう」が、一番危ない


これが、すべての始まりです。

家を売るとき、売主には「知っていることを、買主に告げる義務」があります。雨漏りしたことがある。シロアリが出たことがある。昔ここに何かが建っていた。床下に湿気がたまりやすい。こういう「都合の悪いこと」を、人はつい黙ります。「もう直したから」「昔のことだから」「関係ないだろう」と。

ところが、黙ったことは、たいてい後で全部出てきます。買主が住み始めて、雨漏りが再発する。床下を覗いてシロアリの跡を見つける。そのとき、「聞いていない」と言われたら、売主は契約不適合責任を問われます。知っていて黙っていた事実は、あとから必ず、あなたに返ってくるのです。


2. 「現況のまま」「免責で」という特約を、軽く考えてはいけない


契約のとき、業者はよく「現況有姿で、契約不適合責任は免責にしておきましょう」と言います。「これで売主さんは、後から責任を問われませんから安心です」と。

ここで安心してはいけません。はっきり申し上げます。免責特約は、万能の盾ではありません。売主が「知っていたのに告げなかった」事実については、たとえ免責特約があっても、責任は消えません。これは法律で決まっています。「免責にしたから何を黙っていてもいい」と思った瞬間に、あなたは一番危ない橋を渡っているのです。


3. 境界・面積・付帯設備を、曖昧なまま進めてはいけない


土地のどこからどこまでが自分のものか。隣の家の塀やブロックが、自分の敷地に少しはみ出していないか。引き渡すエアコンや給湯器は、ちゃんと動くのか。

こういう、地味で面倒なことを「だいたいで」進めると、引き渡しの後に必ず揉めます。「境界の杭がない」「測ったら面積が違う」「給湯器が動かない」。一つひとつは小さく見えても、買主にとっては「話が違う」になる。契約前に、はっきりさせておくことです。


4. 急かされて、重要事項説明書を読まずにサインしてはいけない


契約の当日、分厚い書類を、担当者が早口で読み上げます。一時間も二時間も座らされて、頭はもうぼんやり。最後に「ここと、ここにサインを」と言われ、よく分からないまま判を押す。

これが、一番危ない瞬間です。重要事項説明書の、特に「容認事項」という欄には、本当に大事なことが小さな字で書いてあることがあります。そこを読み飛ばしてサインすれば、後で「聞いていない」は通りません。あなたは「読んで、納得して、サインした」ことになるのです。


私が50年で、一番揉めた契約の話


ここから、忘れられない一件をお話しします。

神戸市北区のある住宅地で、Cさん(当時72歳)が、親から相続した古家付きの土地を売られました。Cさんご自身は別の場所にお住まいで、その土地には何十年も足を運んでいませんでした。古い家を解体して更地にし、3,180万円で売る契約。買主は、そこに新築を建てて住むつもりの、若いご夫婦でした。

このとき、Cさんの頭の片隅に、一つだけ引っかかることがありました。「子どもの頃、あの敷地の隅に、納屋だか作業小屋だか、小さい建物が建っていた気がする」。でも、もう何十年も前の、あいまいな記憶です。Cさんは「まあ、関係ないだろう」と思い、誰にも言いませんでした。仲介の担当者も、特に何も聞いてきませんでした。

契約は、何ごともなく終わりました。Cさんは古家を解体し、きれいな更地にして、買主ご夫婦に引き渡しました。Cさんは、ほっと胸をなで下ろされたそうです。

ところが、半年後でした。買主ご夫婦が、新築の基礎工事のために地面を掘ったところ、地中から、古いコンクリートの基礎、割れたブロック、そして使われなくなった浄化槽まで、大量に出てきたのです。Cさんが「あった気がする」と思っていた、あの納屋の名残でした。

この「地中埋設物」を撤去しなければ、家は建てられません。撤去にかかる見積もりは、280万円。買主ご夫婦は、当然、激怒されました。「こんなものがあるとは、一言も聞いていない。撤去費用を出してほしい」と。

Cさんは青ざめました。「私だって、こんなものが埋まっているとは知らなかった」。仲介の担当者は、こう言いました。「契約書に、現況有姿で契約不適合責任は免責、と書いてあります。だから、Cさんが払う必要はありません」と。

ところが、話はそれで終わりませんでした。買主側にも知恵のある人がついていて、こう主張してきたのです。「地中に埋まっていて、外から見えないものは、現況有姿の免責ではカバーされない。しかも、売主は昔そこに建物があったと知っていたのではないか」と。あの「納屋の記憶」が、ここで重くのしかかってきました。

そこから先は、泥沼でした。買主側に弁護士が立ち、Cさんも慌てて弁護士を頼みました。話し合いは半年以上もつれ、Cさんは、その間ずっと眠れない夜を過ごされました。72歳の方が、です。最終的に、撤去費用の半分ほど、140万円をCさんが負担することで、ようやく和解しました。

和解が済んだあと、Cさんは私のところに、別の土地のことで相談に来られました。そのときに、この話をぽつりとされたのです。そして、こうおっしゃいました。「あきちゃん、私はね、あの納屋のことを、契約の前に一言、言っておけばよかったんだ。たった一言だよ。それを『まあ関係ないだろう』で黙ったばっかりに、140万円と、半年の心労だ」と。

私は、Cさんを責める気にはなれませんでした。Cさんは、嘘をついたわけでも、騙そうとしたわけでもない。ただ、「言わなくていいだろう」と思っただけです。けれど、その小さな油断が、一番大きなトラブルを生む。これが、50年見てきた現場の、いちばん怖いところなのです。


業界の裏側を、正直に明かします


ここで、聞きたくないかもしれない話をします。

なぜ、こういうトラブルの芽を、仲介業者が事前に摘んでおかないのか。理由は単純です。仲介業者は、一日でも早く契約をまとめたいからです。「昔そこに何かありませんでしたか」「地中を調べておきましょうか」とやり始めると、契約が遅れ、費用がかかり、何より、売主が嫌がります。だから、聞かない。調べない。

そして、「免責にしておけば安心ですよ」と、軽く言うのです。売主に安心してもらえれば、契約のハンコは早く押される。担当者にとっては、その方が都合がいい。免責特約が後で通用するかどうかなんて、契約のときには、誰も真剣には考えていないのです。

もう一つ、これも申し上げておきます。同じ業者が売主と買主の両方から手数料をもらう「両手取引」のとき、業者は買主にも強く言えません。売主の不利になる情報を、わざわざ買主に深く調べさせて、契約をこじらせたくない。だから、双方にとって都合の悪いことは、そっと触れずに進む。その「触れずに進んだこと」が、引き渡しの後で、爆発するのです。


正直に言うと、こういう面もあります


ここまで「知っていることは全部言え」と申し上げてきました。けれど、正直に、デメリットも書いておきます。

全部を正直に開示すると、たいてい、売値は下がります。「昔、雨漏りしたことがあります」「地中に何か埋まっているかもしれません」と書けば、買主は当然、警戒します。値引きを求められることもあるでしょう。場合によっては、買主が逃げて、売れにくくなることもあります。だから、人は黙りたくなる。その気持ちは、私にもよく分かります。

それでも、私はこう申し上げます。目先の数十万円を惜しんで黙れば、後から数百万円と、裁判と、眠れない夜が来る。Cさんが、まさにそうでした。正直に言って多少安く売る方が、黙って高く売って後で訴えられるより、よほど安いのです。どちらが本当の得か。これは断言できます。


まとめます


もう一度、結論を繰り返します。

不動産のトラブルの9割は、契約書にサインする「前」に決まっています。

だから、契約の前に、この四つだけは必ず守ってください。

  • 知っていることは、都合が悪くても、全部正直に出す
  • 知らないことは、「知らない」と、はっきり書面に残す
  • 「免責特約があるから安心」と、絶対に油断しない
  • 重要事項説明書は、容認事項まで、急かされても読み込む

この四つを守るだけで、あなたが契約で大きなトラブルに巻き込まれる確率は、ぐっと下がります。Cさんのように、たった一言を黙ったせいで、何百万円も失うことは、避けられるのです。


最後に、これだけは申し上げたい


私は、神戸市北区・西宮北部・三田で、家や土地を売る方を、50年見てきました。その中で、契約の後に泣いた人を、何人も見てきました。みなさん、悪い人ではありません。ただ、「言わなくていいだろう」「業者に任せておけば大丈夫だろう」と、ほんの少し油断しただけなのです。

家や土地の売買は、人生で何度もあることではありません。だからこそ、分からないことだらけで当たり前です。「これは言った方がいいのか」「この特約で本当に大丈夫なのか」。そう迷ったときは、契約書にサインをする前に、どうか一度、私にお声がけください。

私は、あなたを急かしません。契約を無理に勧めることもしません。あなたが知っていることを一緒に整理して、契約の前に何をはっきりさせておくべきか、50年の現場の目で、正直にお話しします。サインの後では遅いのです。サインの前なら、まだ間に合います。

お電話一本でも、お店に立ち寄っていただくだけでも構いません。あなたが、Cさんのような思いをせずに済むなら、私にとって、これほど嬉しいことはありません。

センチュリー21・ハートピア
田中章雄

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